日本は恵まれている。元Jリーガーが振り返る南米での選手生活

2015.08.31 森 大樹

三吉聖王

 

ただ自分の好きなことを続けているだけ

 

-そのようなさらに厳しい条件の中でも楽しいと思えた要素はどこにあったのでしょうか。

以前のチームメイトで残っている選手もまだいましたし、何より向こうの練習は楽しいんです。僕は日本で練習しているとどうしても「仕事」に感じてしまいますが、海外は本当に自由な感じがするんですよね。

また、現在は当時所属していたチームのユースや知り合いの町クラブに中古のサッカーボールを寄付する活動をしています。それはこれからも続けていこうと考えています。

 

-なるほど。そんな中、大きな怪我をされてしまったんですね。

代理人とウルグアイ国外で所属先を探していたところ、11月に前十字靭帯を損傷してしまいました。

 

-どのようにして怪我してしまったのでしょうか。

向こうの選手は競り合いに間に合わなくても、体をぶつけてきます。それで走りながら競った時に悪い体勢でぶつかられてしまい、片足で着地したところ、足からすごい音がしました。観客席にいたホペイロ(用具係)も変な音がしたことが分かったみたいです。

それで診てもらったところ、始めは半月板の損傷だろうと言われたのですが、しっかりとした検査をしたかったので、MRIを取りに行きました。しかし、なんとMRIを撮ることが出来るのは2ヶ月先だと言われてしまったんです。

 

-そんなに撮れないものなんですね…。

ありえないですよね。なので、日本に帰国してMRIを撮ることにしました。帰国してその日に撮れたので、さすが日本は違うなと思いましたね(笑)それで前十字靭帯の損傷が発覚して、手術しました。当初は全治8~10ヶ月と言われていたのですが、プレーの感覚を取り戻すことも含めると1年くらいはかかるとのことでした。

 

-本当に波乱万丈のサッカー人生ですね。

その時、はじめて引退を考えましたね。ただ、自分では波乱万丈だと思っていなくて、僕はただ自分の好きなことを続けているだけです。それに自分には両親を中心に応援してくれる人がいましたから、幸せですよ。

僕のプロサッカー選手としてキャリアは半年間清水にいただけで、あとは全て海外でのものなので、うちの父親はその姿をほとんど見ることができていません。選手として活躍しているその姿を見たがっているという話を母親経由で聞いて、それならば所属先もなく、これからどうなるか分からなかったとしても、怪我から復帰できるようにやってみようと思いました。

 

三吉聖王

 

-怪我の期間、リハビリ生活は大変では無かったですか

その期間に指導という形でいろいろな人と関わることもできましたし、今は結果的によかったと思っています。

母校・国士舘高校やアルゼンチンで知り合った方がやっている街クラブでの指導、ウルグアイで知り合った方のチームに臨時コーチとして定期的に広島まで教えに行かせて頂いたりもしました。これから先、その経験がどのように活かされていくか分かりませんが、役立つ時が来ると信じています。それまで大きな怪我をしたことがなかった僕は怪我人の気持ちが分からなかったので、そういった意味でもよかったのかもしれません。前は怪我人のことをバカにしていたところもありましたからね(笑)これからもサッカーに携わっていきたいと考えているので、人の気持ちが分かるようになった、貴重な経験でした。

 

-三吉さんのお話を聞いていると、ずっと日本でサッカーを続けられる選手というのは恵まれていることがよく分かります。

Jリーグの選手になることは夢があっていいと思います。子供達にとってもJリーガーの試合をスタジアムに観に行き、練習場でサインをもらって、写真を一緒に撮るというのはいい経験です。でも選手は自分がすごい、スターだと変に勘違いしてしまってはいけません。

根本的に僕は何者でもないと思っています。サッカーでうまくいったことがないですから。だからこそ今まで意地で続けてきた部分もあります。ユース年代から代表に入り、そのままJクラブのトップチームに入ったような他の選手と話していても、あまりピンと来ないことが多いです。僕なりの反骨心というか、彼らには到底理解できないような経験をしてきたという自負はあります。

 

-その経験が今後、サッカーも含めた人生において活きてくると思います。

でもきっとサッカーの神様は僕に微笑んでくれないでしょう(笑)

僕には「続けた」ということ以外何もないです。今まで才能のある選手が周りには大勢いましたが、辞めてしまった人もたくさんいます。でも辞めてしまったら終わりです。結局彼らもまだサッカーが好きで今も週末に草サッカーをしている人が多いくらいですから、本当にもったいないと思います。もちろんそれぞれに様々な事情があるとは思いますが、僕はサッカーを辞めて別のことをするのは難しいです。

よく、好きなことを続けていてすごいと言われたりもします。でも確かにいろいろありましたが、無理して頑張った記憶はないです。

 

-それでも1つのことを「続ける」というのは誰にでもできることではないと思います。

-ちなみに海外滞在中のどのようにして外部と連絡を取っていたのでしょうか。

これは海外のいいところで、日本よりWi-Fiの環境がすごく整備されています。公園などに行けば基本的に繋がるので、その点で困ることはありません。

あとは海外に行くと日本のことが詳しくなります。とにかく暇でニュースをよく見るからです。帰国して日本の最新のニュースを知っていると驚かれるのですが、むしろ日本国内にいる人より知っていると思います(笑)

 

三吉聖王

今季はウルグアイ・ロチャFCでプレーした

 

-三吉さんの選手としてのアピールポイントはどこでしょうか。

一番はあらゆることに順応できることだと思います。日本人がアルゼンチンやウルグアイで日本の感覚のまま、相手選手を削りに行っても、全然勝てません。そこで自分に何ができるか考え、人に当たらないでボールを取るためにはどうしたらいいか、どのタイミングで人に当たりに行けば勝てるのか、などを工夫して実行することができるのが今の僕の武器だと考えています。

 

-今後の目標を教えてください。

サッカーを続けることです。今までのようにいろいろな障害が出てくるとは思いますが、自分は現段階でサッカーをしている時が一番楽しいので、これからも続けていきたいです。