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プロ野球&大相撲と協業。24歳社長が描くスポーツ×デジタルコンテンツの未来【PR】

2022.04.20 / 竹中 玲央奈

株式会社ventus 代表取締役社長の梅澤優太氏は24歳。東京大学在学時に友人と起業して電子トレカ事業の構想を描き、スポーツ業界に新たな価値を生んでいます。いわゆる“学生ベンチャー”の彼らはどのようにしてNPB球団や日本相撲協会との協業を成功させたのでしょうか。

NPBの埼玉西武ライオンズ、千葉ロッテマリーンズ、東京ヤクルトスワローズ、そして日本相撲協会が展開している「電子トレカ®︎」をご存知でしょうか。所属する選手のトレカがオンライン上で購入でき、ファンが購入して生まれた収益が団体へ還元される。デジタル時代を象徴する新たなスポーツファン向けのグッズです。

埼玉西武ライオンズ公式電子トレカ

千葉ロッテマリーンズ公式電子トレカ

東京ヤクルトスワローズ公式電子トレカ

日本相撲協会公式電子トレカ

この事業を開発・運営する株式会社ventus 代表取締役社長の梅澤優太氏は24歳。東京大学在学時に友人と起業して電子トレカ事業の構想を描き、スポーツ業界に新たな価値を生んでいます。いわゆる“学生ベンチャー”の彼らはどのようにしてNPB球団や日本相撲協会との協業を成功させたのでしょうか。そして、スポーツ界でも話題となっているNFTなどのデジタルコンテンツの可能性とは。

ファンビジネスはプラットフォームと相性が良くない


ーまず、スポーツファンを対象にした電子トレカのサービスに行き着いた背景を教えていただけますか?

梅澤 もともと“スポーツ×エンターテインメント” の領域で事業をしたいと思っていました。生まれが千葉県でプロスポーツチームが多く、私自身がサッカーをしていたことが大きかったのかなと。

事業が生まれる転機となったのは2017年頃です。この頃、 ICOという仮想通貨・暗号資産を使って資金調達する方法が流行りました。ここでいくつかサービスが生まれたのですが、トークンを買ってその資産価値が変動するようなものがほとんどでした。これに対して「面白いな」と思った一方、値上がりを期待したり、“いつか売るために持っておく”前提ありきでトークンを所持している人が大半なことに、少し違和感を覚えました。“持っていること自体が嬉しい” “集めて嬉しい・楽しい” という感覚がないと継続的に買われないな、と思ったんです。そして、行き着いたのが電子トレカでした。

TwitterはじめSNSでスポーツファンの発言や投稿を見ていると、十数年前のユニフォームをアップしている人や、プロフィールに “○戦○勝○敗”と成績を書いて現地参戦回数をアピールをしている人もいます。こういった熱いファンの人たちを、何かコンテンツを持っていることで公式に評価する仕組みを作りたいと思ったんです。また、野球やサッカーでは選手のトレカをファンが集める文化があったのも大きかったですね。

ーそうしてできたのが「whooop!」でしたね。ただ、「whooop!」は電子トレカの販売が行われるプラットフォームで、そこに多くのチームが参加している形でした。現在はその形ではなく、千葉ロッテマリーンズや埼玉西武ライオンズ、東京ヤクルトスワローズ、日本相撲協会が公式グッズとして電子トレカを販売している形ですよね。この変化はなぜ起きたのでしょうか?

梅澤 ファンビジネスとプラットフォームの相性が良くないことに気づいたんです。ファンの皆様はwhooop!というサービスにお金を払いたいのではなく、自分が応援しているチームや自分の応援しているコンテンツに直接お金を払いたいのが本質だと気づきました。いろんなコンテンツが載っているプラットフォームだと、ファンとしても購買への熱量が下がってしまうんです。

であれば、チームのために作り込んだオリジナルのトレカを販売する場所が、チームの公式サービスとして展開される方が良い、と。自分が投じたお金が“プラットフォームに取られる”ことに嫌悪感を持つ人もいると思うんです。でも、オフィシャルグッズならば球団の売上になるのが見えるので、気持ちよくお金を使える。そういう意味で、僕らは裏方に回ったほうが良いなと思ったんです。

また、1つ1つのチームのコンテンツを尖らせて、売るカードのデザインや種類、企画もチームに特化したものを作ったほうがファンは喜んで投資してくれるだろうと。なので、whooop!のような形式でのプラットフォーム開発は一旦ストップして、「公式」かつ個別のオリジナル電子トレカの開発に全力投球をしました。

球団と一緒にプロダクトを作り上げる


ー現在、NPBの埼玉西武ライオンズ、千葉ロッテマリーンズ、東京ヤクルトスワローズ、そして日本相撲協会と事業に取り組んでいます。その中で、最初に導入されたのがライオンズだったと。

梅澤 そうですね。本来は2020シーズンの開幕と同時に公開予定だったのですが、コロナで3ヶ月ほど遅れたので、2020年の6月にローンチしました。話が進んだのは2019年の秋くらいですね。

ーいちベンチャー企業がNPBの球団と仕事ができることは凄いと思います。どういった経緯だったのでしょうか。

梅澤 元々知り合いだった広報の方へ話を持っていきました。最初はしっかりとした提案というよりは軽いブレストに近かったんです。「こういったプロダクトを作れますが、いかがでしょうか?」と。ただ、担当の方がかなり食いついてくれて、すぐに事業部の方へ繋いでくれたんです。次の打ち合わせにはグッズ担当、営業担当、広報担当と6〜7人くらいの人数がいらっしゃって、びっくりしつつもありがたいなと思ったのを覚えています(笑)。

