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グランパス×ポンタが示す、新たなパートナーシップのカタチ

2022.08.21 / AZrena編集部

2022年2月、Pontaポイントを運営しているロイヤリティ マーケティング社は、名古屋グランパスとパートナー契約を締結。プロ野球・オリックス・バファローズで同様の施策に取り組んできたロイヤリティ マーケティング社が、Jリーグに進出した理由とは?

2022年2月、Pontaポイントを運営しているロイヤリティ マーケティング社は、J1リーグ所属の名古屋グランパス(以下、グランパス)とパートナー契約を締結しました。

近年、スポーツに対する企業のスポンサーの形は多様化しています。これまでは企業が資金を提供し、チームは広告を掲載するケースがほとんど。しかし現在では、スポーツを活用し、企業の課題を解決する「パートナー」としての取り組みが盛んにおこなわれるようになりました。

今回のロイヤリティ マーケティング社と名古屋グランパスも、「パートナー」と呼ぶにふさわしい関係を築きあげている事例の一つ。たぬきをモチーフにしたPontaポイントのキャラクター「ポンタ」が、グランパスを応援する「グランパスポンタ」となって、Twitterでのツイートを実施。グランパスの試合結果に合わせた、「グランパスポンタ」の感情豊かなツイートは、サポーターの心をつかんでいます。

これまでにもプロ野球 オリックス・バファローズ(以下、バファローズ)で同様の施策に取り組んできたロイヤリティ マーケティング社が、Jリーグに進出した理由とは。野球との違いや、取り組みの手ごたえ、今後の展望を営業統括グループ ブランディング・コミュニケーション部の舛田 麻奈(ますだ まな)さん、柴田 豪(しばた ごう)さんに伺いました。

 

“ポイントのマスコット”とスポーツ

―まずは、名古屋グランパスとパートナーシップを結んだ経緯を教えてください。

舛田さん:「ポンタ×スポーツ」というコンセプトを掲げて、新たなスポーツをスポンサードしていきたい、と考えはじめたのがきっかけです。

弊社は、2016年からオリックス・バファローズ様とスポンサー契約を結んでいます。それ以外にも、女子プロゴルファーのスポンサーをするなど、スポーツとの関わりはありました。次にサポートさせていただくスポーツを考えるなかで、人気の高いサッカー、Jリーグという結論に至りました。


―Jリーグのなかで、名古屋グランパスを選んだ理由は?

柴田さん:ユニフォームにロゴを載せるだけではなく、ファンの人と一緒に楽しめる取り組みができるチームを探しました。その方針をグランパス様にも相談したところ、賛同していただけたんです。


ロイヤリティ マーケティング社 舛田さん

―そもそも、どのような経緯で企業のマーケティングにスポーツを使おうと思ったのでしょうか?

柴田さん:スポーツは、年齢や性別を問わず大勢の人が一緒に盛り上がれるコンテンツ。勝ち負けによって、感情の振れ幅が大きいことも特徴です。

舛田さん:そして、私たちには“ポンタ”というキャラクターがいます。親しみやすく、感情移入しやすいキャラクターと、感情が大きく動くスポーツ。相性が良いのではないかと考えました。

普段、共通ポイントのPontaサービスとしてポンタが登場するお買い物の場面は、すごく喜んだり落ち込んだりするシチュエーションがほとんどありません。スポーツに合わせて喜怒哀楽の表情を見せることで、ポンタを身近に感じてもらうこともできるのかな、とも思います。


―オリックス・バファローズとは、どのような施策を行なってきたのでしょうか?

柴田さん:バファローズ様でも、ポンタとのコラボ施策を実施しました。しかし、もともとはパートナーというよりも、スポンサーとしての立場を想定していたんです。

しかし、バファローズ様を応援するキャラクター「バファローズ☆ポンタ」を生み出し、Twitterを通して、ファンとコミュニケーションを取っていくうちに、我々の予想を超えたポジティブな反応をいただきました。その時に「これは、いけるな」と感じました。

バファローズ☆ポンタがファンの一員として、球団を応援することで、歓喜や落胆といった、スポーツによる感情の振れ幅をファンの皆さんと共有できました。バファローズ様との施策は、グランパス様のパートナーになるきっかけの一つとなりました。

感情の起伏を逆手に取る

―野球とサッカーで違いを感じることはありますか?

舛田さん:まず、試合数が全然違いますよね。

野球は毎日のように試合が開催されますが、サッカーは多くて週に2試合。試合結果によって生まれた感情を抱えながら、次の試合までの1週間を過ごさなければいけません。試合数が少ないからこそ、1試合の重みも違います。

また、バファローズ☆ポンタやグランパスポンタのTwitterアカウントでは、試合の勝敗に連動したツイートをするので、野球とサッカーでは圧倒的にタイムラインでの登場回数が異なります。施策を認知してくれているファンの人数も、バファローズと比べてグランパスはまだ少ない。まずは、多くの人に知ってもらえればと考えています。


―サポーターの感情を考えると、敗戦時のツイートは難しいのではないでしょうか?

