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現役選手と指導者も注目。“データ”でアスリートを変える4つの施策[PR]

2019.03.18 / AZrena編集部

土江寛裕氏、川村慎氏

(左から)土江寛裕氏、川村慎氏

アスリートやスポーツマーケティング分野が抱える課題を、指導者・競技団体・研究者・スタートアップ企業などとの交流を通じて、テクノロジーを活用したソリューションの実現やスポーツ分野でのイノベーション創出を目指すプロジェクト、「Athlete Port-D」。

これまではアスリート同士が企業に求めるテクノロジーを議論してきたが、企業はアスリートに対してどのようなプロダクトを開発しているのだろうか。

今回は、スポーツ産業でテクノロジーを活用している企業と、今後の参入を視野に入れている企業が登壇し、ピッチを行なった。そして各企業のテクノロジーに対して、過去の回に登壇したNECグリーンロケッツ(ラグビー)の川村慎氏と、東京大学陸上競技部コーチの土江寛裕氏が、競技における活用法を議論した。

Athlete Port-DのHPはこちら

 

ウォーミングアップの質がデータで分かる

岩崎健一郎氏

H2L株式会社代表取締役 岩崎健一郎氏

トップバッターを務めたのは、人間の能力を引き出すための支援ツールや、電気刺激装置などの研究開発を行なっているH2L株式会社の岩崎健一郎代表取締役だ。同社が開発した「Optical Active Sensing」は、特殊な光を身体に当てることによって、運動時の筋肉の変位量を計測できる。

実際に陸上競技の選手に着用してテストを行なった際には、走行時の加速度と筋変位のデータを取得した。その結果、ストライドの瞬間と筋活動が一致したことが分かった。また、ウォーミングアップの際にどれだけ筋肉がパンプアップしているかも確認することができる。

今後はこの技術を生かして、アスリートのコンディション管理ツールを開発し、パフォーマンス向上や怪我の予防に繋げようとしている。

 

土江氏は「怪我の予兆や、ウォーミングアップがきちんと行われているかを確認できるのは嬉しい。調子が良い時と良くない時の筋肉の状態も可視化できると面白い」と、コンデイション管理ツールの実現に期待を寄せた。

また、川村氏も「ラグビーは冬のスポーツなので、寒い中でしっかりとウォーミングアップができているかは、指導者も気にしている」と現場での実情を明かし、「ウォーミングアップが完了できた選手からデバイスを外して、トレーニングに臨むというのもありではないか」と、デバイスの使い道を提案した。

特に陸上競技の走種目やラグビーは、肉離れが多い競技でもある。その肉離れを防止するためにも、筋肉の状態をデータで可視化することは重要ではないだろうか。

 

わずか2枚の写真で採寸データを取得できるアプリ

ジン・コー氏

Original社代表取締役 ジン・コー氏

続いて登壇したのは、オンラインカスタムシャツブランド「Original Stitch」を展開するOriginal社のジン・コー代表取締役だ。

同社が開発した身体採寸アプリ「Bodygram」は、前面と側面から全身写真を撮るだけで、被写体の実寸を瞬時に計測できる。過去にアメリカの大学で、数名の学生を対象に実証実験を行なったところ、98パーセントから99パーセントの精度があることが分かった。また、服を着用した状態で測った場合でも、裸の状態での採寸データを得ることができる。

Bodygramの採寸データの正確さを実証実験するジンCEO

Bodygramで測ったデータと、実際にメジャーで測ったデータに相違がないことを実証実験するジンCEO(右)

以前のAthlete port-Dで川村氏は、採寸技術の導入をスポーツ界の課題として挙げていた。特にラグビーのような身体の大きな選手が多い競技では、選手にジャストフィットするユニフォームを手配するのは容易ではない。とはいえ「最大限にフィット感のあるユニフォームを着用して試合に臨み、ベストパフォーマンスに繋げたい」と、川村氏は本音を口にしていた。

川村氏は実際にBodygramで身体の採寸を行ない、胸部のサイズに若干のズレはあったものの「アスリート用にカスタマイズすれば、もっと性能は高くなるのではないか」と、今後の可能性と期待感を口にする。また、ユニフォームのサイズを測るためだけでなく、体格の推移をデータ化するという使い方をすれば、スポーツにも汎用性の高いツールとなり得そうだ。

