海外でプレー経験を持つ2人の日本人が、日本サッカーに思うこと

2016.02.26 森 大樹

豊嶋邑作、丸山龍也

 

二人の全く別々だったサッカー人生はFC COJBというクラブで交わり、そこからそれぞれ別の国でプロ選手になるという目標を実現させることとなった。

前編に引き続き後編では、海外生活にまつわるエピソード、これから海外でのプレーを考えている選手へのメッセージ、サッカー観について、そして今後の目標について話を伺った。

 

【前編はこちら】

 

海外での挑戦には、相当な覚悟が必要

 

-海外にいてホームシックになったことはありますか?

丸山:ない!もちろん日本の方がいいな、と思うことはありますけど。

豊嶋:俺もない。脳を切り替えるから日本の方がいいと思ったこともないな。帰る直前になって、日本のことを考え始めればそうなるけど、向こうにいる間は全くない。

丸山:家帰っても一人だし、リトアニアの国はみんな冷たいし…プレーがうまくいかない時期に病むことはあったけどね。

豊嶋:でも俺、今行ったらホームシックになるかも。Jリーグを知ってしまったから、うまく頭を切り替えられないかもしれない。

 

-これから初めて海外に挑戦しようと思っている選手に向けて伝えたいことがあればお願いします。

豊嶋:今の俺なら言える限りの厳しいことを言って、その選手を突き落とします。結構今もそういう選手から相談されることが多いのですが、俺の言葉でサッカー辞めちゃうかもしれないくらいのことを言うようにしています。
「友達を無くすし、人を信じられなくなるし、君の今持っているもの全てを失ってでもサッカーをやる覚悟はある?」と問います。それでも海外に行きたい!と思えるやつでないとできませんよ。
たとえどんなに上手い選手であっても絶対初めから海外を薦めるようなことは言いません。海外でやっていく覚悟を僕が試して、本当にそれがあるのであれば成功するように手は差し伸べたいとは思いますけど。

丸山:結局海外だからどうこうという話ではないと思うんですよね。

豊嶋:海外に行けば成功できるんじゃないか、と変に自信を持ったスタンスで、勘違いして行きたがる選手が本当に多いです。サッカーを続けたくてもできる場所がないから、海外でもう一度自分を磨き直したい!という気持ちを持っている人はほぼいません。正直そんな選手がその先どうなろうと僕の知ったことではないですが、甘い考えで海外に行かせるわけにはいかないですし、紹介する以上はちゃんとした人を送りたいですから。

丸山:基本的に海外に行くことを薦める人が多いんですよね。仲介して選手をチームに紹介する人達が儲かるから。だからこういう意見を言ってくれる人は必要だと思います。他の海外でプレーした選手はポジティブなので、ユーモアを混じえて苦労話をしますから、実際の大変さが伝わりにくかったりもします。でも向こうに行けば、誰でも必ずどこかのタイミングで海外の厳しさにぶつかる時が来ます。

豊嶋:ただ、そういう風に泥臭い経験をしておいた方が人生としてはいいでしょうね。自分はもう一回人生をやり直せたとしても同じシチュエーションであれば同じ選択をしてきたと思います。

 

海外でプレーする2人が、日本のサッカーに思うこと

 

-以前、豊嶋選手がFIFAベストイレブンの投票の権利を得た時は2人でどの選手を選ぶか話し合っていますね。

当時の丸山選手のブログ記事

豊嶋:やたらこいつ、ディ・マリア(パリ・サンジェルマン)を推してたんだよな。結果的に僕らが選んだ中から5人くらいは本当にベストイレブンに選出されたはずです。→実際の選出選手(サッカーキング記事)

丸山:当時ディ・マリアにハマっていて、練習もそれっぽくやっていたんです(笑)そうやって研究すればするほどすごさが分かってくるものなんですよね。

豊嶋:今ならFWはイブラヒモビッチ(パリ・サンジェルマン)じゃなくて、ドウグラス・コスタ(バイエルン・ミュンヘン)だな。今年なら怪我してるからロッベン(バイエルン・ミュンヘン)も外すかも。

丸山:あとマスチェラーノ(バルセロナ)は今来てますよね!

豊嶋:マルは選ぶ選手が渋いよね。自分に似た選手ではなくて、あくまでサッカー選手としていい人を選んでくる感じ。俺は自分と同じようにどれだけドリブルを極めているか、という観点でしか見ていない。

丸山:王道の選手でなくても強いチームを作れるということを示したいというのはあるでしょうね。そうでないと「ここに自分が入っていない=自分がプロではやれない」ということに繋がりそうじゃないですか(笑)

 

豊嶋邑作丸山龍也

 

-日本人選手で注目している人はいますか?

豊嶋:柏レイソルのGK中村航輔(選手)。レイソルユースの後輩ですが、今までで唯一、対峙した時にシュートがゴールに入る気がしなかったキーパーです。怪我が多くてなかなか陽の目を浴びる機会がなかったですが、今年ようやくという感じです。あとはサンフレッチェ広島のMF柏好文選手。ボールを持ったらとにかく仕掛ける姿勢がいいです。

丸山:小川航基選手(桐光学園3年・ジュビロ磐田内定)は入れたいですね。親が指導をしていたチームに所属していた、直の後輩なんです。直接的に仲がいいわけではないですが、成長を見てきて今では今大会の高校サッカーナンバー1ストライカーなんて呼ばれています。結果的に今回あれだけ(※)しんどい思いをしたわけですから、今後どうなっていくのか気になります。あとは本田(圭祐)選手ですね。最近はホルンのオーナーになったりして、ビジネスの話も多くなっていますが、僕らが知らないもう一歩先を見ているような気がします。

※第94回高校サッカー選手権大会3回戦、PK戦にもつれ込んだ際、小川は5人目のキッカーを務めたが、これを外して桐光学園は敗退している。

 

-日本のサッカーの問題点はどのようなところにあると思いますか?

