クラブの社長とリーグの副理事長。2足のわらじを履く中で描くビジョンとは

2017.12.08 AZrena編集部

Bリーグ・千葉ジェッツふなばしを率いる島田慎二氏の起こした“改革”と、彼が考えるリーグとクラブのあるべき未来とは?

前編では島田氏が来る前と後でジェッツの内部がどのように変わったのか、そして組織を変えていくためのアプローチについて語って頂いた。後編である今回は、前編に引き続きクラブ変革について、そして島田社長が持つもう1つの肩書である“Bリーグ副理事長”という立場に立った経緯と、見据える先について語って頂いた。

 

スポーツ界を”勝ち組”にする

-クラブの変革に着手するにあたって最も重要視していたことはどういう点でしょうか。

1番はスタッフのマインドセットですね。今にも潰れそうで火の車という状況でしたし、社員も『やめた方が良いかな』と思ったり『今月給料出るのかな…』と不安になりながら仕事をしている状態でした。そんな中で私が「俺が来たから大丈夫だ」と言っても、社員からしたら何者なのかもわからない人に託すのも難しい。だから、何もないからこそ理念を作り、絶対明確な方針を持って再建しようと伝えました。

「スポーツ界なんか儲からない、みたいな発想はダメだ。儲からないと思ってるから儲からないんだ。負け組と思ってるから負け組なんであって、俺がそれを勝ち組にしてやる!」ということを言っていました。そのマインドセットですよね。

その中で結果が目に見えるのは決算というタイミング。そこに向けて目標を立て、少しでも良ければボーナスを出すと。こうやって約束したことを2年くらい守ると、部下たちも信じてくれるようになるんです。要は経営者として、言っていることをちゃんと実現するということが大事なんですよね。社員との信頼関係無くしてマインドセットは起こりません。ただ、1年だけではまだ疑いは晴れないと思います。2年ぐらいやるとマインドが変わるんです。『この人に付いて行ったらやれる』『この人なら本当にやってしまうかも』と。そう信じてもらえるために、2年間、有言実行を続けてきました。そこから私を信用してくれるようになったので、進もうとしたときにベクトルが揃い、パワーが出るんです。

 

バスケ界で突き抜けても、大したことはない

-変革していく中で行った取り組みの1つに就業時間の徹底もあったと。

まだNO残業にできているわけではないですが、それを達成したり、本当に他のスポーツチームで働いてる人より高い給料にしたいです。
ジェッツのバスケを見てたら本当に元気が出るとファンに言わしめたい。アリーナエンターテイメントはここまでやるんだ、と思わせるくらい圧倒的なものを見せたいと思っています。バスケ界で1番人が入っていて、売り上げが1番高くて、勢いが1番ある、みたいなことは既に周囲から思われていると感じます。ただ、それらは大したことではないんです。もっと質を高めていかないと、この先もエンターテイメント産業で勝っていけない。これからはその先を追求するというプロセスで、売り上げももう1回上がっていくと思うんです。これまでは数字をガンガン追ってきた6年でしたけど、今年は質を大事にしていきたいなと考えています。

 

スポーツそのものの市場価値を高めていくためには人材の流動性といいますか、他の業種で成功を収めた人がこのスポーツ業界に入っていくことが重要だと感じます。それについてはいかがでしょうか。

大歓迎ですよね。AクラブからBクラブに行ったり、野球やサッカーのクラブに行くのも良いかもしれないです。そして、別の業界からもどんどん人材が流入してきて欲しいですね。私としてはそうなって欲しいと心底思っていますし、スポーツ産業全体の経営の質が上がって行ってほしいと願っています。。全体の経営の質が上がって、各地域で地場産業が盛り上がり、収益もあがって、その価値を束ねるリーグがスポンサーを増やして再投資して配分したり…という好循環を生み出したいなと。

 

クラブの社長であり、リーグの理事の顔も

-島田さんはBリーグの副理事長も兼任なさっていますが、これはどういった経緯があるのでしょうか。

もともと川淵さんと大河さんから誘いを受けていたというのが1つと、もう1つは危機感です。Bリーグの1年目が終わりましたが、初年度はビギナーズラックみたいなところがある。だらこそ、本当の勝負は2年目からだと思っていました。そして、2年目がうまく進むためには、まだ弱さがあるなと。そう思っていた中で、川淵さんから『ジェッツとの二刀流でも良い』と言われたので、引き受けさせて頂きました。

 

-ジェッツをやりながらリーグ本体の副理事長をやるということに対して風当たりも強いのでは?

