【前編】プロとして、周囲の模範となる存在に。日本トップのディスクゴルファーが語る仕事の流儀。

2015.01.08 森 大樹

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今回はディスクゴルフ選手の菊地哲也さんにお話を伺いました。ディスクゴルフとはゴルフコースを模したコースで、フライングディスクを専用ゴールにいかに少ない投数で入れられるかを競う競技です。菊地選手は選手としてご活躍される傍ら、Tokyo Stylish Sportsという団体を立ち上げ、様々な形で普及活動をされています。

 

ディスクゴルフとの出会い

 

まず初めにスポーツの経歴を教えてください。

小学生の頃からいろいろな競技をやっていました。サッカー、水泳もやりましたが、メインでやっていたのはずっと野球です。小学校高学年から大学を出るまでずっとやっていました。

 

そこからディスクゴルフに出会うまで経緯を教えてください。

部活はその日を境に終わってしまうじゃないですか。自分の人生も部活が中心になるわけですが、大学の部活の最後の大会が終わった次の日に朝起きた時、何にもなくなってしまったんです。ずっとやってきたことがなくなって抜け殻のようになった感覚になりました。おそらく部活ではやり切って燃え尽きてしまう人がほとんどだと思うのですが、僕は全然燃え尽きていなくて、ただ自分がどうしていけばいいのか分からなかったんです。その時に何をしたいのかを考えました。気付いたのは何かを極めて、一番になりたい、日本一になりたいのだということでした。今までやってきた野球のことはそこで忘れて次に向かうことができました。次にやるスポーツを探す上でいくつか条件を付けました。まず就職が決まっていたので、同じモチベーションの人が集まらないといけない団体スポーツは難しいと考えました。あとは子供の頃からずっとやっている人がいる競技も厳しいだろうと判断しました。そして世界まで続いている競技であること。他にもルールが明確であること、何となくすごさが分かること、野球をやっていたので物を投げる競技であることなどの条件付けをしていきました。

 

条件付けをしていくことで競技を絞っていったわけですね。

そうしてディスクゴルフに出会いました。日暮里にフライングディスクのプロショップがあることを知ったので、すぐに行って「日本一になりたいので、何か1枚いいディスクをください。」と訪ねていきました。

 

その行動力がすごいですね。初めから日本一になりたいと訪ねて行く人もなかなかいないと思います。

月一回行われる初心者講習会があったので、そこに行くと遠くの方ですごく上手に投げている人がいたんです。当時の日本チャンピオンの人でした。その人に付いて回ることにしたのですが、何か聞いても適当にあしらわれてしまうので、見てやっていることを盗むようにして始めは勉強したんです。うまくなって一番になることを目的に始めたので、参考になる人の存在は大きいと感じていました。野球と違ってマニュアル化されているわけではないので、面倒臭いと思われるとは分かっていましたが、どんどん質問もしていきました。

 

そういった選手の方はどこかに所属する形なのでしょうか。

日本ディスクゴルフ協会に登録・所属して、年間のツアーを回ることになります。ツアーでの成績がいいと世界選手権など、国際大会の日本代表に選ばれます。普通のゴルフと同じですね。世界選手権やヨーロッパの方の大会に出ることができるようになります。

 

-ディスクゴルフの競技人口はどのくらいいるのでしょうか。

協会に登録してツアーを回っているのは400〜500人くらいです。ただどの競技もそうだと思うのですが、地元のコースで楽しく投げている人もいるので本当はもっと多くいます。コースも意外と多くあって、ツアーで回るのは20〜25戦です。プロ部門とアマチュア部門に分かれていて、僕はプロ・オープン部門なので、最上位のクラスにいます。出場した試合のうち上位8試合分のポイントでランキングを争います。
 

-プロの中でもクラスが分かれているのですか。

この競技のいいところは全年齢誰でもできるところです。細かく年齢で部門が分かれています。アンダー18、年齢制限のないオープン部門、40歳以上のマスター部門、50歳以上のグランドマスター部門、60歳以上のシニア部門があり、プロとアマチュア両方に設けられています。自分のレベルに合わせたカテゴリで出られるのはいいと思います。極めていけば奥が深いですが、ディスクが1枚あればできるという手軽さから門戸は広い競技です。

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競技のために人生を変えてきた

 

-ディスクゴルフを実際に都内近郊でやるとしたらどこでできますか。

東京では有楽町線の辰巳駅の近くにある、辰巳の森海浜公園にファミリーコースが9ホール、昭和記念公園には18ホール、南大沢の上柚木公園に体験コースが4ホールあります。私がホームにしているのは埼玉の越谷の方にある、しらこばと水上公園です。

 

-ディスクゴルフの魅力を教えてください。

やはり手軽なところだと思います。普通のゴルフはクラブ1本では回れないですし、プレイフィーも高くてお金がかかります。でもディスクゴルフと普通のゴルフはルールがほとんど同じなので、メンタリティ的な部分も近いと思いますし、道具もディスク1枚なら1500〜2000円くらいで買うことができます。我々みたいにツアーを回るようになると素材や飛び方、飛距離の違う150〜200種類あるディスクから選んで、ディスクバッグというものに20枚くらい入れてラウンドします。普通のゴルフと同じようにドライバー、アプローチ、パターそれぞれの役割を持ったディスクがあり、コースの状況や風に合わせての使い分けをしていくことになるのですが、そうなるとどんどん奥が深くなっていきます。そこが魅力だと思います。

 

ドライバーはどのくらい飛ぶのでしょうか。

飛ぶ人になると、ドライバー用のディスクは150m近く飛びます。投げたディスクが落ちたところにマーカーと呼ばれる小型のディスクでマークし、それを基準に次を投げていくという形で進めます。

 

大会ではゴルフと同じように賞金が出たりするのでしょうか。

アメリカでは2万人を超える会員がいて、40人程度の選手たちが、いわゆるツアープロと言う形で生計を立てています。向こうにはコースもたくさんあって盛んです。一方日本は賞金が一応出ますが、ほとんどないに等しいです。だから賞金ランキングではなく、ツアーはポイントランキング制なんです。

 

競技をする上で苦労したことを教えてください。

基本的にポジティブなので、苦労とは考えないことが多いかもしれません。でも強いて挙げるとすれば仕事との両立です。どうやって練習時間をつくるかを常に考えています。競技自体での苦労はあまりないです。

 

どういった練習をする時間が多いですか。

私はトレーニングも実践的な練習もどちらもバランスよくやります。試合に向けて練習メニューを変えたりします。ずっとラウンドしているだけではうまくならなくて、試合のない時期は遠投を増やしてみたり、パットの練習を多くしてみたり、パーツごとの練習を多くやります。一方仲間が集まった時にはラウンドをします。コースに行ける機会は貴重なので基本的に投げられる時間、環境がある時にはそちらを優先させます。近所の公園でやることもあります。練習のために家も引っ越しました。河川敷を自転車で走っていくつか投げられそうな場所を探して、そこから近い物件に引っ越したんです。競技のために人生を変えてきたというのはあります。

 

体のどこの部分が大切か意識されているところはありますか。

やはり体幹です。ずっと野球のピッチャーをやっていたので、通じるところがあります。それは末端を細くして、体に近い体幹のところから太くしていくことです。でんでん太鼓のような原理で、外側を太くしてしまうとなかなかうまく回転軸が動いてこなくなってしまいます。体幹の腹筋や背筋、肩甲骨や股関節まわりは大切だと感じています。大学時代の勉強がここで活きていると思います。

 

【後編】へ続く