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ママチャリGPとは何か? サーキットをママチャリで7時間走り続ける過酷なスポーツ

2017.01.19 / 森 大樹

ママチャリGP

富士スピードウェイといえば国内屈指の高速サーキットとして知られている。約1.5kmのホームストレートを持ち、コース幅も広い。かつてはF1日本グランプリも行われ、現在も数々のモータースポーツレースが行われているサーキットであるが、毎年1月にはまた一風違った乗り物が白熱の戦いを繰り広げる。

その乗り物こそが“ママチャリ”だ。

ママチャリ日本グランプリ チーム対抗7時間耐久 ママチャリ世界選手権」(通称:ママチャリGP)は今年で10回目を迎えた。

これはその名の通り、ママチャリで全長約4.5kmの富士スピードウェイをチームで7時間走り続けるというレースである。

今年も正月気分が抜けきらない1月7日、全国から1,156チームのママチャリの猛者達が集結した。そして弊社・株式会社Link Sportsも会社総出で参加したのであった…。

 

弊社はママチャリGPに3年連続3回目の出場である。元々は弊社COOの馬場を中心とした自転車好き(社内少数派、というか実質2人だけ)が半ば独断で参加を決めたことが始まりだった。真冬の静岡の山間部を自転車で走る=寒いのは容易に想像ができるが、スポーツの会社である以上、こういった体を動かすイベントへの参加は積極的でありたい。

かくして毎年の恒例イベントとなったママチャリGPであったが、参加の顔ぶれは毎回違っている。今回も昨年春以降に入社した3人が初参加となった。

 

ママチャリGPの朝は早い。というか、前乗りである。先発組(先の自転車好き2人)は待機場所確保と自転車車両点検のため、先に出かける。

7時間耐久レースではあるが、走っている1人を除いては自分の順番が来るまでただひたすら待つのみであり、その時間の大半をピットに設けられた待機場所で過ごすことになる。各チーム10人前後で参加するため、それなりのスペースが確保できないとなかなか辛い。

ママチャリGPの朝

ピットに確保した待機場所。こたつやヒーターを用意してくる人の姿も見られた。

ママチャリGPに参加する自転車は車両規定を満たしているかどうかの検査が必要だ。検査は本番前日の15〜18時もしくは当日の3〜5時に行われる。

過去2回参加した教訓を生かし、今年先発組は早めに仕事を切り上げ、前日15時ごろに現地に到着したのだった。ちなみにピットの外側にはキャンプを張って、BBQなどを行えるエリアがあるのだが、そちらはさらに早く行かないと確保できないらしい。一体何時に行けばいいのだろうか…。

一方、後発組はいくつかの車に分かれ、レース当日の明け方に出発した。

集合時間の7時に間に合うために弊社CTO・濱本が運転する車が私の自宅に迎えに来たのは3時45分だ。まだ日も昇らない中、眠い目をこすりながら、家を出た。

現地に到着したら、各自持ってきた備品などを広げ、着替えなどの準備を行う。

レースは8時開始。スターターは自転車乗りで“言い出しっぺ”の馬場が務めるのが恒例となっている。

ママチャリGP

スターターを務める馬場。

そのスタートだが、非常に危険である。

1000台以上のママチャリが一斉にスタートし、長く緩やかに下っていく1コーナーに一斉に飛び込んでいくのだ。コース上の位置取りが重要であるのは言うまでもなく、中には先を急ぎすぎた自転車がそのまま曲がりきれずに豪快にコースアウトしたり、急ブレーキをかけたせいで空を飛んでいく、なんてことも…。

実際、レース中も転倒する人が出ており、イエローフラッグ(コース上に危険があることを知らせる旗)が振られる光景を目の当たりにした。

ママチャリGPのレースクイーン

レースクイーンがスタートまでの時間を知らせる

 

いよいよスタート!先を急ぎすぎるとえらい目に遭うので要注意。

 

コースは約4.5kmの道のりだが、平坦ではない。前半4分の3はほぼずっと下りで、残りの4分の1で下った分を一気に登る。中盤に富士山が綺麗に見えるポイントがあったりして、初参加の時は感動したものだ。でも、それを過ぎるとそろそろ登りに備えなければならない。

ママチャリGP

 

ダンロップの看板が見えてきたらそこから登りが始まる。最大高低差約35m(ビル10階分に相当)を一気に駆け上がる!

