豊嶋邑作と丸山龍也。異国の地でプロサッカー選手になった二人

2016.02.25 森 大樹

豊嶋邑作、丸山龍也

 

今回は少し変わった国でのプレー経験を持つサッカー選手二人を迎えて、対談を行った。

豊嶋邑作選手は年代トップクラスの実力を持ち、アンダー世代の日本代表に選出された他、柏レイソルユースでも10番を背負ったが、トップチームへの昇格は叶わず。高校卒業後は(※)FC.COJB.を経て、海外に渡り、ベルギー2部・CSヴィゼへ加入。以降モルドバ、ラトビア、モンテネグロの各国1部リーグのチームでプレーをし、2015年途中からJ3・グルージャ盛岡に移籍した。(→豊嶋選手単独インタビュー

丸山龍也選手はFC.COJB.ジュニアユース、トップチームを経て、当時岩手県からJリーグ参入を目指していたアンソメット岩手・八幡平に加入。その後は度重なる怪我を乗り越え、2014年にスリランカ・ニューヤングスFCで初めてプロ契約を勝ち取る。2015年からは欧州に活躍の場所を求め、現在リトアニア2部のタウラス・タウラゲでプレーしている。(→丸山選手単独インタビュー

2人はプロになる前に所属していたクラブ・FC.COJB時代のチームメイトであり、海外での過酷な環境でプレーした経験を持つこと、選手として情報や想いを積極的に発信していること、など共通点も多く、親交も深い。

※FC.COJB:ブラジルでプロ経験のある今野英一氏が立ち上げたサッカークラブ。スクール、チーム運営の他、サッカー留学等も行っている。

 

過酷なグラウンド上で出会った2人

 

-まず、お二人がどのようにして出会ったのか教えてください。

豊嶋:柏レイソルユース時代、トップチームに上がれずにコーチからは大学に行けと言われていましたが、僕は他のJクラブに行きたいと思っていました。しかし、僕はどうしても高卒でプロになりたかったんです。
ちょうどその頃に某Jクラブがセレクションをやっていたので、誰にも相談せずに受けに行きました。でも、場所が分からなかったんです。あるのは河川敷のグラウンドだけ。「まさかここがプロの練習場所ではあるまい…」と思って、迷っていたら、セレクションに使いそうな道具を積んだ車が通ったので、付いていくことにしました。すると先ほどの河川敷のグラウンドに着きました。やはりそこがそのJクラブの練習場だったんです。
そして道具を積んだ車に乗っていたのが、当時マル(丸山龍也選手)が所属していたCOJBのコーチの1人でした。ですが、いいところまでセレクションが進んだところで、当時のそのクラブの強化部長から高卒選手の給与は5万円であることを明かされました。その上で『大学に行けば君はいいチームに行ける』とも話してくれました。それで自分も大学に行くつもりで家に帰ってきたら、COJBの人から連絡が入っていたんです。そのJクラブのセレクションを見ていて、一緒にいた母に声をかけたようです。
そこからCOJBの練習に行くことになり、初めてマルと出会うことになります。初日はすごい雨が降っていて、練習場所はジャリでぐちゃぐちゃのグラウンドでした。「そんなところでサッカーするの!?」って感じでしたよ。

丸山:河川敷のグラウンドでびっくりするくらいですからね。その日はグラウンドの表面に水が溜まりすぎて、場所によっては足首の上くらいまで浸かってしまうところがありました。

豊嶋:「絶対ここでサッカーをやるはずがない!」としばらくウロウロしていたのですが、遠くから名前を呼ばれて、すべてを悟りました(笑)もうその日でチーム辞めようと思いましたよ(笑)大学もいくつか決まっていましたし。

丸山:会って初めて「茨田選手(茨田陽生選手:柏レイソルユース→柏レイソル)と一緒にやっていたんですか?」なんて話しかけたら、僕の方が年下だと分かっていたはずなのに「茨田のこと、知っているんですね。いい選手ですよ。」と敬語で返してくれたんです。そこでいい人だな、と感じました。

豊嶋:そうだっけ?全然覚えてない!マルはとにかくグイグイ来る選手で、ライダーキックでディフェンスしに来た時は衝撃的でしたよ。でもマルからいろいろ聞かれることで一回頭を整理する機会になりましたし、結構核心を突く質問をしてくるので、自分と向き合うきっかけにもなりました。話していくうちに一番高め合える存在だと気付いていきましたね。

