menu

平野由香里(サイクリングインストラクター)の、スパイシーな人生。幼稚園からスポーツの道へ

2016.07.12 / 森 大樹

平野由香里、サイクリングインストラクター。中高は文化系の部活に所属し、卒業後は幼稚園の教諭を務めた。スポーツに縁遠い人生を送っていた彼女が、なぜサイクリングインストラクターを志したのか? 本人に話を伺った。

平野由香里
 
平野由香里、サイクリングインストラクター。前職は幼稚園の教諭だという。それどころか、中高は文化系の部活に所属し、スポーツそのものに縁遠い人生を送っていた。

そんな彼女が、なぜサイクリングインストラクターを志したのか?

幼稚園教諭からスポーツジムへ転職。実は運動は苦手な方だった。

――まず、平野さんがスポーツに関わることになるまでの経緯を教えてください。
 
平野由香里(以下、平野) 小学生の頃から体は大きかったのですが、走るのが遅くて。50メートル走もビリ。運動ができないことにコンプレックスはなかったですね。「なぜかうまくできないな〜」くらいで。ぼーっとした子だったと思います。中学では演劇部、高校は家庭科部に所属していました。
 
小さな頃から幼稚園教諭になりたかったので、高校卒業は幼児教育の大学に進学しました。学園祭の実行委員をしたり、YMCAの野外ボランティアのキャンプリーダーを務めていました。卒業後は、晴れて幼稚園の先生に。子ども達と関わる時間はとても貴重で、日に日に成長していく子ども達からいつもパワーをもらっていました。
 
しかし、保育の仕事は「楽しい」だけではないんですね。日々の業務も夜遅く、帰宅しても持ち帰りの仕事もあり。次第に「これを一生の仕事とするのは厳しい」と感じるようになって、当時担任を持っていた子どもたちの卒園と同時に、新しい仕事に就くことにしました。
 
――運動もそこまで得意でなかった平野さんがなぜ転職でスポーツジムの仕事を選んだのか、すごく気になります。
 
平野 「働きながらダイエットできたらめちゃいいやん!」と、正直初めは軽い気持ちだったんです(笑)そもそも運動ができないことを自分ではコンプレックスと思っていませんでしたからね。むしろ運動音痴なことを忘れていたほどです。その当時は今よりも6〜7kgは太っていて、身体が重たかったですね。スポーツジムで面接した時は、ジムで働いて、綺麗になって、だれかと結婚して辞めようかな、なんて思っていましたよ(笑)
 
そしてスポーツクラブで働くようになって、ようやく自分が運動音痴だということを思い出しました。ダンスをしても、筋トレも、機能的な身体の動かし方も、全て上手く出来ませんでした。
 
でも私が勤めていた大阪市内の大手スポーツクラブは、当時一流のインストラクターさんや意識の高いトレーナーさんばかりで、それに影響され、だんだん自分も「インストラクターになりたい」「いや、意地でもなる!」と思うようになっていきました。3年間アルバイトの中でトレーニングを積んで、トレーナーとインストラクターの資格を取って、やっとこさフリーのインストラクターとして独立したという流れです。
 
きっとあんなに運動音痴とはスポーツクラブの方も面接の時には、思っていなかったでしょうね(笑)本当に当時のスタッフの皆さんにはお世話になりました。
 
――様々な資格を取得していますが、その中にスキーインストラクターもありますね。 
 
平野 スポーツジムに働きに来る人はたいてい運動部出身だったりします。研修でも筋トレのフォームチェックや〝何キロの重りを持って何セットする〟などのテストがあり、私だけ全然できないわけです。
 
他のスタッフは、野外でのスポーツも出来てバスケが上手かったりバレーやサッカー、野球とそれぞれ得意分野がありました。それがとても悔しかったので、2ヶ月間休みをもらって雪山にこもり、スキーインストラクターの資格を取りました。結局そこに来る方も運動神経がいい方ばかりで、ここでも人一倍練習しましたね(笑)
 
