【前編】「引退なんてない」。現役アスリート兼スポーツトレーナーが訴える、セカンドキャリアの意義。

2014.06.22 AZrena編集部

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子どものかけっこ教室から大人・アスリートまでトレーニング指導を行う林田章紀さんに本日はお話をお伺いします。現役の陸上選手でありながらスポーツトレーナーとしても活動中の林田章紀さん。「King of Athletes」を決める戦い十種競技(デカスロン)の魅力を中心にスポーツに関する考え方、セカンドキャリアについての考え方等をお聞きしました。十種競技出身と言えば、最近は武井壮さんが有名です。

 

野球と八種競技の共通点

 

ー スポーツ経歴を教えてください。

小学校の頃は陸上のクラブに少し入っていました。でも、さぼりがちでした(笑)。だって、陸上は走るだけじゃないですか、自分にはつまらなくて。真面目にはやっていなかったように思います。中学校から野球をやりたかったのでそのために少し走って体力を付けていた感じです。

 

そして中学の3年間は野球をやりました。けれどやってみて違うな、と(笑)。自分が頑張って、例えば、3打数3安打打ってもチームは負けることもあるし上に行きたくてもいけないジレンマを感じました。それで個人競技である陸上にチャレンジしてみました。自らの実力がそのまま順位に繋がるような種目をやってみたかったんですよね。

 

ー なるほど。私は野球をしていのですが、逆でしたね。自分がだめでも勝てる…。

逆ですね(笑)

 

ー ちなみに、陸上は何の種目をされていたのですか?

僕は最初ハードルをやっていたんですよ。為末大さんがちょうど活躍されているときで、ハードルをやったらもてるんじゃないかと。かっこいいし。でもそれが、高1の時、勝手に先生にエントリーされて八種競技をやることになりました。野球やっていたのを陸上の先生が知っていたんです。

(※八種競技…二日間で合計八種の競技を行い、その記録を得点に換算し、合計得点で競う陸上競技。100m、走幅跳、砲丸投(6kg)、400m 110mH、やり投、走高跳、1500m)

 

ー 野球と八種競技って共通点があるのですか。

八種競技の中に投げるという動作があるんですよ。そういう適正があるのではないか?ということでエントリーしたみたいです。で、出場したらそれなりにできてしまった。そこからですね。

 

ー 八種競技にあと2つ足すと十種競技になりますが、十種競技にあって八種競技に無いのは何と何ですか。

棒高跳びと円盤投げがないです。

 

ー 八種競技をやっている人と、例えば走ることがとても速いという1、2種をやられている人では、同じ種目において成績がよいのはどちらという傾向等あるのですか。

それは専門でやっている人の方が強いですよ、もちろん。けれど野球などでキャッチャーでも足が速い人がいるように、競技人口自体は少ないですが、トップの選手はレベルが高いです。陸上の種目すべてにおいてレベルがトップであることが多いです。それでないとトップにはいけないので。

 

ー トップの選手というのは1種目限定でやったとき、国内上位にくるような成績を出せますか。

出せますね。むしろトップ選手はそれがないと十種競技でもトップにはなれない。全種目ぼちぼちではトップ選手にはなれないです。

 

ー 人間の超人を決めるならもっと注目されてもいいように思いますよね。(十種競技は「『King of Athletes』を決める戦い」とも言われています)

そうですね。海外では混成競技をやってからいろんな種目に転向するそうです。なぜかというと、その人間の適正をしっかり見て、これに向いていると勧められたりするんですね。だから初めにやった種目をそのままやっている選手はある意味すごいこと。日本はその逆です。田舎の方だとスポーツの選択肢がないことだってあります。

 

ー 1種類しかやれないこともあるんですよね。

これやってみてだめだったから、これもこれもやってみた、そしたら意外とできた、ということがある。入口が違うんですよね。そういった考え方自体が、海外と日本ではあると思います。ヨーロッパなどは混成競技などオールマイティに出来る人がすごい、という考え方になります。十種競技だけの大会があったりもするくらいですから。

十種競技の世界

 

ー 林田さんが思う十種競技の魅力を教えてください。

スポーツは好きな種目だけやっていくという考え方もあるけれど、十種競技は苦手なものもやならいといけないんです。最近は苦手と言わないようにしているので、「苦手」ではなく「点数が低い種目」と言いましょう(笑)。その点数が低い種目を自分なりに克服していくところがひとつです。逆に言えば、どんどん点数が伸びていく種目ということでもありますからね。その辺が楽しいです。

あとは、例えば陸上の100mの決勝で終わった後に肩組んで写真を撮るなんて光景はまず目にしないですよね。でも十種の場合はそれがあるんです。試合していても、例えば高跳びで相手が自分より高くとんだ、なにくそ!…という雰囲気ではないですね。おー!おめでとう、ベストやん!みたいな感じで周りがいます。まぁ、本意かわからないですけれど(笑)

1種目では勝負が決まらない。2日間で10種目を戦うのでお互いを称えあうというか、紳士な競技というか、そこらへんがいいところです。まとめると、自分なりの点数の取り方を考えられること、お互いを称えあえるというところが魅力です。

 

ー なるほど。でも、十種目全てを覚えるのは大変だったのではないですか?

