日本サッカー協会が目指す、パートナーシップのあり方。サッカーだからこそできる課題解決【JFAパートナー企画 #0 】

2021.11.30 市川 紀珠


※写真はJYD事業を担当する日本サッカー協会職員5名。中央が茂木氏、右端が青地氏

 

「日本代表以外の事業で収益化できる柱を作りたい。同時に、協会が持つアセットを活かし、企業と新たな価値を創造できるようなパートナーシップを目指したいという思いから始めました」

公益財団法人日本サッカー協会(以下、JFA)が2016年に開始した、パートナーシッププログラム JYD(JFA Youth&Development Programme)。企業とJFAが連携し、パートナー企業のビジネス課題と日本サッカー界の課題を解決していく「共創型」パートナーシップです。

今回取材したのは、マーケティング部 副部長兼パートナーシップ第二グループ グループ長の茂木邦彦(もてぎ・くにひこ)氏と、同部同グループ チーフオフィサーの青地俊彦(あおち・としひこ)氏。JYDを立ち上げた経緯や思い、パートナーシップを通じて企業と生み出していきたい価値について伺いました。

JFA夢フィールドにて、JYD事業担当5名

 

ーはじめに、共創型パートナーシップJYDの立ち上げに至った経緯を教えてください。

青地:検討し始めたのは、2014年頃です。当時も今も、マーケティングの観点では、日本代表の活動がJFAの最大の事業となっています。2014FIFAワールドカップブラジルが終了して、運営側のわれわれも少し燃え尽きた状態になっていました。

世界レベルで戦っていくためには、日本サッカー全体で強くならないといけない。育成や指導者養成など、幅広く注力していく必要性を改めて感じました。ビジネス視点でも代表ありきの状態になっていたので、別軸で収益性のある事業を作ろうという話になったんです。

代表は一度で大きな利益を期待できますが、年間に行う試合回数は限られています。「代表以外のサッカー」を活用する必要性は感じていました。

ただ当時は、ユースやシニア、女子カテゴリー等に協賛してくれる企業様は多くなく、、これらのカテゴリーの大会協賛に育成や指導者養成事業、施設整備事業も組み込んで、2016年にひとつのプロジェクトとしてスタートしたのがJYDです。

 

ーはじめた時の手応えはいかがだったのでしょうか?

青地:確信を持ってスタートしたわけではなかったですね。「こうやるともっと取り組みが増えていくかもしれない」という仮説しかなかったので。

それでも発足時には4社がパートナーになってくださり、良いスタートを切れました。幅広く大会に協賛ができ、実際に選手や指導者との接点を作れることに魅力を感じていただけました。「日本サッカー全体をサポートできる」というのは、やはりパートナーメリットとして強いのかなと。各地域のサッカー協会と連携して事業を展開することもできるので、全国規模で活動できるのも響いたのだと思います。

メディアにも取り上げていただきましたし、狙い通りプロモーションが十分にできていなかったカテゴリーの大会をアピールできました。それによって、トップだけではない選手たちや育成面・普及面では、JYDを通じて活動が広がったのではないかと感じました。その後、2年ほど経てその先をどうしていこうかということを検討し始めました。

 

ー具体的にどういった課題感を感じていたのですか?

青地:日本サッカー全体をカバーできるのは確かに魅力的。一方で、特定のカテゴリーに絞って協賛したい場合もあるのではないかと。お話をさせていただく中で、事業性に応じて「ピンポイントで関わりたい」という企業さんもいらっしゃると感じました。

この思いに応えようと、パートナーの種類を増やしたのがJYD フェーズ2の始まりです。従来のオフィシャルパートナーに加えて、現在は「Youth」「Women’s」「Senior」「Technical」「Green」「Referee」の6つのパートナー区分があります。

「Youth」「Women’s」「Senior」では各カテゴリーの大会への協賛や選手へのアプローチが可能です。「Technical」は指導者養成や選手育成事業に特化したパートナーシップ、「Green」はJFAの施設整備事業に関わっていただくJYDグリーンプロジェクトのパートナーとなっています。「Referee」は文字通りJFAの審判事業をサポートいただくパートナーになり、2021年からカテゴリーに加えました。

 

ー2016年のスタート時と比べて、反響はいかがでしたか?

