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川端友紀。「川端慎吾の妹」が語る、野球ができる喜び。

2015.10.01 / 森 大樹

川端友紀

【川端友紀(野球)】

日本女子プロ野球リーグ・埼玉アストライア所属。1989年5月12日生まれ、大阪府出身。170cm・右投左打・ポジションは内野手。

川端選手は小学3年生の時に野球を始め、中学からはソフトボールに転向し、市立和歌山商業高校、塩野義製薬とプレー。女子プロ野球発足と同時に野球に戻り、プロの世界に入りました。女子プロ野球では角谷賞(MVP)1度、首位打者3度などのタイトルを獲得し、リーグを代表するヒットメーカーとして活躍。女子野球W杯日本代表にも2大会連続で選出されており、日本の4連覇に大きく貢献しました。

東京ヤクルトスワローズ所属の川端慎吾選手は実のお兄様です。

野球からソフトボールへの転向を余儀なくされる

――まず初めに川端選手は右投左打ですが、野球を始めた時から左打ちだったのでしょうか。

そうですね。父の教えでずっと今まで左打ちです。まだ私も小学生の時は体も小さく、力も弱かったですが、足は速い方だったので、それを活かすための左打ちだったのだと思います。

――そうなると日常生活においては基本的に右を使っているということでしょうか。

全部右ですね。左なのはバッティングだけです。

川端友紀

川端選手は右投左打

――ヒットメーカーである川端選手のバッティングについては、やはりお父様がルーツなのでしょうか。

はい!小さい頃は野球チームの監督をしていた父に教えてもらっていました。あと、大人になってからは兄の影響を強く受けていると思います。オフには一緒に練習して、打撃フォームを見てもらったりもしています。最近は特に兄のフォームによく似ていると言われますね。

――小学3年生で野球を始められた川端選手ですが、中学ではソフトボールに転向を余儀なくされています。またプロになるタイミングで野球に戻ってこられたわけですが、転向する上でのモチベーションとプレー面でどのような点に難しさを感じましたか。

子供の頃から野球をやってきて、中学生の時にソフトボールに転向せざるを得なくなった時はすごく残念でした。でも野球を続けたいという気持ちはありながらも、今度はソフトボールで日本代表のユニフォームを着て、五輪を目指したいと思ったので、そこを目標に続けました。

――似て非なるスポーツですよね。

はい。私の中では野球とソフトボールは全く別の競技です。特にソフトボールをやっていた時はずっとピッチャーだったのですが、女子プロ野球に入ってからは内野を守っているので、守備に関しては全然違うものに感じています。距離感や球の捕り方など、本当に1からやらなくてはいけなかったので、全てが大変でした。

――打撃面におけるソフトボールと野球の違いを教えてください。

ソフトボールは距離も近くてボールが来るまで本当に一瞬です。その分フルスイングせずにバットコントロール重視でシャープに振ればよかったのですが、野球で同じスイングをすると打球が飛ばないんです。そこが難しかった点です。今はタイミングを取る足も上げていますが、ソフトボールの時は全く上げずにすり足のフォームで打っていました。

川端友紀

兄であるヤクルト・川端選手のフォームに似ていると言われることも多い

――タイミングの取り方に関する違いは非常に面白いですね。

――ちなみに子供の頃は野球以外の習い事もしていたのでしょうか。

書道やエレクトーン、英会話に通っていたこともあります。ただ書道は中学生まで続いたものの、他の習い事は全然続かなかったですね。その中で野球と書道は自分でもうまくなりたいと思って続けていました。

――書道をされていたとのことですが、よく書いていた好きな言葉や漢字はありますか。

ベタですが、「一球入魂」はよく書いていましたね(笑)

ソフトボールが五輪競技から外れ、再び野球の道へ

――その後どのような経緯で女子プロ野球の世界に飛び込んだのでしょうか。

ソフトボールが五輪競技から外れることになってしまってから目標を失った私は、今後競技をどうやって続けていけばいいのか分からなくて、悩んだ時期がありました。ちょうどその頃に女子プロ野球ができるという話を聞いたんです。私が子供の頃では想像できなかった世界ができるかもしれなくて、しかもそれを自分の手で叶えるチャンスがあるなら、また野球をやってみようと思い、入団テストを受けることにしました。

――川端選手はプロになってから、素晴らしい成績を収められていますが、その中でもご自身の中で何か変化があった年があれば教えてください。

昨年私は打撃不振で、なかなか思うような成績が残せなかったのですが、苦しい中でも特にバットを振ることだけは意識していました。スランプに陥ってしまえば抜け出すのは難しいですが、その間に苦労して、脱出した時に成長している自分を想像し、ひたすら練習をしました。苦しい時はいいイメージを持てないものですが、それを乗り越えた先にいる自分を想像して取り組んでいました。

――女子プロ野球の普及活動もされていると思いますが、その中で難しさを感じることもありますか。

女子プロ野球はまだ認知度が低いですが、選手は全員がもっと広めたいという気持ちを持っていると思います。それでも普及がうまくいかなくて、どうしたらいいか分からなくなる瞬間や、みんなで話し合ってもいいアイディアが出ない時はありますね。

――日本代表としてW杯にも2大会連続で選出され、優勝に大きく貢献されています。W杯の前後や2012年の大会と2014年の大会で感じた違いがあれば教えてください。

子供の頃からずっと日本代表に憧れていたので、日の丸を付けたユニフォームを着ることができたのは私の中で大きかったです。同時にW杯3連覇、4連覇が懸かっていたので、プレッシャーもありましたが、それが自分を成長させてくれる経験にもなったと思います。これからもそういった場面での経験を活かし、成長していきたいです。