確かにそうですね。陸上競技は、ひとつひとつの種目の専門家がいます。単純に同じようにトレーニングしたら十種はその人たちの10倍時間がかかるわけです。でも競技人生が10倍あるわけではないので1個1個やったらだめなんです。しかも1個1個やると、例えば砲丸投げで遠くに飛ばそうとするのと、高跳びを高く跳ぼうとするのって、どちらも突き詰めようとすると逆行するんですよ、鍛え方が。

なのでベースとしては走れて、根本的な身体の強さ(フィジカル)を強くするというのがベースになると思います。走れる身体はどちらにも適した身体つきなんです。その中で自分の体を思った通り扱えるというスキルを体操とか鉄棒とか、それこそ球技をしながら身体を鍛えていく。この考え方は私が学生時代に教わっていた武井壮さんの理論をベースに考えています。

同じ種目をずっと練習して克服するということではなく、身体を使うことが上手くなって、やりたい動きができるスキルが上がって技術が上達していくような感じですかね。

 

ー こうやってお聞きしているといろいろな練習ができるから他の種目より楽しいというのはありますか。

はい、すごく楽しいです。ぼくには絶対、100mや200m、400mのみというのは無理です。それこそ野球のように守備、バッティング、走るがあるような感覚でやっています。

 

ー 確かに野球は動作がたくさんありますが、100m走は走るしかないですもんね。

いやー、無理でしたね。それだけやれって言われたら(笑)

 

ー もともとはハードルというお話だったと思いますが、その時はどう感じていましたか。

最初はハードルで行きたかったですね。8種はマイナーな競技なので。

 

ー 競技を知ってもらえたら、さらには実際にやってもらえたら注目のされ方が違うんですけどね。

陸上種目男女合わせて47種目あるんですが、そのうちのだいたいは走る種目なんです。そう言われても、一般の人は知らないじゃないですか。でも実際砲丸投げの選手って投てきしかできないんです。高跳びの選手は、跳躍の「幅」、「三段」くらいで同じ跳躍の「棒高」はできないことが多い、他はやっぱりできないんですね。

十種競技はだいたい全部できる。だから本物の陸上選手だなと思いますよ。と、いつも言うんですが(笑)

 

ー 十種をやっている人に鍛え方とか、そこの筋肉だけ使っていると良くない、とか教わりたくなりますね。

そうですね。特に中高生くらいまでは専門の練習をどんどんやるというよりも、総合的な部分を見ていったり、適正を探しながらのトレーニングが良いと思います。

 

ー 本当にそうだと思います。身体自体を伸ばしてあげるというか。

はい、できることを増やしておくというのが、スポーツというのは同じことを反復していくと、人間それしかできなくなると思っています。

しかも、日本人は反復が大好きですし。応用力がなくなってしまうんです。やっぱりそういうところを変えてあげないと、人間的な伸びしろがなくなっちゃうんじゃないかと思います。アメリカでは20歳くらいから陸上を始める人もいるんですよ。

アメフトやバスケをやっていたりして、足が速いから陸上始めてオリンピック出て、なんていう人がいっぱいいるんです。でも日本てそういう人いないじゃないですか。

 

ー 小さいころからやっていればいいというものでもないんですよね。

そうですね。日本と海外では部活動のレベルも違いますよね。海外だと部活動できる時間が決まっている、とか、勉強できないと部活動はさせない、とか。

 

ー 海外は文武両道ですね。

セカンドキャリアの問題もそういうところだと思うんです。そこを根本的に変えないとキャリアもなにもないですよ。

選手を教えるということで一つ結果を出したい

 

ー 今はコーチをされていますが、その前に企業に就職しよう、という思いは無かったのですか。

実は昨年までサプリメントのベンチャー企業で働いていたんですよ。それをしながら教える仕事もしていました。サプリメントの講習会をしたり、そのつながりでまた教えたり。もともとは教える仕事をやっていきたいと思っていたので。

 

ー 講師もやられているのですか。

はい、大学でも指導しています。講義をすることもあります。

 

ー 教えるということをメインでやっていきたい思いが強いのですね。

そういうわけでもないです。将来は自分がスポーツを楽しんでいきたいという思いがあります。教えるのもだいたい選手と一緒にトレーニングをして教えています。これが今できる一番のコーチングだと思っています。

いつか自分が楽しめる場を作っていきたいなと考えていますよ。ひとまず今は、選手を教えるということで一つ結果を出したいと思っています。結局スポーツは名前が無いと何もできない風潮がありますからね。もちろん名前だけでもできないので、プラスして自分がやれることを増やしつつですね。

 

ー 八種、そして十種競技をしていて苦労したことはありますか。

苦労したことですか…、これは良かったことでもあるのですが、十種競技というものは大学以降コーチがいなかったので、どうしたらいいかよくわからなかったです。

点数の低い種目を克服するところもそうですね。あと、一番は観客に見てもらえないところですね。日の目を浴びないというか脚光浴びないというか。もちろん、仲がいい人応援してくれるのですが、大体は「十種競技ってなに?」というところから始まりますからね。

 

【後編】に続く