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【後編】誰もが一度はやったことのある競技・ドッジボール。 日本代表総監督が語るその存在意義

2015.06.19 / 森 大樹

吉田隼也

 

【前編】はこちら

 

ドッジボールは「日本が世界一になれるスポーツ」

 

-吉田さんが思う、ドッジボールの魅力を教えてください。

競技としての魅力は、5分間という短い時間の中で、速いボールを投げたり、避けたり、受け止めたり、様々な攻防があることです。またドッジボールは体の小さい子も活躍できる競技です。投げるのがうまい、捕るのがうまい、パスが早く回せるなど、人それぞれの個性が出てきます。また、チームとしての責任感や連帯感の生まれる競技でもあります。

そして大人になるとより細かい戦術が加わるので、チームごとにさらなる工夫が生まれます。もちろん身体能力も高くなるので、個人の力も活かせるようになります。代表クラスになると投げたボールは100km/h出ることもありますし、それを女の子が取ったりもします。

 

-吉田さんの今後の目標を教えてください。

日本代表ができてまだ4年目ですが、ドッジボールをしてきた子供達も少しずつそこへの憧れを持つようになってきていると思います。でも、現時点ではオリンピックなどの華々しい舞台がその先に待っているわけではないので、より憧れてくれるような環境を作っていきたいと思っています。

大きなことをするには一人の力ではできないですし、多くのドッジボールを愛する方々がそれぞれの思い入れを少しずつ繋いで、伝えてくださったおかげでここまで来れたと思っているので、それをまた次へと繋げる役割を自分が先頭となってやっていければと思っています。

 

-ドッジボールは誰もが知っている競技ですし、すごく可能性を感じます。

マイナースポーツと呼ばれますが、個人的にはドッジボールはマイナースポーツではないと思っています。今までドッジボールをやったことがない人を見たことがありません。みんなが知っているスポーツなのでそこが武器だと思っています。

 

吉田隼也

吉田さんは単身海外に渡ってプレーした経験を持つ(右)

 

-海外でもドッジボールは普及しているのでしょうか。

世界でもドッジボールと呼ばれている競技があって、ルールは日本とは異なりますが、僕も30歳の時にイギリスのチームの練習に単身で飛び入り参加しました。その後アメリカのプロテストにも参加して合格、プロ選手としてプレーをしました。

たまたまパソコンでいろいろ調べていて開いたサイトにプロテストの募集があったので思い切って現地まで行って受けてみたら、合格したんです。ルールは違っても基本の技術は同じなので通用しましたね。日本のドッジボール選手は世界でも十分に活躍することができます。特に捕る技術は日本が秀でているので、バシバシ取っているとかなり目立ちます。

 

吉田隼也

外国人選手相手にプレーする吉田さん(左)

 

-世界で活躍できる競技は夢がありますね。

JDBA(日本ドッジボール協会)のルールで育ったので、この日本のドッジボールを愛する気持ちは変わらないですが、世界中のドッジボールチームと繋がり、大きなウェーブを作るために僕は共通のルールで世界中の国と勝負してみたいですね。ドッジボールは「日本が世界一になれるスポーツ」だと思っています。例えばブラジルではサッカーを小さい頃から全員がやっていますが、日本人も同じように小学校からドッジボールをしています。まさにドッジボールは日本の文化だと思っています。だからこそもっと盛り上げていきたいんです。

 

-ドッジボールに対する熱い思いが伝わってきます。

僕は冷静になると止まってしまうので、一番熱い想いを持って前を走ります。もちろんドッジボールがうまいだけでは広がらないので、できるだけ多くの人にその魅力を本気で伝えたいと思っています。

 

-いつまでやり続けるか、期限を決めたりはしているのでしょうか。

僕が引退するのは自分の生活のために競技ができなくなる時だと思っています。プロがあるわけでもないですし、僕が引退するとなっても誰も関心を持たないですが、ドッジボールを全力でできるうちは現役でやりたいと思っています。今は非常勤の職員をして、ドッジボールに全力を注げる環境を作れています。もちろんリスクもありますが、それも覚悟して本気で取り組んでいます。

 

吉田隼也

ドッジボールの選手をアスリートとしてみてもらいたい

 

-どうやったらドッジボールがうまくなれるか、簡単なアドバイスをお願いします。

ボールが自分に飛んでくることにまずは慣れることです。投げたボールが自分に向かって飛んでくるというのは日常生活の中ではないことなので、そこにしっかり慣れる必要がありますね。小学生は練習すればすぐにできるのですが、大人は練習しても身体が適応するのに時間がかかります。どんな屈強なスポーツマンでも急にボールが飛んできたら避けてしまうので、最初はゆっくりしたスピードのボールで練習して、まずは飛んでくる球に慣れることです。今教えている小学校3年生の女の子も、最初は全く取れなかったのが今では大人のボールをバシバシ取っていますよ。

 

-ここまでは主に競技についてお伺いしてきましたが、吉田さんご自身についてもお聞きしたいと思います。

-休みの日は何をされているのでしょうか。

最近、34歳にして初めて総合格闘技のジムに入りました。ドッジボールに何が役立つかは分かりませんが、足りないものを求めて今は総合格闘技をしています。プロのチャンピオンもいるジムで本格的なのですが、僕は格闘技を全くやったことがないので、殴られまくっています(笑)ドッジボールの選手をアスリートとしてみてもらいたいので、まずは自分がそうならないといけないと思っています。

 

-ご自身で思う、自分の強みを教えてください。

粘り強いところだと思っています。

あと実は僕小学校、中学校の頃はすごく太っていたんですよ。そのおかげで野球をしていた時はずっとベンチでした。悔しくて高校で痩せてレギュラーを奪い、キャプテンにもなることができました。その経験から自分はベンチの選手の気持ちも、レギュラー選手の気持ちも、そして監督の気持ちも分かることが強みだと思っています。

 

-最後に見てくださる方にメッセージをお願いします。

やはりドッジボールを見てもらいたいです。そして本気でやっている人がいるということをもっと多くの方に知ってもらいたいですね。

 

【前編】はこちら