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永山宜秀(元ジェフ千葉、現トレーナー)の訴え。「ケガは勲章でも何でもない」

2016.02.01 / 森 大樹

永山宜秀

かつてジェフユナイテッド市原(現・千葉)の練習生としてチームへ合流するなど、長年サッカーをプレーしていた永山宜秀氏。だが、あるときに地元・大阪でビーチサッカーと出会い、競技転向。その後はビーチサッカー日本代表にも選出された。現在はトレーナーとして活動をする傍ら、大阪レキオスBSを発足させプレーを続けている。

 

 

遊びで始めたビーチサッカーで、全国大会予選を勝ち進む

-まずは、スポーツの経歴から教えてください。

地元・大阪で小学生の頃からサッカーをしていました。中学、高校も地元のクラブ「枚方フジタSC」のジュニアユース、ユースチームに所属していました。その後にジェフユナイテッド市原(当時、現・千葉)のテストに合格し、練習生という形で加入はしたものの、契約には至りませんでした。

関西に帰ってきてからも1年間だけ社会人サッカーをやりましたが、その後はずっとビーチサッカーをやっています。

 

-サッカーからビーチサッカーに転向したきっかけを教えてください。

関西に戻って、周りからは熱心にフットサルに誘われていたのですが、僕の場合、全く興味が湧かなかったんですよね(笑)それでトレーナーを始めることをずっと考えていたのですが、自分もスポーツをしながらやる方がいいとは思っていました。なので、ゴルフや自転車なども試してみたのですが、しっくり来なくて、結局ボールを蹴るのが一番だという結論になりました。その頃に友達と遊びでビーチサッカーの大会に出ることになったんです。そうしたら全国大会の予選を勝ち上がってしまって(笑)

全国大会に出るのであれば、ちゃんと練習しようという話になり、真剣にビーチサッカーに取り組んだことが本格的に始めるきっかけになりました。

 

-今は大阪レキオスに所属していますが、どのような経緯でそうなったのでしょうか?

元々沖縄にあったレキオスを東京の企業がサポートしていたことから、チームも東京に移すことになったんです。それで僕も東京に呼ばれていたのですが、自分のトレーナーの仕事があったのと、大阪でもビーチサッカーの普及をしたいということで、チームのGMにお願いをして作らせてもらったのが大阪レキオスです。

永山宜秀

 

-ビーチサッカーの魅力はどのようなところにあると思いますか?

青い空の下、開放感のある海の近くでプレーできることが気持ち良いですし、アクロバットなプレーが多いことから観ていても楽しい競技だと思います。ビーチという自然の中でするスポーツはとても体にいい影響を与えるため、トレーナーの目線から見ても魅力的な競技だと言えます。

 

-競技をする上で一番嬉しかったことを教えてください。

これは競技を問わないかもしれませんが、スポーツを通して本当にいろいろな方とお会いできたことですね。ビーチサッカーというマイナーなスポーツであっても様々な方と繋がることができたのは自分の財産の一つです。

 

-逆に大変だったことは何ですか?

競技人口そのものが少ないですから、チームを作ること、試合をすること、そして場所を確保することが大変です。特に日本は島国で綺麗な砂浜が少ないので、場所に関しては苦労することが多いです。

 

プレーヤー、トレーナー、そして監督も

-関西リーグ選抜で監督もされていますが、どのようなことを基準に置いて選手の選考を行ったのでしょうか?

自分がやりたいビーチサッカーができそうな選手をピックアップし、何回か練習会をして、組み合わせを考えて選びました。あとはビーチサッカーの将来を考えている選手であってほしいので、そういう想いを持っているかを活動内容などを見て、判断しました。初めは若い選手を選ぶ予定でしたが、選考の時間も短かったので、結果的には経験のある選手を多く選出することとなりました。

 

-そうなると今はプレーをしながら、チームの運営、指導、そしてトレーナーもしているということですね。元々トレーナーになろうとは思っていたのでしょうか。

そうですね。サッカーは選手寿命が短いじゃないですか。だから引退してから何をするかは常に考えていて、現役時代からトレーナーさんとはコミュニケーションを取っており、指導者よりもそちらの道を見据えていました。それで4年ほど前に選手からトレーナーにメインを移しました。現在は自分の出身チームの選手も診ています。選手時代は主にスクールをやって生計を立てていましたが、今は鍼灸師としてトレーナー業をしています。

本格的にトレーナーになろうとしたきっかけはビーチサッカーで足首を怪我した時のことです。1年間ほとんどプレーができなくなってしまって、その後は一瞬代表にも選出されたのですが、すぐに外されることになりました。何とかもう一度選んでもらえるようになりたいと頑張って練習して、ようやく代表候補に入れたのですが、そのタイミングでまたしても運悪く怪我をしてしまったんです。結局選考からは漏れ、再度挑戦しようと練習に取り組んでいたところで、いよいよ完全に足首を故障してしまいました。もう歩くのも難しい状態にまでなっていましたが、そんな時に今のトレーナー活動における恩師にお会いしたんです。