柴田さん:“負け”もスポーツのうち。ポンタを使って、いかにネガティブな要素をポジティブな感情に繋げていけるかを考えています。どんな結果でも、さまざまな捉え方ができるのがスポーツの良さだと思っています。


ロイヤリティ マーケティング社 柴田さん

―たしかにサポーターは勝敗に関わらず、ポンタのリアクションを楽しみにしている部分があります。

柴田さん:ポンタのツイートを見て、「負けたけど、まあいいか」と笑ってもらいたいですね。

敗戦は、どうしても悲しみや怒りの感情に繋がってしまいます。ポンタがそういった感情のガス抜きをする役割になれればいいかなと。たとえ試合に敗れたとしても、サポーターの皆さんに「ポンタのツイートがおもしろい」と見ていただければ、私たちの願い通りです。

―文言やイラストなど、クリエイティブ面のこだわりはありますか?

柴田さん:たとえポジティブなことであっても、プレーを評価するような文言は入れないようにしています。私たちは、チームや選手を評価する立場ではないですからね。

文言よりは、イラストで勝負しようと考えています。イラストだけを提示すれば、セリフは受け手に委ねられます。こちらの感情を押しつけるのではなく、自由な解釈をしてもらうほうが受け入れてもらいやすいのではないかと。

ただ前提として、イラストを提示する私たちが、どれだけチームのことを知っているかは重要です。チーム愛は、イラストに反映されると思っています。サポーターと近い距離で接している以上、自分たちもそのチームを好きになることがスタート地点にあります。


―実際にスポンサーをしていると、企業内にそのチームのファンが増えるという話はよく聞きます。

柴田さん:たしかにバファローズ☆ポンタの運用を6年間してきて、社内で野球に関する会話は増えました。当初の運用メンバーは、野球の“や”の字も知らない人ばかりでした。ただ、今ではファンコミュニケーションの質も上がり、楽しい企画の誕生に繋がっています。グランパス様との施策でも、バファローズ様と同じ良い循環を生み出していきたいですね。


―グランパスサポーターのリアクションはいかがですか?

舛田さん:温かく迎え入れてくれました。新しく施策をはじめる競技であるうえに、名古屋グランパスにはグランパスくんなど、大人気のマスコットがすでにいます。まったく違う立場のキャラクターであるポンタが外から入っていくので、最初は「どうなることやら」とドキドキしていましたが、楽しんでいただけて安心しています。


―グランパスのマスコットは、Jリーグのなかでもとくに人気です。

柴田さん:マスコットが、チームの一員になっていますよね。どのチームのサポーターも、マスコットのグッズを身に着けているなど、マスコットが好きというのも、Jリーグサポーターの潜在的な特色だと思います。

【参照】グランパスくんが売れっ子になるまで。マスコットビジネス成功秘話


―実際にスタジアムへは行かれましたか?

舛田さん:はい、先日初めて観戦させていただきました。ずっと「すごい」と言っていましたね(笑)。今はコロナの影響で声出しが制限されていますが、声援があるともっと盛り上がると聞きました。その雰囲気を早く体験したいです。

柴田さん:試合以外にも、一日中楽しめる環境がそろっていますよね。周辺の施設など、スタッフの方だけでなく、地元の高校生やおじいちゃん、おばあちゃんまで、地域をあげてグランパスを支えていると感じました。

額面上ではない、新たなパートナーの形

―スポンサーになるうえで、会員数の増加などの費用対効果は考えましたか?

舛田さん:いちばんの目的は、数値ではなく、お互いに親しみを持ってもらうことです。

Pontaカードの会員数はすでに1億人を超えており、認知率も80~90%と高いんです。数字を追うよりも、グランパスサポーターにポンタを好きになってもらいたい、ポンタのファンの方にサッカーに興味をもってもらいたい、という思いが強いです。

そのうえで、グランパスサポーターの方に、数あるポイントカード会社の中から「グランパスポンタがいるから、Pontaカードがいいね」と選んでいただけるのが理想です。


―親しみをもらえているかなど、どのように効果測定をするのでしょうか?

柴田さん:リーグの開幕時期と、終盤12月ごろのリアクションを観測して、サポーターの考えや行動がどう変わったかを見ていくつもりです。今は取り組みがスタートしてまだ3、4か月なので、より多くの人に知ってもらうフェーズにいる感じですね。


―取り組みを始めて数か月が経ち、手ごたえはいかがですか?

柴田さん:グランパスサポーターや、Jリーグファンの方には、徐々に認知してもらえています。ただ、「まだいけるぞ!」と思っています。サポーターといっても、人によってTwitterを見る頻度も違いますし、一括りにはできません。すべてのサポーターに認知してもらえるように、取り組んでいきたいです。


―最後に、スポーツチームのパートナーになるメリットと、それを受けて今後展開していきたいことを聞かせてください。

舛田さん:スポーツチームとポンタのファンの接点をつくれるのは大きなメリットです。そして、感情をビジネスに絡める。それが良い方向に行けば、一気に連帯感が生まれ、双方のファンが増えます。

柴田さん:ただユニフォームにワッペンを貼って一年間を終えるのではなく、ファンと楽しんで一つになる。ポンタ、グランパスファミリーの皆さんと一緒になって、チームを応援できる企画を展開していきたいです。