スポーツは“ほぼ”未経験だった。王者へ登り詰めたリングの仕事人

2015.08.18 森 大樹

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今回はプロボクサー・大竹秀典選手にお話を伺います。大竹選手は福島県出身で、21歳でボクシングを始めるまではスポーツ経験はほとんどなしという異色の経歴の持ち主です。23歳で上京し、金子ボクシングジムに入門。第36代日本スーパーバンタム級王者を獲得し、4回の防衛を達成されています。

 

働き始めてからボクシングジムの門を叩く

 

-ボクシングを始められたきっかけを教えてください。

働き始めてからボクシングを始めました。職場の近くにボクシングジムがあることを知って、通い始めたのがきっかけです。それまでは、地元福島の建築関係の高校、専門学校へ進学し、その後地元で就職しましたが、その間スポーツをずっとしてきたというわけではないです。ただ学生時代から格闘技を見ることは好きでした。ボクシングやK-1、PRIDEもよく見ていて、いつかはやってみたいと少し思っていた程度でした。

 

-その後上京されたとお聞きしていますが、入りたいジムがあったのでしょうか。

上京してきてからは、東京に住んでいる専門学校時代の友人の家に一緒に住ませてもらっていました。所属先を探している時にその友人宅から電車で移動していたらちょうど窓からボクシングジムが見えて、咄嗟に電車を降りて向かったんです。他にもいろいろとボクシングジムを見学させてもらったのですが、結果として電車から見つけたジムに入らせてもらうことになりました。

 

-まるで運命の出会いですね。

実は入ってからは結構大変でしたよ(笑)

ちなみに日本と海外では選手とジムの関係は少し違っていて、海外の場合、選手とトレーナーは常に一緒でジムは転々とすることが多いのですが、日本では一度ジムに入ってしまうと、なかなか移籍することは難しく、基本的にタブーとされています。でも大変な時期をずっとそこで過ごすわけですから、その分ジムへの愛着も湧いてきます。

 

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ボクサー人生を振り返ってみて

 

-ボクシング経験やスポーツ経験がない中で、大竹さんのようにデビュー後にすぐ活躍できることは珍しいと思うのですが、何か強い想いや目標があったのでしょうか。

新人王は取れなかったので、華々しいデビューを飾って、王道を通って来られたわけではないですが、順調に勝つことはできました。東京に出てチャンピオンを目指すからには、中途半端な気持ちでは絶対になれないと思っていました。しかも、僕の場合は何も経験がない状態で始めるので、気持ちだけは覚悟していました。

 

-ボクシングを通じて、一番嬉しかったことを教えてください。

試合に勝つ事は、普通の生活では味わえない達成感があります。でもそれ以上に、僕がボクシングを本気でやっていることを通して、いろいろな人との出会いがあることが一番嬉しいですね。同じように目標に向かって頑張っている人に出会えることが嬉しく、自分自身への刺激にもなります。

 

-今までで一番の出会いを教えていただけますか。

今のジムの会長との出会いは本当に嬉しかったですね。会長と出会うまでは週5、6回アルバイトをしながら、練習をしていました。なのでボクシングをするだけでなく、金銭的にも苦労していました。会長にはお金の面を考慮して頂いたり、競技に集中できる環境を整えて頂いたりして、こうして日本チャンピオンに育ててもらったので、本当に感謝しています。

 

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金子ボクシングジム会長・金子健太郎氏と

 

-数ある格闘技の中でなぜボクシングを選ばれたのですか。

最初は、総合格闘技やキックボクシングも見学に行ったりしていたのですが、知人に近くのボクシングジムを紹介されて、結局そのまま始めました。実は最初からボクシングが好きで選んで始めたというわけではなかったです。

 

-ボクシングの魅力を教えてください。

二本の腕しか使わないシンプルなところですね。また、歴史が格闘技の中では一番古く、本当に奥が深いところです。

 

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-最強の格闘技はボクシングといいますが、その理由はどのようなところにあるのでしょうか。

どの格闘技が最強かはルールも違うので、自分は分からないです。もしかすると、そう言われているのは、格闘技の中では、一番歴史が深く、世界的に見ても競技人口が一番多いからかもしれません。

 

-ここからは大竹選手のプライベートについてお聞きしていきます。

-大竹選手がもしボクシングをされていなかったら何をされていたと思いますか。

ボクシングを始めるまでは、ずっと遊んでいたのでそのままだったかもしれないですね。でもその生活が嫌でこのままではダメだ、何かやろうと思ってボクシングを始めたんです。今でも学生時代に勉強していた建築に関連するチラシなどはつい見てしまうので、その道もやはり好きなのかなとは思います。

 

-大竹選手の趣味を教えてください。

自分で資材を買いに行って、いろいろ作ってみようとDIY(Do It Yourself : 自分で何かを作ること、修理すること)もやってみたのですが、思っているよりも頭と身体を使うので疲れてしまって、大変で今はやっていないです(笑)

練習も時間がかかるので、ボクシング以外になかなか時間が割けていないですね。練習以外で怪我をしないようにも気をつけています。

 

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-大竹選手ご自身の魅力を教えてください。

自分では魅力とは思っていないのですが、周りからは「渋い」と言われます。目立つようなパフォーマンスをしないので、そう思われているのかもしれません。

 

-大竹選手のブログの名前が「リングの仕事人」であるというのもそこから来ているのでしょうか。

仕事人という言葉は誰かが言ったわけではないのですが、周りの反応や話からマネージャーさんがつけてくれました。

 

-ボクシングについて一般の方が知らない一面を教えていただけますか。

ファイトマネーがジムによっても、人によっても違うというところですね。チケットの売り上げについてもジムによって違います。

また、実は選手自身は外のトレーナーさんにトレーニングを見てもらいたいこともあるのですが、所属先が制限していてできないことがあります。今後は選手がもっと外のトレーナーや栄養士などの専門家と繋がれるといいですね。そうなると選手もより成長できるのではないでしょうか。

 

-最後に見ている方に一言メッセージをお願いします。

世界戦のとき、記者の方から僕はまだ30代半ばであるにもかかわらず、中年の星として頑張って下さいと言われて失礼だな、と感じたことがありました。今年で34歳になりますが、自分は身体の動く限り、上を目指して挑戦したいです。この年齢になっても、気持ちも身体も技術も成長することができているので、まだまだ自分では若い!と思っています。今後も頑張ります!

これを見ている方には例え何歳からであっても、新しく何かを始めることはできると伝えたいです。自分も23、24歳まではボクシングのボの字も知らない状態でした。結局はどれだけ情熱を持って取り組めるかが大切だと思っています。年齢を言い訳にせずに、新しいこと、やりたいと思ったことに挑戦してみてください。