――女子野球の魅力はどのようなところにあると思いますか。

女子の野球の選手は子供の頃から競技を続ける環境というのが少なく、うまくても途中で止めざるを得なかった人も私の周りにはいました。女子プロ野球にも苦労しながらプレーを続けてきた選手がたくさんいます。男子と比べると環境面での苦労がある分、とにかく野球が好き、という強い想いがプレーに全面に現れていると思います。

川端友紀 川端友紀

――試合を観ても、真剣な中でしっかり声が出ていて、笑顔で楽しそうにプレーしている姿が印象的です。

――今後川端選手が目指す目標や選手として大切にしているモットーを教えてください。

私の中では毎年リーグで首位打者を獲るということを目標にしています。あとは子供の頃からの父の教えで、練習で手を抜かないということは意識しています。それもただ数をこなすのではなく、少ない数でも手を抜かずにしっかりやるということをずっと言われていました。兄もそうだと思いますが、今でもその言葉は練習の時に頭の片隅に置いていて、ここで手を抜いたら後悔する、という気持ちで取り組むようにしています。

――ご自身でもおっしゃっている「負けず嫌い」な部分もそのようなところから来ているんですね!

――プレー面に関してのアピールポイントを教えてください。

やはりバッティングですね。特にボールに逆らわずに広角に打てるところを見てもらいたいです。

――目標や憧れにしている選手はいますか。

青木宣親選手で、プロに入る時に背番号23を選んだのもその影響です。足も速いですし、低く速い打球もホームランも打てるという、いろいろなバッティングができるところが好きです。

川端友紀

憧れの青木選手同様に川端選手も俊足好打なプレーヤー

――女子プロ野球選手や日本代表として緊張する場面もあると思いますが、そういった時に意識して取り組んでいることはありますか。

緊張はしますが、そのせいで小さくならないようにはしています。その緊張を楽しむくらいの気持ちを持つことを意識していますね。

特に私は深呼吸を大切にしています。例えばプレー中にミスをして焦っている時には深呼吸をして落ち着かせて、次の動作を考えられるようにしています。

――打席に入る際のルーティーンワークはありますか。

細かいことは決まっていませんが、毎回ピッチャーではなく、その先のフェンスを一度見てからバッターボックスに入るようにしています。近くを見ているとだんだん背筋が丸まってきたり、小さなバッティングになってきたりしてしまうので、姿勢を正してから打席に臨んでいます。これは兄から教わって取り入れています。

――川端選手は大阪出身でいらっしゃいますが、関西から関東に引っ越してきて、生活面で変化したことはありますか。

今までは共同生活だったりしましたが、関東に来て初めて一人暮らしを始めました。当たり前ですが、自分のことは全部自分でやらないといけません。今まで洗濯は自分でやっていましたが、食事を作ることはなかったので、食べる面での苦労は感じています。でもこちらの方にはおいしいお店がたくさんあって、よくチームメイトともご飯を食べに行きます。それが毎回楽しみでもありますね。

――特に何がお好きですか。

よく行くのは焼き鳥屋さんや焼肉屋さん、あとはおばちゃんが1人でやっている定食屋さんにお世話になっています。すごく可愛がってもらっていて、よくご飯を食べさせてもらっているので、好きですね。

川端友紀

――川端選手は2012年にベストドレッサー賞にも輝いていますね。ユニフォーム姿で、格好良かったです。

あれは特別賞という形だったので、恐縮なのですが…ユニフォームであの壇上に立ったのは私が初めてだと思います(笑)

――好きな野球漫画はありますか。

あだち充さんのH2が好きです。

――オフの日の過ごし方を教えてください。

疲れたな、と感じた時はアロマが好きなので、香りを焚いて家でゆっくりしています。好きな香りはレモングラスです。

あとは最近クライミングをします。トレーニングにもなるので、試合の感覚が開いた時には行きます。本当に全身痛くなるんですよ(笑)

昔から犬が好きなので、ペットショップにもよく行きます!遠征が多いので、かわいそうで飼ってあげることはできないですが、癒されています。実家でもポメラニアンを飼っていました。


本インタビュー後、9月21日(月・祝)にさいたま市営浦和球場で行われた埼玉アストライア対京都フローラの試合後にも川端選手にお話を伺うことができました。

この試合では埼玉アストライアが2-1で勝利。川端選手は2打数1安打を放ち、逆転のホームを踏んでいます。

――今日はお疲れ様でした。京都の小西投手の素晴らしいピッチングでノーヒットノーランの可能性もあった中で、6回にチーム初ヒットとなる三塁への内野安打を放ちました。あの打席を振り返ってみてください。

外角いっぱいのボールでした。何とかしぶとく内野安打にできてよかったです。どんな形でも塁に出ようという気持ちで打席に入りました。

――ついに首位・京都フローラとのゲーム差を0.5としました。(※9月21日時点)明日の試合に向けて一言お願いします。

この3連戦は3連勝するという気持ちでいたのであと1つ、チーム一丸となって一球一球に集中して勝ちたいと思います。

川端友紀

――それでは、最後に読者の方へメッセージをお願いします。

女子プロ野球も今年で6年目になりましたが、まだまだ知らない方が多くいらっしゃると思います。まずは生で私達のプレーを観て頂きたいと思います。イニング間や試合後にも皆さんに楽しんでもらえるようなイベントを行っています。ぜひ球場に足を運んでみてください!

――川端選手はプロ通算300安打達成まであと1本に迫っています。チームの勝利と共に記録の方も期待しております。ありがとうございました!