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浦和レッズや五輪のスポンサー仕掛け人らが語る、スポーツ界で必要な発想力

2016.09.27 / AZrena編集部

公開すごトーク

東京は立川で行われている”すごトーク”をご存知ですか? NPO法人スポーツ業界おしごとラボ(以下、すごラボ)が毎週末に行っているイベントで、スポーツ業界人をゲストに招き、テーマに基づいて交流座談会ができるもの。今回より、そのすごトークのトークセッションの一部をAZrenaにて公開させて頂くことになり、今後も定期的に配信を続けていきます。(すごトークのスケジュール確認&参加申し込みは3ページ目をご参照下さい)

記念すべき第1回は、6月にすごラボが代官山にて主催した「公開すごトーク」です。浦和レッズのスポンサー営業からプロモーション企画、現役選手を起用した広告撮影やサッカー教室運営などを担当した浦和レッズのスポンサー仕掛け人であるランドガレージ取締役の江口智也氏、パナソニック株式会社のスポンサーシップイベント推進室オリンピック・パラリンピック課の課長でありオリンピックのスポンサー側の仕掛け人の小杉卓正氏、そして元柔道日本一から自分づくりの仕掛け人・認知科学に基づくこころの教育家である菊池教泰氏、そしてすごラボの理事長である小村大樹氏によるトークセッションです。

テーマは、『仕掛け人に聞く、スポーツ産業で求められる人材像と自分自身の仕掛け方・考え方』。今回はその中から一部、“仕掛け人の発想力”の部分を公開いたします。全文を読みたい方はコチラから。

 

仕事をする上で大切な"抽象化"をする能力

小杉:江口さんと似ているのですが、一番は何をしたいのかという企画コンセプトが合えば、後はおのずと、いろんな人がいろんな意見を持ってきてくれます。1から10まで自分の企画を通せば、100点まではもらえます。但し、100点までしかもらえません。でも、今こういう企画をやりたい、ここが強み、そして、仲間の意見、この三点を押さえれば、別のプロ集団に預けることができます。クリエイティブのプロから意見を聞くとか、PRのプロに意見を聞くとかですね。ディスカッションの中で生まれてきたものは、当初の想定していた100点が300点くらいの結果になったりします。コンセプトをブラさないこと、強みをしっかり押さえておくこと、後は多少自分の意見を変えられても良いと考えること、そうすることで、思わぬ掛け算になることもあるのです。

 

小村:様々なプロ集団の方に投げることが掛け算になっていく。

 

小杉:ディスカッションの中で良いものを拾っていくということですね。

 

菊池:江口さんと小杉さんの二人の共通点を聞いて、まさに「抽象度の高さ」が高いと思いました。抽象度とは物事の視点の高さのことです。今ここは代官山です。代官山の抽象度を上げていくと、東京。代官山は東京に入っています。更に上げていくと関東、更に上げれば日本、更に上げるとアジア、そして世界と、抽象的になっていくのです。日本の教育の難しいところは具体性を持つことが正しいと教えるところです。抽象的に上げていくのが苦手な傾向にあります。これはものすごく重要なことで、色々な様々な方々とお仕事をする中で、抽象化能力は大切なことなのです。

 

小村:視点を上げて考える重要性ですね。上から見たら広く物事が見えることですね。

 

菊池:木も見て森も見て森林も見て、だけど木の葉っぱも見ることですね。上に下にと行ったり来たりする。上げっぱなしでもダメなんです。リーダーは現場の細かい観点はわからなくても良いという考えもあるかもしれませんが、一応、そこも押さえておきながら、両方を行ったり来たりすることが大事なのだと思います。

小村:なるほど。俯瞰の視点、高いところから見下ろす目を持ち、全体を客観的に見ることも大事ですが、現場レベルにズームインする目も大事ということですね。

公開すごトーク

 