青地:特に指導者養成や選手育成については、以前よりお問い合わせをいただくことが増えました。ですが、応えきれていないニーズもあると思っています。

例えば「Youth」パートナーでは大会協賛がメインになっていて、ブース出店やサンプリングなど大会内で完結するアクティベーションがほとんどです。大会に結びつける形でその外側で新たなイベントや施策を共同で開催するなど、企業様のニーズに応えていきたいですね。

マーケティング部 パートナーシップ第二グループ チーフオフィサーの青地氏

 

企業とサッカー界、それぞれの課題と共に向き合う

ー実際に行なってきた取り組みの中で、印象深かった事例はありますか?

青地:トヨタ様と取り組んでいる事例は印象的です。

JFAが都道府県サッカー協会と実施している普及活動のひとつに、「キッズ巡回指導」というものがあります。キッズリーダーの資格を持った指導者が、保育園や幼稚園に行ってサッカー教室を開催するものです。実は現場を担当している都道府県サッカー協会には、キッズリーダーの数が少なく各地域で十分に指導が行えていないという課題がありました。

そこで、トヨタ様の全国の販売店等のスタッフ向けに、キッズリーダー講習会を実施してライセンスを取得いただき、キッズリーダーになっていただきました。今では都道府県サッカー協会のキッズ指導者とトヨタ様のスタッフが協力して、各地で巡回指導を行っています。

サッカーを通じて双方の課題を解決することができ、パートナーとして理想の関係性を築けていると思います。


巡回指導の様子

 

ニチバン株式会社様には、オフィシャルパートナーとして全てのカテゴリーの権利を活用いただいています。同社には「メディカルで日本サッカーを強くする」を合言葉に2016年からサポートいただいています。近年では次世代トレーナーの育成として「SOCCER MEDICAL CAMP」を協働で開催しています。

また、ニチバン様の課題解決策として、シニア大会を含めたJFAの各種カテゴリーの大会でテーピングブースを出展していただいています。ニチバン様の契約トレーナーの方々が、大会に参加する選手たちにテーピングを実践し、アドバイスをしていただいています。われわれとしても正しい怪我予防の啓発に繋がるのでありがたいですね。


テーピングブースの様子

 

株式会社モルテン様ともずいぶん長いお付き合いになりますが、天皇杯や各カテゴリーの全国大会で使うボールは同社のものを使用しています。選手たちが力を最大限に発揮するために、より質の高いボールを使うことは選手にとって良いことですし、より高度でスリリングな試合演出という部分で観る側にとっても良い機会を提供していただいています。

JYDの活動は幅広いカテゴリーの選手と直接関わることができ、さらに天皇杯等での露出を通じてブランドを認知してもらう機会になっていることも喜んでいただけています。

第100回天皇杯決勝の試合球

 

ーパートナー企業様の課題解決に繋がるアクティベーションが実践できているんですね。また「Green」カテゴリーについても気になります。

青地: JFAの施設整備事業「JFAグリーンプロジェクト」をご支援いただくパートナーシップです。全国でのサッカー場整備支援やポット苗整備事業として天然芝のグラウンドを普及させる取り組み等になります。昨年、コロナ禍で活動が制限されてしまった中での具体的な取り組みとしては、東亜道路工業様、フジタ様、日本総合研究所様等との協働で、グラウンドづくりのオンラインサロンを実施しました。

各地で整備された施設事例を題材に、関わられた方をゲストスピーカーに呼んで、全11回にわたってオンライン講義を行いました。JFA初の朝活として早朝に実施しました。フットボールセンター整備や、廃校になった施設を活用した事例を紹介いただきながら、自治体との交渉をどのように行ったのかなどをお話しいただきました。なかなか聞けない裏側の話も好評で、多くのクラブ関係者やサッカー協会、自治体の方などにご参加いただきました。今後はJYDだからできる情報やノウハウの提供もパートナー企業と協働しながらやっていきたいですね。

 

「JYDだからできる」新たな価値創造へ

ーパートナー企業様へは、どのようにアプローチしているのですか?

