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立飛ホールディングスが描く、「スポーツの街・立川」の未来

2020.07.03 / AZrena編集部

『アリーナ立川立飛』の建設やB1リーグ・アルバルク東京のスポンサードなど、スポーツへの支援を多岐にわたって行なう不動産事業会社・立飛ホールディングス。『スポーツは街の活性化につながる』と信じ続けてきた村山正道代表取締役社長は、いかにして立川という街を変貌させていったのでしょうか。

『アリーナ立川立飛』の建設やB1リーグ・アルバルク東京のスポンサードなど、スポーツへの支援を多岐にわたって行なう不動産事業会社・立飛ホールディングス。「立川に文化を根付かせる」ことを目的に、様々な事業を展開している会社です。

『スポーツは街の活性化につながる』と信じ続けてきた村山正道代表取締役社長は、いかにして立川という街を変貌させていったのでしょうか。そして、まだ“仮の姿”だと語る街の未来とは。

(取材日:2020年5月25日     聞き手:竹中玲央奈、堀友美)


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事業展開と数値が比例している

スポーツへの支援は、間違いなく地域の活性化につながっています。

数年前には、立川市の人口は衰退していくと言われていましたが、実際には増加し続けています。『住みたい街ランキング』でも、2019年は立川が7位まで上がっていました(前年は18位。長谷工アーベストの調査より)。

 

立飛ホールディングスが積極的に事業を展開してきたことと、比例しているんです。やっていることは間違っていない。利益至上主義ではなく、立川に今までなかった芸術や文化、スポーツの文化を根付かせたいという想いでやっています。

 

なぜここまでやるのかと言われるが、不動産という「社会資本財」を持っている会社としての責任があるからです。弊社は立川市の25分の1、約98万㎡の敷地を持っています。われわれがどう動くかで、立川という街自体が変わります。

 

大相撲の立川立飛場所の巡業を8月に誘致しているのも、子供たちをターゲットにしているから。当初は協会から4月の平日に打診をいただいていましたが、それだと学校が始まっていて、子供たちが力士と触れ合えないですよね。巡業で一番面白いのは力士と子供のふれあいなんです。それに、両親や親戚の方々も観に来てくれます。

立川立飛場所は立飛ホールディングスが勧進元(編集部注:かんじんもと、興行主のこと)となっていますが、民間で勧進元をするのは当社だけだとか。地域の方に喜んでもらいたいという想いでやっていて、チケットの売れ行きも好調です。

 

アリーナ立川立飛を全国のロールモデルに

今後、立川は“スポーツの街”としての色が更に濃くなっていくと思います。

 

例えば元ビーチバレー選手の朝日健太郎さん(現参議院議員)は「TACHIHI BEACHをビーチスポーツの聖地にしたい」と言ってくださいました。ビーチスポーツは、屋内よりも屋外のほうが向いている競技が多いです。しかし、海岸は基本的にアクセスが良くないですよね。TACHIHI BEACHをうまく活用できれば、もっと盛り上げられるのではないかと考えています。

また、NHKの五輪実況や大相撲中継で有名な刈屋富士雄さんは、2020年5月に立飛ホールディングスの執行役員スポーツプロデューサーになりました。彼とは大相撲の夏巡業でお会いしたのですが、大相撲のW杯を日本で開催したいという夢があって。話を重ねるうちに『自分の夢を実現するのは立飛しかない』と言ってくれたんです。

 

アリーナ立川立飛には様々な方が可能性を感じていて、全国から視察が来ています。アリーナ立川立飛は※LC(ローコスト)アリーナとして建設されましたが、もっと全国の民間企業に真似してほしいですね。箱を作れば、スポーツ振興にものすごく貢献できますから。

※工期や建設費を抑えたシンプルな構造のアリーナ

 

立川はバスケットボールの文化が根付いてきているので、まずはそこを強めていきたいです。アリーナの建設前に立ち上げた一般社団法人多摩スポーツクラブでは、バスケットボールをはじめ、フェンシングやフットサルなどのスクールを展開しています。将来的には、ここからオリンピアンを輩出していきたいですね。

また、多摩スポーツクラブは2020年2月に、3x3(3人制バスケットボール)のTACHIKAWA DICEと合併しました。リーグの活性化につながれば嬉しいですし、地域の方々も“おらが街のチーム”ということで、愛着を持ってくれるのではないかと。いずれ5人制バスケットボールもやりたいですし、そうやって子供たちの可能性も広げていきたいと考えています。

 

スポーツチームの応援が、アリーナ建設のきっかけに

私は高校、大学と弓道をやっていました。ただ、技術的な面や、体形にも左右されることもあって、なぜ始めたのかと後悔したことも。7年間、ずっと恥をかいているような感覚でした。

