地元に賑わいを!スポーツツーリズムは地方活性化の起爆剤になれるのか。

2017.08.07 森 大樹

2019年のラグビーW杯、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催が決定し、それに向けて2015年にはスポーツ庁が発足するなど、日本でもスポーツが盛り上がりを見せ始めている。様々な企業や自治体もそれに伴い、スポーツに関連した新しい取り組みをスタートさせている。

その一つがスポーツツーリズムだ。スポーツツーリズムとは観戦や大会参加等、スポーツを目的とした旅行のことで、各地の観光と合わせた促進を行うことで地方の活性化に繋げられるとして、注目を集めている。

先日、7月25〜27日の期間で行われたスポーツ健康産業展示会・SPORTEC2017にもスポーツツーリズムを行う団体が出展した。

少子高齢化・過疎化が進む日本において、地元に賑わいももたらすために地方はスポーツツーリズムをどのように活用しているのか、SPORTECに出展した各団体の取り組みを紹介したい。

 

“先駆け”であるさいたま市。

2011年に発足したさいたまスポーツコミッション(埼玉県さいたま市・さいたま観光国際協会内)はスポーツツーリズムにおける施策を行う組織の先駆け的存在だ。この年は観光庁から「スポーツツーリズム推進基本方針」が示され、国も本格的にスポーツツーリズムについて、取り組みを始めようとした時期である。

スポーツコミッションとはスポーツイベント誘致とそれに伴う開催者向けの支援制度を設け、その地域におけるスポーツ振興、経済活性化、交流人口の増加などを目指す団体のことである。

現さいたま市長・清水勇人氏は埼玉県議時代からスポーツを活かした街づくりの構想を抱いており、スポーツコミッションは市長肝いりの事業の1つと言えるだろう。

さいたま市での代表的なスポーツイベントは世界最高峰の自転車ロードレース「ツール・ド・フランス」で活躍する選手が出場し、その迫力を体感できる自転車競技イベント「ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム」。今年で5回目を迎えるこのイベントの経済効果は約29億円とも言われている。さいたまスポーツコミッションではその他にも各競技団体が行う全国大会などの誘致を行っている。

「スポーツの全国大会をやるといっても各競技団体は場所を取るのが大変なんですよね。1年前から押さえないといけないので。これまでは役所に競技団体が施設の貸し出しのお願いをしていました。ところが我々のような組織ができたことによって、先にこちらから会場を押さえるので『大会をやってください』と主催側にお声がけできるようになったという違いはあります。一度大会を開けば競技団体とのパイプや人間関係ができるので、いろいろな他の大会についても相談が来るようになるんです。例えばバレーボールの実業団の大会をやると、次はママさんバレーや高校生の大会も開きたいといったような、カテゴリの違う大会について、お話をいただきます。」(さいたまスポーツコミッション・根岸 稔氏)

スポーツコミッションができたことで、大会やイベント誘致をしやすくなったようだ。しかし、その一方で課題もある。

2つのJ1クラブとサッカー専用スタジアムがある“サッカーのまち”として知られるさいたま市だが、現状ではサッカーに関連した大会やイベントの誘致がしにくいという点である。

サッカーで使用される市内3つのスタジアム・競技場はすべて天然芝で、維持のために使用できる日数が限られている。そして、ほとんどがJリーグやなでしこリーグの試合開催に充てられており、建て替え工事が行われている国立競技場開催に代わって高校サッカーのメイン会場としても使われているからだ。

その他にも施設設備の関係で受け入れが難しい競技があるが、当面は既存のものを活用し、大会主催者にアプローチをしていく方針だ。

 

コンパクトなスポーツ&文化の街

2013年に新潟県新潟市に設立された新潟市文化・スポーツコミッション。特徴的なのはスポーツだけでなく、“文化”というワードが入っていることだ。

オリンピックというのは本来“スポーツと文化の祭典”であり、オリンピック憲章の中にもその旨が書かれている。実際、2010年夏季ロンドン大会では各地で11万7000件もの文化プログラムが行われ、伝統や芸術といった文化を発信する機会ができたことで地域経済活性化や観光振興に繋げた事例もある。

国内外からの観光需要の増加が見込めれば、地方の人々にとっても世界的なスポーツイベントを自国に招致する意義がより大きくなる。国民全体のオリンピックへの関心・参加意欲を高める効果も期待できるだけに、文化的なイベントや施策は積極的に行っていくべきであり、新潟市文化・スポーツコミッションも同様の考えを持ちつつ、施策を行っていくことを念頭に置いている。

新潟市内には30,000人収容の野球場・HARD OFF ECOスタジアム新潟や2002年日韓ワールドカップの会場であり、陸上の国際基準を満たすデンカビックスワンスタジアムなどといった充実した施設が存在する。ただ、最大の強みはハード自体の存在ではなく、その立地関係にある。

新潟駅を中心に、半径6.5km圏内に既出の2つのスタジアムがあり、スケートリンクや陸上競技場、複数の体育館が集約されているのだ。関西方面・東北方面・太平洋側に繋がる高速道路も通っている。

その強みを生かして、現在は東京オリンピックだけでなく、2018年平昌冬季オリンピックに向けた海外ナショナルチームの直前合宿誘致のアプローチを続けている。

一方の課題はスポーツイベント・大会招致にかかる金銭的な開催地負担だという。

「我々は自主的な財源を持たないので、県や市に負担をお願いしないといけないというのが課題です。突然イベントを招致したいという依頼が来てもなぜそれを新潟でやるのか、なぜこのタイミングなのか、という話になり、行政での予算化をするのは大変です。」(新潟市文化・スポーツコミッション:古田 賢さん)

新潟市にもアルビレックス新潟をスポンサードする亀田製菓をはじめ全国区の企業が存在はしているが、例えば日本における自動車製造業のような大きさの売り上げ規模を持つ会社はないため、大口での支援の可能性は低いと古田さんは分析している。