カープ期待のドラ1・加藤拓也。慶應での日々を糧に誓う、プロでの飛躍

2017.01.25 淡輪 ゆき

加藤拓也

昨季セ・リーグを24年ぶりに制した広島東洋カープ。2016シーズンの勢いは誰がみても素晴らしいものでした。そして日本一こそ逃したものの、この流れを来季に繋げたい球団、ファンの期待を背負い、昨年のドラフト1位で広島から指名されたのが慶應義塾大学・加藤拓也選手。

加藤選手は慶應義塾高校出身で、大学在学中に2度の防御率1位を獲得した右投(右打)の速球派。昨年9月17日には対東大戦でノーヒットノーランを達成し、90年を超える東京六大学野球の歴史において、24人目の快挙を成し遂げています。175cmと決して高身長とは言えませんが、鍛え上げられた体を最大限に大きく使っての勢いある投球は迫力があります。彼の投げるボールの重さや鋭さは、スタンドにいてもその気迫と共にビリビリと伝わってきます。

彼が大学1年の秋に私は初めてその投球を球場で目の当たりにしました。1年生とは思えない強気な姿勢と闘志溢れるその投球スタイルに惹かれたのを今でも覚えています。

そんなあの“加藤君”がついにプロ野球の世界に足を踏み入れます。昨季10勝を挙げ、チームの精神的支柱でもあった黒田博樹投手が引退で抜けた穴をカバーし、カープのリーグ連覇そして日本一に向けた活躍が期待される加藤選手にこれまで、そしてこれからの野球人生について語ってもらいました。

淡輪ゆき、加藤拓也

指名には安堵。元々は捕手出身の加藤選手。

まずはドラフト1位指名、おめでとうございます。指名された瞬間を振り返ってみて、その時の気持ちを教えてください。

正直ホッとしたのが1番でした。自分には待つことしかできなかったので。

 

指名されるという確信はあったのでしょうか?

ドラフトなので絶対はないですけど、何とか入れるかな、という感じはしていました。でも正直1位指名はびっくりしました。契約金は貯金します(笑)

 

カープに指名されたこと、そして広島についての印象はいかがでしょうか?

昨季のセ・リーグ優勝チームから指名されたことは嬉しかったです。でも実は広島自体には行ったことがないので、これからいろいろ知っていきたいです。広島は飯がおいしそうですよね。

 

指名されたことを初めに誰に伝えたいと思いましたか?

家族に伝えたかったんですけど、もうその瞬間に連絡もたくさん来ていたので、後でゆっくり話すことにしました。

その日はLINEで200件、Facebookでも100件くらい連絡が来ていましたね。

 

加藤選手はどういった家庭で育ち、どのように野球を始めたのでしょうか。

家族は父、母、5つ離れた姉、自分の4人家族です。普通の家族だったと思いますよ。

小学校に入って、親からスポーツを勧められました。周りはサッカーをやっている子が多かったので、自分もやってみたのですが結局3ヶ月で辞めました。

当初はサッカーをやりたいという僕の意向を尊重したみたいですが、父親は本当のところ、野球をやらせたかったようです。『野球は試合にさえ出ていれば打席は必ず回ってくるから、絶対に活躍するチャンスはある』と説得されていたのは覚えています。うまく乗せられました(笑)

 

現在は投手ですが、元々加藤選手は捕手出身ですよね。

最初は捕手です。ただ、小学6年から中学1年にかけては投手をやり、中学2年から高校1年の秋まで捕手、それ以降はまた投手です。

投手をしたきっかけは監督のコンバートですが、明確な理由は分かりません。元々肩が強かったのと、他に捕手がいたので、僕が出る幕もなかったのかもしれません。

 

捕手と投手、練習や試合に臨む上での気持ちの持ち方もかなり違いがあると思います。

投手は自分がやることをやるだけであまり気を使わない分、結果が伴わないとそれが直接自分に跳ね返ってきます。逆に捕手はとにかく気を使っていくポジションです。

でも僕は捕手時代、気を使っていなかったかもしれません(笑)

たぶん自分の性格として捕手はあまり向いているタイプではないとは思います。

「とりあえず投げてこいよ」みたいな感じでやっていましたね。

今のピッチングについては捕手にある程度任せつつ、あとは相談しながら進めていく形です。特に組む捕手の相性は気にしたことはないです。

 

加藤拓也

大学での経験を糧にプロでも“力と力の勝負”をしたい。

試合の中で加藤選手は打者に向かっていく姿勢が一段と顕著になる瞬間を感じることがあります。そういった自分の“ゾーン”を意識することはありますか?

逆に(気持ちが)上がってこない時の方が怖いです。

でも小さい頃から野球を観てきて、やはり力と力の勝負というのが面白いと思っているので、そういうタイプの投手になりたいという気持ちはあります。

これはプロになってからも変えたくはないです。

僕なんかがきっちりとしたコントロールで投げ分けたとしても、それをずっとやってきた人には敵わないですから。

もちろん全く変えないというわけではないですが、いろいろな人から言われたことを鵜呑みにすることはないと思います。自分の中で消化せずに納得しないまま変えることはないです。

 

大学時代の4年間を通して、ご自身の中での変化はどういったものがありましたか?