茂木:先ほどの事例のように、何らかの事業上の課題をお持ちで、そこを解決するために、サッカーを通じた取り組みが活きそうな企業様にアプローチをしています。現状と課題についてヒアリングを行い、双方の課題が重なる共通項があり、その解決に向けて現実的に協働できそうな手段があるか、また企業様側の視点で、きちんと活動成果が得られそうかを詳らかに議論しながら、企業様とお話を進めています。

JYDのパートナーシップは、天皇杯を始めとした歴史ある大会等、そういう場面で露出ができる広告効果やサッカーファミリーにアプローチができることも魅力のひとつです。ですが短期的な露出効果だけでなく、課題解決に向けて、カスタマイズして活動できる仕組みを持っていることもまた大きな魅力です。JYDだからこそできる活動を通じて、企業様、サッカー界の双方にメリットのあるパートナーシップを目指しています。

 

ー課題に向けて同じ想いを持ってこそ、パートナーだと。

茂木:「課題解決」という共通のキーワードがなければ続いていかないと思うんです。解決に向けた強い想いがあればこそ、工夫が生まれますし、双方での知見を引き出して、そして掛け合わせたアイデアも生まれるのだと思います。ですので、しっかりと対話して、お互いがwin-winの関係になれる最適なパートナーシップのあり方を模索していきたいと考えています。

JYDを担当しているパートナーシップ第2グループのメンバーは、その想いを強く持って、企業様と対話することを心がけています。契約の窓口ですので座組みや仕組みを取り決める上ではもちろん、解決策のプランニングを行う上でも、強い想いをもってJFA内の関係組織と対話し、そのケイパビリティをフル活用できるように心がけています。

マーケティング部 副部長兼パートナーシップ第二グループ グループ長の茂木氏

 

 

ー今後の展望をお聞かせください。

茂木:まずは、さまざまなパートナー企業様と協働事例を積み上げていきたいです。「JYDなら、サッカーを通じて自社の課題を解決できる」「JFAやサッカーと関わることで今までと異なる解決策を見いだせた」と思っていただけるようになると良いなと。小さいヒントから、絶えず新しいアクティベーションを起こしたいと思っています。

JYDのようなカスタマイズ型の協賛活動は、今後ますます増えていくであろう企業様のESG経営への取り組みや、社会に貢献することから事業需要を作り出していくような中長期スパンでのマーケティング活動とも親和性がすごく高いと思います。

このような動きを見据えて、パートナー様との協働事例を積み上げて、それを知った企業様が新たな発想を得て、JFAと共に自社の課題解決に取り組みたいと思うようなサイクルが創れたら、すごく良いなと思っています。

青地:JYDパートナーは、一生のパートナー。例え契約が終わったとしても、続いていくような関係性でありたいです。そのためにも企業の課題に対して、サッカーを軸にどこまで真摯にわれわれが向き合えるかが重要になります。覚悟を持って取り組んでいきたいと思います。

茂木:サッカー界や世の中の課題を解決する仕組みのひとつが、JYDです。柔軟な発想力で、誰も考えたことがないような新しい価値を創造していきたいですね。また、今回JYDをより多くの方に知って頂くためにJFAの公式サイト内のページをリニューアルしました。プログラムの概要や、各パートナー様へのインタビューも定期的に発信させて頂きますので、是非一度ご確認頂きたいですね。

 

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