幼少期からスタジアムへ。モンテディオ山形コールリーダーの半生

2015.07.31 森 大樹

大場脩

 

今回はJリーグ・モンテディオ山形の応援コールリーダー、大場脩さんにお話を伺います。幼少期にスタジアムに足を運んで以来、その雰囲気とフットボールの魅力に魅せられ、現在は毎試合(※)ゴール裏の応援のリーダーをされています。また、日本のサポーター文化を伝えるために「Local Football Japan」を立ち上げ、発信するための媒体を作る活動を行っています。

 

ゴール裏:熱狂的なクラブサポーターが集まる席で、応援の中心となる場所。鳴り物や横断幕の持ち込みが許可されている。個々のサポーターがそれぞれ自作のバナー(旗)を掲げたりすることもある。

 

幼少期からモンテディオ山形の試合を観戦

 

-まず初めに今まで大場さんはどのようなスポーツを経験されてきたのでしょうか。

小学校の時はミニバスケットボールをやり、中学では野球部に入りました。高校からはサポーター活動にのめり込んでしまって、プレーヤーとしてはやっていません。学生時代は特に何もスポーツはやらずにいましたが、社会人になってからまた草野球で現役復帰して今も続けています。ポジションは主に外野ですが、最近は内野にもチャレンジしています。あとは昨年からハーフマラソンにも挑戦しています。

 

-実際にプレーされていたわけではないとなると、どのようなきっかけでサッカーに出会ったのでしょうか。

僕がサッカーに出会ったのはモンテディオ山形の試合を初めて観に行った時のことで、小学校低学年の頃です。でも本格的に観始めたのは高校生になってからです。元々スポーツが好きでしたし、運動会の応援などにも興味があって実際に立候補してやるくらいだったので、自然とサッカーの応援にも惹かれていきました。

 

-それはサッカーだから観に行ったというよりも、応援ができるからという部分がスタジアムに足を運ぶ要因になったということでしょうか。

そうですね。サポーター活動に興味があったからというのが大きいと思います。もし山形にプロ野球チームがあったら、そちらを応援していたかもしれません。

昔は毎晩やっていた野球の試合の中継をよく子供の頃は観ていました。選手のプレーも注目していましたが、気になっていたのが選手の応援歌です。目よりも耳を傾けていました。

あとは新聞紙に絵の具で色づけして、それに棒をつける。そうするとお手製の旗の完成です。それを降って応援していたりもしました。今考えると、小さい時にやっていたことを今も毎週やっているだけなんです(笑)

 

-初めてサッカーを観に行った時のことを覚えていますか。

小学校3年生の時に今はもう使われていない山形の旧ホームスタジアムに観に行きました。モンテディオ山形は元々NEC山形というチームで、たまたまそこが親の職場だったんです。チケットをもらって親と自転車で行きました。

ライトに煌々と照らされた夜のスタジアムを見て、テンションが上がったのを覚えています。応援の声がつくり上げるスタジアムの雰囲気がすごく楽しかったです。結果までは覚えていませんが、対戦相手は確か今日と同じ(※)東京ガスでしたね。ちょうど今山形のコーチをやっている「ミスター・モンテディオ」、(※)高橋健二選手や(※)鈴木克美選手は地元出身の選手で当時はスタメンで出ていました。ちなみにこの2選手は僕の高校の先輩にもあたります。最近は地元出身の選手を獲得しても大成しないでやめてしまうことが多いので、寂しいです。やはりユース出身や地元出身の選手はサポーターとしても贔屓する傾向にありますし、その分声援も叱咤激励も大きいです。その選手を応援したいという気持ちの現れです。

東京ガス:現在のJ1・FC東京の前身チーム。取材は2015年7月19日の対FC東京戦(味の素スタジアム)で行われた。

高橋健二:日大山形高校出身で、前身・NEC山形時代からモンテディオ山形一筋で13年間プレーを続けた元サッカー選手(MF)。2006年シーズン限りで引退するもクラブに残り、2012年からはトップチームのコーチを務める「ミスター・モンテディオ」。

