怪我が減れば勝率もUP。Jクラブも導入するレスターの快進撃を支えたITの力

2017.01.31 竹中 玲央奈

スポーツの世界でデータが利用される機会は増えており、Jリーグではトラッキングシステムが導入されリアルタイムで走行距離などを見られるようになったことは記憶に新しい。データの可視化や活用についてはまだまだ進歩の余地があるが、その中でも徐々に日本のスポーツ界にITの波は押し寄せている。

 そして、その一翼を担うことが期待されるのがオーストラリアに拠点を置く”Catapult”のGPSトラッキングシステムである。Jリーグでは柏レイソル、コンサドーレ札幌、横浜FCなどが昨季から導入をしているのだが、このほど湘南ベルマーレと京都サンガFC、清水エスパルスも同社と提携することを正式に決定した。

 

 

スポーツブラのようなウェアの背中部分に車の鍵サイズのデバイスを装着すると、衛星が機器の動きを追い、選手の動きをキャッチしデータベースに落とし込むというシステムだ。

 「同様の機器もいくつかあるのですが、それらはGPSを使って選手の位置情報を取って、移動した距離を測ります。通常、GPSはアメリカの衛星で使っているのですが、精度的には100cm程まで誤差が出るんです。ですが、弊社はロシアの衛星を使用していて、半分の50cmまで誤差を抑え、正確な数値で選手のコントロールが出来るんです。例えば、Jリーグはカメラで1人1人の選手をタグ付けして動きを追っているのですが、150cmぐらいの誤差が出ます。弊社のものは50cmで抑えられるので、最も精度が高いといえます。うちのデバイスは1秒間に10回は衛星とコミュニケーションを取るので、複雑な動きをしていても細かくトラッキング出来ます。他に違いとしてはデバイスの中にセンサーがあり、選手がどっちを向いているか、どういった傾きをしているかを把握できます。」

Catapultの日本法人でマネージャーを務める斎藤兼氏はこう説明する。高い性能でプレーヤーの細かな動きを検知することができるのだが、これによって図れる数値は非常に多岐に渡るのである。

細かな動きもキャッチできる

 

単純な走行距離を始めとし、スプリントの回数や距離、左右の方向転換、ジャンプの回数…など。その中で1つ1つの動きに対して“量”と”強度”の2つも数値化することができるのが大きな特徴だ。そして、集まったこの数値を元に選手個々の疲労度を測ることができ、負傷の要因を探ることも、それを予防することも可能となる。

「例えば、蓄積された疲労があって、そこで運動をしすぎたり、準備が出来ていないまま高強度な運動をしていきなり筋肉に刺激を与えたりすることが肉離れを呼びます。このデバイスを使えば“いかに準備が出来ているか”というのを数字で見る事が出来ますから、効果を発揮するんです。日本代表の岡崎慎司選手が所属するプレミアリーグのレスターは2015-2016シーズン、リーグで最も怪我人が少なかったチームでした。もちろん、うちのシステムが全てではないですが、”怪我のリスクを回避する”ことが可能だった1つの事例と言えるでしょう」

 

斎藤氏は怪我の回避、そして負傷の予防という点についてもこう続ける。

「目的としては、怪我を回避するというのと、パフォーマンスを維持させるということ。辛い時にも強度を保ってコントロールすることが出来ます。例えば1週間の選手の練習のデータを取っただけでも、昨日と比べたら今日はどうなのか、3日間の内どの日が1番頑張ったのか、というのが分かるんです。比較対象や評価基準がこのように新しくできてくると選手のオーバートレーニングを防げますし、選手の練習量の上限も段々と分かってくるので、“それ以上はやらせないようする”ということが出来るんです。チーム全体で数値を取っているので平均値も出ます。それに対して、計画していた走行距離がこのくらいで、実際にこれしか走っていない。ならば次の日はもう少し負荷を高くしよう、という形の調整が出来るんです」

 

数値が溜まって平均値が出ることで、“どれだけその日の練習がハードだったか”、というところに留まらず、“負荷をかけ過ぎずに、ハードな練習をどのくらい出来るのか”という部分も具体化され、最終的には怪我のリスクを減らす目分量がわかるのである。

実際のデータとして、NBAでCatapultのサービスを導入しているチームは、27%程前年度よりも怪我が減ったという報告が上がっている NHLの話になるが「怪我の数が少ないと勝利が多いという因果関係」も証明されているようだ。