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アカツキが、ヴェルディと目指す未来。新マスコットからユニフォームまで

2020.08.25 / AZrena編集部

ゲーム事業を中心に展開する大手IT企業アカツキと、東京ヴェルディ。2017年にアカツキがスポンサーとなって以来、両者は切っても切れない関係であり続けてきました。

2020年5月に誕生した新マスコット「リヴェルン」や、2020年7月27日にリリースした新3rdユニフォームにも、同社の思いがしっかりと詰まっていました。

アカツキがヴェルディと描きたい未来とは、どのようなものなのでしょうか。同社から出向社員としてヴェルディのファンデベロップメント部に所属する菊地優斗氏に、アカツキとヴェルディの“今”と見据える“未来”について伺いました。

(取材日:2020年7月8日 聞き手:竹中玲央奈、堀友美)

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「アカツキ」を胸に戦う姿に、誇りを覚える

アカツキでは、ゲームを軸としたさまざまなIP(Intellectual Property:知的財産)のプロデュースカンパニーを目指しています。スポーツチームやスポーツ選手も、まさにIPのひとつ。ヴェルディへのスポンサードや経営参画は、IPを生かした新たなビジネス模索のひとつの形です。

その中で、具体的にヴェルディとアカツキの共同事業を作っていくことが私の仕事のミッションの一つです。今やっているのは、ヴェルディのEC事業、新マスコット“リヴェルン”のプロデュース、8月頭に公開したプロスポーツチーム初導入となるファンアプリの開発です。

 

アカツキは、ゲーム会社としてのイメージが強いと思います。ゲーム以外のIPのプロデュースもできるんだという企業ブランディングにも繋げていきたいですね。双方にとってメリットがある形で、アカツキの強みを活かしてできることを日々模索しています。

 

アカツキには、「アカツキ」という名のプロダクトがありません。会社名が前面に出る機会が少ない中で、ヴェルディの選手がアカツキを胸に戦っている姿は社員として誇らしく感じます。

 

2019年には、「ヴェルディキッズパーク」というホームゲームイベントにてキッズユニフォームを配布しました。家族揃って胸にアカツキのロゴが入ったユニフォームを着て、スタジアムで笑顔で観戦している姿を見て、とても嬉しかったです。

 

他にも、サポーターの方が「アカツキがスポンサーになってくださって良かった」などと声をかけてくださることも。やっていて良かったと感じる瞬間ですし、大好きなヴェルディに少なからず貢献できている実感があります。

 

社内で感じるスポンサーメリットもあります。もともと人の繋がりを大切にしてきた会社ですが、会社の規模拡大に伴ってどうしても横の繋がりが薄くなってしまっていた中で、交流する機会が少なくなっていました。ヴェルディの社内観戦会が、横の繋がりを生み出す大切な機会にもなっています。

 

「リヴェルン」はなぜ生まれたのか

2020年5月4日には、ヴェルディとアカツキ共同で制作した新マスコット「リヴェルン」が誕生しました。

クラブのマスコットはホームタウンの行事にも数多く参加するので、ホームタウンの住民の方々との幅広いタッチポイントという役割があります。にもかかわらず、約30年前に誕生した“ヴェルディ君”にはこのタッチポイントという役割において、さまざまな課題があり、この役割を十分に果たし切れているとは言えない状況でした。

このことは、ヴェルディの中でも課題として捉えられてきていました。ヴェルディを知ってもらう最初のタッチポイントとして、マスコットをもっと有効活用していきたい、と。キャラクターのプロデュースはまさにアカツキの強みなので、クラブとともに歩み、より多くの機会やメリットをスポンサーに還元するモデルケースになるように、ビジネスモデル化を検討したうえで、アカツキから協業を提案させていただいたという流れでした。

 

新しいマスコットを作っていくにあたって、ヴェルディ君では何が課題なのかを改めて分析しました。その上で、新しいマスコットに必要な要素を言語化して整理し、キャラクターデザインに落とし込んでいきました。

 

ヴェルディ君の課題を表す一つのエピソードがあります。稲城市の成人式にヴェルディ君を連れて行った時に、顕著にわかったんです。稲城市のマスコットキャラクター「稲城なしのすけ」も一緒に来ていましたが、みんな見事に「稲城なしのすけ」の方に寄っていって。抱きつく女子も少なかったです(笑)。あまりに人型すぎると、親近感が沸きにくいんですよね。他にも、子どもが抱きついた時にクチバシが当たってしまうなど、フォルム上の問題は多くありました。

一方で、ヴェルディ君の認知度の高さは強みでした。成人式でもたくさんの方が「あ、ヴェルディ君だ」と知ってくれていました。なのでヴェルディ君はそのままで、新たなマスコットを別で作ろうと。親近感が沸くように名前に「ヴェル」は絶対入れるなど、ヴェルディ君の強みと弱みをそれぞれ言語化して、新しいマスコットをプロデュースしました。