菊池:そしてもうひとつ、LUB(リースト・アッパー・バウンド)をとるという表現をしますが、最小公倍数のことです。例えば牛好きと馬好きがいました。その二人が、「牛のほうがよい」「いや馬の方がよい」とケンカをしていたとします。片方は牛、片方は馬、これは同じ抽象度です。ところが、馬も牛もどちらも動物なのです。同じ動物だという観点で話をするとケンカにならずに上手くいくのです。これが企業でいうところのミッションだったりします。色々な人たちの共通項がミッションやビジョンになります。この部分をとっていく。

これを我々は「LUBをとる」と言います。共通項を見出してそこにアプローチしていく。頭が良い子は抽象化能力が高いと言われています。物理を勉強していても、数学とリンクしていたり、様々なことに波及するからです。だから全て具体性が違うだけで、同じところを押さえているから、全てが一緒に考えられるのです。色々な経験をすることで、あの人はこう思うだろうから、と考えることができるようになってきます。広報側はこう思うし、経理側はこう思うし、いろんな視点が入ってくる。こういったものをひとつにまとめて、ここを押さえておけば全部にリンクするなと考えられるのです。江口さんと小杉さんの話を聞いて抽象化能力とLUBを取ることが重要だなと感じました。

 

小村:ただ面白い企画を考えるだけではなく、その企画を実行に移し、成果を挙げなければなりません。そのためにも、菊池さんがおっしゃる最小公倍数的な調整力が仕掛け人には重要な能力ということですね。

 

発想力を生み出すために必要なこととは?

小村:仕掛けるための重要性をお聞きしてきましたが、とは言え企画力、いわゆる企画を生むための発想力は不可欠な点でもあります。発想力を身に着けるためにはどのようなことからされた方が良いでしょうか?

 

江口:まず毎日、新聞を読みましょう。何が今起きていることかを知ることは大事なことですよね。今あの企業がこういうことを始めたということをきっかけに、その情報を基に自分ならこうするという考えが生まれます。それをお客さんに持って行き、打ち合わせの中で、更なるジャストアイデアが生まれます。それを社内に帰って雑談レベルで同僚と話をしていると、こういう風にしたらもっと面白いかもねとなります。自分に新しく生み出す発想力がなくても、何か情報を持っていれば何かがつながっていくものです。

 

小村:情報を持つことが新しいアイデアを生み出す源になり、そのきっかけが人を介して面白いものへと変化していくのですね。

 

菊池:情報を持つことで認識が変化し、先ほど述べた※LUB、人に共通の部分「あっ、そこだったら、私はこういうのがある」と、自分に見えない視点を提供してもらえるところですね。

 

小村:なるほど。これも抽象度を高めた最小公倍数な見方をすると、視点の共有が掛け算になっていくのですね。小杉さんにも聞いてみましょう。

 

小杉:そうですね。ひとつはスペシャリティ(得意分野)を作る。今努力されている勉強や仕事でスペシャリティを作った方が良いと思います。その経験を語れないとダメじゃないかなと思います。

 

小村:確かに、0ではダメで、1でも2でも得意分野の数字を持ってもらわないと、掛け算にも最小公倍数にもなりませんからね。視点の共有から発想が出てくると考えるのであれば、まずは共有できる武器は欲しいですね。

 

小杉:そして、江口さんと同じ情報の話になりますが、英語をやっておくべきだと思います。私も26歳まで英語を一切やってこなかったので後悔しています。

例えば、インターネットの情報の約60%は英語と言われています。日本だけ見ていたらビジネスは成り立つし、最低限のことは、世界の情報を日本のメディアが情報提供してくれますが、皆さんが目指すスポーツビジネスの最前線はアメリカとヨーロッパです。その最前線の情報を取りに行こうと思えば英語を知っておかないと一番にはなれません。スポーツビジネスをやりたいと思うのであれば、是非、スポーツビジネスで一番を目指してもらいたいし、そうすると自ずと英語が必要となってきます。

 

