鹿島の3連覇を支えた敏腕トレーナーが、業界変革のトリガーとなる!

2016.02.10 森 大樹

小池謙雅

 

【前編】小池謙雅トレーナーが、“常勝軍団”を優勝に導いた施術とは

 

作業ではなく施術を提供できる若者を

 

-治療院にはサッカー以外の競技の選手も来院されるのでしょうか?

最近だとラクロス日本代表の選手、車いすフェンシング日本チャンピオンの選手、アメフト、セーリング、格闘技、競輪選手など様々です。

 

-他の競技であっても基本的な施術の方法は変わらないのでしょうか?

変わらないですよ。競技における動きを実際に行いながら、どこが痛いのかフィードバックをもらい、鍼を打っていきます。動作分析を行いつつ、治療もするということです。

 

-痛みの原因となる箇所をすぐに見つけられるというのはやはり経験が成せる技ですね。

それができないと時間がかかりますからね。科学的根拠があって、職人の技術があって、初めて痛みが取れる。ある程度訓練を重ねないと難しい。

頭でっかちでも勘だけに頼っていても、どちらか一方しかなければ医療行為としては再現性に欠けてしまいますから。

 

小池謙雅

 

-より多くの方の悩みを解決するためには身に付けたものを後進の人に伝える必要も出てきますね。

 

そのために私自身も勉強を続けています。そもそも後進に伝える必要がなかったら、治療院を構えずフリーでやっていればいい。

私が治療院を建てたのはこの業界が徐々に斜陽産業になりつつあるからです。治療業界は歯科業界と同じくコンビニの数ほど増えていて、同時に倒産件数も増えている。そんな中でも本当に困っている人を助けたい、『作業』ではなく『施術』を提供したいという若い後進を育てていきたいんです。そうしないと患者さんも、未来ある治療家も、行き場がなくなってしまいます。

今世の中にあるのは簡単なマニュアルを使った施術で低単価、それでお客さんの回転率を上げるいわば「商売」です。そういうところの商品はコース揉みの『作業』です。例えば肩が痛くなってしっかりと施術を受けたいのに、治療院に行ったら隣の人と同じコース揉みを施されるわけです。治す技術よりも営業成績を追いかける、そのスタイルは自分には出来ないし、スタッフにもさせません。

 

-患者さんが困っていることをしっかり解決してあげる、というある種当たり前のことができていない現状があるのですね。

治療業界が儲かるからといって学校を増やし、それに踊らされて学生が増え続けている。でも蓋を開けてみたらリラクゼーション産業の台頭と、同業の開業ラッシュで鍼灸整骨院は過当競争の真只中。過去10年前よりも食えなくなっているわけです。それで結果として鍼灸整骨院も安かろう悪かろうの安易なリラクゼーションという同じパイに手を出し始めているのが現状です。一方で本当に治すための治療院を探している人が行く場所がなくて、困っているのも現実にあります。

しかし、利益を生むことに必死の治療院は人を育てることはしません。必要なのは治せるスタッフではなく利益を生むスタッフだから。これが悪循環の構造です。

私は社会的価値を提供できる治療院と治療家を育成したい。患者は治療院を探す時も正しく選べません。整体院、整骨院、中国気功整体、アロマテラピー、リラクゼーション、鍼灸…自分の症状がどの治療で治るのか、なんて利用者は区別が付かないですからね。でも私は治したいと強く願う患者が、一番にたどり着く場所を提供したい。

 

-そのような中で開業するのは相当な覚悟が必要だったのはないでしょうか?

こうやって考えるようになったのは実は開業してからなんです。開業した元々の理由は鹿島でアウトプットし続けることに対してリアリティを感じなくなったから。毎日のことで馴れすぎて、だんだん選手から感謝もされなくなってきていました。本来、トレーナーになるのではなく、開業したかったわけですしね。

僕は選手を躍動させ、チームが勝つことで後ろにいる数万人のサポーターの夢を支えていると思い込んでいました。でもそのサポーターの顔が僕には見えていないことに気が付いたんです。それよりも一人ひとりに出会って、その人の背景を知り、人生に一緒に寄り添って治してあげることの方が何倍も喜びが強いと思うようになっていきました。

 

内田篤人のユニフォーム 小池謙雅中には小池さんを訪ねてくる元鹿島選手もいる

 

治療家としての、人に感動を与えることができる喜び

 

 

-小池さんの治療におけるモットーを教えてください。

痛みを消し、可動域を戻すことで人を感動させること。「おぉ!」という声がたくさんの患者様の口から出てます。何年も曲がらなかった関節が2、30秒で治るわけです。「今までの人生は一体何だったんだ!」となります。大好きなサッカーができないとか、人生の障害になっていたものが一瞬で取れたらそう思いますよね。僕もそれを見ているのが最高に嬉しいです。痛みがなくなった人がこれから何の障害もなく、楽しく生きていく中で起こしていくアクションは社会的にすごく意味のあることだと思う。そういう人達が増えていったら絶対に世の中は明るくなっていきますよね。私達は社会の末端でそういう人達を増やしていきたいんです。

だから私が育てたスタッフが患者さんとハイタッチして喜んでいるのを見るのが、何よりも嬉しいです。私自身が施術して患者さんがよくなるのはもう想定通りでしかない。想像以上のことは起きないし、僕は絶対に結果を出せる自信があるから。もちろん自分が治せない症状に出会った時には正直に言います。

 

-今後の小池さんの目標を教えてください。

治療と教育を通して、「治せる」治療家を育成していき、社会を元気にしていくことが目標です。

痛みを取りたい=トリガー治療院に行こう、と特定のジャンルにおいて消費者の中ですぐ名前が出るようなポジションになれればと考えています。

 

小池謙雅

 

-一緒に働く人を選んだりすることもあると思いますが、人を見る上で重要視しているのはどういった部分ですか?

 

人間性です。うちは入ってからもコーチングやメンタルトレーニングなど、人間性を成長させるためのメソッドを使います。床を揃えてからでないと成長させられないです。技術だけ取ってあとは関係ない、となられては困ります。技術だけならセミナーだけ行っておけばいいのです。でもそれだと小手先だけになってしまい、治療家として結果的に誰も幸せに出来ない存在になる可能性が大きいです。

 

-少し離れますが、時間がある時にやっている趣味を教えてください。

ギターを弾いたり、仲間とフットサルをしたりしています。あとは娘への家族サービスですね。娘はたまに治療院にも来ますよ。「トリガー!トリガー行って痛いの治す!」って言っています(笑)

 

-それでは最後に読者の方にメッセージをお願いします。

仕事にはアマチュアかプロしかない。セミプロなんてありません。自分が提供したいものは時間なのか、技術なのか、社会的価値なのか…それが何かによってどんな仕事でもプロになれる可能性があります。

もし自分が利用する側(客)だったら、プロの客目線で物事の良し悪しを判断しますよね。同様に自分もサービスを提供する側であれば利用する側から厳しい目線に晒されていることを意識してもらいたいです。それをコツコツやっていけば10年後にはその分野のプロフェッショナルになれる可能性があります。高い志を持ち、行動を続けて下さい。

 

【前編はこちら】