鈴木克美:日大山形高校出身で、同じく前身・NEC山形時代からモンテディオ山形一筋で17年間プレーを続けた元サッカー選手(GK)。2004年限りで引退。

 

-本格的にサポーター活動を始めたのは高校生からということでしたね。

小中学生の時は自分がスポーツをやっていて、土日に練習や試合があったのでなかなか行けませんでした。高校生になって久しぶりに観に行った時に小さい頃の楽しかった記憶が蘇りました。それに加えて小さい時にはなかった地元愛が芽生え始めていて、モンテディオを応援したいという気持ちはもちろん、地元・山形を盛り上げたいという考えからサポートしていきたいと思うようになっていきました。大学時代は4年間東京で過ごしましたが、その想いはより強くなっていきましたね。だからこうして卒業後は山形に戻り、今も地元に住んで仕事をしています。

 

生まれ育った山形のチームという魅力

 

-モンテディオ山形のいいところを教えてください。

モンテディオはお金もないので、他クラブで出場機会がなかった選手や、戦力外になった選手が来ます。そういう地方クラブがビッグクラブや代表クラスの選手が所属するチームと戦って勝つというのが魅力だと思います。さらにそこに地元の選手が絡んでくればより盛り上がりますね。でも僕の中では生まれ育った山形のチームだというのが一番の魅力です。

 

モンテディオ山形

 

-長年応援されてきた中でスタジアムやゴール裏に変化を感じたりはしますか。

 

中心にいるメンバーは入れ替わりが激しいです。あとはJリーグ自体の規制が厳しくなっていて、ライバルチームと言い合いをしたりすることができなくなってきています。度合いにもよりますが、それは少し寂しい部分です。でもモンテディオが勝てるようにゴール裏からサポートするということは変わりありません。人や規則が変わっても意志は変わらないということです。

 

-最近Jリーグでは2シーズン制について議論になりましたが、大場さんはどのようにお考えですか。

今これについて反対するとやはり問題になるのでできませんが、みんなの総意で反対なのであれば、発信していくべきだと思います。

ちなみに僕は反対です。何より仕組みが分かりにくいです。僕みたいな毎試合観に来るような人間が分かっていないのは問題ですよね。

 

-そうなるとリーグ側の説明不足ということでしょうか。

そうですね。結局何位までの何チームが進出できるのか。どのチームが一番強いということになるのか。全く分かっていません。

 

-1stステージは浦和が優勝しましたが、そこまで話題にはならなかった印象です。

観客動員数やスポンサーの問題などから、リーグ戦の中に山場をいくつか作って集客数を上げたいという思惑があるのでしょう。ただ例えばもう少しどのようにしたらいいかをファンと話す機会を設けたりしないと今後の発展はないと感じました。

もっとメディアにも取り上げてもらえるようにした方がいいと思います。Jリーグをメインに報じてくれる媒体は本当に限られています。スポーツニュースでは海外組選手個人の名前と結果が大々的に報じられますが、サッカーは個人のスポーツではありません。チームスポーツなわけですから、もっとチーム単位で、それも地元である日本国内のものをもっと報じるべきではないでしょうか。

 

-確かに海外組の選手は個人名で報じられることが多いですね。

選手の結果も大事ですが、本来はチームが勝ったかどうかが一番重要なはずです。Jリーグに関してもこれからの日本代表や日本のサッカー界のベースになる部分なわけですから、もっと様々なアイディアを出し合っていかないとさらなる発展は厳しいのではないかと思います。

好きなクラブのために僕らの役割はスタジアムを魅力的な雰囲気にすることです。でもそれだけではなくて、もっとメディアがJリーグを肯定的に報じてほしいです。需要の問題もあると思うのでなかなか難しいとは思いますが、その辺りはJリーグのトップの方達にさらに素晴らしさをアピールしてもらう必要があります。少なくとも僕らよりは発信力があるわけですから。

 