丸山:邑作は質問するとちゃんと返してくれるんです。うまい人はぼんやりした回答しかしてくれないこともありますし、天才型の選手は本当にそうやっているので、仕方ないんですよね。邑作も本来はそういうタイプの選手のはずなんですけど、教えるのが上手いです。

 

 

目標と行動を伴わせることの重要性

 

-それでは、お互いが考える良い部分をそれぞれ、教えてください。

丸山:相手と同じ目線で接してくれるところです。掘っていくとブラックなところもありますけど(笑)あとはめっちゃ努力します。コツコツ努力するタイプです。家がある茨城から練習場所の横浜までの移動中に英語の勉強をしていたり、自衛隊の友達とハードなトレーニングしたり…天才ですけど、ちゃんとやっているんだなって感じです。ただ、コンタクトレンズとかは僕が発注してますけどね!邑作は注文ができないんです!

豊嶋:いや、注文はできますよ。でもマルに頼めばもっといいのを見つけてくれるだろうという期待があるから頼んでいるんです。プレー動画もマルに作ってもらっています。
あとは人に対してどんどんいろいろなことを聞けるというのも僕にはないものなので、尊敬していますね。ただ、プレーは出会った当時は本当に酷かったですよ。それこそライダーキックとか(笑)でも今はだいぶうまくなりましたね。

丸山:邑作はブログもほぼ毎日書いているのがすごい!なかなか何かを毎日するってできないですよね。

豊嶋選手ブログ

 

豊嶋邑作、丸山龍也

 

-逆に互いの悪いところがあれば教えてください。

豊嶋:Twitterでバンバン大きいことを言いすぎるところじゃないですか。→丸山選手Twitterアカウント

丸山:でもそれは長所でもありますからね!というか、ブログかTwitterかの違いだけであとは自分も邑作も同じですよ。でも書いたことを遡るまでいかないですけど、後から消すことはあります。夜のテンションで書いたものを次の日の朝冷静になって見て、例えば主語を「俺」から「僕」に変えたりします(笑)

豊嶋:あるある!でも俺はブログを書く時は「僕」で統一している。いずれにせよ、大きいことは別にTwitterで言う必要ないんじゃないかな。

丸山:痛いところ突かれてます(笑)

豊嶋:もう少し発言と行動を伴わせていかないとな。出会った当時のマルでは競争を勝ち抜いてどこかのクラブと契約するのは難しいと思っていたので、今はリトアニアでプレーしているということはすごい進歩です。でも僕は今、出会った当時のマルと比べるのではなく、言ったことを実現できているかという目線で見るので、目標はもっと現実的なものにすべきだと思いますね。

丸山:ただ、出会った当時のまだ力がない僕がプロになりたいと言っていたのと、今CLに出場すると言っているのと、目標までの距離は一緒だと思います。無理だと思っていたプロになるという目標を実現させたわけですから、僕としてはそのロジックにもう一度はめ直しているという…言い訳ですかね(笑)もっと伴った方がいいとは思います。

豊嶋:俺はマルのバックグラウンドも知っているからいいけど、Twitterを見ている人はそんなこと知りませんからね。それで損している感じはあります。

 

-お互いにプロになった時にどう思ったか、自分の時の感想も合わせて教えてください。

丸山:邑作がグルージャに決まった時はそんなに驚きませんでしたけど、他の上位カテゴリのJクラブに入る可能性も聞いていたので、改めて厳しい世界だなと感じました。怪我などがあったにせよ、結局昨シーズンは1試合しか出られていないですしね。それより一番初めにベルギーでプロになった時が嬉しかったです。同時にさすがだな、とも思いました。
自分の時はクラブにビデオを送り、日本に滞在している間に加入が決まりました。なので、喜びというよりも次のことを見据えていて、あまり印象には残っていませんね。そもそも決まったクラブはスリランカのチームですから。この前、FIFAランク最下位のブータンに負けていた、あのスリランカですよ!ただチームに合流して1試合目で点を決めた時は嬉しくて、まさに今までのことが走馬灯のように駆け巡りました(笑)

 

丸山龍也外国人選手に混ざってリトアニアでプレーを続ける丸山選手(赤と黒のユニフォーム・3番)