平野由香里
 
平野由香里

運動音痴な自分にもできることは何か、模索する中で…

――そうなるとインストラクターになってからも苦労しそうですね。
 
平野 だいたいジムではダンス、筋トレ、ボクシング系などのプログラムをやるわけですが、どれも運動神経とリズム感が要求されるんですよね。
 
ヨガは柔軟性が必要ですし。私はどれも持っていなくて困っていたのですが、ちょうどその時にフリーのインドアバイクのインストラクターがジムに新しくやってきて、インドアバイクのレッスンが始まりました。自転車であればそんなに複雑な動きもないですし、「これなら私にもできる!」と思って選んだ感じです(笑)。
 
私が勤務していた頃のジムのメンバーはみんな運動に対してポジティブで、マラソンしたり、筋トレ部を作ったり、山登りやスキーもしていました。その中の1つにロードバイクがありました。大阪から三宮に出て、高松まで行くうどんツアーを皆で楽しんでいましたね。
 
そのツアーを“ツール・ド・つるつる”なんて呼んでました(笑)正直初めは自転車自体も高かったですし、行くのを渋っていたのですが、周りの仲間が盛り上がっている姿を見て、私も行ってみることにしたんです。
 
でもいきなり120kmくらいのコース設定で…。「もう二度とやらない!」と思っていたのですが、1週間後にはロードバイクに取り憑かれたように、私も始めたくなってしまいました(笑)その頃にはもう既にインドアバイクのレッスンを担当していたので、自転車の体力はついていたんでしょうね。それが、私のロードバイクとの出会いです。
 
――現在、平野さんはどのような活動をしているのでしょうか?
 
平野 平日の月~金までは、室内で固定式のバイクを音楽に合わせて漕いでいくというトレーニングのインストラクターをしています。それに加圧トレーニングを加えたメニューを行うこともあります。パーソナルトレーナーの資格もあるので、レッスンの合間にはお客様の自宅や企業様の所に行って、筋トレやストレッチの指導を行なっていますよ。
 
金~日は全国のロングライドなどのイベントに行って、MCやゲストライダーとして走らせて頂いたり、野外でのインドアバイクや筋トレなどのレッスンを行ったりしています。また、小規模の自転車ツアーガイドも企画運営しています。
 
平野由香里 

中でも外でも楽しめるのがバイクの魅力。好きを仕事にする喜びを感じながら。

――インストラクターとしての平野さんの強みはどこですか?
 
平野 やはりインドアでの活動とアウトドアの活動を兼ね備えている所でしょうか。実際にインドアバイクでトレーニングしたことが、ロードバイクで坂道を登る時に役立ったり、外で自転車に乗り風を切ったり山道を実際に登ったことがインドアバイクのトレーニング中にイメージとして生きてきたりします。
 
自営業としても、そしてフリーインストラクターとしてもいろいろ自由なことができているのは幸せなことだと思っています。インドアでもアウトドアでも大好きな自転車を乗ることが仕事だなんて最高です!
 
――今までで一番楽しかったことを教えてください。
 
平野 お客様が私のインドアバイクレッスンを受けて共感してくださって、外の自転車ツアーにも参加してくださった時は嬉しかったですね。ロードバイク初心者の方々に一から乗り方をお伝えし、淡路島を周るツアーで安全にお客様がゴールを迎えることができた時、その帰りのフェリーではシビれるような達成感を味わいました!何より自分の周りのお客様が喜んでくれるのが一番嬉しいです。
 
――逆に辛かったことは?
 