-その点地元・山形でのモンテディオの取り上げられ方はいかがですか。

山形ではだいぶ取り上げられていますね。新聞には今日のチームの予定が載ったり、注目選手の記事が掲載されたりしています。昔はなかなか載ることもなかったですが、ここ最近は載るようにもなって、県民の関心が高まっているのを感じます。

 

代表が勝つにはJリーグのクラブを盛り上げていく必要がある

 

大場脩

 

-大場さんはコールリーダーとしてスタジアムの雰囲気を作り上げるためにどのようなことを意識していますか。

 

今日はこういった形で応援するので、みんなで後押ししましょうという話を初めにします。よくコアなサポーターとそうでないサポーターと区別されることがありますが、ゴール裏の中心でも端の方でもスタジアムにまでわざわざ足を運んでまで山形を応援したいという気持ちに変わりはありません。だから立場や所属は関係なく、一緒にやりましょうと声かけをするんです。後半戦が始まる時も負けが込んでいたというのもあって、改めて呼びかけをしました。僕自身がしっかり発信していく必要があると思っています。

 

-しかしそれでも、例えば常連客が新規客のことをよく思わなかったりすることがあると思います。

それはサッカーに限らず、こうして観客を動員するものであれば必ず出てくる問題です。そこはもう粘り強く呼びかけていくしかないでしょうね。僕らが常連でも新規でもみんなが楽しいと思えるスタジアムの雰囲気を作っていくしかないと思います。しかしサポーター活動自体が抽象的なものではあるので、どこまでできるのか難しいところではあります。

 

-ブーイングについてはどのように捉えていますか。

時と場合によりますね。ただ1つ、勝った時と負けた時で同じ雰囲気にならないようには気を付けています。勝っても拍手、引き分けでも拍手、負けても拍手ではサポーターがサポートしている意味がないです。

ミスが目立ち、試合で大敗すれば僕らサポーターがそんなものじゃない、もっとできるだろうと喝を入れることも必要です。反面結果が伴わなかったとしても気持ちが伝わってくる試合であれば当然反応も変わります。

 

-大場さんが(※)チャントを作ったりすることあるのですか。

僕はチャントを作るのが苦手なので、出してもだいたい通りません(笑)作れる人に出してもらい、団体内で実際に歌ってみたりして協議を重ねて、決めます。

チャント:応援歌のこと。ここでは特にサッカーにおけるゴール裏(応援席)で歌われるサポーターソングを指す。

 

-その辺りに山形の色を出したりしないのでしょうか。

なかなか方言を入れたりするのは難しいです。でも試合に勝つと「山形県スポーツ県民歌」という歌を歌います。山形のスポーツ振興のために作られた歌で、僕らの世代くらいまでは小学校で習いました。僕より若い世代は知らないかもしれませんが、それを試合後に歌います。他のチームでも県民歌など、地元に関連した歌を歌うクラブも出てきていますが、山形はチームができた当初から歌っているので、地域色を早くから応援に取り入れていたということですね。

 

大場脩

 

-毎試合スタジアムに足を運んで応援するというのは大変ですよね。

 

僕はもうゴール裏で10年以上やってきたので、サポーター活動が日々のライフワークの中に入っています。もっとフットボールやサポーター活動が人々の日々の生活の中に入っていけば、より競技は盛り上がると思いますし、W杯で日本代表が勝つというところにも繋がってくるのではないでしょうか。代表が勝つには特にJリーグのクラブをもっと盛り上げていく必要があります。あくまでもベースにはJクラブがあって、その延長線上に代表が成り立っているということを忘れてはなりません。今海外で活躍している日本代表選手もJリーグで活躍して海を渡っています。

 

-コールリーダーをしていると声が出なくて困ることもありそうですね。

実は今まで声が出なくなったことがないんです。風邪を引いても声が出なくなったことがありません。タバコも止めましたし、お酒をあまり飲まないので、喉を痛めることはないです。カラオケも試合前にはいきません。そう考えると意外とプロ意識を持ってやっているかもしれませんね(笑)でもこうして改めて聞かれたことで気を使う必要があると気付かされました。

 

【後編】へ続く