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野球人口減少の危機を救え。埼玉の4球団が今、手を組む理由とは

2017.06.08 / AZrena編集部

長らく日本では人気スポーツの1つとされてきた野球だが、近年小中学生を中心に人口が減少してきているという。この流れを止めようと埼玉に本拠地を構える埼玉アストライア(女子プロ野球)、埼玉西武ライオンズ(プロ野球)、戸田中央総合病院メディクス(ソフトボール)、武蔵ヒートベアーズ(BCリーグ)の4球団が手を組み、野球の普及活動を行うプログラム「PLAY-BALL! 埼玉」を発足させた。

PLAY-BALL! 埼玉

西武・炭谷が受け取ったある手紙がきっかけ

今回、このプロジェクトを立ち上げるきっかけとなったのは埼玉西武ライオンズに所属する、炭谷銀仁朗選手が昨年末に受け取ったあるファンの母親からの手紙からだった。

「『息子が野球をやっているんですけど、近くの公園で野球をする場所がありません。選手会長である炭谷さんどうにかできませんか?』というようなお手紙をいただき、初めて野球をできる場が減っているという生の声を聞いたので、驚きました。それで球団にどうにかできないかと相談したところ、このプロジェクトが実現しました」(炭谷選手)

これまで埼玉西武ライオンズは「ライオンズカップ・埼玉県中学硬式野球選手権大会」の開催や幼稚園・保育園での野球体験、埼玉アストライアは小学生向けに投力向上教室やティーボール(簡易的な野球)体験など、各球団はそれぞれで普及活動を行ってきた。

今回のプロジェクトの目的の1つとして、そういった各球団で行ってきた取り組みについてのノウハウを集約する狙いがある。集約したそのノウハウをそれぞれの球団が持ち帰り、ホームとしている地域での普及活動のプログラムに役立てることで、今までカバーできなかった対象にも野球と触れ合う機会を提供できる体制が整う。

普及活動の具体的な内容としてはグローブなど特別な用具を使用せずに楽しむことができるスポンジ状のボールやティーボールで使用しているポリウレタン製の球を使ったレクリエーションを想定している。初めから競技的な側面を出すのではなく、あくまで野球・ソフトボールの経験のない子供たちに触れてもらうきっかけづくりをすることが狙いだ。

 

野球の面白さを全国に。4選手が語る思い

今回のプロジェクトに際し、4球団からそれぞれ4人の選手が代表し今回のプロジェクトの思い、そして子供たちへ向けたメッセージを述べた。

川端友紀選手

埼玉アストライア・川端 友紀選手

「私は女子プロ野球選手としてはもちろんですが、ソフトボールの経験もありますし、兄(ヤクルト・川端慎吾)がプロ野球選手ということで、男女関係なく野球とソフトボールの普及、発展に貢献していきたいと思っています。

野球が大好きな子ども達のためにもこのプロジェクトを成功させ、埼玉から野球をどんどん盛り上げていきたいと思っています。また、これから野球を好きになってもらえるように私たちが直接、野球の楽しさや魅力を伝えていきたいと思います。今は野球に触れる機会が少ないと思いますので、私たちがそういう機会や環境というものを作って行けたらと思っています。」

 

炭谷銀仁朗選手

埼玉西武ライオンズ・炭谷 銀仁朗選手

「取り組みとして今まで以上に幅広く色々なことができるかなと思います。シーズン中にはOBの方達に協力いただき、オフには僕たち選手ができるだけ参加したいと思いますので、少しでも多くの人が野球をやりたいという気持ちに芽生えてくれたらなと思います。」

田中江理奈選手

戸田中央総合病院メディクス・田中 江理奈選手

「野球やソフトボールの競技人口が減ってきているということで今、私たちにできることは子ども達にその楽しさを肌で感じてもらうということだと思います。投げて打ってもらって、実際に球場に足を運んでもらい、私たちがプレーをする姿を見てもらうことで色々と感じてもらうこともできると思います。そのようなきっかけ作りが私たちにできればと考えています。」

関口寛己選手

武蔵ヒートベアーズ・関口 寛己選手

「ここ数年、野球・ソフトボールの中学生以下の競技人口が減ってきているということを我々が実感し、現実を受け止めてしっかりと野球というスポーツの楽しさを地域の子ども達に知ってもらうことで、もっと身近に感じてもらえれば競技人口も自然と増えてくると思うので、地域の子ども達のために我々選手全員力を合わせて、野球の楽しさを日本全国に広めていければと思っています」

 

4チーム合同で行う取り組みの第1弾として、6月18日(日)には親子キャッチボールイベントが開催される予定になっている。各チームの現役、OB・OG選手が野球経験を問わず楽しめるプログラムを開催する予定だ。

小中学生対象の全国体力テスト・ボール投げでもワーストクラスを記録し、子どもの投力低下に喘いでいる埼玉県。その埼玉の球団がチームの垣根を越えて協力し合い、全国に先駆けて野球・ソフトボールの人口減少に歯止めをかけられるだろうか。