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大学・高校サッカー合同トライアウトの裏側。リトルコンシェル・代田洸輔

2021.02.17 / 竹中 玲央奈

2020年8月に行なわれた、サッカー史上初となる高校3年生と大学4年生の合同トライアウト。運営を手がけたのは、株式会社リトルコンシェルの代田洸輔さんです。彼はなぜ、前例のない新たなトライアウトを作り上げたのでしょうか。

「私が目指しているのは、『普通じゃない大会』です。公式戦に近い緊張感で、スカウトが足を運び、メディアにも露出される。そういった雰囲気を作るために、参加チームに急きょ、公式戦のユニフォームで出場していただいたこともありました」

2020年8月に行なわれた、サッカー部の高校3年と大学4年を対象とした合同トライアウト。全国4カ所で分散開催され、Jリーグや社会人、大学のスカウトが視察に訪れました。

運営を手がけたのは、株式会社リトルコンシェルの代田洸輔さん。学生時代は地元・九州でサッカーに打ち込み、その熱量を今も現場で維持しています。

彼はなぜ、新たなトライアウトを作り上げたのか。その根幹にある、高校・大学サッカーへの想いに迫りました。

 

「九州から日本一のチームを輩出したい」

私は小学2年からサッカーを始めました。高校までは地元・鹿児島でプレーして、大学は福岡の九州産業大学。Bチームでしたが、トップチームはインカレ(全日本大学サッカー選手権大会)でベスト4に進出しました。

卒業後は部に残って、1年間コーチをやりました。ただ、指導者の道の厳しさを感じ、就職活動にシフト。監督からの紹介で、福岡のサッカーショップKAMOで働くことになりました。

 

その後は地元・鹿児島の商社を経て、サッカーの現場に戻ってきたんです。大学サッカーをメインに、合宿や遠征、大会のコーディネートを行なっていました。大会運営の裏側を知ることができましたし、やはりサッカーが好きだなと。主に九州の現場を担当していたので、地元を盛り上げるというやりがいもありました。

そこで経験を積んで、次のステージはリトルコンシェル。前職では合宿や遠征なども取り扱っていましたが、大会がメインになりました。

大会運営は、基本的に現場にも帯同します。選手や監督の思いを直接聞けるので、参加チームを応援する気持ちが強くなります。リトルコンシェルでも主に九州で活動していて、「九州から日本一のチームを輩出したい」という思いでやっています。

 

筑波大学指揮官と共通する、学生への思い

2020年は、コロナ禍で試行錯誤を重ねた1年でした。

一つ企画していたのが、大学サッカーの8チームが集まるフェスティバル。出場機会の少ない選手に、チャンスを与えることを目的としていました。期間中には、学生の意見交換会も予定していましたが、感染予防の観点から中止に。後日、意見交換会のみZoomで行ないました。

参加チームの一つである筑波大学は、出場機会の少ない選手もチームに貢献できるように、「(※)パフォーマンス局」を設けています。私たちの「出場機会の少ない選手にチャンスを与えたい」という目的と合致していたので、意見交換会は筑波大学の学生に主体となって進めていただきました。

データ班やアナライズ班、ビデオ班などの部門で構成される組織。出場機会の少ない選手で運営され、強豪・筑波大学の強さの源になっている。

その中で感じたのは、筑波大学という大きな組織だからできることもありますが、他の部でもできることがあると。とはいえ実現するには、指導者の理解や協力も必要になってきます。そこで、小井土正亮さん(筑波大学蹴球部監督)主導のもと、指導者交流会も開催することになりました。

小井土さんは以前から、「高校3年、大学4年の選手の進路をどうしたら良いか」と考えていたそうです。進路に悩む選手のために、何か少しでもできることはないかと。私たちは大会運営という強みを持っているので、「代田、お前やれよ!」と言われました(笑)。

 

そうして開催することになったのが、高校3年と大学4年の合同トライアウトです。最初はイメージが湧かなかったですが、繋がりのあるJクラブに連絡をしたら「ぜひやってよ」と。約10クラブのスカウトに興味を持っていただけました。

ただ、繋がりのないクラブのスカウトからは、批判的な意見もありました。コロナ禍ということもありますし、そもそも「リトルコンシェルって何? 代田って誰?」と思われていたはずです。

メンタル的に折れそうな時もありましたが、それでも続けられたのは「学生のために」という思いがあったから。これは、小井土さんも良く口にする言葉でした。企画が進むにつれて、その思いが周囲に伝わって、理解していただける方が増えていきました。

 

予期せぬメディア掲載で信用度アップ

全国開催を目指して、まずは九州から。最初は、お金のかからない人工芝のグラウンドで行なう予定でした。ただ、いろいろな方の協力があって、参加するJクラブが増えていったんです。そのため、天然芝のグラウンドで、かつスタンドもある大津町運動公園(熊本)を会場に選びました。

選手からは参加費を徴収しました。「学生からお金を取るのはどうなのか」という声もありましたが、事業として割り切ろうと。適正価格は分かりませんでしたが、できるだけ費用を抑えられるように調整しました。

スポニチさんに記事を掲載していただけたのは、大きかったですね。こちらからアプローチしたわけではなく、向こうから急に電話が来たんです。後から分かったのは、私と繋がりのないJ1クラブの方から、スポニチさんに情報を伝えていただいたということです。メディアに掲載されたことで、一気に信用度が上がりました。

 

選手の募集については、大学との繋がりはあったものの、高校はあまりありませんでした。人づてでアプローチしていきましたが、コロナ禍でのイベントだったので、紹介していただくことも簡単ではなかったです。

結果的には、ご尽力いただいた皆さまのおかげで、無事開催することができました。終わった後はほっとしましたね。

 

「普通じゃない大会」で学生を次のステージへ

私は大学時代、Bチームでキャプテンをしたり、(※)Iリーグの実行委員会に入ったりしていました。選手や運営として関わる中で、大学サッカーには可能性を感じていました。

インディペンデンス・リーグ。トップチーム以外の選手に、出場機会を与えることを目的としている

 

その後に大会運営で、高校サッカーと関わりました。高校生にとって、大学サッカーは次のステップ。学生のサッカーを盛り上げるために、弊社の大会を大学にも案内し、一人でも多くの高校生が次に進むきっかけとなれれば、と思うようになりました。学生の成長を支えるため、キャリアを止めさせないために、今後も大会を盛り上げていきたいです。

もちろん、高校や大学でキャリアを終える選手もいます。彼らは今を大事にプレーしていると思うので、大会を通して良い思い出を残してほしいですね。

 

私が目指しているのは、「普通じゃない大会」です。公式戦に近い緊張感で、スカウトが視察し、メディアにも露出される。そういった雰囲気を作るために、参加チームに急きょ、公式戦のユニフォームで出場していただいたこともありました。

大会を通じて、選手の成績や進路、チームビルディングの変化など、多くのきっかけづくりができれば、私たちの仕事に意義があったと感じられます。

トライアウトについては、ありがたいことにJクラブや大学へ決まったとご報告もいただき、「来年もやっても良いんじゃないか」という声がありました。今後も選手の次のステップに繋がるような企画を、継続的に作っていきたいと考えています。このイベントがあったから、選手権に出られた、強豪大学に行けた、Jリーグに行けた、と言われるように。サッカーを頑張る学生の支えになれればと思います。