 

豊嶋:小さい頃から描いていたプロサッカー選手になる瞬間、つまり契約書にサインする時は相当嬉しいんだろうな、と自分も想像していました。でもいざその場に立つと普段通りの自分がいました。嬉しいというより、安堵した気持ちと次どうしたいのか、という欲の方が強かったです。

丸山:要所に嬉しいことはありますけど、サッカーやっていて心からよかった!と思えることってほとんどないんじゃないかな。

 

豊嶋邑作昨季から日本でのプレーを選択した豊嶋選手(白のユニフォーム・33番)

 

豊嶋:一気にステップアップするということがないからですかね。契約する時には既に段階を経て、プロに相応しいレベルにまで成長している自分がいるので、契約自体も現実的な物事として捉えることができるのでしょう。自分よりマルが契約するとなった時の方が嬉しかったです。

丸山:そうそう。人がプロになった時の方が嬉しいんですよね。

 

タフさが求められる海外でのプレー

 

-お二人は変わった国でのプレー経験を持っていますが、何か共通する“海外サッカーあるある”はありますか?

丸山:こっちは練習に来ない選手がいました!

豊嶋:来ないやつはいないな。練習時間になってからようやくポツポツ来始めるというのはあるけど。

丸山:日本みたいに集合30分前に来るやつなんかいないですからね。だから早く行くと「今日、本当にここで練習やるのか?」と不安になることがあります(笑)
移動のバスで酒を飲んでいる選手もいますね。試合終わった後、スーパーマーケットとかに寄ると何本か買ってきて、車内で開け始めるわけです。そっちはいた?

豊嶋:いたいた。そもそもホームゲームだとロッカールームにビールが用意してありますからね。見えてないだけで試合前にも飲んでるやつがいたんじゃないかな(笑)
ただ、海外の選手のすごいところはたとえどんなにコンディションが悪くても、それこそ二日酔いであったとしても、普段と同じパフォーマンスは出せるんですよ。日本人は準備をしっかりしたとしても出せるか分かりません。
海外でそういう外国人選手の姿を見て、自分もそれができたらもっと楽にパフォーマンスを出せて、いつでも普段通りのプレーができるようになると考えるようになりました。だから今は最低限のやるべきことは決めて、他は極力排除するようにしています。その代わり、普段通りのプレーそのものの質を上げていく努力をしています。

丸山:最近ルーティーンが流行っていますけど、海外のちょっと荒い環境に行ったらそんなのやらせてもらえなくて、崩れるでしょうね。

豊嶋:たしかに。試合なのにアップする時間が15分しかない、みたいなことも平気でありますから。

丸山:スリランカ時代に2万人入るナショナルスタジアムで試合をやったのですが、まさにその日は会場に着いたのがキックオフ15分前でした(笑)この前、その試合の映像を見たら、試合中の合間にアップしていましたね。海外ではそういうタフさも求められます。

豊嶋:一応自分もルーティーンはありますけど、いつでもできるものですし、仮にそれができなかったとしても問題ないメンタルの状態にはしています。具体的には7種類のストレッチを順番通りやることです。それさえやればいつダッシュしろ、と言われてもいけます。あとはロッカーにかけたお守りを触ってから出ていきますね。

丸山:自分はノリのいい曲を聴いてテンションを上げた後、失恋ソングを聴いてそれを少し調節してから試合に臨んでいます。これはやらないときついですね。だからだいたい朝、イヤホンがない時は焦ります(笑)あとはグラウンドに合うスパイクでないと嫌です。リトアニアに行く時は7足持って行きました。

豊嶋:俺は2、3足だからそれはかなり多いな。

丸山:下手なだけにそういうところはちゃんとやりたいんです(笑)リトアニアで人工芝なのに(※)取替を履いている外国人選手がいた時はびっくりしました!日本では人口芝で取替を履く人はまずいないです。サッカーやっている人なら衝撃的なはずですよ!体育館でスパイクを履くようなものです。

※取替式スパイク:刃の部分が金属で、取り外し可能になっているスパイク。刃は先端部分が鋭く、よく引っかかる構造になっている。

豊嶋:いたいた!そんなことしたら、芝に引っかかるし怪我もしやすくなるのにね。

 

 

【後編へ続く】

 

 

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