小村:これも抽象度の話になってしまいますが、日本だけの視点であれば日本語だけでいい。しかしグルーバルの視点を手に入れるためには世界の視点が必要であり、そのためには英語が必須ということですね。英語を学べば日本語の中でしかない情報よりも世界の情報を得られるということですからね。小杉さんにお聞きしたいのですが、とは言っても、英語を学ぶことは大変なことだと思うのです。

 

小杉:これも先ほど述べたようにパッションだと思います。スポーツビジネスをやるには英語を話さなければならない「have to」だったけども、実は話したいの「want to」だったわけです。私はスポーツビジネスに就きたい。だから英語を勉強するんだという気持ちになりました。パナソニックでスポーツビジネスに就けなくても英語が話せた方が仕事にプラスになるとも思いました。けっこうすぐに英語ができるようになってきました。一年でTOEIC600点くらいまで上がりました。動機があればできるようになるのです。

公開すごトーク

 

江口:英語の流れで話をさせてください。実は私は学生時代に交換留学で2年間イギリスに行ったのです。全く英語が喋れず、サッカーをやりにイギリスに行ったようなものです。しかしホームステイをしていたので、全く喋れないとご飯も出てこないんです。生きていくために英語を学ばなければならないという最初は「have to」な立場で、録音して辞書を片手に毎回毎回何を言っているんだろうと調べていました。

学校でも講義を聞いてプレゼンをする場面があり、日本人だからと見られるのですが、とても悔しくて、ちょっとでもネイティブに近づいてやろうと勉強していました。気持ちが途中から「want to」になるんですよ。そんな英語力も今は少し錆びれてしまいましたけどね(笑)

 

小杉:私の経験で話をすると、決してネイティブになる必要はないと思います。私はいまだに英語に対して劣等感はありますけど、それを強みに日本人ならではの英語で交渉できますよ。何を言いたいかというと、アメリカ人もヨーロッパ人も自分の言いたいことを全て話されます。その後、最後にまとめで「皆がやりたいことはコレで、私がやりたいことはコレだから、こうしよう」とぶつけます。簡単な英語でも良いので要点をまとめて、バスっと言えること。日本人は、英語を高校や大学まで勉強してきているわけだし、英語自体はそんなに難しい語学ではないですので。

 

小村:情報も視野も広がるという点で英語は大事ですね。

 

多々いる民族の中でも、日本人は特に自己評価が低い

 

小杉:英語は大事ですし、簡単だと思えば簡単です。これも認知科学的に解説できるのですか?

 

菊池:解説できます(笑) 自己評価という話です。日本人は特に自己評価が低い民族だと言われています。これは文化的背景から、卑下することや謙虚であること、そして自尊心がごちゃまぜになっているところからきています。相手に礼を尽くすということは相手を敬うこと。「自己評価」と「自分を卑下すること、謙虚であること」とは全く違った概念なのです。今やっていること、これからやることに対して「自分ができる」と思っているかどうか。これを認知科学に基づくコーチングでは「エフィカシー」という言葉を使っています。自分の能力に対して自分ができると思っているかどうかという観点のことです。

 

小村:エフィカシーとは「自分の能力に対する自己評価」で、自己効力感のことですね。 分かりやすく言うと、「できるという見込み感」ですね。

 

菊池:そうです。私の知りあいに10か国語話せる日本人の教授がいます。カナダの大学で教鞭をとっている人です。「菊池さん、このエフィカシーはよくわかります。海外の学生は自分より上がいると自分もそこまで行けるはずだと悔しがるのです。ところが日本人は自分よりも下がいたらラッキーと喜ぶのです」と言っていました。日本人は自分よりも下がいたら喜んでしまう自己評価の低さが際立っていると感じられていました。皆さんは自分自身を最高だと思っていますか?

 

小村:常に「YES,I’m Good」と言えるかが大事なんですよね。

 

菊池:そうです。ここの部分は自分の能力発揮と連動性があり重要なことです。小杉さんの話を聞いて、ひとつお聞きしたかったことがあります。新しい分野に、スポーツとは全く関係ない分野に飛び込む時に、そこに入るメンタリティの部分。不安とか出ましたでしょうか?

