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ハリウッド化粧品。創業約100年の老舗メーカーが、なぜフェンシングを支援するのか?

2020.07.30 / 島田 佳代子

1925年に創設された老舗の化粧品メーカー、ハリウッド化粧品。同社は、2018年10月1日から日本フェンシング協会とスポンサー契約を結んでいます。老舗の化粧品メーカーが、なぜフェンシングへのスポンサードを決めたのでしょうか?代表取締役社長の牛山大輔氏に、支援の経緯やメリットを聞きました。

<写真提供:ハリウッド株式会社>

ハリウッド化粧品は、1925年に創設された老舗の化粧品メーカーです。ハリウッドで最新技術を取得した牛山清人氏と、夫人であるメイ牛山氏の2人が同年に美容室を開店。以降、日本におけるビューティーシーンのパイオニアとして、美容業界の発展に貢献してきました。

同社は、2018年10月1日から日本フェンシング協会とスポンサー契約を結んでいます。老舗の化粧品メーカーが、なぜフェンシングへのスポンサードを決めたのでしょうか?代表取締役社長の牛山大輔(うしやま・だいすけ)氏に、支援の経緯やメリットを聞きました。

(取材・構成:島田佳代子)


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フェンシング支援のきっかけは「サイズ感」

 

私は、明治時代からスポーツを通じた国際交流を行っているような家に育ちました。私自身もスポーツが好きで、小さなころから色々なスポーツをやってきました。

「スポンサーをしよう」と思ったきっかけは、東京オリンピックの開催です。オリンピックが開催されれば、東京は盛り上がります。しかし、実際に見に行くことができない人は大勢います。

私たちのお取引先様は、北海道から沖縄まで全国にあります。「どうしたら日本全国の人たちを巻き込んで、盛り上がることができるだろうか」と考えたときに、スポンサーシップが思いつきました。

フェンシングは騎士道であり、日本の武士道と通じるものがあります。女性選手も多く活躍していますよね。弊社は創業者自身が働く女性の先駆者だったこともあり、女性の活躍支援を行なっています。いろいろと考えた中で、弊社のイメージに合うと思ったのがフェンシングでした。

オリンピックでも第1回アテネ大会から正式種目になるなど、フェンシングには長い歴史があります。1964年の東京パラリンピックでも、最初に決まった種目は車いすフェンシングだったそうです。

しかし、フェンシングは歴史はあるもののメジャースポーツとは言えません。同様に、弊社も歴史はありますが中小企業です。「一緒に大きくなれたらいいね」というサイズ感が良かったんですね。ちょうど過渡期でもあり、経営の方向性も良かったです。

これは後で気がついたのですが、40年ほど前に発売した男性用化粧品のポスターにフェンシングの剣の一部が映っていました。昔も、会社のイメージにフェンシングが合うと考えていたんですね。

 

フェンシングの広告効果は抜群

スポーツ協賛をして良かったと思うのは、感動体験をより身近に感じられることです。

スポーツは「やる楽しさ」もあるけれど、娯楽として「観る」のも重要です。スポーツができる人もできない人も一緒に感動し、勇気をもらうことができます。それぞれの試合でドラマがあり、クリーンに感動できるものがスポーツにはあります。

メジャーなスポーツだったら、社員にも好き嫌いがあったかもしれません。でも、フェンシングは誰にとっても新しいスポーツ。応援することで新しい自分を発見したり、一歩踏み出すきっかけになったかなと。もちろんファンとして観ていても体験はできますが、スポンサーになることでより身近でパワフルな体験になったと感じます。

 

本社には、フェンシングの剣を飾っています。お取引先の方が来た時に持ってもらうと、「触っていいんですか?」と喜んで頂けます。皆さん同じように剣を構えて写真を撮っては、SNSにも載せてくれます。身近によくあるスポーツの道具だったら、そんな風にはならないですよね。

全国のお客様やお取扱店の皆様にも、「オリンピックに出る選手が、同じ化粧品を使ってるんだって!」と話題にしていただけています。それほど身近ではないけれど、カッコいいイメージがあるフェンシングだからこそだと思うんですね。

フェンシングへの支援を通じて、全国のお客様、お取引先の皆様とワクワク感を共有できていると感じています。スポンサードは会社的には広報活動ですが、広告効果は抜群でした。フェンシングが誰にとっても新しいスポーツだったことは、結果としてメリットでした。

 

徳南堅太選手にもらった「3つのカン」

協会のスポンサーになったことで、たくさんの選手を支援できるという点も良かったですね。

選手たちにはフェンシングを披露してもらうだけではなく、講演会で話してもらうこともあります。「戦うチェス」の異名も持つ競技だけあって、皆とても知的で話がうまいんです。

 

2019年4月の入社式には、男子サーブル日本代表の徳南堅太(とくなん・けんた)選手がサプライズゲストとして駆け付けてくれました。その時に書いてもらった色紙を本社に飾っています。3つのカン、「貫・観・感」というメッセージです。

●1つ目:貫くの「貫」。辛くても最後までやり通すことで、結果に繋がる。
●2つ目:観察の「観」。物事を観察すること、第三者の目線で自分を見る。
●3つ目:感動・感謝の「感」。感動する/感謝することはもちろん、周りの人を感動、感謝させられる人になること。

世界で戦っている選手だからこその言葉ですよね。選手たちからはフェンシングという競技だけでなく、それ以外のことも教えてもらっています。

 

創業当時から行なってきた災害支援

コロナ禍で、スポーツの価値は上がったと思います。ずっと家にいると、最初のうちは動画配信サービスでもいいけれど、ライブ感・臨場感がなくて飽きてくるんですよね。

今までは「ハイライトを観ればいいや」「録画してまとめて観よう」と思ったこともありました。でも、(コロナ禍を経て)何が起こるか分からない、ライブにこそスポーツの良さがあるんだと実感しました。その瞬間の感動体験を、大切にするべきだと思うんですね。

大げさかもしれませんが、多くの人の1年はスポーツのカレンダーを中心に回っていたと思うんです。夏に甲子園やオールスター戦を観れば、「さあ今年も後半戦を頑張ろう」とか。カレンダーが、スポーツと連動していたわけです。当たり前のことだと思っていたけれど、「スポーツがないのはこんなに退屈なのか」と痛感しました。

 

弊社は、創業当時から災害復興支援を積極的に行なってきました。今回のコロナ禍でも、会社として何ができるか考えました。例えば頻繁に消毒を行なうことで手荒れを訴える方が増えていることに着目し、しっかり消毒できて手荒れしない商品の開発・製造を行ないました。

急に作ろうと思っても、免許や許認可の問題でなかなか作ることはできません。幸い、うちは国内に自社工場があって、アルコールとヒアルロン酸の両方を持っていました。研究開発から製造までワンチームで迅速に動けるシステムを構築していたため、構想から10日ほどで製造することができました。今後行なわれる大会にも提供していきます。

選手たちも困っているので、SNSに応援メッセージを送ったり、ファンレターを書いてみようとか。多少関係のある人だったら、練習場を提供するとか。困っている時だからこそ選手と接点がとりやすく、選手を身近に感じることができるチャンスだと思います。

こんな時だからこそ、皆が自分にできることがないかを考え、様々な形で助け合えたらいいですね。