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横田美鈴に聞く、チーム創設という挑戦の理由。NeOが目指す“ラクロス日本一”の向こう側

2016.12.02 / AZrena編集部

横田美鈴

今年、ラクロスの東日本社会人クラブチームのリーグ戦で初優勝を飾ったNeO。2014年度に立ち上がった、まだできて日の浅いチームだ。その創設に関わったのが、今もプレーヤーとして活躍している横田美鈴選手。

彼女は高校生の時にラクロスと出会い、その魅力の虜となり、進学した日本女子大学では当時2部だったラクロス部を1部昇格へと導いた。

その後もラクロス熱は冷めることはなく、社会人になるタイミングでクラブチームNeOを立ち上げている。何がそこまで彼女をラクロスへと駆り立てるのか。彼女の熱いラクロス愛を探った。

ラクロスは高校から。大学ではチームを1部昇格へ導く。

-まず初めに、スポーツの経歴を教えてください。

小学生の時は水泳をやっていて、中学生でバスケットボール、そして高校からラクロスを始めました。

初めは高校もバスケ部に入ろうと思っていたんですけど、うちの学校は全体的に部活の強い学校ではありませんでした。どうせその中でやるなら自分がやったことがないものにチャレンジしようと思い、バスケではなく、ラクロスを始めてみることにしたんです。本気でやったらどれだけこの競技は面白いんだろうと気になったというのもあります。

 

-高校でラクロス部があるところもめずらしいですよね。

そうですね。でも高校ラクロスも1部と2部に分かれています。1部の子達は大きな大会での優勝を狙っていますが、私たちは2部に所属していました。

当時は1部に上がるための基準などはなく、昇格は自己申告制でした。

ただ、弱いまま1部に行ったら負け続けるだけで、青春が終わってしまうので、うちの部活は2部で勝てて楽しいならそのままいればいいという感じでしたね。

勝利に貪欲でないチームにずっといたので私としてはもどかしい部分もありましたし、まだ自分がラクロスを楽しみきれていないと感じていた分、大学でも絶対続けようと思っていました。

 

-進学先に日本女子大学を選んだ理由は?

私立で生物系のことが学べる理学部があり、ラクロス部がある学校で、かつ学費が一番安いところを探して選びました。理学部があってラクロス部がある大学はあまりなかったんですよね。

 

-日本女子大学ラクロス部は当時どのくらいの順位だったのでしょうか?

2部に昇格した1年目に私は入部しました。強くなっていくチームに入りたかったんです。

 

-そして大学4年時に1部昇格を経験しています。大学時代はやはりそこが一番嬉しかったですか?

そうですね。でも本当は2年生で1部に昇格をして、いろいろ経験をしてから4年生で日本一になるというのが私たちの代の野望ではありました。実際、2年生の時にも入れ替え戦までは行けたのですが、最終的に昇格を争っていた学習院大学にあと一歩のところで負けてしまったんです。そこが1つターニングポイントでした。

結局3年生の時にも1部に上がれず、そこで日本一の夢は諦めて、最後の1年間で何とか昇格して、後輩たちが1部で戦える舞台を残そうという気持ちでした。

最終的に1部昇格を果たせて嬉しかったですが、日本一になれなかったというのが悔しくて、私はこのままでは終われないと思っていました。

 

-大学時代にラクロスをやっていて、良かったと思うことは?

人として成長できることです。本当は夢中になるものは何でもよくて、ラクロスは楽しみながら成長する手段でしかなかったと思うんです。

ただラクロスがまだ未熟なスポーツだから、大会・チーム運営から選手としての技術向上まで様々なことを試行錯誤しながらやらなくはいけなくて、それが逆に面白いなと思いました!

たとえ教えてくれるコーチがいても指示を待っているだけでは遅れを取ることになります。学生が主体的に動くことが大切で、勝つも負けるも自分次第だと思うんです。

横田美鈴

社会人新チーム立ち上げという形でのラクロス続行の選択

-大学卒業後、仕事も始まる中でラクロスを続けると決めたのはなぜですか?

そもそもやめる気がなかったです。大学で始めた時には楽しめるところまでやりたいと思っていたのですが、4年生が終わった時点でまだ先があると思っていたんです。日本一を目指していたのに、1部昇格で終わってしまったので、やめることは考えていませんでした。

 

-そこから新しいチーム・NeOを立ち上げたのはどういう経緯があったのでしょうか?

もっとラクロス界を面白くしたいと思ったからです。

世界の選手たちは、私たちとは全く違うプレーをしているんですよ。日本だけがガラパゴス化して、“日本のラクロス”をやっているので、そこで日本一になったとしても世界には通用しないわけです。富士山を登っても、エベレストの頂上には絶対辿りつかないのと同じことです。

日本のラクロスが世界に通用するためにはやるべきことがたくさんあります。キッズ、ティーンズラクロスの活性化、メディア露出、いつでもどこでもラクロスができる環境づくりなど、様々なことが挙げられますが、まずはそれを実現できるチームが必要です。そしてそのチームは世界のラクロスを当然知っていている必要があるわけですが、そんなところはまだないので、それなら「私たちが新しくラクロスの文化を創っていこう」という話を仲間としていました。

仲間達のその目を見てそれができる気がしたし、自分自身もそこにいたいと思ったんです。

私は何が楽しいかを一番に考えるというのが軸にあり、本気でやることこそが一番楽しいと信じています。だからこそ、そこを見て見ぬ振りをしていては楽しいとは思えないと、チームを作ることを決めました。

 

NeO

-様々なチームから誘いもあったと思いますが、その中でも仲間とチームを作る決断をしたわけですね。

元々みんなの心の中に新しいチームを作りたいという気持ちはおそらくあって、それが仲良い同士で話している時に実際に『作らない?』という声として出てきました。

でも、その勢いだけではさすがに難しくて、一回立ち上げの話はなくなったんです。事務的な問題など色々事情があって、ラクロスが上手いだけでは乗り越えられませんでした。

でも今もNeOのトレーナー兼GM(ゼネラル・マネージャー)をやっている人が助けてくれました。私たちのU-19代表時代のトレーナーでもあった人なのですが、その方が「そんな気持ちがあるのに事務的なことができないからといって、チーム立ち上げを止めるのはもったいない」と言ってくれて、様々な面で協力してくれたことで問題がクリアできました。本当に感謝しています。

 

-チームの立ち上げ時にメンバーはどのくらい集まりましたか?

