AZrena編集部

仕事も競技も一流。弁護士アスリートが二足の草鞋を履き続けられる理由。

数ある職業の中で、弁護士は簡単になれる仕事ではないものの1つであることは誰しも想像がつくだろう。難関司法試験に合格しなければならない上に日々の業務も多忙だ。そんな仕事をしながら、トップアスリートであり続ける選手がいることをご存知だろうか。

西尾公伸選手は、法律事務所オーセンスの弁護士として執務を行い、週末は社会人アメリカンフットボールのトップリーグであるXリーグに所属するノジマ相模原ライズの選手として戦っている。

弁護士でありながら、一流アメフト選手であり続けることは決して簡単なことではないだろうが、それを両立させられるのは一体なぜなのだろうか。

西尾選手にこれまでの経歴を振り返りつつ、二足の草鞋を履き続けられる理由を聞いてきた。

大学でアメフトと運命の出会い

まず、これまでのスポーツの経歴を教えてください。

一番長く、しっかりやっていたのは空手で、小学2年生から中学3年生までやっていました。学校に空手部がなかったので、町の道場に所属して、大会は学校の名前を借りて出場していました。

中学では、少しだけソフトボール部、それ以降もテニス部、陸上部、軽音部などにも一瞬だけ入っていました。

高校では、日本代表候補になるような方が指導者としていらっしゃったこともあって、テコンドー部に入部しました。1年でやめちゃったんですけど(笑)。

 

弁護士を志したのはいつのタイミングですか。

明確に司法試験を受けると決めたのは、大学4年生です。それまでは「その方向性も視野に入れながら…」、くらいの緩やかな感じでイメージしていました。

 

司法試験を受けるとなると大学4年間かなり勉強をする必要があったと思うのですが。

それはもう全くしてないです(笑)。普通の大学生です。元々どちらかというと物事が続かないタイプで、高校までは大体のことにどこか「やらされてる感」がありましたけど、大学って基本的に自由で、主体的に選択したことをやりやすい環境じゃないですか。そういう中で、「大学では、自分で決めたことをやりきりたい」と考えていて、司法試験もその中の一つではあったんです。

でも、スポーツはやれる期間が限られているし、当時は社会人になって競技にフルコミットするということはイメージしてなかったので、大学では自分が全力を尽くしてどこまでいけるのか試してみたいと思って、アメフトを始めました。

 

—他にも競技はあったと思いますが、なぜアメフトだったのですか。

団体競技をやりたかったんです。例えば一番長くやっていた空手は、自分と向き合う時間が非常に長いスポーツなので、一体感を持って達成感を得るとか喜ぶとかいうことが基本的にはなくて。

大学に進学するあたりで仲の良かった友人のお兄さんがラグビーをやっていたり、大学のアメフトが割と華やかな世界だからなのか周りの人から勧められることが多かったりというのでアメフトが選択肢に上り、「スポーツをやれる最後のチャンスかもしれないからやりきりたい」という自分の思いと合致したので、始めることにしました。

 

—学生時代、アメフトを続けるにあたって辛い思いをしたことはありましたか。

秋に地元で「だんじり祭り」があるんですけど、その辺の人は毎年当たり前に行くことになっているんです。所属していた地元の青年団には祭りを中心に一年間を回してるようなすごい温度感の人もいて(笑)。

そういった青年団との関係や司法試験を受けたい気持ちを、アメフトをやるには一旦捨てることになって、それは結構辛ったというか。「何かを得るために何かを捨てる」ということを真剣に考えた、人生の中でも大きな経験でした。

 

アメフトと弁護士、二足の草鞋を履く道へ

—選手として大学卒業後も続けたいと思ったのはどのタイミングですか。

大学時代、日本一になれなかったことは決定的に大きかったです。

実は、私が行ったロースクール(法科大学院)の試験の日が、4年生でチームのキャプテンとして目指していた関東の大学の代表を決める決勝戦「クラッシュボウル」と同じ日でした。

だから、大学4年の最後の一年間は、「ずっと勝っていったら試験を受けられない」、という状況で戦っていたんです。

「勝って残念ながら試験を受けられなかった」、という有終の美をイメージしてたんですけど、結果的にはダメで…。チームのみんながクラッシュボウルを観に行っている中、1人だけ新幹線で大阪に試験を受けに行くということになって、アメフトに未練が残ったんです。

ロースクールに入っても一年間はアメフトをやらなかったんですけど、1日十何時間も勉強していると、どこか集中できない自分がいて…。

たまたまその時に、アズワンブラックイーグルスにいた元早稲田のアメフト部の方に誘っていただいて練習に参加して、それがアメフトを再び始めたきっかけでした。

ロースクールの最初の一年間は人生で1番というくらい勉強だけをしていたのですが、残り2年間は、平日は勉強に集中して、週末は社会人アメフトで体を動かしていました。

 

—今まで勉強してた時間の一部をアメフトにあてるにあたって工夫する必要もあったと思います。

週7日勉強していたのを週5日にするわけですから、そこはものすごく不安でした。でも、そのおかげで自分が勉強に集中する時間の生産性を上げるという発想を明確に持つようになりました。

時間効率を上げることを意識するようになって、週末にリフレッシュとして体を動かすことと相まって、すごく成績も良くなりました。そこからアメフトとデスクワークのバランスを自分の中で取るようになっていきました。

 

—そこには何か西尾選手流の勉強法があるのでしょうか。

例えば試験勉強だったら、「覚えること」。質問に対して、覚えたことの中から「何をアウトプットするのかを考えること」、そのアウトプットの過程で「実際に手を動かすこと」、の3つに分けて勉強していました。

「勝つために必要なこと」を分けて考えるという面では、アメフトと通じるものがあるかもしれないですね。今気づきました(笑)。