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スポーツが地域振興の一助に。公共施設を管理する指定管理者のシゴト

2019.02.27 / 山本 一誠

岩橋潤二氏

スポーツビジネスで活躍するための最速講座として、2010年からスタートした「MARS CAMP(MARSキャンプ)」は現在、第17期目を迎えています。2018年1月27日(日)の社会人コースでは「『スポーツ』は地域振興の呼び水となるのか?」をテーマに、約2時間の講義が行なわれました。

少子高齢化社会により地域の活力低下が叫ばれる中、スポーツがいかに地域振興に価値を提供し、影響力を発揮していくべきか。株式会社ユナイテッド・ワンの代表取締役CEOである岩橋潤二氏が紐解きました。

 

指定管理者制度はなぜ必要なのか

平成15年に地方自治法の改正によって、管理委託制度の廃止と指定管理者制度の新設が決まった。当時の小泉政権は「官から民へ」という方針のもと、郵政民営化に代表される様々な行政改革を行なっており、その一環として公の施設の運営を民間企業・NPO等の団体に委ねる指定管理者制度が生まれた。

その背景には、行政の経費削減と、市民サービスの向上を目指す意図があった。民間活力をうまく生かすことで、効率的な管理運営による運営費の削減、質の高いサービスによる利用収入の増加、そしてニーズにあった事業実施による事業収入の増加などが見込まれ、行政の財政負担を軽減することができる。

従来の管理委託制度では、基本的に年間で数千万円の赤字となっていたが、指定管理者制度の導入によって、赤字がゼロになった施設もあるようだ。現在では、東京都内のスポーツ施設の大半はこの指定管理者制度を導入している。

 

自身が指定管理に関与している事例として、岩橋氏は町田市総合体育館の名を挙げた。町田市総合体育館は株式会社ギオンを筆頭に複数企業が協力して受託しており、岩橋氏も長年にわたって指定管理に携わっている。Fリーグ・ペスカドーラ町田のホームグラウンドでもあるこの施設は「民間で受託できる中では大規模かつ活用性の高い施設」だと岩橋氏は言う。

しかし、これだけ大規模な会場にも関わらず、2020年の東京五輪・パラリンピックの会場にはなっていない。コンパクトな大会を目指すという方針もあり、試合会場からは漏れてしまったのだ。それでも町田市としてはこの機会を生かそうと、キャンプ地やホストタウンとしての誘致活動を行なった。

 

パラスポーツイベントで多くの集客に成功

岩橋潤二氏

2016年には、日本ブラインドサッカー協会とともに「ブラインドサッカー ドリームマッチ」と題したオールスターマッチを開催した。ブラインドサッカーは通常、屋外で行なわれる競技だが、このイベントは体育館に人工芝を敷いて行なった。

岩橋氏は「体育館の床に傷をつけないか、競技中にスリップしないか」といった心配もあったとのことだが、最終的には3000席のキャパシティに対して2800人ほどを収容し、成功に終わったといえる。来たる2020年に向けて「こういったイベントのノウハウの蓄積をすることによって、町田市にとってもブラインドサッカーのキャンプ地誘致を行う上でアピールの材料となる」と、有意義なイベントであったことを振り返っている。

 

町田市総合体育館では、2017年、18年と2年連続で「ヒューリック・ダイハツ JAPAN パラバドミントン国際大会」の招致にも成功した。しかし、パラバドミントンの大会を行なう上では、選手たちが車いすを使用しているため「選手の移動やホテルの手配などに気を遣わなければいけない」という課題もあった。選手の輸送には町田市が所有している福祉車両を使い、選手たちに提供する食事は町田市の福祉団体の協力を仰ぐことによって、低コストに抑えた。

最終的に動員したスタッフは総勢570名ほど。まさに官民が一体となったこの取り組みが功を奏し、町田市は2018年5月、インドネシアのパラバドミントン代表チームの事前キャンプ地に決定したことを皮切りに、様々な代表チームのキャンプ地誘致を成功した。このようなキャンプ地誘致は、さらなる運営ノウハウの蓄積と、スポーツ文化の醸成をもたらすことだろう。

 

指定管理者がスポーツで地域を盛り上げるには

岩橋氏は指定管理者という立場から、スポーツを「人と人との関わり合いを作れるコンテンツ」と捉えており、地域活性化に一役を買うことを指摘した。しかしその一方で「現状では、まだまだその長所を発揮しきれていないのではないか」と、厳しい声も上げている。

それでは、指定管理者がスポーツで地域を盛り上げるには、どのような考え方が必要なのか。この問いに対して岩橋氏は「公共施設であるからといって、何でもかんでもやって良いわけではない。重要なのは指定管理者の中にどれだけ公益性があるか。もちろん経験なりアイデアがあれば収益を上げることはできるが、綺麗ごとを抜きにした公益性こそが重要」と、自身の経験をもとに見解を述べた。

岩橋潤二氏

そして最後に、自身の座右の銘を2つ紹介して講義を締めくくった。

一つ目は「やる、やらないではなく、やるか、もっとやるか」。

「僕の中でやらないという選択肢は持たないようにしています。困難に思えることでも、視点を変えたり、考え方をシフトしたりしながら、なんとか目の前の課題に取り組んでみようと思っています」

二つ目は「すべて我にあり」。

「つまり、自責の念を持つということです。人のせいにするのは簡単ですよね。しかし良いことも悪いことも、全て自分の行いによるものだと意識づけないことには、何事もうまくいかないのではないかと思っています」

 

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