1、2年生の頃は何も分からない状態だったので、リーグ戦で投げさせてもらった時もがむしゃらでした。3年になると周りが見えるようになってきましたが、逆にそうなったことで(気持ちが)上がってこないこともありました。

そういった経験を経て4年になり、周囲から求められていることも分かった上で自分には投げることしかできないので、そこに集中できるようになりました。

 

加藤拓也

ご自身の選手としての強みはどういったところにあると思いますか?

やはりストレートになりますかね。ある程度これで勝負できてきたことは自信にもなっています。よく打者に向かっていく姿勢の部分を言われるのですが、自分ではそういうつもりはないです。ただ、雑念をなくすというか、どれだけ自分のやるべきことに集中できるかというのは大事にしています。

 

今後プロに入ってから球種を増やすことや、フォームを変える可能性もあるとは思います。

今持っているのは真っ直ぐ、スライダー、フォークボールですが、まずは変えずにいって、通用しないと思った時に新しい球種を覚えようと思います。

基本フォームは小さい時からあまり変わらないです。投げやすい形でやったらこうなりました。あとは体全体を使いたいというのもあります。綺麗なフォームではないですが、何とか自分の個性を出していきたいです。

 

加藤選手はここぞの場面で緊張するタイプですか?

どの試合でも緊張はしますよ。でも震えて動けなくなるというものではないです。

「投げたくない」と思うこともあります。ピンチの時もそうですね。正直な話、あまり責任を背負いたくないんです(笑)

他の人が作ったピンチで投げるのは全然いいです。自分でつくったピンチの場面も別に代えてもらっていいのですが、そういう時は大抵ブルペンを見ても誰も準備していないんですよ(笑)だからもう“投げるしかない”という感じでやってきました。

加藤拓也

楽しみな慶應の先輩達との勝負。そしてカープの勝利へ向けた決意。

今までの野球人生で一番印象に残っている試合を教えてください。

大学で最初に完封した試合ですかね。大学2年春の法政戦2戦目(完封)や慶早戦1戦目(1失点完投)は印象に残っています。逆に僕は(※)サヨナラ暴投もしているので、それもよく覚えています。

それから特に変わったことはなかったですが、敬遠のサヨナラ暴投なんてマンガの中の世界だけで、自分に起こるなんて思わなかったです。

※2014年10月18日六大学秋季リーグ戦vs明大
試合は延長までもつれ込み、迎えた12回裏2アウト1・3塁の場面で明大・高山選手(現・阪神)を敬遠しようとした投球が暴投になり、3-4で痛恨のサヨナラ負けを喫した。この日加藤選手は1人で12回までマウンドを守り続けたが、213球の熱投虚しく敗戦。

 

これからプロの世界に入るわけですが、対戦してみたい相手はいますか?

この打者と対戦してみたいというのはないです。皆さんすごいので…プレーの参考の対象です。そういう意味では、ピッチングの参考でいくとソフトバンクのサファテ投手が好きです。投げ方も結構近いと思っているので。

あとはこれまで慶應の中で対戦するといっても紅白戦とかだったので、違うチームとして他のメンバーとやってみたい気持ちはあります。例えば横尾(俊建・2015年日本ハムドラフト6位)さんとはかなり近いところで一緒にやっていましたし、白村(明弘・2013年日本ハムドラフト6位)さんも僕が1年の時の4年ですしね。対戦の可能性が高い山本(泰寛・2015年巨人ドラフト5位)さんともやってみたいです。

 

逆にプロ野球選手にならなかったら何をしていたと思いますか?

普通にサラリーマンになっていたんじゃないですかね。大学2年の終わりから3年になる頃にプロを目指すと決めたので、そこまで考えたことはないですが、就職活動をしていたら、一通りいろいろな会社を受けてみたと思います。

 

ちなみに万が一、指名されなかった時のことは考えていましたか?

1年留年して、就職活動をするつもりでした。社会人野球をやるつもりはなかったです。もう2年、プロを目指して野球するのは辛いなと思っていたので。

 

プロに入ってからの目標を教えてください。

太く長く続けたいですね。…でも本当はお金貯めて隠居したいんですよ(笑)あまり目立ちたくないので、本音を言えば3位指名くらいで入るのをイメージしていました。そうすると周りは契約金や年俸の額の差の話をしますが、もしその金額の違いに僕がこだわるようだったら、おそらく活躍せずに引退する選手になると思うんです。自分で活躍すれば年俸は上がっていくわけですから、初めの金額は大して気にならなくなるはずです。

もちろん今はカープ球団に1位指名という形で一番評価して頂いて入るので、期待されている分、頑張るしかないと思っています。

 

それではこれから応援してくれるカープファンに向けてメッセージをお願いします。

昨季は日本シリーズで敗退してしまいましたが、自分が入ることでリーグ連覇、そして日本一に貢献できるように頑張れればと思います。それが一番の皆さんへの恩返しにもなります。そしてファンの皆さんと喜び合いたいです。

 

最後に加藤選手が大切にしている言葉を教えてください。

“偶然は準備のできていない者を助けない”
これは親にもらった言葉で、細菌学者・パスツールの言葉だそうです。いろいろなチャンスはいつ巡ってくるか分からなくて、縁とかタイミングを僕はわりと大事にしたいと思っています。

淡輪ゆき、加藤拓也