メンタルトレーニングは競技の成績を上げる?メンタルトレーナー・野村朋世の経験談

2015.12.08 森 大樹

野村朋世

バスケットボールをプレーしている時にメンタルトレーニングに出会い、自身が実践して効果を体感した経験から、自らもメンタルトレーニングの大事さを様々な人に伝えたいという意思を持った野村朋代氏。そして、現在はメンタルトレーニングコーチとして活躍をしている。

 

メンタルトレーニングを学ぶために、東海大学へ。

 

-野村さんが現在指導されているメンタルトレーニングについて、簡単に教えてください。

スポーツにおける心・技・体の「心」の部分を鍛えるということを指導しています。それらをバランスよく鍛えることがスポーツにおいては重要です。実際に選手に聞いても、試合において一番重要なことは「心」だと答えます。でも練習では心を鍛えていない人はほとんどなわけです。だから試合で実力が発揮できなかったり、負けるはずのない相手に負けてしまったりといったことが起きるんです。なので、日常生活からトレーニングしていきましょうということですね。

 

-野村さんご自身は何かスポーツをされていたのでしょうか。

小学5年生の頃からずっとバスケットボールをしていました。

 

-メンタルトレーニングとの出会いについて教えてください。

私は中学2年生の時にバスケットボールの神奈川県選抜に選ばれました。そこで初めてメンタルトレーニングを知り、自分の中学校にもそれが取り入れられるようになったんです。その時の講義は、本当に目から鱗で…。私自身のプレーにも影響がありました。そこから、私もメンタルトレーニングを教える仕事をしたいと考えるようになって、当時の目標に日本でメンタルトレーニングの第一人者の方がいる東海大学体育学部に入ることを書いていました。偏差値がどのくらい必要なのか、どうしたら入れるのかを先生に聞いたりもしましたね。当時は特別勉強ができたわけではなかったので、部活で優秀な成績を残せばそこに入れると考え、高校は県で一番バスケットボール部が強い学校に進学し、東海大学に入りました。

野村朋世

 

-かなり早い段階でこの仕事をするためのプランを描いていたんですね。

中学で県選抜に選ばれた時もそこに東海大学の大学院生が指導しに来てくれていました。その人にもいろいろ質問していました。

 

-そこまで明確にこの道に進みたいと思えたということは、野村さんご自身がメンタル面に関して苦労した経験があったからでしょうか。

その通りです。本当に私はすごくメンタルが弱くて、実際に試合で実力が発揮できないということも多々ありました。緊張しすぎて、途中出場した試合でいきなり相手にパスを出したことがあるくらいです(笑)試合前にはいつもお腹を下していましたし、メンタル面を克服したいという気持ちを持っていたところでメンタルトレーニングと出会ったんです。

そして何より、メンタルトレーニングに取り組んだことで結果が出たのが大きかったです。私がメンタルトレーニングに出会う前の中学での大会成績は市大会ベスト8、県大会ベスト16でした。でもそこからメンタルトレーニングを頑張って市大会では優勝、県大会も準優勝することができ、初めて関東大会に出場することができました。その翌年には後輩達が全国大会に出て、ベスト8になっています。そうやって効果を実感できたからこそ、広めたいと思いました。

 

-野村さんのように早いうちから自分のキャリアについて考え、貫ける人はそう多くないと思います。

私自身、元々カウンセリングには興味があって、両親にも将来そういうことをしてみたいと相談したことがありました。するとどうやら2人とも関係する勉強をしたことがあったみたいで、もしかすると親から受け継いだ何かがあるのかもしれませんね。

 

-そして思い描いていた通り、東海大学に進学しています。

東海大学体育学部競技スポーツ学科のコーチ・トレーナーコースに入学しました。メンタルトレーニングの第一人者・高妻容一先生のゼミ、そしてスポーツサポートシステム・メンタルトレーニング部門に入り、勉強しました。

 

-具体的にはどういった形で学ぶのでしょうか。

週に3回勉強会があります。それは自分達で調べ、プレゼンをし、意見をもらうという内容のものです。週末にはそこで学んだものを実践するために学校の現場に行き、指導していました。具体的には講習会を行ったり、練習や試合中の声かけなどをやらせてもらったりしていました。すごく簡単に内容を説明すると、例えば下をずっと向いている選手には上を向くように声をかけ、姿勢をコントロールすることの意味について話をしたりしていました。

 

