大田区の中小企業が挑む世界の舞台。下町ボブスレーから始まるMADE IN JAPANの逆襲。

2016.12.22 森 大樹

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東京都大田区の中小企業が協力し合い、その技術力を結集したボブスレー競技用のソリ開発を行う「下町ボブスレー」プロジェクト。

前回記事ではこれまでの行ってきた五輪日本代表導入への挑戦と2度の不採用、そしてジャマイカ代表採用決定についてプロジェクト委員長の國廣愛彦氏の話を伺いながら振り返ってきた。

後編となる今回は中小企業ならではの強みとボブスレーにこだわる理由について迫っていく。そこには中小企業が立たされている厳しい現状を打破したいという強い気持ちと、モノづくりに対するプライドがあった。

対応能力の高さと早さに込められた町工場の魂とプライド

ボブスレーで使用するソリは海外の自動車メーカーなどが製造しているが、選手から改善の要望が出てもすぐには対応してくれない。作られたものを選手側がうまく乗りこなすことが基本になってくる。しかし、下町ボブスレーはその逆である。

「私達の本業の仕事は基本下請けです。困難な要望にもいかにして応え、お客さんに喜んでもらうかを普段から考えて動いているのです。それはボブスレーの開発においても同じで、ジャズミン選手は『日本に来てテストをした際にこの部分をアジャストして欲しいとお願いすると、翌日の朝にはもう直っている。そうしたケアをすぐにしてくれる。選手の要望に対し、瞬時に応えてあげられる事が出来るのがあなた達の素晴らしいところだ』と言ってくれています。

選手がソリをフルオーダー出来るところが、我々の良い点だと思います。私達は単純にソリが売れればいいと考えているわけではなく、五輪の表彰台を本気で目指している選手のサポートをしたいという純粋な気持ちがあります。それが自然と行動にも現れていると思います」

自分達が生み出す製品に対して自信と誇りを持っているからこそ、下町ボブスレーにおいても手を抜かない姿勢を貫く。そこには日本を支える中小企業の意地がある。

下町ボブスレーのプロジェクトは1つの会社が進めているものではなく、活動に賛同する大田区の中小企業が集まって進められている。各々異なる事業・製造分野を持つ者同士が技術を持ち合うことで迅速かつ精度の高いソリ開発が可能となる。目の前に立ちはだかる壁に対してはそれを越えられる人が進んで乗り越えていくというのが、下町ボブスレーの基本的なスタンスだ。

「その中で私は関係者間の調整をしたり、連盟との交渉役になったりします。人間ですから、例えば選手が言った事に対してモノづくり側が『選手は何も分かっていない』となってしまうこともあるわけですが、そこを私が調整するんです。」

真剣だからこそ、選手からの要望と作り手側の考え方が合わないことも出てくる。いくら作り手側がいいものだと自信を持っていたとしても、選手にとってはそれが使いにくい場合もあるのだ。互いに対等な関係で、尊重しあいながら進めていき、いい着地点を見出していくことが重要である。

しかし、本業もある中で一企業の幹部が同時に社外のプロジェクトを動かしていくというのはなかなか難しいのではないだろうか。

「仲間の多くは社長さんなので、プライドもあり、それぞれ想いを持って事業をやっています。

でも、このプロジェクトはボランティアで、ボブスレーのその先にあるまだ見ぬ価値を自分達で勝ち取るためにやっているので、どこまでやるかというのはそれぞれで違ってきます。どこまで負担をかけていいのかという相手の気持ちを考えながらの発信になるので難しいですが、そのストレスに負けて発信が出来なかったらダメです。

みんな自分の人生や今まで築いてきたものを、ボブスレーを通してさらに生かし、いつか会社に投下出来る時が来ると思いながらやっています。

僕もそれなりの負担を抱えていますが、表舞台に立てるチャンスを頂いているわけですから、大きく見ればこれも本業なんです。時には大手の社長さんに相談する事もありますが、背中を押してくれる方もいて、その言葉でまた僕達も熱く頑張れます。」

会社の事業とは別のことに時間を割くとなると社外だけでなく、社内からも風当たりがあることは容易に想像できる。だからこそ継続的にプロジェクトに参画するには目に見える形の結果と、下町ボブスレーのその先にある世界を見せることが必要になってくる。

そういう意味でも今回のジャマイカ代表でのソリ採用は1つ、大きかったと言えるだろう。

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