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元ベガルタ仙台・大久保剛志がタイでサッカーアカデミーを立ち上げた理由

2020.10.01 / AZrena編集部

明治安田生命J1リーグ所属・ベガルタ仙台の育成位組織出身で、2013年よりタイリーグへ活躍の舞台を移した大久保剛志さん。そして、7シーズン目を迎える今年、新たなチャレンジとしてタイでサッカーアカデミーを創設。その理由と背景について、語っていただきました。


<写真提供・YUKI FOOTBALL ACADEMY>

明治安田生命J1リーグ所属・ベガルタ仙台の育成位組織出身で、2014年よりタイリーグへ活躍の舞台を移した大久保剛志さん。そして、7シーズン目を迎える今年、新たなチャレンジとしてタイでサッカーアカデミーを創設。現役の選手が東南アジアの地で事業を始めようと思ったその理由と背景について、語っていただきました。

 

宮城を舞台にしたタイのテレビ番組で…

2005年にベガルタ仙台のトップチームに昇格し、日本でのプロサッカー選手人生をスタートさせました。ですが、2013年にモンテディオ山形を戦力外になり、そこでタイリーグ移籍のお話をいただき、挑戦することにしました。

僕が最初に入ったバンコクグラスはとても良いチームで、結果も残すことができ、何一つトラブル無く2年間過ごすことができました。その中で多くの日本人プレーヤーと知り合っていったのですが、タイリーグには様々な問題があると知りました。給与遅延やビザ問題が日常茶飯事で起こっていると。自分は恵まれていると感じましたね。結果として今もタイで不自由なくプレーすることができ、今年で7年目になります。


<写真提供:NAVY FC>

オフザピッチでも恵まれていると感じたこともあります。2016年にタイで仙台を舞台にしたドラマが撮影されたんです。その時のプロデューサーが仙台出身ということもあり「タイで頑張ってる仙台出身のサッカー選手を起用しよう」と。その縁で、ゲスト出演させていただきました。ラーメン屋の店長の役です(笑)。

 

信じられない話なのですが、その翌年にたまたま宮城県を舞台にした映画が公開されることになったんです。それにもゲスト出演させていただきました。こんなことが2年連続であったので、翌年に宮城県から観光PR大使という役職をいただいたんです。タイで宮城県のことを広めてほしい、と。その後、多大な協力のおかげで仙台-バンコク便が就航しました。全てのタイミングが良かったです。

その便のPRのために仙台のテレビ局がタイへ訪れて番組を作る際は、現地の案内役リポーターとして選んでいただき、観光PR大使としても活動しています。

本当にありがたい縁でした。初めての経験でしたし、それが地元と関わる番組だったのですごい嬉しかったです。

 

それ以降、タイのテレビ番組に出演させてもらうこともあり、活動の幅も広がりました。このような経験を経てこの国がますます好きになり、できるだけ長くここでプレーをしたいと同時に、何か還元できないかと考えたんです。それが、今回のアカデミー立ち上げに繋がっています。

 

震災から始まったサッカースクール構想

経緯としてはもう1つあります。

2011年に東日本大震災が起こり、僕の地元でもある岩沼市も大きな被害を受けました。震災後は瓦礫の山で子供達は外に出られず、公園や学校の校庭も自衛隊のかたに全て管理されていて、気軽に遊べるスペースがなかったんです。その中で皆さんストレスが溜まっていき、僕に何かできることはないかと考えました。

そこで、場所を借りて子供達とサッカーしようと思い、岩沼市の子どもたちを集めてサッカースクールを行ないました。ベガルタ仙台の選手たちもプライベートで来てくれましたね。


<写真提供・YUKI FOOTBALL ACADEMY>

 

食料もなく水も出なくてガソリンも足りない状況だったので、ネガティブな声もあったのは事実です。ただ、参加してくれた子供達と保護者の方からたくさんのお礼をいただいて、やってよかったと感じたんです。そのときに「これは継続しないといけない」と思い、定期的に開催していたのですが、2014年に僕がタイに来たことで実施が難しくなりました。そこからはタイのオフシーズンであり帰国するタイミングの12月に、ワンデーで行なうイベントに変えました。

 

これを毎年、宮城とバンコクで1回ずつ開催していたのですが、僕の伝えたいこと、教えたいことはワンデーでは足りない。もっと長期的なスパンで子たちにサッカーを教えたい気持ちが生まれたんです。これがアカデミー立ち上げの原点です。

 