平野 私、辛いことは結構忘れてしまうんですよね(笑)。あったはずなんですが…。
 
――平野さんの今の目標を教えてください。
 
平野 大きく分けて3つあります。一つ目は、インドアバイクを広めたいです。インドアバイクなら、室内で時間や気候を気にせず、高負荷をかけて立ち漕ぎもできますし何と言っても静かです。レッスンであれば人と一緒に行うので、きつい部分も共有しながらみんなで楽しく出来ます。
 
実はロードバイクを始めても冬の間は寒くて乗らなくて、暖かくなってきた頃には自転車がメンテナンス不足で、その上モチベーションが下がっていて走らないという人も少なくないのです。そういう方こそ、寒い間はインドアバイクを使ってもらえたらと思います!春になった頃には、去年よりもレベルアップしている自分に出会えますよ。
 
ご自宅でもインドアバイクを楽しんでいただけるプロジェクトを只今こっそり進行中です。いつかはオンラインでのインドアバイクレッスンもしたいです。それを行うためには使用するインドアバイク専用の音楽の権利関係が難しかったりするんですけどね。
 
二つ目は、アウトドアバイクで海外ツアーです。実は今年JALパックさんから平野由香里といくホノルルセンチュリーライドというツアーパックができるんですよ!目先の目標になってしまいますが、この企画は何年も温めてきた目標でもあるので絶対に成功させたいと思っています。
 
三つ目は、子ども自転車教室です。幼稚園教諭の仕事の経験から、現在も親子体操教室を地元の市の運営施設で毎週行っています。やはり次世代を担う子ども達へのアプローチは今後も続けていきたいと思います。
 
今年中には子ども自転車教室を開校したいです。そのための勉強をして、スキルを身につける計画をしています。そして将来的には、情緒障がい児短期治療施設や養護施設の子どもたちに自転車教室を開いて一人でも多くの子どもたちが自転車に乗れるチャンスの場を作りたいと思います。
 
本当にいろいろなことをさせて頂いていて、目標を一つにするのは難しいですが、全て楽しいです!
 
平野由香里

刺激的なことが好き。辛いことこそ、“人生のスパイス”である。

――ここからは平野さんのプライベートについても聞いていきます。時間がある時にやっている趣味はありますか?
 
平野 こんな感じで仕事をしているので、オフは月に一回くらいしかないです。ただレッスンとの合間の時間はあるので、最近はそこでアートに触れようと思っています。本を読んだり、絵を描いたりするのも好きです。最近は、大人が読んでおもしろい絵本を探すのにハマっています。みなさん、オススメあったら教えてください。
 
――もしこの仕事をしていなかった何をしたと思いますか?
 
平野 とにかく刺激的なことが好きなので、旅行のツアーガイドさん、役者さん、クラブのママさんとかですかね。どの職業もいろんな刺激があって一筋縄でいかなさそうな所がドキドキします。最近旅行でパラグライダーを体験したのですが、とっても面白かったです。パラグライダーのインストラクターさんも面白そうです。
 
――平野さんが自己分析して思う、自分の性格的な魅力はどこだと思いますか?
 
平野 思ったことは行動に移す。トライ&エラー。楽観的。あと、嫌なことはすぐ忘れます。その代わり忘れ物が非常に多いです。(笑)
 
――好きなマンガはありますか?
 
平野 好きかどうか分かりませんが、面白いのは東京タラレバ娘です。今30代の女性の間で話題になっていて、この年代のリアルな部分を脅迫的に描いています(笑)
 
――好きな言葉や座右の銘はありますか。
 
平野 “辛い時は「スパイシー!」と叫べ”ですね。私の好きなテレビ番組『情熱大陸』で偉大な博士さんがおっしゃっていました。辛い時=人生におけるスパイスだと考えるということです。 
 
――最後に読者の方にメッセージをお願いします。
 
平野 日本は四季があって、一年を通して風景や匂いが変わります。自転車であればそれを五感で感じることができます。季節の移り変わりを肌で感じることによって「生きている」という実感がさらに色濃く記憶に残ると思います。
 
あまり、力を入れず風に乗るような感じでサイクリングしてみるのはいかがでしょうか。

平野由香里