menu

ヴェルディの鍵は「スピード感」。スタッフが挑戦する新たなクラブ運営

2020.03.13 / AZrena編集部

菊地優斗氏、佐川諒氏

(左から)菊地優斗氏、佐川諒氏

※トークセッションの内容を一部抜粋してお届けします。

 

東京ヴェルディは、クラブ創立51年目のシーズンを前に、東京都渋谷区で「TOKYO VERDY BUSINESS TALK SESSION」を開催。2月21日(金)には「フロントスタッフのチャレンジ」をテーマに、パートナー営業部シニアディレクターの佐川諒氏と、ファンデベロップメント部の菊地優斗氏がトークを繰り広げました。

 

2019年にクラブ創立50周年を迎え、ロゴやエンブレムなどを変更し、大胆なリブランディングを図ったヴェルディ。中核を担うフロントスタッフは、どのようなチャレンジを行っているのでしょうか。

 

ステークホルダーと“本気”で向き合った取り組みを

ーまず、お二人がヴェルディに加わった経緯を教えてください。

佐川:大学の時にスポーツビジネスを勉強し、将来はJクラブで働きたいと思っていました。卒業後はスポーツベンチャーやリクルートなどで働きながら、Jクラブへの道を模索していて。「そろそろかな」と思っていたタイミングで、大学でスポーツビジネスを学んでいた時の友人から誘いをいただき2017年7月にヴェルディへ入社しました。

 

菊地:私は新卒でDeNAに入社して、スポーツマーケティングの仕事をしていました。その後はアカツキに転職しましたが、少し経ったタイミングで、東京ヴェルディに出資する話を聞いたんです。小学校からずっとヴェルディサポーターだったので、「ぜひ出向させてほしい」と直談判して、今に至っています。



ー現在はどのような取り組みを行なっているのでしょうか?

佐川:スポンサーセールスを担当しています。私がJクラブの課題だと感じているのは、スポンサーが何を期待しているのかを考えること。「支援してください」とただお願いするのではなく、企業の課題を把握し、スポーツクラブだからこそできる提案をしていかないと。前職のリクルートは顧客と本気で向き合っている企業だったので、その経験も活かしながら仕事をしています。

 

もう一つは、ヴェルディカレッジという学生対象のビジネススクールの運営です。スポーツ業界のインターンシップは、学生への向き合い方がしっかりしていないと思っています。夢を持った若者が来ても、雑用みたいな仕事が多くて、彼ら彼女らの想いを踏みにじっているように感じていました。Jクラブで働く人間として、学生と本気で向き合う場を作っていきたいと思い、立ち上げに至りました。

菊地優斗氏、佐川諒氏

 

菊地:私はフリーマンのような存在として、今までやりたくてもできなかったことをやるのが仕事だと思っています。具体的にはファンデベロップメントという、toC領域を担当する部署で働いていて、今回のイベントもプロジェクトの立ち上げから携わっています。本来、このようなイベントを開幕前の忙しい時期にやるのは難しいですが、それでも実現可能にするということが役割の一つだと思っています。

 

ホームゲームでは「ヴェルディキッズパーク」というファミリー向けのエリアを作るなど、顧客満足度の向上を狙っています。また、試合中にチャント(応援歌)の歌詞をリボンビジョンに映し出すことで、初観戦の人でも参加しやすいような演出強化も行っています。

菊地優斗氏

 

ベンチャーのようなスピード感とチャレンジ精神

ースポンサーはホームゲームで「冠試合」を開催していますが、工夫されていることはありますか?

菊地:従来は冠試合の予算内で、スポンサーが作りたいノベルティを作っていただくという形でやっていました。今は「ファンが喜ぶものを作ることで、巡り巡ってスポンサーのブランド価値が上がる」という考え方で進めています。

 

例えばキッズユニフォームを作る場合、スポンサーは一人でも多くの方に配りたいと考えるはずです。ただ、配る人数を減らせば、一つのノベルティに掛けられる費用が上がるので、よりクオリティの高いものができます。キッズユニフォームでファミリー全体の満足度を高めることで、スポンサーの価値も上がる。そういった形でアプローチしています。

 

佐川:菊地さんが入ったことで、ターゲット層やスタジアムの演出やコンテンツがより明確になったと思います。以前は年に3回くらいタオルを配っていた時もありましたが、夏場に使えるメッシュキャップや、応援用のフラッグなど、ファンが楽しめるノベルティをスポンサーとともに考えて作るようになりました。スポンサー側からの提案だけでなく、こちら側からも提案をすることができています。

 

2019年からはスポンサーの協力のもと、ユニフォームのロゴの色を統一しています。ヴェルディはJ2なので、広告露出の価値だけで見ると、そこまで高くありません。ユニフォームを作ったとしても、デザイン性が伴っていなければ、スポンサーのイメージが悪くなってしまう可能性もあります。スポンサーのロゴの色を統一して、企業と一緒にユニフォームを作っていくという形ができれば、それ自体が話題になると考えていました。

東京ヴェルディ 2020シーズンユニフォーム

 

ーヴェルディにはベンチャー企業のような空気がありますよね。

菊地:まず、社員の平均年齢がかなり若いんですよね。人数がそこまで多くないので、なかなか新しいチャレンジができていなかったですが、チャレンジすることに対してはすごく後押ししてくれる環境です。

 

佐川:私は、2年半でシニアディレクターという立場になりました。結果を出せば、しっかり認めてくれる環境だと思います。昇級の面もそうですが、ヴェルディカレッジを立ち上げる時も、起案から承認までスムーズに決まって、スピード感がありました。組織全体としても成長スピードがとても速いですね。

 

ー中には、やむをえない事情で実現できないこともあるのでは?