-部活では技術面について指導されることはあってもメンタル面について何かを教えてもらえる機会はまだ少ないと思います。

指導者の人も「集中しろ!」とよく言っていますが、そもそも選手達は集中の仕方が分からないんです。その方法を教えたり、指導者の方が言っている理論の裏づけを話したりすることで現場に落とし込んでいく必要があります。

 

トレーニングでは心理テストも用いる

 

-選手から個人的に相談されることもありますか。

もちろんあります。プレー中のこともそうですし、プライベートの相談をしてくれる人もいます。

 

-野村さんはどの年代の選手を指導することが多いですか。

大学生の時は中学生に教えることが多かったですが、最近は社会人の方が増えています。昨年まで私は秋田県スポーツ科学センターでメンタルトレーニングアドバイザーをしていましたが、その時は高校生が中心でした。講習会自体は小学生から社会人まで幅広くやっています。

 

-年代によって悩みは違いますか。

違いますが、根本的には同じかもしれません。やはり選手というのは結果を求められているので、その場面に立たされると硬直してしまうとか、そういったものが多いですかね。

 

-そこで緊張をほぐすためのアドバイスをするということですか。

アドバイスをするというよりはいろいろなことを聞き出して、原因を探っていきます。解決する方法は1つではなくて、人それぞれに合ったアプローチを見つけていく必要があります。なぜ緊張してしまうのかだけでなく、その人の思考や行動なども分析していきます。心理的競技能力診断検査という心理テストも用いてフィードバックなども行います。

野村朋世

 

-様々な角度から考えていく必要があるんですね。

一番心がけているのは人の話を聞いてあげる、ということです。私はどうしても元々は自分が話してしまうタイプなので(笑)

 

-野村さんご自身が精神的に乗らなかったり、緊張してしまったりする時にはどのように対処していますか。

音楽を活用しています。音楽を聴くことによって、呼吸のコントロールをすることができます。また、条件付けの効果などもあります。緊張している時や落ちつきたい時には、「1/fのゆらぎ」というリラックスできる音楽を聴いています。これは中学生の頃から変わりませんね(笑)緊張すると、呼吸が速く浅くなるので、この音楽を聴いて自分の呼吸をコントロールしています。緊張に対する対処といいますか、これもトレーニングです。メンタルトレーニングは魔法ではないので、すぐに緊張しない精神力を付けることができるわけではありません。普段の生活からしっかりトレーニングしていくことによって、本番で実力を発揮できるようになります。私も前からこの曲を聴くとリラックスできるようにしてきたことで条件付けができるようになりました。

 

-よく陸上選手などがウォーミングアップの時に音楽を聴いていたりもしますね。

そうですね。陸上選手のみならず、多くのアスリートは自分の好きな音楽、試合前に必ず聞く音楽はあるかと思います。個人的には、リラックスできる音楽もそうですが、Mr.childrenのバラードやアイドルの曲が好きです(笑)

野村朋世

 

-メンタルトレーニングを広めていくことで今後どのような世界を作っていきたいですか。

メンタルトレーニングをすることが当たり前になっていってほしいです。日本ではメンタルトレーニングを受ける=自分はメンタルが弱いということを認めることになるからやらない。そもそも自分は実力発揮できるからメンタルトレーニングは必要ない、という考えを持った人がまだ多いです。ただ、メンタルトレーニングをすることで実力以上のものを発揮できる可能性があるんです。今は企業でもうつ病になってしまう人が増えているので、その予防策として心が風邪をひく前にポジティブに考える方法を身に付けておけば、より日常生活が楽しくなっていくと思います。

 

-野村さんの今後の目標を教えてください。

自分が指導者としてメンタルトレーニングをもっと使えるようになりたいです。今はメンタルトレーニングコーチとしての立場での役割はありますが、そうではなくて実際に競技のトップの指導者になった時にどれだけ自分がメンタルトレーニングの知識を使えるのかを試してみたいです。

 

-心・技・体をすべて教えることができる指導者になるということですね。

私は特に幼児期の子供に対してやってみたいです。中学生くらいの子供達にメンタルトレーニングの話をすると結構感動してくれて、スポンジのようにその知識を吸収し、実践してくれます。それが高校生くらいになってくるとある程度自分の考えが出来上がってくるので、効果について疑いから入ります。だからもっと幼少期、ゴールデンエイジ期の子供に教えていきたいです。当然子供への教え方というのもあるので、保護者用のプログラムを通して、家庭環境にどのように影響を与えられるのか、ということも実践してみたいです。