風当たりはすごく強いですね。言ってしまえば利益相反なりますから。例えばリーグで何かの制度を作った時に『ジェッツに有利なのではないか』とか『ジェッツに利益誘導しているのではないか』と思われますよね。ただ、そんなことを考えているようだったら、私は島田塾という勉強会を開いていません。とはいえそういった周囲の声は出てくると思うので、いつまでも二刀流はできないと考えています。実際、ジェッツの取る判断に対して「リーグの立場がありながら」などと言われることも出てきました。少なくとも今年は必要だと思ったので引き受けたというところです。

 

-なかなか思い切った決断だと思います。

ある意味捨て身じゃないですけど、体を張ってのことでもあると思います。組織全体と1チームという上下関係がある中での2つを兼任する訳ですからね。B3を入れると45クラブが点在していて、これらのクラブがしっかり経営して各地でお客さまが入り、地場で必要とされファンにも愛され、選手もそこにいて幸せだと思われるような環境があればそれは相当なパワーになると思います。そして、それを作って引っ張っていくのは当然クラブの社長なんですよ。その社長とクラブの成長なくしてBリーグの発展はない、ということを私は信じてやまないんです。

しかし、ビジネス経験豊富でもチェアマンも含めた上層部にクラブの経営を経験した人が、残念ながらリーグには1人もいませんでした。クラブの成長無くしてバスケ界に改革は起こせないという風に私は思っています。しかし、リーグがどのようにクラブとコミュニケーションを取っていくべきかという最適な解を持ってはいなかった。

もっと言うと、クラブの経営をわかってないということはファンの気持ちやスポンサーの気持ちがわからないんですよね。リーグというのはクラブの価値を最大化するために存在しているのに、クラブのことを知らなければできるわけもない。我々はファンをどう掴むか、というビジネスしているから、誰かしらクラブの経営感覚がわかる人がリーグに携わらないといけないとも感じていました。このままではミスリードしてしまうかもしれない、という危機感でしたね。

 

-そういう意味ではリーグ内でも改善すべき点がまだまだ多くあるのかなと思います。

あります。今は飛び道具といいますか、派手なことをリーグとしてはやりたがっていたように感じていました。ただ、私がリーグに行くことで、クラブの現場を理解した上で、やるべきことをしっかりやっていきたい。こういうことを常に言っています。

加えて、クラブが大事だということ。クラブの成長こそ我々の飯の種なんだ、ということがわからないといけないです。”Bリーグ”という組織を押し出すだけで大口のスポンサーがお金を出してくれるかと言ったらそうではない。クラブの価値を上げるというところに注力しなければいけません。それがリーグ側の1番のミッションです。

 

-最後になりますが、島田さんがリーグを運営するにしてもクラブの経営をしていくにしても、共に働きたいとか、スポーツ界にはこういう人材に来て欲しいというのがあれば教えて下さい。

月並みですけど謙虚な人が欲しいし素直な人が欲しいですね。あとは前向きで、自分からどんどん行動していく人が良いなと。多少やんちゃでも良いと思うんですよ。でも謙虚で素直であってほしいです。これは矛盾するようですけど、私は矛盾こそパワーの源だと思っています。

サッカーの本田圭佑選手とJリーグの村井チェアマンの記事を読んだのですが、そこで傾聴力と主張力という話がありました。耳を傾ける力と自己主張をする力は矛盾するようなものだけど、人に耳を傾けながら行動して自分を変えていく素直さが必要な反面、自分は絶対負けないという決めたらやり抜くんだという力強さが同居している人が、成功したアスリートに多く見られると。これと似たような事かなと。行動力があってどんどん自分で考えてやっていく。そういったアグレッシブな性格と前向きで謙虚で素直なところがあれば、成功は近づくと思います。