…と言うのは簡単だが、これがなかなかきつい。弊社はギアなしのママチャリで参加しているから余計にしんどい。

申し込みの際にエントリーのクラス分けとしてギアの有無を聞かれるのだが、なぜか無しの部分には“男は無段!”と書かれている。まんまとそれに乗せられてギアなしでエントリーしたが最後。ギアなしの自転車を会社で購入し、男の無段に3年連続で参加することになってしまった。

登り坂ではもちろんのこと、直線でもギアの有無の差は大きい。ギアなしの自転車は漕いでも漕いでも前に進まない。その横を颯爽とギアありの自転車が駆け抜けていくと非常に虚しいものがある。

また今年はエントリークラスに「ラブラブ」というのも追加された。これはカップルで参加するための階級だ。7時間を当然2人で走ることになるわけで、まさかそんな人がいるはずがない…と思っていたら1組だけいた。それも周回数は28で635位という恐るべき結果を出している。ラブラブクラスの記念すべき初代王者に輝いた。

 

これまでかなりレース要素を強くお伝えしてきたが、ママチャリGPは年に1度のお祭りでもある。真剣に走るだけではなく、1つのイベントとして楽しむ人もたくさんいる。特に目を引くのが車両に施した装飾や、仮装する人々の姿だ。

ママチャリGP

ちょうど我々の横でドライバー交代を行っていたBEST コスプレ賞準優勝の「がっこうにいこう!自転車部」。ヒゲなどを生やしたまま、明らかに女装コスプレと分かる状態でセーラー服を着用している男性陣の少々雑な感じと、前かごに設置された机の上に置かれた給食と机の横にぶら下がっている手提げ袋など、細部へのこだわりが光っていた。

ママチャリGP

酉年だから…。でも当然それでは空高く羽ばたくように速くは走れない。

 

さて、そんな中でわりと真剣にレースに臨んだ弊社チームの結果はどうだったのか。

一昨年は473位、昨年は239位と年々順位を上げてきたが果たして…

 

 

175位/1156チーム(無段23位/105チーム)!

周回数は35周でチーム内最速ラップタイムは10分5秒。ちなみに私は自己ベストを更新する11分58秒が最速だった。

ちなみに富士スピードウェイのコースレコードは2008年のF1日本GPでフェリペ・マッサ選手(フェラーリ)が出した1分17秒287だ。我々がコースを1周する間に約10周してしまう計算になる。さすがF1カー。…いや、恐るべしママチャリの遅さ。

 

ただ、全体の結果を見ると1周7分半を切るようなタイムを出している人もいたりする。優勝チームは2位と2周差をつけ、周回数51を記録した。平均周回タイムは8分半を切っており、総走行距離は232kmにも及ぶ。これは東京〜浜松間に匹敵する距離だ。浜松までママチャリで7時間行くなんて考えられない。

 

ママチャリGP

誰がどうみても近所のコンビニに買い物に出かけているようにしか見えないが、レース中である。

 

今年も23,800人が来場し、熱い戦いが繰り広げられたママチャリGPだが、我々を含め、「寒い・眠い・辛い」レースになぜこれほどまでに人が集まるのだろうか。

その理由は賞を獲りたい、タイムを更新したい、とにかく目立ちたいなど、様々あると思うが、私自身はチームの結束を強めるという要素を感じている。辛い状況を共有したり、タイムをメンバー間で競い合ったりすることで生まれる話題がある。特に我々は会社メンバーで参加しているが故に業務を除いて7時間も時間を共にすることはほとんどない。年に1度、待ち時間にゲームなどを一緒に楽しんだりすることで新鮮なコミュニケーションが生まれる。

ママチャリGPを恒例イベントにできるのはスポーツの会社ならではかもしれないが、運動好きを集めて、1度参加してみてはいかがだろうか?

そして来年も雨が降らないことを祈るばかりである。

来年の募集ページ

 

ママチャリGP

 

ママチャリGPの待機時間のために用意していくべきグッズ6選

これから参加するであろう、猛者達にここで3年参加して分かった持っていくべきものをご紹介しておく。

1.防寒具(着替え)
とにかく多めに持っていった方がいい。寒いとはいえ、自転車に乗って体を動かせば汗をかく。

2.敷物(寝袋)
ただのレジャーシートだけでは寒い。下半身を冷やすことは絶対に避けるべき。厚手のマットや断熱シート、寝袋がおすすめ。

3.電源タップ
早めに行ってコンセントを確保し、使用。何をするにもないと困る。

4.電気ポット
待ち時間に摂る暖かい飲み物や食べ物を作るためには必須。

5.ボード・カードゲーム
待ち時間はメンバーとの親睦を深める絶好の機会。

6.台車
実は駐車場からコースまでは遠く、上り坂のため、場所によっては20分以上歩かされるため、備品を運ぶのも一苦労だったりする。そういう時のために便利なので用意しておいた方がいいだろう。