スポーツで街を元気に!スポーツ都市として成熟する千葉市の政策

2017.09.01 山本 一誠

千葉県千葉市は平成28年3月に「千葉市スポーツ推進計画」を策定した。

「みんなが主役、元気でいきいき、スポーツ都市千葉の実現」を基本理念とし、誰もがスポーツを楽しむことができるようスポーツ・レクリエーションを推進していくことを確認した当計画は、豊富なスポーツリソースに恵まれた千葉市がスポーツ政策に本腰を入れていこうとする姿勢が顕著に表れていると言えるだろう。

そこで今回は、スポーツ振興課をはじめとする5つの課にご協力いただき、AZrenaが独自に行った取材をもとに、多岐にわたる千葉市のスポーツ振興政策を掘り下げていく。

 

行政は誰がためにスポーツを支援するのか

千葉市では、平成24年度からスポーツ所管を教育委員会から市長部局へ移管し、海辺などの恵まれた自然環境やトップスポーツチームとの連携など、市の特色や資源をいかした施策に取り組んでいる。

そもそも、行政がスポーツを支援する理由は何なのだろうか。スポーツ振興課に尋ねた。

「スポーツを通じた交流は、地域の一体感や活力を醸成し、人間関係の希薄化などの課題を抱える地域社会の再生に繋がります。また、スポーツの国際交流は、世界の人々との相互理解を促進し、国際的な友好や親善に資するものです。さらに日本人選手の活躍は多くの人々に夢や感動を与え、スポーツへの関心を高めるとともに社会全体の活力につながることも期待できます。

経済面では、スポーツ産業の広がりとそれに伴う雇用の創出、スポーツイベントの観覧者による地元経済の活性化など経済的波及効果が得られます。さらにスポーツ実施率が向上すれば、健康の維持、増進が図られ、医療費などの社会保障費の増大の抑制効果も期待されます」

スポーツに対して公金を投じることは、常に賛否両論を巻き起こす。しかし少なくとも、行政がスポーツ実施者を支援することは、必ずしもスポーツ実施者のためにだけ行われるのではなく、市民全体の利益を考えた上での支援という側面があることは念頭に置いておきたい。

 

盛んなプロスポーツがスポーツ文化を醸成する

千葉市をホームタウンとしている千葉ロッテマリーンズ、ジェフユナイテッド千葉をはじめとして、千葉市では多くのトップスポーツチーム・選手が活躍している。実際に試合や大会を観戦することは、スポーツへの親しみや自らスポーツを行うきっかけとなるはずだ。

また、千葉ロッテマリーンズは平成23年度から、「NPO法人ちば算数・数学を楽しむ会」の協力のもと、「マリーンズ算数ドリル」を千葉市の全小学生に配布している。マリーンズとの関連付けにより、児童も興味関心を持ちドリルに取り組むことができることから、算数の学力向上に有効な教材の一つとして活用を図っている。

市ではプロスポーツチーム・選手による小中学校への訪問事業や、市主催行事への協力を得るなど様々な連携を行い、市民によりスポーツを身近に感じ、親しみを持ってもらえるよう取り組んでいる。スポーツ振興課によると、今後もスポーツ文化の醸成をめざし、積極的に連携を図っていく予定だという。

 

インバウンドを獲得せよ!日本だけでなく世界の千葉市へ。

千葉市はメガスポーツイベントの招致にも積極的に取り組んでいる。

近年の代表的な実績として挙げられるのは、2015年以降レッドブル・エアレース・ワールドチャンピオンシップを毎年招致していることだろう。成田、羽田の両空港からアクセスが良いことや、日本最長の人工海浜である都市型ビーチを有する等の地域性に加え、民間航空機発祥の地であるといった点、大型イベントの開催実績などが評価に繋がったと思われる。

世界的に知名度があり、高い集客効果があるこの大会を開催できることは、経済効果はもとより、幕張海浜エリアをはじめ、市の魅力や知名度を世界に発信できるため、千葉市にとって大きな意義を持つ。

さらに、大会開催に当たって民間による後援会と市が連携して、千葉ならではの「おもてなし」に取り組む仕組みが出来上がっていることも大きな財産だ。

この「おもてなし」の姿勢は、千葉市の幕張メッセにおいて計7競技が行われる予定の2020年東京オリンピック・パラリンピックにおいても必ずや重要となるだろう。

市では、「2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けた千葉市行動計画」を策定し、「大会の成功を実現する」、「スポーツ文化を普及し発展させる」、「多様性に対応した共生社会を実現する」、「千葉市の魅力を高め、集客・宿泊を最大化する」という4つの方向性を定めた。これらの目標への取り組みを着実に実行し、価値のあるレガシーを残すよう、オリンピック・パラリンピック推進課は準備を進めている。

また、観光プロモーション課は「千葉市の魅力を高め、集客・宿泊を最大化する」ことを目的として、15言語に対応したグルメ・ショッピング・サービスの多言語対応検索サイト「千葉おもてなしSHOPガイド」を運営し、市内事業者のインバウンド対応支援及び訪日外国人客の消費喚起を行っている。

さらに、今後増加が予想されるムスリム旅行者に対応すべく、食事(「ハラール」対応という。)や礼拝に対する習慣、ニーズに対応するために、「千葉市ムスリムおもてなしマップ」を発行していることや、市内事業者向けに「ムスリム受入対応セミナー」開催等の環境整備を先進的に取り組んでいることも見逃せない。

同時に、訪日外国人客の滞在機会を創出し、滞在時間を長くするために、市内周遊モデルコースの策定、ユニークスポット・体験プランの発掘、アニメ等のサブカルチャーを活用した誘客策など千葉市ならではの観光コンテンツ発掘や情報発信とともに、今年度から訪日外国人客向け観光ボランティアガイドの養成を行う予定でもあるという。

観光プロモーション課は今後、「千葉市」の認知度向上を図りつつ、千葉市に滞在する魅力を効果的にPRするために、海外の旅行博や商談会などを通じたプロモーションを強化していく計画だ。

近年、“スポーツツーリズム”という言葉を耳にする機会が増えてきつつあり、訪日外国人を含めたビジターをスポーツコンテンツでどれだけ誘引できるかということは、ますます重要度を増している。そんな中で様々な試みにチャレンジし、スポーツ産業を盛り上げていこうと努力している千葉市は、他の地方自治体にとって手本となる存在だ。これからますますオリンピック・パラリンピックの準備が加速していくであろう千葉市の動向に、今後も目が離せない。