ただ、現役でこの取り組みをするとなると、僕の練習時間と子供達の放課後の時間が被ってしまうので、直接指導するのは難しい。でも、現役中だからこそ伝えられることは絶対にあると思っていました。そんな中、タイで8年間プレーした後にサムットプラカーンのアカデミーコーチの経験もある木野村公昭さんと、栃木SCでマネージャーを務め、タイの少年サッカースクールでも指導経験がある井上貴太さんが僕の思いに共感してくれて、共に立ち上げる事になりました。

コロナの影響で当初より4ヶ月ずれて8月開講となりましたが、無事に開校することができています。


<写真提供:YUKI FOOTBALL ACADEMY>

 

数々の協賛企業がついた裏側

地元で行なっていたGoshi Smile Footballというイベントは子供達を無料で招待してオリジナルのユニフォームを作成し、全員にプレゼントしていました。100人から150人くらいの子供たちが来るのですが、色々と経費がかります。この活動経費に関して、YUKI FOOTBALLというブランドさんが支援してくれたんです。毎回の協力や多大な支援によってGoshi Smile Footballは継続できていますし、この活動が継続できたことがアカデミー設立の原点なので、なんとかしてYUKI FOOTBALLさんに恩返しをしたいなと思っていました。

 

そして今回、アカデミーを立ち上げられることになったので「YUKI FOOTBALLの名前をお借りしてロゴも付けて名前を全面に押し出してアカデミーを立ち上げたい!」と相談したら、凄く喜んでいただけたんです。僕の名前がアカデミーの名前に入っていない理由はここにあります。

 

アカデミー生に多大なるメリット

アカデミーを始めるにあたってスポンサー集めも行いました。ただ、今はコロナでどこもそんな余裕はないと。その背景も有り、新規でお願いに行くことはやめようと思いました。プライベートでも仲良くさせてもらったり、付き合いが長い企業の方だけにお願いしようと。結果として、皆さんから快く応援していただけることになりました。

 

もちろん、僕が直接、協賛のお願いにまわりました。ウェアの協賛以外にもアカデミー生への特典として、提携の美容院ではヘアカットが無料になったり、ジェラートや酵素風呂の企業さんにも協賛いただいて、アカデミー生は無料サービスが受けられたり、と。

そこも、僕がずっと通っていた酵素風呂のお店や、タイに来てから7年間通っている美容院です。そこで築き上げてきた絆があってこそ、なのかなと思います。

 

嬉しいことに多くの方々が「剛志がやるなら応援する!サポートするよ!」と言ってくださり、僕が今までやってきたことが無駄じゃなかったんだなと改めて思いました。

保護者や生徒向けに説明会も開催

<写真提供:YUKI FOOTBALL ACADEMY>

 

子供達はその美容院や酵素風呂に通うことになると思います。その流れで親御さんも通うという流れも生まれるでしょうし、宣伝&集客という協賛メリットとして返すことができたら幸いです。

 

僕も日々、現役引退が迫っていると感じています。現役を退いて“元サッカー選手”となった時のギャップはすごく大きいと感じているんです。日本代表でバリバリ活躍した選手たちはそのまま影響力を持って活動できると思うんですけど、僕なんかは一瞬で忘れ去られる存在。だからこそ、多少なりともら発信力がある今のほうが、伝えたいことも広げやすいのかなと。だからぼくは現役中にこういった事業をやりたいと思っていました。

 

僕を応援してくれるファンは男性が多いのですが、とあるサポーターから声をかけられた時に「剛志の諦めずに最後まで走るプレーが好きだ」「泥臭く倒れても何度も立ち上がってボールを追いかける姿が好きなんだ」と言われて。多くの男性ファンたちが僕の泥臭いプレーに期待をしてくれていることが強く伝わったので、引退してもこの事業に泥臭く情熱を注いでいきたいと思っています。


<写真提供:NAVY FC>

 

また、日本人だけではなくタイの子どもたちにもサッカーを指導したいんです。僕や木野村の思いや経験や“日本流”のものを彼らに還元できたらなと。そのために、恥ずかしいのですが、やっとタイ語学校にも通い始めました。やっぱり、僕が直接伝えられるようにしないといけないので。


<写真提供:YUKI FOOTBALL ACADEMY>

 

僕は高卒でベガルタのトップに上がってプロになったとき、練習後に何をすれば良いかわからず、特に意味もなく過ごしていました。あの時はもったいない時間の過ごし方をしていたと、今になって後悔しています。将来につながるためにやれることはたくさんありました。

今はスクールの経営にも関わる訳で、ビジネスの力をつけるために、日々勉強をしなければいけないですね。

もちろん、プレーは続けます。タイの舞台でしっかりサッカーで結果を出したいですね。オンザピッチもオフザピッチも、中途半端な思いではやってないということを示したいと思います。いずれは、タイで最も魅力的なアカデミーにしたいですね。