それでも、親からは弓道を通して「変わったね」と言われました。私は人前に出ることが苦手で、常に下を向いていましたから。弓道をやっていなかったら、今は違った人生を歩んでいたと思います。

 

大学卒業後は、立飛企業株式会社(現・立飛ホールディングス)に入社して、野球部に入りました。人数が足りないという理由で仕方なく入りました。後ろ向きでした。

私が入部したときは立川の社会人リーグで3部でしたが、今では1部の上に当たる特A(トップリーグ)。野球部は会社の広告塔のような存在として、昔から大事にしています。

 

2009年には代表取締役社長に就任。スポーツは街の活性化につながると思っていたので、部活動以外にも何かスポーツに携わりたいと考えていました。そうして最初に始まったのが、同じ多摩地域を拠点とする東京サンレーヴスさん(現在はB3リーグに所属)の応援です。

サンレーヴスさんとはBリーグ開幕前からお付き合いをしていて、ある日、代表の方から「(立川で)3カ月で3,000人規模のアリーナが作れる」「自分たちのホームアリーナにしたい」という話がありました。もちろんスポーツ協賛は地元のためになると考えていましたが、どうせ作るのであれば、これから開幕するBリーグの仕様に合わせて建設したいなと。

 

設計には元選手の方も携わって、今までにないアリーナの形ができていきました。大きな売りは、駅から徒歩30秒というアクセスの良さ。しかも、建設するタイミングも絶妙だったんです。

アリーナ立川立飛は2017年10月に完成しましたが、その前に立川の飲食店で大きな出会いがありました。お店でたまたまアルバルク東京さんの関係者の方と知り合って、クラブがアリーナを探しているという話を聞いたんです。そこでアリーナ構想について話したところ、社長を紹介していただいて。直接お話しした結果、アルバルクさんがアリーナ立川立飛をメインアリーナとすることが決まりました。

 

ハードを整える上で重要なのは“トイレ”

アリーナ立川立飛の最寄駅は、多摩モノレールの立飛駅です。2015年には駅直結のららぽーとがオープンしましたが、商業施設だけだと集客が難しいというのも、アリーナを建設した理由の一つにあります。

これがまさにハマりました。アリーナではBリーグだけでなく、様々なスポーツの試合を行なっていますが、その前後にお客様がららぽーとに足を運ぶんです。また、駅の反対側には「TACHIHI BEACH」というバーベキュー場をつくり、ビーチスポーツも開催できるので、立川にはスポーツの文化が広がっていきました。

 

私がこういったハード面を整える上で重視しているのは、トイレです。アリーナの1階にはトイレが男女ともに2つずつあって、2階には女性用が2つ。女性は個室だけなので、どうしても数が足りなくなってしまいがちですが、男女で数を合わせています。

また、トイレの清潔感を保つことにもこだわっています。いくら評判の良い場所でも、トイレが清潔でないと、女性の満足度は下がるのではないかと。もし歴史があって古くても、清潔感がないといけないんです。

 

民間のアリーナだからこそ、思い立ったときに行動しやすい部分はありますね。話によると、民間でアリーナを持っているのは、当社だけなんだとか。残念ながら延期になってしまいましたが、東京五輪に向けてスポーツを盛り上げるため、深夜でもアリーナを貸し出すつもりでいました。

 

コロナ禍でもやらないと経済は止まる

今の立飛はまだ仮の姿だと思っています。2015年にららぽーとが完成して、2020年にはホールやホテル、商業施設などが一体化した「GREEN SPRINGS」をオープンしました。5年のスパンでインパクトのある開発を考え、その間は街の活性化に徹していきたい。まだまだやりたいことは2割くらいしかやっていないという感覚です。

 

その中でスポーツという文化はもちろん重要ですが、やはりプロの試合を生で見られるのが一番ですよね。私は野球部に所属していたこともあり、球場に行くと効率的に行なわれる試合前の練習がすごく気になってしまいます。これは配信では得られない情報ですし、やはり地域の方々にそういった、生だからこそ味わえる楽しみを提供したいなと。

 

今はコロナウイルスの影響で、多くのイベントが中止になっていますが、結局はやらないと経済が止まってしまいます。新型コロナウイルスで亡くなる方は増えていますが、経済が止まれば非行や犯罪が増えて、自殺者も出てくるのではないかと。更に悲惨な状況になってしまうのではないでしょうか。

だからこそ、活動を早く再開することに意味はあります。まずは立飛が率先して盛り上げて、スポーツ界に協力していきたいですね。