 

小杉:私は20年間野球しかやってこなかった。新しいことをやる挑戦するという不安より、私は1回、人生としては死んだと思ったのです。だから、何をやるにしても怖くはなかったです。その時の生きる糧が、もう一度スポーツに携わることでした。ただ、パナソニックには勉強で有名な大学の出身者が多く、そこで仕事をするわけです。誤解をおそれずに言うと、意外にしゃべってみたら一緒に出来ないことはないと思いました。もちろん、頭では勝てませんが…。そう思うと積極的に絡んでいけますから、いろんなことを教えてもらえました。

 

菊池:素晴らしいですね。日本の文化や企業もそうなってしまっていますが、現状できることを集めて目標設定するパターンが非常に多いです。例えば前年比よりも110%、120%の目標を立てるというのは、現状の結果に鞭を打ってプラス10%、20%という考え方が非常に多いです。もちろんステークホルダー、銀行からお金を借りたりする場合は、根拠となることを示すために前年これだけやったからと必要な場面もあります。

ただ、まさに小杉さんが体感され歩まれた通り、認知科学に基づくコーチングの観点から言いますと、現状の延長線上にないようなゴールを設定した方がよいと推奨しています。手段や方法は後からついてきます。我々の言葉で言うと「ゴールが先、認識が後」です。ゴールを先に決めたから、そこに至る道のりが後で見えてくるということです。日本の教育は目標設定が大事だと小学校の頃から目標設定をさせられます。

では、なぜ目標設置(ゴール設定)をすることが大事なのでしょうかということはなかなか語られてきていません。実は認知科学的には答えがありまして、認識が変化するからです。

公開すごトーク

 

小村:認識が変化する実験を皆さんにしてもらいましょう。

 

菊池:皆さんは携帯電話をお持ちだと思います。携帯電話の待ち受け画面を見ないで絵として描いてみてくださいと言ったら描けますか? あまり描ける人はいないと思います。これは当然ですね。携帯電話のゴール(目的)は、電話をかける、それからメールする、ネットするなどです。

携帯電話を絵として描くというゴールはありませんから描けなくて当然なのです。なぜそういう現象が起こってしまったのか、これがゴールの重要性です。同じものを見ていても、ゴールによって認知が変化するのです。これがゴール、目標、目的を持つ大事さなのです。同じ仕事をしていても、ゴールが何かによってそれに対しての評価が変わる、認知が変わってしまうのです。実はこれが重要なことだと認知科学に基づくコーチングでは説いています。

 

小杉:その中でレッズのゴールは中長期的に見たらどうでしょうか? J1でレッズと言ったら皆が知っているチームで、勝ち続けているイメージがあり、どんな将来像を見ているのでしょうか。

 

江口:直近の目標は年間優勝、タイトルを獲るということになっています。中長期的な目標は自立できる経営母体が既にあるので、誰にも頼らずに自立していける、そんなクラブになれるんですね。ところが今の三菱自動車問題のきっかけに、急に三菱自動車にごめんなさいというわけにはいかないですし、今まで支援してくれた企業であるわけです。

”浦和レッズは誰のものでもない”という言葉があります。実際にオーナーの社長は浦和レッズの人間であり、三菱自動車の出向ではありません。クラブの人間である方々がたくさんいます。その中で市民の声が届く体制づくりというのが、ヨーロッパのクラブで100年続いているクラブを見習わねばいけないなというところがたくさんあると思うので、日本初というところの道を歩んでもらって、私もそこに仕掛けていきたいと思っています。

 

小村:ピンチをどうチャンスにしていくか大きな転換期でもあるわけですね。パナソニックさんはガンバ大阪ですけど、どうですか?

 

小杉:パナソニックではなく、ガンバ大阪に経営陣があるので(笑) ガンバ大阪と一緒に吹田スタジアムをどうように素晴らしいスタジアムにしていくのか? パナソニックのショウケースにしたいという意気込みは色々な部署から聞かれます。

 

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