 

数多くのトップアスリートが使う“デジタルブラジャー”

斎藤兼氏

Catapult社ビジネス開発マネージャー 斎藤兼氏

次に登壇したのは、GPSデバイスを入れるポケットが付いたブラジャー型装具(通称 デジタルブラジャー)を展開するCatapult社のビジネス開発マネージャー・斎藤兼氏だ。

このブラジャー型装具を装着すると、走行距離や加減速度、スプリントの回数(時速24km以上のダッシュを1秒以上継続した回数)などを計測できる。アスリートのパフォーマンスをデータ化することによって、Catapultは「怪我のリスクの管理」「パフォーマンスの最適化」「怪我からのプレーへの復帰」というスポーツ界の3つの課題を解決しようとしている。

実際に普段のトレーニングで導入しているチームは数多く、川村氏が所属するNECグリーンロケッツのその1つだ。川村氏は「これがなくてはトレーニングができない」と太鼓判を押したが、一方で「デバイスを何も付けていない感覚になるのが理想ではある。スラムを組んだ時に痛かったり、壊れたりしてしまったことも何度かあった」と、デバイスの大きさや耐久性などの課題を挙げた。

 

以前からパフォーマンスをデータ化するためのGPSデバイスは存在しており、従来に比べれば徐々にサイズは小さくなっている。それでも、アスリートにとってはまだまだ大きいと言わざるを得ないようだ。この課題は、今後のテクノロジーの先進によって解決されることを期待したい。

陸上競技におけるデータの蓄積でも活用できるだろう。土江氏は「400メートルや800メートルなど、高強度で持久力が必要な種目のトレーニング管理で使えるのではないか」と、導入に前向きな姿勢を見せている。

 

足の裏からリアルタイムにデータを取得

WIREDGATE社

最後に登壇したのは、複数のセンサーやGPSを搭載した靴のソール「スマートインソール」の研究開発を行うWIREDGATE社だ。

このスマートインソールを装着すると、足圧を中心とした下半身の動きをリアルタイムで計測できる。その場でのコーチングはもちろん、クラウドに蓄積されたデータを分析して、選手にフィードバックする使い道もある。陸上競技だけでなく、様々な競技における誤った走り方の是正に活用できそうだ。

課題としては、アスリートにとってインソールの導入がセンシティブな問題になりかねないことだ。スマートインソールはスペックによって重さや厚さが異り、通常のインソールと同じ程度のものもあるというが、それでも装着感が気になるアスリートは出てしまいそうだ。

 

川村氏と土江氏もその点を懸念視しており、土江氏は「陸上競技のシューズは極限まで軽く設計されているので、そもそもインソールを入れられない場合もある。スマートインソールよりも、シューズを履くだけで計測ができる“スマートシューズ”のほうが導入しやすい」と意見を述べた。

ただ、トップアスリートではなく市民ランナーであれば、価格を除けばスマートインソールの導入に現実味はある。WIREDGATEでは、スマートインソールの技術を活かした「オンラインコーチング」も提案しており、市民ランナーの手助けとして大いに活用できるかもしれない。

 

「データを取れるようになったことが一つの進歩」

今回のピッチでは、各企業が独自のテクノロジーを生かした提案を行なったが、それぞれのプロダクトを併用することで、より良い結果が生まれる可能性もある。また、プロダクトを活用する上で重要なのが“データの活用法”である。

データを取得したところで、活用法を知らなければパフォーマンスの向上には繋がらない。その活用法は競技によっても異なるため、データを扱う分析スタッフの裁量も求められてくる。

とはいえ「まずはデータを取れるようになったということが一つの進歩」だと土江氏は語る。普段のトレーニングでCatapultの技術を活用している川村氏も「こういったテクノロジーに僕たちは助けられているので、諦めずに一緒にやっていけるよう僕も力になれれば」と、さらなるテクノロジーの活用に意欲を示している。

川村慎氏

川村慎氏

土江寛裕氏

土江寛裕氏

企業とアスリートの谷間を埋めていくには、このようなディスカッションの量と質をさらに向上させる必要がありそうだ。