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セレッソ、攻めのコロナ禍戦略...「なんかせなあかん!」プロジェクト

2020.09.08 / AZrena編集部

 

「なんかせなあかん!」

新型コロナウイルスの影響によって中断されたJリーグ。チケット収入がなくなってしまった現状を打破するために今、各クラブがさまざまな施策を打ち出しています。

中でも、セレッソ大阪は2020年6月以降すでに4つの企画を実施しており、注目を集めています。セレッソ大阪が全社をあげて取り組んだという、「なんかせなあかん!」プロジェクトとは?それぞれの企画への思いを株式会社セレッソ大阪事業部 営業グループ ビジネスプロデュースユニットの赤堀翔平氏、事業部 営業グループ ファンマーケティングユニットの三上万有香氏、事業部 営業グループ ビジネスプロデュースユニットの野口直人氏に聞きました。

(取材日:7月31日 聞き手:竹中玲央奈)

 

30万円の応援バナーが売れた

 ー今回の「なんかせなあかん!」プロジェクトが誕生した経緯を教えてください。

野口:コロナの影響で、クラブ全体の収益がマイナス約10億円の赤字になりました。チケット収入などがなくなる中、その名の通り「なんかせなあかん」と思ったのがきっかけです。

三上:そこで2020年4月下旬、部署を超えて2種類の収益改善チームが結成されました。収益を上げるための施策を考えるチームと、削減を図るための施策を考えるチームです。2チームのメンバーが中心となって、社内で様々な意見を出し合いました。その結果生まれたのが、今回のプロジェクトの企画です。

 

ーどれくらいの案が出たのでしょうか?現在の状況下で、できることも限られていたと思いますが。

三上:150〜160個くらいですね。案自体は全社で募集して、その中から絞っていきました。

 


“ピンクに染まった”座席に感謝の挨拶をするセレッソの選手たち

 

ーまず第一弾が、「長居をピンクに染めよう〜桜開花宣言」でした。

野口:1,000円のパネルメッセージコース、5,000円の座席Tシャツコース、30万円の応援バナーコースを用意しました。

 

ー30万円とは、すごい金額ですね。

野口:そうなんです。われわれとしても、かなり思い切った価格設定でした。でも、もともと企画の目的が収益を改善することだったので、しっかり単価が高いコースも作ろう、と。

もちろんわれわれも、自信を持って30万円といえる内容を準備していました。選手の寄せ書きフラッグ、スペシャルサンクスサポーターとしてホームページへのお名前の記載、スペシャルチケット型カードの贈呈など。ですがかなり早いペースで3、4個売れたので、正直びっくりしましたね。最終的には、30万円の応援バナーが10個売れました。

 

ー第一弾をやり終えて、サポーターの方々の反応はいかがだったのでしょうか?

野口:とても良い反応をいただくことができました。ホームページなどでも森島社長自らトップに出てくれて。

赤堀:クラブが「面白いことをしようとしている」ことが、まず伝わったと思います。売れる初速もかなり早かったので、待ってくださっているファンやサポーターの方々の存在に改めて気づかされました。

 

 デジタル活用への挑戦

 ー第二弾、第三弾が、ギフティング企画でした。

赤堀:これは、DAZNで過去の試合のアーカイブ映像を観戦しながら、当時出場していた選手たちのライブ配信をお楽しみいただくといったものです。2010年のJ1第12節vsヴィッセル神戸戦、2017年ルヴァンカップ決勝のvs川崎フロンターレ戦の合計2回実施しました。

 

ーライブ配信のパートナーとして、エンゲート株式会社さんを選んだ理由は何だったのでしょうか?

赤堀:エンゲートさんの場合、お金そのものを投じるという“ギフティング感”がないんです。スタンプ感覚でギフトを送ることができるため、親しみやすいのではないかと考えました。

ただやってみて、課題もたくさん見えました。いずれにせよ、DAZNを視聴しながらもうひとつのデバイスでライブ配信を見ることになるので、かなり手間がかかる印象でした。また、DAZNの映像には人それぞれ時差があって、試合の映像とライブ配信の映像が連動しないこともありました。こういったギフティングは、リアルタイムだからこその価値があると思うので、今後改善していかなければなりません。

 

“セレ男”も「なんかせなあかん」

ー第四弾では、ローランドさんをゲストに迎えたオンライントークショー「THE ROLAND SHOW〜セレッソには“俺”がいる」でした。ローランドさんと企画を実現することになった経緯を教えてください。

赤堀:元はといえば、2019年のレディースデーの企画を考える際に、誰かアイコンとなるような人物はいないかと考えたことが発端でした。

三上:ローランドさんは帝京高校サッカー部出身で、かつてプロサッカー選手を目指していた方。今もサッカーが好きだと聞いて、「一緒に何かできたら面白いのでは」と思い、オファーをさせていただきました。

2020年2月には、セレッソ大阪「公認セレ男(セレオ)」としてアンバサダー契約を結びました。今回の企画も、アンバサダー契約の一環としての活動です。

コロナの影響もあって、今回実現が難しいのではないかという話にもなりましたが、ローランドさんからぜひやりたいと言っていただけて。わざわざ大阪にまでお越しいただいて、リアルでの対談が実現しました。

参加した西川潤選手、瀬古歩夢選手は、ローランドさんのご指名だったんです。若手の有望な選手と話したい、と。このチョイスからしても、サッカーに詳しい方だというのがわかりますよね。

今回、企画が決まってから実施まで2週間と時間があまりなく、かつ部署を超えて運営し、芸能人まで呼ぶ、ということは私自身初めてでした。これまでとは異なる経験で、とてもおもしろかったです。入社して間もない時期だったので、社内で多くの人とコミュニケーションをとるきっかけにもなりました。

 

ーやはり反響は大きかったのでしょうか?

三上:大きいです。セレッソ大阪にとって、キーパーソンだと感じています。インスタグラムのストーリーズで取り上げられることも多くなり、クラブの新たな露出でした。サッカークラブが彼のような著名人のストーリーズで取り上げられるのは、滅多にないことかなと。Youtubeにも動画を上げていただけました。

「サポーター第一」の気持ちを胸に

ーコロナ禍で、今まで経験したことがない状況になっていることと思います。組織としては、どのような影響があったのでしょうか?

赤堀:部署を横断して社内でひとつの目標達成に向けて取り組んだことは、社員がコミュニケーションをとるきっかけにもなりましたし、とても良い経験になったと感じています。サポーターの方々に喜んでいただくために、会社が一体となれたと思います。

選手とクラブの関わりも深くなりました。試合ができない状況下で、選手らも何かしたいという気持ちがあったので、とてもやりやすかったです。現場とフロントの関係がより深くなったのではないかと。

 

ーむしろポジティブな影響もあったんですね。スポーツのない日々を経験して、スポーツの持つ価値や存在意義について、改めて感じることもあったのではないでしょうか?

赤堀:人と直接接することが少なくなった今だからこそ、リアルで集まることの価値を再確認できた気がします。徐々に観客を入れて試合が再開していますが、サポーターの皆さんの楽しんでいる様子を見ると、リアルスポーツだから与えられる感動を改めて感じますね。

三上:セレッソ大阪のサポーターの方々って、すごく温かいんです。ファンやサポーターの方々がいてこそ成り立つのがクラブなので、このような状況だからこそ、しっかりと楽しんでいただける企画をこれからも作っていきたいです。

野口:将来セレッソに入りたいと思っている子供たちや支えてくださっている方々を常に念頭において、皆さんの思いに応えられるようできることをやっていくので、今後もセレッソ大阪にぜひご注目いただきたいです。