社長が明かす!栃木SCがスナップマート元代表「えとみほ」を採用した理由

2018.09.04 竹中 玲央奈

カテゴリが上がれば給与が上がるわけではない

–ちなみに気になるのですが、給与の話はどのタイミングでしたのですか?

橋本:最後のほうですね。失礼で言えないなと思っていて。

 

えとみほ:オファーが来た時に、すごくいろいろな説明を1時間くらいされたのですが、たぶん言いづらいんだろうなと(笑)。

 

橋本:応募はして頂いたんですが、クラブとしてもお願いしたいということで最後は東京に出向いて、話をさせてもらいました。

 

–えとみほさんの中では金銭面というよりは、やりがいがメインだったんですよね。

えとみほ:あんまり「お金は関係ない」っていうと給料上がらなくなっちゃうのであれですけど(笑)、第一条件ではないですね。

 

–気になるのですが、J1に上がればスタッフの給与も上がるのでしょうか?

橋本:そこはカテゴリーではなく、業績だと思うので。もちろん昇格してカテゴリーが上がれば売上も業績も上がる可能性はあります。『昇格したから給与が莫大に上がるのではないか』という話も年末に社内で出回ったのですが、そうではないという説明をして、社員も理解をしてくれました。

逆に言うと、「降格したからといって、あなたの給与は下がっていないよね」と。できるだけ社員の給与は昇降格に左右されないように運営したいという考えはあります。

 

えとみほ:サッカークラブの経営で難しいのは、強くなったら強くなったで、トップチームに多額の投資しないといけないんです。そうすると、フロントスタッフの給与を上げるのも容易ではないんですね。

 

橋本:正直、降格したら少し業績が悪くなる可能性があるということは2016年に感じました。初めてのカテゴリーで、どれくらいお客さんが来るのかも開幕前は分からなかったですし、1,000人くらいは減ると言われていたので。その中で2年やってみて思ったのが、トップチームに投資をする人材が重要だなと。

投資する側もフロントが冷静にビジネスを分かっていて、成績だけでなく、これくらいまで収益が上がるというのを分かる人がいなければいけない。

そういう人がいないと、お金を無駄に使ってしまう可能性があると思ったんです。そういう意味でいうと、江藤がいることによって、僕の仕事はかなり楽になりました。

 

IT化が進んでいないJクラブの現状

–えとみほさんは、Jクラブでこういうことができるだろうと思っていた部分と実際にやってみて、ギャップはありましたか?また、一企業の代表からクラブスタッフになってのギャップもありますか?

えとみほ:なんとなく想像していた通りだなと。ただ、思ったよりもIT化されていないとは感じました。私の前職が渋谷のスタートアップで、日本の中でもかなりIT化の進んだところにいたので、比べたら遅れているのは当たり前なんですけど。地方の会社の中でも少し遅れているところもあるなと。

うちだけかと思ったんですが、いろいろなクラブに聞いてみても、スポーツ系のところはIT化が後回しになっているところが少なくないみたいです。あるJ1クラブのスタッフの方に聞いた話では、チャットツールを入れようとしたら全力で阻止されたこともあった、と。

 

橋本:そういった社内のインフラをどんどん整備してほしいとも思っています。

 

えとみほ:Slackを入れて、サイボウズにサプライしてもらって、サイボウズでいろいろな共有を行っています。

 

橋本:僕も入った時に、カレンダー共有やメーラーをGoogleにしようと言った時に、すごく拒否されてしまったんです。それもあって、当時はここはハレーションを起こすよりも、まずは我慢して昇格する為にもフロント内を同じ方向を向かせるほうが優先だと考えを切り替えました。

今は江藤に入社してもらってかなりのスピードで変化を起こしてくれるので、すごく助かっています。

 

えとみほ:入社したときに気になったのは、メールの多さです。よく見ると半分以上が社内の連絡や日報で。だから、Slackを入れてなるべくメールをなくそうと考えました。メールって、社内でも「お疲れ様です」とか無駄な挨拶入れないといけないので。

Slackはもうみんな使いこなしてますね。あとは採用にWantedlyも使い始めました。

 

橋本:もう言われるがままですよ(笑)。『Wantedlyに登録してください』と言われて、「はい!」と。

 

えとみほ:誰もWantedlyを知らなかったですからね。IT業界では知らない人いないと思うんですが。特に何も説明せずに、とりあえず登録して、応援して!と(笑)。

 

橋本:こういう行動はすぐに成果が出なくても、必ず何か出てくると思うんです。今後、もしITに強い人が入ってきた時に、こういうことをやれている会社なんだと思ってもらえるかもしれないですから。マーケティングだけでなくインフラのところも整備されていっていますね。

 

–Wantedlyはリクナビやマイナビとは違うユーザーが居るので、新たな人材の獲得に繋がりそうです。

えとみほ:スポーツ業界は採用が独特だと思っています。あまり公募をしないし、いろいろな人にどうやって入ったのかを聞いたら、インターンを数年続けていた中でポストが生まれて社員に昇格するというような。ほとんど縁故で、他クラブから引っ張ることもわりとあるみたいですよね。

公募することの良い点は、色々な業界の人が『自分も入れるかもしれない』と思って門を叩いてくれること。給与面で合わない可能性もありますけど、それも来てもらわないと分からないですし。

 

そもそもなぜ公募をしないのかと思っていたのですが、一つ思うのは、採用に労力をかけなくて良い業界なんですよね。やりたいと思っている人は山ほどいるし、とりあえずやりたい人は集まる。だから、ホームページに出しておくだけでも良い、という発想ですね。

 

橋本:募集をした時はリクナビで出したんですけど、リクナビに広告を出すことには反対されたんですよね。クラブの公式サイトに出すだけでそれなりに数は来るので、そこから選べば良いという発想なんだと思います。

できるだけ支出を抑えようという使命感で言ってくれたと思うんですが、僕はとにかく違う業界から欲しいから、リクナビも出したいと、少し強引にやりました。結果としてそこに出して良かったと思います。クラブの公式サイトに出しても、サッカー好きしか来ないんですよね。

 

えとみほ:クラブの公式サイトを見てるのは、基本サポーターだけですからね。

 

–サポーターはクラブスタッフにならないほうが良いのでは、とも思うことがあります。

えとみほ:それは職種によると思います。たとえば広報やマーケはクラブの歴史や選手のことを知っていたほうが良い職種ですし、サポーターだった人が中にいた方が良いと思います。ただ、クラブ愛が強いだけの人ばかりでも難しいのかな、と。

 

–即戦力の選手を獲得することも重要ですが、例えば営業成績が優秀なクラブスタッフに投資したほうが良い面もあるのかなと。そこについてはいかがでしょう?

橋本:それはクラブの方針によると思うので。僕も3年目で手探りなところはあるのですが、これ以上チームを強くするためには、業績を伸ばしてくれる人がいないと無理だなとは感じます。

サッカーは野球と違って昇降格があるのが大きいんです。降格がなければ、5カ年計画の作り方も変わってくる。野球はシーズン終盤で最下位でも、面白い企画を打てばお客さんは来てくれることもあります。

ただ、降格があると変わってくると思います。やはり僕もどこかで「降格してしまうかも」という危機感は常に持っていますし、降格がなく、興業・産業として徹底しているほうが伸びていくとは思います。

 

えとみほ:降格がなければ、もっと面白いサッカーができる部分もあると思います。私はJ3もよく観ているのですが、J3のほうが降格がない分、アグレッシブなサッカーをしているなと思います。