ー実際のプロダクトを見ると凄みもわかりますが、高評価だったのですね。

梅澤 いや、実は最初はそうでもなかったんです。サンプルのカードデータを見せたら「これだとちょっとつまらない」と言われて。持っていったのはいわゆるポテトチップスに付いているような選手カードに装飾を加えたデジタル版、という感じでした。その時に「デジタルなんだし、動かないの?」と。結果的にこの指摘は大きかった。一度持ち帰った上で選手の動きやアニメーションを入れて、それを再提出したときに高い評価をいただくことができました。その後、この「動くトレカ」がプロダクトの中核になりました。

ーそして、マリーンズにも導入したと。

梅澤 球団の担当者の方とお話しする中で、実際にプロダクトの運営を通じて培ったデザインの部分を高く評価いただけたと思います。「他球団でこういったカードを作ってます」と実物を見せ、年間で1,500〜2,000種類の数を作っている実績を話しました。また、強みである“タイミングを逃さない”ところもかなり評価いただけたのではないかと思います。

例えばある選手が節目の記録に到達したり、プロ初勝利を収めたりしたタイミングで、即座に記念カードを作って売れる。必ず弊社の誰かしらがリアルタイムで試合を見ながら業務をしているのでこれができるんです。NPBの2球団だと、選手が記録を出した数分後に球団からその瞬間の写真が送られてきて、これを元にカードを作って当日中に出す、と。かなり泥臭いですが(笑)。でも、ファンが盛り上がっている瞬間に乗ることはとても重要なんです。感情の共有ができて、仲間意識も生まれ、プロダクトが愛されることに繋がります。

ーそれで言うと、佐々木朗希選手が完全試合を達成した後の商品化も早く、リアクションもかなり多かったですね。

梅澤 当日はとにかく最速で販売することを目指して、試合中から準備していました。電子トレカのスピード感をファンの皆様に伝えたかったので。もちろんグッズなど色々な記念のものが出ているのですが、その中でも一番熱量が高い、一番早いタイミングで売ろうということで販売まで至りました。

実際に、おそらく関連商品の中で最も早く販売を行いましたし、ファンの反応も「仕事が早い」というのが多かったですね。

 

デジタルコンテンツを売るための3要素


ー相撲協会との連携はどういった流れだったのでしょうか?

梅澤 相撲協会もお世話になっている方の紹介が起点です。協会の担当者の方に野球での事例や大相撲での未来をお話しする中でご縁が生まれました。僕自身、多くのファンに愛されている大相撲と仕事をしたい思いが強かったので嬉しかったですね。

ーなぜ“相撲”なのでしょう?

梅澤 電子トレカのコンテンツは1コンテンツを構成する人数が多いところと相性が良いんですね。野球も1チームに70人ほどの選手がいて、まさに大相撲でも60人〜70人の力士がいるので。

ーそこでマッチしたと。とはいえ、相撲業界とそこに紐づくファンに対して“デジタル”は遠く感じるのですが。

梅澤 そんなことはなくて、大相撲はデジタルと非常に親和性が高いと思います。実際に、協会からはYouTubeやTwitterの発信をかなり積極的にされていますし、ファンの方もデジタルコンテンツをうまく活用しながら、楽しんでいらっしゃる。その中で私たちのプロダクトも少しずつ定着しつつあるのかなと感じていますね。

ーなるほど。最後に、デジタルコンテンツを売るためにはどういった部分が肝になるかを教えてください。

梅澤 大事なのはスピードとバリエーションとクオリティ。クオリティは言わずもがな、“ファンの皆様がお金を出す価値があるか”というところ。そこは、どこまでいっても紙のカードには勝てない要素もあると思っています。デジタルにはなかなか手触り感、所有感がないので。だからこそ、所有感をデジタルで感じていただく仕組みと、紙のトレカの手触り感・所有感がなくとも欲しくなるデジタルコンテンツという2つを考えなければいけません。

もう一つのバリエーションですが、デジタルならではの強みがここにあると思っています。例えば大相撲には十両と幕内を合わせて70人くらいの力士がいるのですが、全員のグッズがあるかと言われるとなかなかそうではない。野球チームにもたくさんの選手がいますが、人気のある選手のグッズが中心で、たとえば育成選手のグッズやトレカなどはなかなか出てこない。そこはコストと売上の見込みのバランスだったり、在庫の問題だったりで仕方ないことだと思います。でも、デジタルだと満遍なく出せるんです。実際、決して知名度が高くなくても非常に熱心なファンがついている選手はいるし、これまで拾えなかったファンのニーズを満たすことができる。全体で見れば少数だけど熱狂的なファンがいる層をマネタイズできるのはデジタルの強みだと思います。

最後に、スピード。早く出せば出すほど売れるというのは鉄則かなと。ファンの心を動かすイベントが起きたとき、それに紐づく記念グッズを出したら売れますよね。優勝記念○○が、その類です。その“ファンの気持ちが盛り上がってるところを逃さない”ことはとても重要になります。

実際に、スピード感とカードの売れ行きは明らかに直結しています。これはコンテンツ制作において共通の鉄則なんじゃないかなと思いますし、デジタルトレカだからこそこのスピードが実現できるんじゃないかなと思っています。

改めてになりますが、スピードとバリエーションとクオリティ。これは今話題のNFTだろうと、デジタルトレカだろうと、本質的に大事なことだと思います。どんな技術を使おうと、ファンの方のニーズに応えられないプロダクトに意味はないと思っているので。今後も、この3つとしっかり向き合って事業を進めていきたいですね。