永山宜秀

 

-その方を人生の師と思えるほどインパクトの強い出会いだったんですね。

衝撃的でした(笑)怪我をして、一番初めは近くの病院に行ったのですが、邪魔をしている骨を削る手術をする必要があると告げられました。でもその後に恩師のところに行ったら、手術する必要はないと言われたんです。ただ治療はしてくれませんでした。「治療家なら自分で治せ!こんなものも治せないのによく治療家と言えるな!」ということで治療してくれなかったんです。そこから恩師のもとに通うようになり、とにかく技術を盗もうと勉強しましたが、どこかでそろそろ治療してくれないかな…とも思っていましたね(笑)恩師は治療こそしてくれないですが、治療の仕方のヒントになりそうなことはいろいろ話してくれるんです。それを大阪に持ち帰り、実践し、また話を聞きに行って…ということを半年ほど続けました。ただ、結局治療はしてくれなかったです(笑)

恩師からは痛みを取るのではなく、もっと前の段階の痛みを出さないという考え方を学びました。より根本のところを普段の動作から変えていくということです。

 

-トレーナーになったのは永山さんご自身が怪我をしたこときっかけだったんですね。

僕は本当に怪我ばかりでしたから(笑)小学生の頃からかかとや膝が痛くなり始めました。当時から自分で自信を持って言えるくらいめっちゃ練習していたんです。それで怪我したということが、努力した自分の勲章のように思っていました。でもこの仕事をするようになってから、怪我は努力の勲章でも何でもない、ただやり方が間違っているだけだと気付きました。

 

-怪我は体の成長のタイミングだったこととは関係ないのですか?

成長期だから成長痛が起こる、というのはドクターの考え方です。でもそれなら本来は成長する人全員がなるはずですよね。いわゆる成長痛というのは成長期に間違った体の使い方をした、その蓄積から起こる痛みなんです。オスグッドも成長期になりやすいと言われていますが、それは単純に成長期にたまたま運動量が多かったから起きるのであって、実は大人になってからも痛みが出る人もいます。

 

-結局永山さんは今まで手術をせずに済んだのでしょうか。

膝を怪我した時に半月板の手術をする必要があると医者から言われたのですが、どうしてもしたくありませんでした。そこでとあるスポーツ選手に相談し、紹介してもらった人に診てもらったところ、何とか手術せずに済んだんです。でも後に別の膝の箇所を怪我して、結局手術することになりました。そうしたら逆の膝も怪我をしてしまい、再び手術しました。でも今の自分がその膝の怪我を診たなら、手術はしなかったと思います。

 

永山宜秀

-体のことについて学んだ今の方が体のコンディションがいいということはないのでしょうか?

それはあります!もうやらないと思いますけど、今真剣にビーチサッカーをやったら代表に入れるんじゃないかと思うくらいです(笑)

そのくらい心と体について学ぶのは重要なことだと思います。例えば体の使い方がうまくなれば走り込みをせずとも、体力が向上します。逆に正しい体の使い方ができていないまま走り込みをすれば、ダメージが蓄積されて怪我の原因になりかねません。

 

-永山さんはスペインにトレーナーとして短期留学していた時期もありますよね。

たまたまビーチサッカー仲間からスペインのエスパニョールというチームにトレーナーなどを送って留学制度を作るという話を聞き、僕も海外のクラブがどういうシステムになっているのか、中に入って見てみたいと思ったんです。あとは何より、実際に選手に触わらせてもらえるということが僕にとっては一番大きかったです。それができれば絶対に選手に対して何かいいインパクトを与えることができるという自信を持っていきましたから。トレーナーとして、チームの運営者として、勉強するために行ったということです。

 

永山宜秀

 

-永山さんが体を診る上で意識していることを教えてください。

少し語弊があるかもしれませんが、ある程度の痛みはどの部位であっても簡単に取れると思います。ただし、患者さんは必ず痛みを出す動き、悪い癖というものを持っているはずで、それを動作解析していかにして見抜いていくのか、ということが重要だと考えています。

 

-永山さんの今後の目標を教えてください。

身体の仕組みをより学んで理解して、トレーナーの仕事に役立てていくことです。
そして、今まではビーチサッカー選手としてプレーすることでたくさんの方に出会ってきましたが、今後は鍼灸師として多くの方に出会えるように、日々成長していきます。

 

-最後に読者の方にメッセージをお願いします。

怪我に悩んでいる人は、痛みを取るということよりも、痛みが出る原因を知る事が大切だと思います。痛みの原因が分からないと、怪我を繰り返すことになります。原因を見つけてそこを改善すると、怪我が治ると同時に、パフォーマンスが以前よりアップしているはずです。そして、リハビリやトレーニングには、ビーチをオススメします!