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「ブルーの麺です」から見る、セレッソ大阪とスポンサー企業の信頼関係

2019.11.04 / 竹中 玲央奈

大橋義則さん(左)、金谷元気さん(右)

 

Jリーグ・セレッソ大阪が、2019年7月に開催されたファン感謝デーで、ブルーノ・メンデス選手にちなんだ「ブルーの麺です」という“青い”冷やしラーメンの販売と、ステッカーのプレゼントをしたことはご存知だろうか。

この企画は、セレッソサポーターが投稿したブルーノ・メンデス選手のチャント(応援歌)の動画が、100万回以上再生されたことがきっかけとなり動いたもの。当日はブルーノ・メンデス選手本人も登場し、大盛況となった。

 

チームとタッグを組んだのは、駐車場予約サービスを展開する「akippa」と、大阪に本店を構えるラーメン屋「まこと屋」を運営するマコトフードサービス。セレッソ大阪は、スポンサーである2社といかにして企画を作り上げたのか。そして、2社が“スポンサー目線”で語るクラブの魅力とは。

akippaの代表取締役CEO・金谷元気さんと、マコトフードサービスの商品部部長・大橋義則さんに話を聞いた。

 

サポーターのハッシュタグからヒントを得る

ー選手のチャントが盛り上がったことをきっかけに、スポンサーを巻き込んで企画を行うのは珍しいケースだと思います。まずはその経緯を教えてください。

まこと屋・大橋:まこと屋では、セレッソバル(ホームゲームで開催されているフードパーク)で牛じゃんラーメンという看板商品を出していますが、夏場には冷やしラーメンを出したいと考えていました。そんな時に、ちょうど良いタイミングでセレッソさんから「ブルーの麺です」の企画をいただいたんです。

 

ラーメンの味は、以前西日本豪雨の炊き出しに行った時に、現地で作っていた瀬戸内レモンラーメンをベースにしています。それをどう青色にするかを調べていて、セレッソさんから企画をいただいた次の週の社員旅行で沖縄へ行ったのですが、そこでちょうど良いものが見つかりました。

 

沖縄の「青の洞窟」という観光スポットに、青いソーキそばがあったんです。色の付け方を尋ねてみたら、バタフライピーというハーブを使っていると。ハーブは体にも良いので、これを採用しました。

 

ー本当にちょうど良いタイミングで社員旅行があったのですね。

まこと屋・大橋:その通りです。完成品では、麺はリナブルーという天然の青い着色料を使って、スープにバタフライピーを使っています。バタプライピーは、レモンに含まれているクエン酸に反応すると、セレッソさんのチームカラーでもあるピンク色っぽくなるんですよ。麺は綺麗な青色にして、スープはピンク色に近づけることで、セレッソらしさを出してみました。

写真提供:セレッソ大阪

 

ーセレッソ側は、どのような経緯でまこと屋に企画を提案したのですか?

まこと屋・大橋:セレッソさんの社内でも、ブルーノ・メンデス選手のチャントの動画が話題になっていて、何かしらの形でそのトレンドに乗れないかと考えていたそうです。そうしたら、サポーターの間で「#ブルーの麺です」というハッシュタグが作られていて、それを見て青いラーメンを作ろうと。幸いにも企画をまこと屋にご提案いただけて、「やりましょう」と即答しました。

 

ーサポーターからヒントを得ていたのですね。金谷さんは、Twiiterでセレッソ関連の情報をかなり収集しているとのことですが、動画やハッシュタグが話題になっていることは気づきましたか?

akippa・金谷:もちろん気づきましたよ。私もそれを見た時に「トレンドに乗るべきだ!」と考えて、akippaの営業担当さんに提案してみたら、セレッソ側も同じことを思っていたようで(笑)。その後に行われたファン感謝デーの打ち合わせで「ブースにブルーノ・メンデス選手本人が来たら面白いのではないか」と提案をしました。

 

akippaでは当日にキックターゲットを実施したのですが、景品として「#ブルーの麺です」と書かれたステッカーをプレゼントしました。このステッカーは、最初のデザインが明らかに大阪のライバルクラブのカラーになってしまったり、GolazoのG(ライバルクラブの頭文字は…)がすごく大きかったりして、社内調整がすごく大変でしたね(笑)。

 

もし大阪ダービーでやるならそれで良いのかもしれないですが、ファン感謝デーという楽しいイベントですからね。デザイナーや広報が必ずしもサッカーに詳しいわけではないですし、慎重に進める必要があるんですよ。

 

普段とは違った形で喜びを提供できる

ー企画を実施するにあたって、大橋さんはどのような思いを持っていましたか?