もっと言うと松岡修造さんの修造チャレンジのように、「朋世チャレンジ」みたいなものをやりたいです(笑)そのための体育館などの施設も作ってやってみたいですね。

 

-普段の生活に密接に関わっているということは私達も知らずしてメンタルトレーニングに触れていることがあるかもしれませんね。

そうですね。あると思います。メンタルトレーニングの話をすると、知らない間にやっていた!というのもよく聞きます。例えば「セルフトーク」なんかは、自分自身と会話する自己暗示ですが、普段の生活で「できるできる」「いけるいける」とつぶやいたりすることなどは使っている人もいるかと思います。それを思っている、考えているだけではもったいないので、声に出して言うことが大切ですね。さらに言えば、鏡の自分に向かっていうのもすごくいいですよ!

 

-反面、ついマイナスな言葉は口に出てしまうことがあります。

それは家庭環境が大きく影響している可能性があります。親がネガティブなことを言えば、子供もそれを受け継いでしまいます。蛙の子は蛙ですね(笑)だからまずは保護者の方に対してメンタルトレーニングを活用してもらえるようなアプローチをして、次の世代にポジティブな考え方が広まっていくという、いい循環を作っていければいいですね。

野村朋世

 

-ここまではメンタルトレーニングコーチとしてのお話を伺ってきましたが、より野村さん個人について迫る質問をしていきます。野村さんは休みの日、何をして過ごしていますか。

何もしてないです!ただひたすら「無」です(笑)強いて言えば録画したテレビを観るくらいでしょうか。映画も好きです。…あ、感性を磨く!これですね(笑)

特にお笑いはよく観ます。やはり講習会などで話を聞いてもらうためにはユーモアが大事ですから。

最近講習会で驚いたのが、スポーツ漫画を例に出す時に今の小学生の半分がスラムダンクを知らなかったことです。今の小学生にとってバスケットボールの漫画というと黒子のバスケなんです。だから漫画喫茶でひたすら黒子のバスケを読んだこともありました。そうやって基本的に講習会で使えそうなネタを探していることが多いです。

あとは最近、オフを見つけると東海大学に行くことが多いです。大学に行けば後輩達が自分と同じようなことをやっているので、近況を聞いたり、一緒に勉強会に出てディスカッションをしたりすることで刺激を受けるようにしています。

 

-野村さんがご自身で思う、自分の魅力を教えてください。

逆に何だと思いますか?

 

-一番強く受けた印象としてはとにかく明るい方だと思いました。

よかったです!こういう仕事をしているのに暗い人だったら心配で話したくないですよね。自分で意識している部分が相手に伝わっていて、嬉しいです。

意識的にそうしないといけない場面もありますが、私は常に笑顔でいるようにしています。歳を取るにつれて笑わなくなる人が多いですが、私は笑顔が絶えない大人でありたいです!

あとは基本的に人間が好きなので、とにかく私は人に会いたくなります。外に一人でいる時はイヤホンをしていますが、実はこれはダミーで、音楽は聴いているわけではありません。でも周りの人は私が音楽を聴いていると思って、いろいろな話をしますよね。その会話を聴いています(笑)電車内では、あの人たちはどんな関係だろう、そんな会話をしているんだろうとか、そうやって人間観察をするのが好きなんです。

 

-このお仕事をする上で人が好き、ということはすごく重要ですね。

人と会う時もなぜこの人と会うことになったのか、その意味をすごく考えます。引き寄せあってこうやって出会えているということは何か理由があるだろう、と思います。

 

-そう考えると人との時間を大切にしますね!最後に読者の方にメッセージをお願いします。

私は自分のメンタルが弱かったからこそ、この仕事をしているんです。以前は部活の監督からいろいろ言われて、うるさい!としか思っていなかったものが、メンタルトレーニングを通してポジティブに考えられるようになりましたし、人の話を素直に聞けるようになりました。

本当はメンタルトレーニングを広めるために、教えられる人を増やしていくことも求められているのだとは思いますが、今はとにかく自分が頑張りたいです。自分がどうしたらメンタルトレーニングを広めることができるのか、どうしたら選手やチームの結果を出してあげることができるのか、常に考えて活動しています。

だから野村朋世をもっとたくさん気軽に使ってくださいね!よろしくお願いいたします!