チームにするには20人必要だったので、それだけ集めました。そのタイミングで大学の部活を引退した人が多かったんです。

NeO

世界を見据えたチームを形成していく中での喜びと目指すべき場所

-横田さんの今までのラクロス人生で一番嬉しかったことを教えてください。

NeOで一番嬉しかったのは初めて紅白戦をやった時です!

紅白戦をやるには、最低でも24人必要なのですが、立ち上げた頃は地方に住んでいるメンバーが多く、みんな企業に勤めていて研修があったりもして、土日も練習に出られないことが多かったんです。なので、当初練習は5人でやっていたり、大学の練習メニューに入れてもらったり、自主練習に変えたりという日々を経ての紅白戦だったので、泣けました!

ようやく紅白戦ができたのは立ち上げてチーム発足2年目の夏合宿の頃です。

後輩ができた時も嬉しかったですね!他にもいいチームがある中でまだできたばかりのNeOを選んで入ってくれたので。

 

-そして今年、初めて東日本クラブリーグ戦で1位をとりましたがその要因はどこにあったのでしょうか?

他のチームと比べて目指しているところが違うからでしょうか。私たちが戦っているのは、目の前の敵もそうですけど、その先の世界に通用するという挑戦がありますから。

 

-では、今NeOは日本のトップというより世界を目指しているということですか?

そうなんですけど、世界をどうこうとか、日本のラクロス界を面白くしたいとか、そういう綺麗事を言う前にまず、結果を出しているチームになっていないと意味がないので、そのために日本一というタイトルを獲ります。

 

-ちなみにNeOのチームブログはとても面白い作りになっていますが、何かそこにもこだわりがあるのでしょうか?

作ったばかりだったので当然ですが、最初は誰も知らないチームでした。NeOのことをより多くの人に伝えたいというところからブログは始まっています。

あと、多様性のある最高に楽しいメンバーが揃っていて、私はそれを自慢したいんです。なので、ブログを楽しいと思ってもらえるとしたら、私が楽しいのでなく、みんなが楽しいんですよ!

 

-ここまで横田さんを駆り立てる、ラクロスの魅力はどういったところにありますか?

ラクロスがまだ発展途上のスポーツであるというところです。発展していないということは選手自身でも色々なことを考え、試行錯誤しながらやらなければならなくて、それがとても面白いです。

横田美鈴

高校の先生になりたいという夢も全てはラクロスのため

-ラクロスに取り組む一方で普段横田さんはどのようなお仕事をされているのですか?

今でもそうなんですけど、私は元々高校の教師になりたかったんです。でもラクロスに夢中になっているうちに忘れてしまっていて(笑)

なぜ高校の教師かと言うと、やはり自分でラクロス部を作りたいからです。

本当は大学で教員免許を取るには教職過程の授業などを取らなければいけないのですが、理系でしたし、研究をやる必要があったので、4年間では無理だと思ったんです。教員免許を取るのは社会人になってからでもできるので、時間に余裕ができてからにしようと思いました。

それまでは教師になった時に伝えられることを学べる企業に入れればなと。それで就活をして、理科の実験道具を作っている会社に入ったんですよね。

2年ちょっとそこで働いて、大学に通えるぐらいの貯金ができたので今ちょうど会社を辞めたところです。来年の4月からは研究職の仕事をしながらまた通信制の大学に通って教員免許を取ろうと思っています。

 

-本当にラクロス好きなことが伝わってきますが、逆にラクロスをしていない時間は何をしてますか?

勉強していますね。理科の先生になりたいのですが、あえてそれ以外の教科を勉強しています。理科の先生でも例えば政治のことが全く分かっていなかったらきっと生徒からの信用が下がるので、知識はなるべく広く持っておきたいです。あとは推理小説を読んだりします。好きな小説家は京極夏彦です。

 

-趣味はなんですか?

動物園とか博物館に行くのが好きです。あと献血です。飲み物がタダで、お菓子が食べれて、本が読めて、優しくされて、なおかつ人を助けることができる。献血最高です。

 

-仲のいい同性のタイプはどんな人が多いですか?

直球しか投げてこない人。無駄な変化球を投げてこない人です(笑)

 

-逆に好きな異性のタイプは?

可愛い人。例えばすごい優秀なのにポケットが出ちゃっている人とか(笑)

私はすぐラクロスの話をし始めてしまうと思うので、そんなところまで受け入れてくれる人がいいかもしれません!

 

-それでは、最後に読者にメッセージをお願いします。

ラクロスをやっている子には…ラクロスだけの人間にならずに、いろいろなことにチャレンジしよう!

ラクロスを知らない人には…これから日本を面白くする競技、それが“ラクロス”です!

チームメイトには…あなたたちとラクロスができて幸せです。

 

横田選手が所属する社会人クラブチーム・NeOは明日12月3日(土)11:00より、クラブチーム日本一を賭けてラクロス全日本クラブ選手権大会・決勝に挑みます!
場所は駒沢オリンピック公園総合運動場第2球技場、対戦相手は前年度王者・FUSIONです。
詳細は協会HPをご覧ください。

 

NeO