まこと屋・大橋:利益を求めるのではなく、ただただ面白いものを作りたいという思いが強かったです。普段セレッソバルに出店しているときも、たくさん売って儲けようとはあまり考えていなくて、それよりもまこと屋を知ってもらうことに重点を置いています。

 

感謝デーの当日もいつもよりスタッフを多くしたり、調理過程を見やすいようにしたりして、写真に撮りたくなるような環境を作りました。こんなに注目していただいたことは今までなかったですし、良い経験になりました。

 

ーまこと屋は2019シーズンからセレッソのスポンサーとなっていますが、どういった経緯なのでしょうか。

まこと屋・大橋:弊社の代表とセレッソの森島社長がたまたま同じ地域に住んでいて、近所の神社で知り合ったそうです。その2、3年後に、次はお寿司屋さんで再会して、そこでスポンサーに関するお話をしたとか。

 

akippa・金谷:すごい縁ですね(笑)。

 

まこと屋・大橋:セレッソさんとの繋がりは他にもありました。まこと屋では毎年、11歳以下が対象の「まこと屋カップ」という大会を開催しているのですが、そこにセレッソさんのジュニアユースも出ているんですよ。

実は私も昔はサッカーをしていたので、セレッソさんのスポンサーになれたのはすごく嬉しくて。スポンサー企業になると、名刺にチームのロゴを入れられるようになるので、私の名刺にも入っています。

 

ー実際にセレッソのスポンサーになってみて、どのようなメリットを感じていますか?

まこと屋・大橋:セレッソバルに出店することで、サポーターに認知してもらえるのは大きいです。クラブとのタイアップで、スタジアムツアー付き観戦チケットや、フラッグベアラーに参加できるキャンペーンなども行っているので、普段とは違った形でお客様の喜びを生み出せています。まだ初年度なので、今やれていることで胸がいっぱいですが、一緒にやれることはまだまだあるかなと。

 

ースポーツチームを支援することは、企業のイメージアップにも繋がりますし、サポーターがお店に来る機会も増えますよね。

akippa・金谷:サポーターは、スポンサー企業のお店に結構行きますからね。例えばセレッソさんのスポンサーにはKIRINさんが入っていますが、居酒屋に入る時にKIRINさんを使っているかを見る人もいるとか。

 

それだけでも大きなメリットになりますよね。akippaさんは2016年11月からスポンサーとなっていますが、どのような思いで続けているのでしょうか。

akippa・金谷:私たちは駐車場のサービスを展開しているので、ホームゲームでは子どもたちへの駐車体験のイベントなどを実施しています。そういった形で、人が何かを体験するお手伝いをしていきたいなと。ありがたいことに、クラブに何か提案をしたら、快く受け入れていただているので、これからも面白い体験を創っていきたいです。

 

数値では計り知れないスポンサーメリット

ースポンサーとして共に活動している中で、どのようなやりがいを感じていますか?

まこと屋・大橋:地元の大阪を一緒に元気にすることはもちろんですし、先ほどお話ししたフラッグベアラーのキャンペーンなどを通して、子どもたちに夢を与えることもできます。まこと屋はファミリー向けに展開しているラーメン屋なので、そこはすごくマッチしていますし、大きなやりがいを感じています。

 

akippa・金谷:セレッソさんは常に、スポンサーもサポーターも喜ぶような新しい施策を考えています。だからこそ、一緒にやっていてすごくワクワクしますよ。akippaも最初はセレッソさんだけが導入していましたが、その事例を見たV・ファーレン長崎さんからもご連絡をいただき、実際に提携に至りました。セレッソさんの成功事例が、他のクラブに横展開されているんです。

 

ーまさに「Win-Win」の関係を築いていますね。最後に、スポーツチームのスポンサーになることの魅力を教えてください。

まこと屋・大橋:スポーツチームのスポンサーになることは、従業員のモチベーションに繋がります。スタジアムにある看板で、まこと屋の文字を見るだけでも嬉しいですから。実際に接客の質は上がっていますし、フードコートでサポーターと直に触れ合う機会が多いですし、飲食業のスポンサーメリットは特に大きいと思います。

 

akippa・金谷:1試合で2万人近くの観客にエンゲージメントができますし、私自身のTwitterにもセレッソサポーターのフォロワーがかなり多いです。毎回ブースに来てくれる方もいます。私がゴール裏に行ったら、「セレッソの関係者がゴール裏にいた!」と言われますしね(笑)。それだけエンゲージメントできているということですし、他クラブにまでakippaの存在が広がっているので、数値では計り知れないくらいの効果があります。

 

関西において、一番人気のあるスポーツチームは阪神タイガースですが、大阪の2つのJクラブも負けないくらいのポテンシャルを持っているはずです。そのポテンシャルを最大限に引き出して、これからも一緒に歴史を作っていきたいと思っています。