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淡輪ゆきが語る、スポーツ中継の裏側。「二度と同じ瞬間はないんです」

2016.09.28 / 淡輪 ゆき

淡輪ゆき
 
こんにちは!淡輪ゆきです。リオデジャネイロでのオリンピック・パラリンピックも終わりました。みなさん、たくさんの感動やパワーを毎日得られたのではないでしょうか?
 

スポーツ中継の裏側

さて。オリンピック・パラリンピックを見た方はお気づきだと思いますが、現在、開催地リオには、選手と共にたくさんの記者やリポーター、アナウンサーの方が働いていました。
 
私たちはテレビやネットを見る際、そこにいるリポーターの言葉や文章を通して、大会や選手の状況を知ることになります。ということは、この伝える人達というのはスポーツを見る上で、重要な役割を担っているという事です。
 
事実を正確に伝えるのはもちろん、その場の“生”の空気感をどれだけリアルに伝えられるかは、私たちリポーターにかかっているのです。
 
そこで今回は、私たちがスポーツを伝える上でどんな風に準備をし、どのように現場での取材を行っているのか、その中でどんな工夫をし、どんな想いを持って皆さんに情報を伝えているのか、私なりの言葉になりますがご紹介していきます!
 
これを読んだ後、オリンピックやパラリンピック、ないしはスポーツ中継そのものの見方が、少しでも変わったら嬉しいです。
 

「この試合に対する想い」を知る

ソチ五輪でリポーターを務めた淡輪ゆき
 
私は2014年ソチ冬季パラリンピックの現地リポーターを務めました。
 
それまでの人生においてパラリンピックの競技にきちんと触れる事がなかった私は、とにかく猛勉強。まずは一つ一つの競技に詳しくならないと話になりません。競技と種目を覚え、ルールを勉強し、何度も動画を見て実況やレポートを聞きます。競技によって違うコメントのタイミングや、試合の空気感をとにかく耳に染み込ませました。
 
そして最も重要なのが、選手を知る事。各選手のプロフィールから家族構成、生い立ち、戦績まで覚えるべき内容は幅広いです。そして私がスポーツをレポートする上で一番重要視していること、それはその選手の“この試合に対する想い”。これらを事前に知るための作業を徹底的に行いました。
 

「何を一番に伝えたいか」

ソチ五輪でリポーターを務めた淡輪ゆき
 
私の中で障がい者スポーツをリポートする上で、ひとつだけポリシーがありました。それは、障がいを持っている方が競技を行う事がどれだけすごいかではなく、純粋にそのアスリートとしての技術の高さや能力の素晴らしさを伝えたいという事です。
 
パラリンピック競技の動画を見れば見る程、そこには障がいを微塵も感じさせないトップアスリートの姿があり、そのプロフェッショナルな運動能力や技術に感動しました。障がい者スポーツはどこか”かわいそう”とか、”スポーツとして見られない”という方もまだいるかもしれない。そのイメージを払拭するべく、私は私の言葉で、全力でそのアスリートとしての凄さを伝える事を誓いました。
 

その一瞬のために

リポートをする上で重要な事はたくさんありますが、その一つに挙げられるのが、”選手に存在を知ってもらうこと”です。
 
なぜならば、例えば”今日はどんなことがあった?”という質問に対して、初対面の人に話すのと、馴染みのある友達に話すのでは、どちらにより思いを込めてその日の事を話しますか? 初対面だとどこか表面的になってしまったり、自分の感情をさらけ出して話すことってなかなかないと思います。
 
ですが試合後のミックスゾーン(取材場)では、ご自身のありのままの気持ちをよりリアルにを話してもらいたいのです。悔しかったり嬉しかったり、試合直後の感情を隠さずかっこつけず、まっすぐぶつけてほしいのです。
 
その一瞬のコメントをもらうために、私たち取材陣は事前の練習や試合からできる限り選手の元に足を運びます。そこで話すちょっとした話が、試合の合間に挟むこぼれ話だったり、意外にも重要な内容に繋がったりするのです。
 
とにかく自らの足で取材を行う事が重要です。たくさん得る情報も、人から聞いたものでは自分の頭に入りませんし、緊張状態の生中継中、いちいち記憶から思い出している時間なんてないのです。自分の足で取りに行った情報だからこそ体に染み込んで、その瞬間にその場にあったコメントを瞬時に入れる事ができるのです。
 

選手のぶっちゃけエピソードはここから聞き出す

 
当日まず欲しいのが、選手の会場入りのコメント。ただ、選手のみなさんも緊張していたり、自分の中でモチベーションを上げているので、そのメンタルの邪魔は決してしてはいけません。ですが伝える側としてはこのタイミングでのコメントはできる限り欲しい情報。ここの空気感やタイミングがまた難しい。その選手のルーティーン、気持ちの持っていき方、試合当日の状態を知っておく事もとても重要なのです。
 
それから観客席の方に回って選手のご家族を捜したりもします。ご家族のコメントというのも選手と視聴者の距離を縮めるとても大切な要素になります。今までどんな努力をしてきたかは、やはり身近で見てきたご家族が一番よく分かっていらっしゃいますし、意外とご本人からは聞くことのできないぶっちゃけエピソードはここからゲットできたり(笑)。
 

二度と同じ瞬間はない

ソチ五輪でリポーターを務めた淡輪ゆき
 
いよいよ競技が始まったら、とにかく「その瞬間」を逃したら今まで何のために努力してきたのか分かりません。瞬きも惜しんで、とにかく競技を見ます。コメント材料、インタビュー材料をひたすらメモします。中継リポートを入れる際は、実況解説の話の節を折らず、試合の流れを読みつつ、タイミングよくコメントを入れなければいけません。
 
正直これが本当に難しい。試合というのは生物です。決まったシナリオや台本があるわけではないので、いつ何時どんな展開になるかわからない。今だ!と思った時に思い切ってコメントを挟まないと、実況解説の人も無駄な穴を開けまいと話し続けるので、慣れないうちは気がついたら全くコメントできなかった、なんてこともあるかもしれません。
 
でもせっかく頑張って集めたネタ。ここで伝えなかったら全て水の泡です。今振り返ると、私の図々しさもこの時ばかりは役に立っていたのかなと思います(笑)
 

ここまで読んで頂いてありがとうございました。

今回はスポーツ中継の裏側ちらっとをお伝えしましたが、いかがでしたでしょうか。まだまだ伝えたい事があるので、スポーツ中継の裏側-後編-というのもすぐに書くかもしれません(笑)。
 
私もまだまだライターとしてはひよっこですが、これからも様々なスポーツの魅力を熱く伝えていこうと思いますので、引き続きよろしくお願い致します!それでは、また次回の記事でお会いしましょう。 
 
淡輪ゆき