 

「こんな機会は二度とない」と出向を志願

私自身の話をしますと、幼稚園のころに家族で稲城市に引っ越し、地域で盛んだったこともあり、サッカーをはじめました。当時はまだ、ヴェルディが川崎に拠点を置いていた時代。2001年に本拠地移転してきたことを機に、試合を観に行くようになりました。

 

サポーターになったきっかけは、エスコートキッズを経験したことです。ヴェルディが稲城市の少年サッカークラブを招待していて、僕が所属していたチームにも声がかかりました。

当時日本代表に選ばれていて人気のあった三浦淳寛選手には誰が当たるのかと、ワクワクした記憶がありますね。僕は「レフティーモンスター」と呼ばれていた小倉隆史選手でした。この経験が、僕のヴェルディとの原点になっています。

ヴェルディ出身の選手はチームを離れても追っていました。ヴェルディジュニアユース出身で後に海外でもプレーした森本貴幸選手や、ヴェルディ時代にJ2歴代最多得点に並んだフッキ選手は特に。「みんな『J2だからこんなゴール決められるんでしょ』って言うけど、フッキは絶対将来ブラジル代表に入るから」と学校で言っていたことを覚えています。「仮に今のブラジル代表の選手がJ2に来て、40点近く取れるか?」と(笑)。2014年のブラジルW杯で、フッキが開幕スタメンだったのは感慨深かったですね。

 

大学卒業後、新卒で入ったIT企業では、スポーツマーケティング部で新規事業を検討したことがあったのですが、全然できなくて、事業の作り方を本質的には理解していないことに気づいたんです。小さい組織でより責任を感じられる立場で事業に関わる経験を積みたいと思ったことが、転職のきっかけでした。

 

アカツキの「心がワクワクする活動こそが、世界を輝かせる」というビジョンでは、スポーツで新規事業を作っていく可能性が大いにある会社だと感じました。この会社に入って成長して、スポーツ事業を立ち上げたいと思って入社しました。

社内で僕のサッカーへの想いは話したことがあったので、ヴェルディのスポンサーの話が動き出した時に、幸いにも声をかけていただくことができました。こんなチャンスはもう二度と来ないと思って、普段の業務が終わってからヴェルディのプロジェクトに関わり始めました。その甲斐あって、正式にヴェルディのプロジェクトメンバーにアサインしていただき、後にヴェルディへの出向が決まったという経緯があります。

 

共に、未来を作っていく

2020年7月27日には、新3rdユニフォームをリリース、7月28日に販売開始をしました。

今回のユニフォームには、「新型コロナウイルスを乗り越えよう」という今に向けてのメッセージではなく、あえて未来に向けたメッセージを伝えたいという想いを込めました。サッカークラブは、クラブスタッフだけでなく、ファン・サポーターや地域の皆さま、スポンサー企業の皆さま、ホームタウン行政の皆さまなど、さまざまな方の支えがあって成り立っています。「みんなで一致団結して、明るい未来を作っていこう」というのがコンセプトです。

 

紺色に明るい緑が散りばめられていて、暗闇から明るい未来が近づいていることを象徴しています。黒色ではなく紺色にすることで、夜明け前をイメージしました。明るい未来の光の中心となるのがヴェルディで、緑の光が差し込んでいます。

この「東京に夜明けを」というコンセプトは、まさに「アカツキ」という社名に込めた「世界に夜明けを」という想いと一致するんです。なので今回は、胸スポンサーのスペースに、これまで通り社名を掲出するのではなく、「UNITE FOR FUTURE」という世界へのメッセージを全面に出してくださいと提案させていただきました。社名を出すことで露出効果があるのは確かですが、それ以上に社名との親和性を感じました。

 

例えコロナの影響で形式が変わってしまったとしても、スポーツの持つ社会的価値自体が変わることはありません。むしろ、増していくと思います。今まで当たり前のように身近にあったスポーツでしたが、コロナで失って、その価値を再確認できた方も多いのではないでしょうか。

 

個人的な話にはなりますが、自粛生活を経て物足りなさを感じることが多かったです。人生に彩りを与えてくれていたのは、やはりエンタメだと改めて気づかされました。中でも、スポーツはリアルなエンタメ。だからこそ、老若男女関係なく一同に会し、スポーツを通じてでしか出会わないような人とも繋がることができます。本当に大事な存在だなと。

 

何事も今まで通りにはいかないし、経験したことがない状況であることには間違いありません。でも、この状況だからこそ、スポーツの持つ価値は今かけがえのないものとなっています。

スポーツ界一丸となって、一人ひとりが今できることを試行錯誤することで、多くの人に生きる喜びや楽しさを届けられると信じています。より多くの感動を届けるために、一緒に支え合って、盛り上げていきたいと思っています。