菊地:来場者アンケートで最も多いのは、ケータリングカーが少ないというスタジアムグルメに対する不満です。FC東京さんは「青赤パーク」というスペースを設けて、いくつものケータリングカーを出店しています。ヴェルディは、ほんの数台。スタジアムの規定によって、スタジアムのテナントの売上げを守る目的で、観客数に応じてケータリングカーの出店数が決められているので、致し方ない部分はあります。

 

2020年2月からは「pring」というサービスを使って、参加型のファンコミュニティの運用を開始しました。ケータリングカーを増やせない理由など、ご要望に応えられない理由も今後はシェアしていこうと思っています。その上で皆さんからも、『こういった方法もあるのではないか』と別の角度での提案をいただけると嬉しいです。

 

フロントスタッフとして目指すJ1の舞台

ーヴェルディで仕事をする中で、苦労したことを教えてください。

佐川:私たちはスポンサーに対し、一社ごとに企業の発展に貢献できるよう、カスタマイズした提案をしています。このスタンスの正しさを証明したいという想いで、1カ月に60件を超えるアポイントを取りに行ったこともありました。1日に7本の時は、7時、9時、11時...というペースで、いかに多くの業界と接点を持って提案していくか。

 

体力的に辛いと感じることもありましたが、その年だけで27社の新規スポンサーを獲得することができました。成功事例を作るという意味でも、価値のある体験だったと思います。

 

菊地:私はIT企業出身なので、リアルな興行を運営することは未経験でした。キッズパークでは、たくさんの子どもたちに楽しんでもらうために、とにかくコンテンツ数を増やしました。ただ、そのせいで味の素スタジアムの倉庫が、備品で埋まってしまって(笑)。オペレーションの面もしっかりと設計しないと、継続性がなくなってしまいますよね。

 

ー逆に嬉しかったことを教えてください。

菊地:新しいユニフォームをプロモーションしていく中で、他クラブのサポーターからも『かっこいい』『うらやましい』という声をいただきました。競技以外の面でも、サポーターにヴェルディを応援することを誇りに思っていただけるのは嬉しいですね。

東京ヴェルディ 2020シーズンユニフォーム

 

佐川:私たちのスポンサーに、すごく女性の活躍を応援している有料老人ホームの運営会社があります。ヴェルディにはベレーザという女子チームがあるので、一緒に女性が輝く社会を作っていくために、何か協働でできないかとお話させていただきました。

 

そして、ベレーザの選手と、その有料老人ホームで働く新卒1、2年目の従業員による対談が実現しました。対談の中では、従業員の方が「介護業界のイメージを変えていきたい」と語っていました。同じように、ベレーザの選手も女子サッカーを変えていきたいと。お互いに仕事やサッカーへの熱い想いを語り合って、その内容は企業の採用活動にも活かされています。

 

その対談を通して、新しい情報発信の方法が見つかったような気がしたんです。サッカーだけでなく、様々な業界と掛け合わせていくことで、より幅広く情報を発信できる。スポーツをビジネスとして役立てられることが、この仕事をしていて良かったと感じました。

 

ーお二人がヴェルディで成し遂げたい野望をお聞かせください。

菊地:会社の規模が小さいので、何をチャレンジするにしても、仲間の存在が欠かせないと思っています。サポーターやスポンサーはもちろん、外部のパートナーにもクラブの価値やビジョン、現状の課題感を共有することによって、共に価値を共創していくという新しいクラブ運営の形を示していきたいです。

 

個人としては、自分のフットワークの軽さを活かして、新しいチャレンジをどんどんしていって、ヴェルディが持つパイオニア精神を体現し続けること。そして、いつか味の素スタジアムを満員にしたいです。その暁には、ぜひサポーターの皆さまに菊地チャントを歌っていただきたいですね(笑)。

 

佐川:スポンサーセールスをしている身としては、ただスポンサーに投資していただくだけでなく、スポーツが企業に貢献できるものだということを証明していきたいです。様々なチームがチャレンジをしている中で、スポーツ業界に楽しくお金が入ってくるモデルを、私たちが率先して作っていきたいと思っています。

TOKYO VERDY BUSINESS TALK SESSION

 

私は他業種からヴェルディに入ってきましたが、転職で入ってフロントスタッフとして活躍する成功事例になりたいですね。スポーツ業界は、想いを持って働いている方が多い世界だと感じています。そんな業界を志している方のロールモデルになれれば嬉しいですし、今後も新しいチャレンジを続けていきたいです。

 

あとは、やっぱりJ1に行きたいんです。ホームゲームの時は、試合もファンの顔も、仕事上ほぼ見ることができません。だからこそ、2019シーズンはたくさんアウェイに行って、ファンの方々がどういった想いで応援しているのかを肌で感じてきました。皆さんの期待がすごく感じられましたし、いつも支えていただいている方々と必ずJ1に行きたいと思っています。