【後編】格闘技からパワーリフティングに転向し、日本一に!経営者としての顔も併せ持つ大谷憲弘

2015.05.30 AZrena編集部

大谷憲弘

 

【前編】はこちら

 

世界一にどうやったら近づくかを常に考えている

 

–  パワーリフティングのプロはあるのでしょうか。

日本でパワーリフティングをプロ(スポンサー契約のみの選手)でやっている人はいませんが、海外ではプロとして競技に取り組んでいる選手もいます。海外の選手では年収1000万円前後を稼ぐ人もいます。プロの選手は生活もかかっているので、ハングリー精神がすごいですね。

 

–  パワーリフティングに関して日本は海外に比べるといかがですか。

近年は徐々に認知されてきていますが海外に比べるとまだまだです。ベンチプレス、スクワット、デッドリフトは、海外では身体を鍛えるエクササイズとして高校生も大学生もやっているのですが、日本ではそこまで身体を鍛えることが一般化されていません。フィットネスクラブでも安全面の問題などで、ベンチプレス台やスクワットラック、デッドリフトスペースがなかったり、そもそも教えられる人がいないのが現状です。

 

–  確かにフィットネスクラブでもフリーウエイトができる面積は本当に小さいですね。

今は本当の筋トレ普及も含めて、誰でも気軽に参加できるベンチプレスの大会を開こうと考えています。アメリカンフットボール選手やラグビー選手など、パワーの必要な選手たちはもちろん一般の高校生や大学生、年配者や女性にも身体を鍛える楽しさを伝えたいです。お祭りのようなベンチプレス大会の開催を企画しています。

 

大谷憲弘

 

–  普段大会はどこで行われているのでしょうか。

国内大会は体育館に会場を設置して行われています。海外では、室内競技場若しくはホテル内の大広間に会場が設置されてそこで競い合います。

 

–  大谷選手がここまで競技に打ち込める要因はどういったところにあると思いますか。

自分は良くも悪くも一つのことを様々な角度から考え集中出来る性格だからだと思います。パワーリフティングに関しても、筋肉の成長・フォーム・神経の発達にはどういった練習方法がいいのか、常に研究しています。基本的には筋発達のアプローチは同じなのですが、力を出す筋肉の作り方、大きく魅せる筋肉の作り方はトレーニング方法が若干変わってきます。自分のジムでは科学的に計画した練習内容を試し、効果が出たものだけ会員に教えています。自分は基礎の理論を学ぶことも、そこから積み重ね、発展させていくことも好きです。この練習効果は数ヶ月後に出ます。その期間が有効なものでなければ無駄になってしまいますのでしっかり様々なパターンを考えて計画しています。

 

–  理論的に考えてトレーニングされているということですね。

世界一を目指すにあたり、トレーニング指導で有名な方がコーチになってくださる話もあったのですが、自分の体は自分が一番分かっていますし、自分で考えてトレーニングすることがとても楽しいのでお断りしました。自分は東海大学の体育学部出身なので、大学で学んだ基礎を応用しています。あとはその分野で国内トップの研究者(企業内研究者、大学教授など)に自分の新しい理論を聞いてもらい、意見を頂いたり、分からないことは質問させて頂いています。

 

–  ご自身でトレーニングを考えて突き詰めていくことはすごいですね。

世界一にどうやったら近づくかを常に考えています。どのスポーツ選手もそうですが、選手には競技寿命があります。自分の競技は競技寿命が長めで、第一線で勝負出来るのが40歳前半ぐらいだと考えています。時間軸を考えることが重要だと思っています。

 

大谷憲弘

日本一は世界一になるための通過点

 

–  普段はどれくらい頻度で練習されるのですか。

ベンチプレスは週に1回しかやりません。その日はベンチプレスだけをします。出来るだけ高い集中力を維持するため1日1種目に絞るようにしています。しかし、この練習頻度では週1で月4回、年に48回しか練習ができません。しかも、その中には仕事などで練習出来ない週があるので約40回です。その約40回の練習で世界との間をいかに詰めるか常に考えています。1回をおろそかにするとその差は詰まっていくどころか離されてしまうので、毎回の練習が勝負です。貴重な1回の練習内容はしっかり考えて半年先まで練習メニューを計画しています。1回の練習は長いときで4、5時間トレーニングしています。

 

–  もっとトレーニングの回数は多いものだと思っていました。

いろいろな練習の方法をされる方がいますが、トレーニングをしているときに強くなるのではなく、それ自体は体にダメージを与えているだけです。そのダメージを与えた反動で回復して強くなっていきます。

重さ、セット数、休息時間、フォームでトレーニング効果は本当に変わります。強くなるパターンがあるので、それをいくつ知って、いかに実践するかが大切です。筋肉の反応パターンは本当に重要です。

今までほとんど運動していなかった人がパワーリフティングで全日本選手権に出たければ、約11ヶ月で大会の標準記録は突破できるくらいには伸ばせると思います。

 

–  腰痛が起きたり、怪我はしたりすることはないのでしょうか。

自分もトレーニングを始めた時は肩を痛めたりしましたが、しっかりとフォームを身につけてからは怪我がなくなりました。怪我のリスクを最小限に抑えるフォームがあり、その重要ポイントを押さえてることでほとんど怪我をすることなくトレーニング出来ます。自分は腰にヘルニアが2箇所ありますが、フォームと対ヘルニア筋トレを行ってからからはスクワットで300kgを支えてもびくともしません。

 

–  普段の食事で気にされていることはありますか。

必要な栄養は積極的に取るようにしていますが、そこまでは気にしていません。減量時には鶏肉300gとじゃがいも2個と野菜などといったメニューにするぐらいです。

 

大谷憲弘

 

–  他の競技でもウエイトトレーニングは大切だと思いますが、知識や技術を教えられる人は少ないように思います。

通常のウエイトトレーニングが特に効果的な競技とそうでない競技はあると思います。例えば、陸上選手や自転車の選手などは両足で踏ん張ることがほとんどないと思います。そのためスクワットはステップを使い片足でも行ったり、チェーンなどであえて不安定な状態をつくりスクワットするのもいいと思います。ウエイトトレーニングは、力の発揮出来るポジションを作って重りを挙げます。しかし、動作をやりこむことによって筋力・筋量は上がりますが、そのポジションでしか発揮出来ない軸が出来てきてしまいます。そうならないためにもあえて不安定な状態(チェーンやバンドなど)を作ったりすることを勧めています。

その競技専門のコーチや指導者はこれらを指導していますが、現状はごく少数だと思います。

 

–  昨年度もパワーリフティングで日本一になられましたが、今後の目標を教えてください。

世界一になることですね。自分の中では、日本一は世界一になるための通過点だと思っています。現在国内のトレーニング理論・パターンなどは海外のものや海外選手が行っているものになります。自分は日本人には日本人にあった理論・パターンがあると考えています。自分はそれを確立し、日本から海外選手が真似するようなレベルに昇華させたいです。

 

–  最後に読者に向けてメッセージをお願いします。

筋肉はしっかりトレーニングすれば誰でも必ずつきます。正しい方法を知れば、筋肉がつきにくい人、太りにくい人、太っている人、運動したことがない人、誰でも筋肉はつきます。もちろん、運動・栄養・休息を計画的にすればパワーリフティングの全日本のレベルまでは本当に誰でもいけます。ぜひ日々成長を感じられるウエイトトレーニングを楽しんでほしいです。

 

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