【前編】すべては女子ラグビーを広めるため。横尾千里はタックルを武器に、リオ五輪での飛躍を誓う

2015.07.13 森 大樹

横尾千里

 

今回は女子7人制ラグビー(セブンズ)日本代表でクラブチーム・東京フェニックス所属、横尾千里選手にお話を伺います。長くラグビーを続ける中での苦労や経験を通して得た学びなどを語って頂きました。柔らかな物腰から出る、力強い言葉が印象的です。

7人制ラグビーは2016年ブラジル・リオデジャネイロ五輪から男女共に正式種目になることが決定しており、今注目を集めている競技の1つです。

 

ラグビーをやめたいとは一回も思ったことがない

 

-まず初めに競技を知らない人のためにセブンズ(7人制)と一般的なラグビー(15人制)の違いを簡単に教えてください。

セブンズの場合は7分ハーフの前後半、計14分で試合が行われます。15人制と同じ大きさのグラウンドですが、半分以下の人数で試合を行います。厳密に言うと少し違いますが、ルールはほぼ同じです。

 

-動画を拝見しましたが、あれだけの広さを7人でカバーするのはかなりハードですね。

そうですね。一人ひとりの責任が大きいですし、よくも悪くも目立ちます。

 

-その中で横尾さんはどういった役割を担っているのでしょうか。

ラグビーのポジションは大きくFW(フォワード)とBK(バックス)の2つに分けられます。FWはどちらのチームのものでもないボールをセットプレーで奪い取る役割があります。BKは奪ったボールをパスや持って走って前に運んでいき、最終的に得点に結びつける役割です。

私は今どちらのポジションもやっています。ただセブンズの場合、始めのプレーの時こそポジションが分かれていますが、試合が動き始めたらあまり関係ありません。どちらもやらないといけませんからね。

 

-そうなると個々により高い能力が求められますね。

今は本当にFWとBK、どちらの役割もできる選手が多くなりました。ただ15人制のFWであれば体が大きい選手が有利ですが、セブンズでは走れることが大前提であり、その上で体格がいいことが理想です。

 

-ちなみに横尾選手はFWとしての役割とBKとしての役割、どちらが好きですか。

私はFWの方が好きです。奪ったボールをBKとして前に運んでいくという緊張感よりも、体を動かして相手に当たっていく方がいいです。

 

横尾千里

より総合的に高い能力がセブンズには求められている

 

-それでは、横尾さんがラグビーと出会った経緯を教えてください。

祖父がラグビーをやっていた影響で弟が先に始め、その練習に付き添っているうちに私もやるようになっていきました。当時はまだ私も小学1年生で、弟も幼稚園生だったので競技としてではなく、楕円のボールで遊んでいた程度だったと思います。地元にあった松戸ラグビースクールで本格的に競技を始め、そのチームには中学まで所属していました。

 

-始めたいと思った時に近くにできる環境があったというのは大きいですね。高校からはどのような形でプレーを続けたのでしょうか。

私は受験をして、中学からはラグビーの強い私立の中高一貫校に進学していました。高校に上がるタイミングで中学生の部までしかなかった松戸ラグビースクールからプレーの場所を変える必要があったので、高校のラグビー部に入れてもらえるように顧問にお願いしたのですが、やはり男子とコンタクトプレーをさせるわけにはいかないと言われてしまいました。それで悩んでいたところ、中学の部活の顧問が声をかけてくれました。中学のラグビー部であれば他の部員と同じようにコンタクトプレーもさせてくれるという話だったので、お願いすることにしました。

 

-当然周りは男子ばかりということになると思いますが、抵抗はなかったのですか。

すごく抵抗がありました。普段から私の学校は男女の間に距離があって、同じ敷地内で生活はしているものの、校舎も下校時間も別という環境で、交流がありませんでした。

その中でも特に関わる機会が少ない女子高校生が自分達の部活に一人だけ混ざってプレーをしているわけですから、当然違和感があったでしょうし、私だけ年上なので関係もギクシャクしました。新しく入ってきた1年生にしばらくマネージャーだと思われていたこともありました。

 

-ラグビーをやめたい、他の競技をやりたいと思ったことはなかったのですか。

過去に例えば陸上やバスケットボールなど、違うスポーツに手を出したことはあります。でもそれも週末しか練習がないラグビーのために平日できるものとしてやっていました。ラグビーをやめたいとは一回も思ったことはありません。

体だけでなく、心がプレーを大きく左右する

 

-大学進学はどのように決めたのでしょうか。

スポーツビジネスに興味があったので、早稲田大学のスポーツ科学部に入りたいと考えていました。自分が高校時代そのような環境でプレーをしていたので、それを変えたいという気持ちもありました。でも面接の時に少し違和感を感じたので、スポーツ科学部に入ることはやめました。ちょうどその年に社会科学部がスポーツを社会科学的に研究するというテーマを掲げていたので、私はそちらに行くことにしました。

 

東京フェニックスRC

大学の部活ではなく、クラブチームというフィールドで活躍されてきた

 

-大学在学中は勉強面との両立で苦労したのはないでしょうか。

大学の部活ではなく、クラブチームに所属していたので公欠が認められなかったり、日本代表の拘束期間が長くてもテストや単位について考慮してもらなかったりしました。

 

-今年の春からはアスリートの就職支援サービスを使って航空会社(全日本空輸)に入社されていますが、仕事と競技のバランスはどのようにしているのか教えてください。

ほとんどラグビーを中心にやらせて頂いています。例えば代表の合宿が1ヶ月間に渡ってあればその間ずっと会社に行かないこともありますし、しかもその前後には休みも頂けます。クラブチームでの活動についても配慮して頂いていて、練習がある日は16時頃に退社させてもらっています。実質的には月に4回ほどしか会社には行っていません。

 

横尾千里

代表として日の丸を背負う

 

-業務としてはどのようなことを任されているのでしょうか。

今は人事部に配属されており、企業文化を社内に浸透させるような施策をするチームに入っています。具体的に何か業務を任されているというよりは、その企業文化をラグビーに置き換えるとどのような形で活かせるかということを話すのと同時に、競技の普及・認知向上も合わせてやらせてもらっています。私達がどういった気持ちでラグビーをやっているのか、スライドを作ってプレゼンします。他にも大会結果や遠征の報告をするためにコラムを書いたりします。

 

-横尾さんが思う、競技の魅力を教えてください。

スピード感や激しさもある中で、意外と落ち着いた気持ちの時の方がいいプレーをできることが多いんです。特にラグビーは体だけでなく、心がプレーを大きく左右すると感じています。それが1つの魅力ですし、選手の心の部分を感じることができれば、観ている側も感情移入しやすくて、面白いと思います。

 

【後編】へ続く