豊嶋:スペシャリストが足りない!野球では役割分担があるじゃないですか。中には鈴木尚広選手(巨人)のように自分の得意な部分を磨き切っている選手もいます。それと同様にサッカーもこのポジションや役割をやらせたら敵う人はいない、というような選手がもっと出てきてほしいです。

丸山:僕みたいな人間が注目されていること自体が問題だと思いますね。こんなやつ、ブラジルに行ったら山ほどいるわけですから。だからこういう選手がもっと出てきて、僕が霞んで見えなくなるようになれば、その頃には日本も強くなっているんじゃないですか。
あとはバラエティ番組でW杯や五輪に出ているスポーツ選手がよくいじられたりしていますよね。でもちょっとやり過ぎな感じがして、リスペクトに欠けていると思うんです。五輪でメダルを獲っているような選手はちゃんとした扱いを受けて、自分みたいなタイプの選手が出て、いじられたらいいと思います。国としてスポーツで実績ある人をもっとリスペクトする土台を作っていくべきですね。

 

CLとW杯、ともに世界を目指して戦う2人の未来

 

-今後の目標を教えてください。

豊嶋:まずはJ1に行ってプレーすることです。2018年のW杯では27歳になっていますから、その選手選考時までには少なくともJ1でやっていないといけません。あとは成るようになるという感じですね。僕の場合、今はどこを目指すにしてもやるべきことが変わらないですから。

丸山:目標はCLに出ることですが、僕も近いところはあって、そこに向けてやるべきことは何かを考えている、という感じではないです。それを考え始めるとだんだんしんどくなってきて、結果的にマイナスなんじゃないかと。どうせどこへ行ってもやるべきことはありますしね。
今年は他人と比較しないことを目指しています。今までは意図的に他の人が進んでいる道とは方を選ぶようにしてきたんです。でも今年は他人に何を言われても自分のやりたいことをやる、ということを目標にしようと思っています。

 

-その他、お互いに聞きたいことはありますか?

豊嶋:マルはいつまでサッカーやりたい?

丸山:30代中盤にまでなってやっていたいとは思わない。絶対サッカーより楽しいことあるもん(笑)でも観るのも含め、サッカー自体は楽しいですし、好きですよ。いろいろな楽しみ方があると思いますが、自分は割とどれでも楽しめます。

豊嶋:それ、俺はありえないんだよな。サッカーの試合を観始めたら前半開始10分で寝られる自信がある(笑)野球は9回まで観ていられるけど。そもそも俺はサッカーが好きでやっているわけではないからな。これが一番自分を成長させてくれるものだから続けているだけで、他にそれが見つかったら、明日にでもサッカー辞めるよ。

丸山:ところで最近おしゃれですよね(笑)海外にいた時と全然違います。今まで本気を出してなかったんですか?

 

-豊嶋選手のファッションセンスのことは以前単独インタビューをした際にも話してましたね(笑)

豊嶋:それはJリーグに入ったから。盛岡駅を歩いていれば声をかけられますし、ブログの影響だって海外にいた時よりもさらに直に来ますから。発信の内容も以前よりさらに気を付けるようになりました。だから当然服装も下手な格好では出歩けないということになります。

丸山:僕も岩手にいたことがありますが、岩手はどうですか?

豊嶋:地元である茨城とはまた違った県民性を持っているので驚くこともありましたし、冬は本当に寒いですが、心は温かい方ばかりです。

 

豊嶋邑作豊嶋選手が現在所属するグルージャ盛岡

 

丸山龍也実は丸山選手はアンソメット岩手・八幡平時代に岩手でプレーをしており、グルージャ盛岡とも対戦をしている。写真は天皇杯岩手県予選決勝vsグルージャ盛岡で交代出場直後にレッドカードを出される丸山選手(黄色・3番)

 

 

-日本と海外でサポーターの違いはありますか?

丸山:結果に対してのリアクションの違いはありますね。いい時、悪い時ではっきりしています。

豊嶋:俺なんか襲撃予告されたことある。モンテネグロでプレーしていた時、ロブチェンからベラネというチームに期限付き移籍をしていました。それでその年優勝していたロブチェンとたまたま試合をやる機会があったんです。当然知り合いも多く、ロブチェンの選手やサポーターは暖かく迎えてくれました。しかし運悪く、試合中のチャンスでシュートを外してしまったんです。その後、ロッカールームに行ったら、チームメイトから今日は家の鍵をしっかり締めるように忠告されました。どうやら少し前にベラミサポーターが乱入してきて、「トヨシマの家を教えろ!」と言われたそうです。

 

-それでは最後に今日の感想をお願いします。

丸山:楽しかったです!本当に毎回、邑作と話すのは勉強になります。対談形式というのも斬新でしたね!他の人の対談も面白そうなので、どんどんやってください。

豊嶋
改めてこうやって話すこともなかなかないので、今日は楽しみにしていました。マルと自分は似ているところもありますけど、全然違う視点も多く持っているので、やはり話していて面白いです。これからも何かあればマルに聞いてみようと思います。

 

【前編はこちら】