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侍ジャパン・川端友紀、元サッカー日本代表・増田誓志が市民と対話。嬉野の未来を「移住促進」で考える。

2024.02.07 / AZrena編集部

スポーツの力で「まちの課題解決」を目指す佐賀県嬉野市では、アスリートと市民によるセッションを開催しています。本記事では、元サッカー日本代表・増田誓志さん、侍ジャパン・川端友紀さんが登壇した第二回の様子をお届け。テーマは「移住促進」です。

2024年1月25日(木)、佐賀県嬉野市の観光・交流施設 まるくアイズにて、佐賀県嬉野市が開設した『スポーツフューチャーセンター(※)』主催のセッション【”移住者と地域住民”ではなく、”あなたとわたし”の「困りごとを嬉しいに変える」繋がりとアクションとは?】が開催されました。

「みんなで一緒に、ひとつのまち作り」に向けて、課題を解決するためにはどうすればいいのか。スポーツが持つ人と人を結ぶ力と情報を届ける力を活用するため、実際に移住・定住経験のある二人のアスリートがゲストに招かれました。

一人目は、侍ジャパン女子代表キャプテンであり、女子野球チーム九州ハニーズの立ち上げとともに福岡県に移住をした川端友紀(かわばた・ゆき)さん。もうひとりは、山形県と東京での2拠点で活動している、「韓国酒場 チャン」を経営する元サッカー日本代表の増田誓志(ますだ・ちかし)さんです。

嬉野市からはゲストスピーカーとして、結婚を機に嬉野市への移住を決め、現在は地域おこし協力隊として活動している久野裕子(くの・ゆうこ)さんが参加。市民の皆さまとの対話を進め、新しいアイディアを出し合いました。

※スポーツフューチャーセンターとは?
北欧で発祥したフューチャーセンター(異なった組織や立場の人々がその組織や立場を離れ、自由に関係性を形成し、未来志向で創造的な対話をおこなう「場」のこと)にスポーツの力(情報発信能力;アンプ、連携を進める能力;ボンド)をかけあわせたもので、嬉野市の取り組みが世界初となる。なお、「フューチャーセンター」が「場」をあらわすのに対し、対話の過程及びその内容は「フューチャーセッション」と呼ぶ。

「友達づくりからはじまるまちづくり」

大阪府出身の久野さんは、公共施設の設計コンサルタントを経て、東京で保育士として活動されていました。しかし、新型コロナウイルスの影響で生じた状況変化をきっかけに、旦那様の出身地である佐賀県への移住を決意。その後、2021年5月に嬉野市地域おこし協力隊員に着任しました。

現在は、インターネットラジオの配信、空き家の活用、移住促進業務を担当しています。
発表では、移住をはじめとした人生における大きな環境変化による心の動きについて深く触れ、ストレスに直面した際に救ってくれたのは人との繋がりだったと話します。嬉野の方から受け取った「悩むことは当たり前」というメッセージが、人生の大きな決断へと繋がったそうです。

人に助けられた経験を新しい移住者に伝えたい、と「移住者女子会」というコミュニティーの活動にも力を入れています。悩みを共有できるコミュニティーを通して、「あなた(移住者)とわたし(定住者)を繋げる活動を継続していきたい」と笑顔で話していました。

宮崎県宮崎市出身の増田誓志さんは、Jリーグでは鹿島、山形、大宮、清水の4チーム、韓国とUAEでも活躍した元プロサッカー選手です。現役引退後は、山形市にある「韓国酒場 チャン」を経営し、東京と山形の2拠点で活動しています。

奥様の地元である山形への移住では、地元の人々との繋がりの深さが、大きな支えとなっていることを明かしました。移住・定住には、地域コミュニティとの繋がりが重要で、サポートが欠かせないと、ご自身の体験を元に語ります。

また国内外で活躍されていた増田さんは、土地ごとの県民性の違いにも言及。自分に合った居心地の良い地域性を知ることも、移住する際には必要だと言います。

次の発表者は、W杯で6連覇中の侍ジャパンでキャプテンを務める川端友紀さん(大阪府出身)。2022年に女子野球チーム『九州ハニーズ』を発足させ、福岡県大野城市に移住しました。現在は、選手としての活動とチーム運営を兼務しています。

川端さんは、九州地方で女子野球を身近にするためチーム設立を決意し、2021年に福岡へ移住しました。新たなスタートにあたり不安があったものの、地元の方々の親身なサポートが大きな励みとなったそうです。

2年間の福岡生活を経て、川端さんは九州に強い愛着を感じるように。「女子野球と九州の魅力を一緒に広めたい」と熱く語ってくださいました。

また、スポーツをするうえでは「食事」も重要。設立間もないチームでプレーし、生活基盤が固まっていない選手たちにとって、地元食材の新鮮さと美味しさ、お手頃な価格も助けになったと語りました。

「フィッシュボウル」で、未来志向な意見交換を

セッションでは、フィッシュボウルという手法を用いたユニークな対話形式が採用されました。内側に小さな円、外側に大きな円を形成し、内側には空席を一つ準備をします。話すことができるのは内側の参加者のみ。話したい場合には内側の空席に移動し、座っていた一人は外側へと移動します。

印象的だったのは、就職をきっかけに嬉野へUターンした参加者の声です。嬉野へ戻ってきた時に、故郷への思いが強くなっていることに気がつき、とても居心地が良かったそうです。また移住者が増えたことで、地域に暖かい雰囲気が生まれ、市民同士の挨拶が自然に行われるようになったとのこと。また、困りごとを共有することで地域の繋がりが深まり、日々のコミュニケーションが活発になったことも感じられたと言います。

「自分に何ができるのか」アイディアを形にしていく

セッションの後半では、小グループに分かれて、嬉野市の未来に向けた実現可能な提案を模索。マネタイズや集客の課題について意見交換が行われ、具体的な解決策や新しい取り組みの可能性について深く考察しました。

参加者一人ひとりが経験や知識を活かしながら「自分に何ができるのか」について考え、嬉野市の活性化に寄与する新しいアイディアを多く生み出しました。

話し合いの終盤では、各々が考える「自分たちにできること」と「自分の強み」について話し合い、具体的な行動計画や連携のアイデア、決意を紙に書き出しました。

嬉野に移住した方々のプロモーションを支援する未来

最後に、嬉野市の未来に対する具体的な提案やアクションプランが共有されました。

移住者の利用が多いヨガスタジオを運営している参加者からは、「スタジオに訪れる人たちが多方面で繋がれるようサポートし、挑戦したいと考える人々を助けていきたい」と発表がありました。

また、今年(2024年)開催予定の国民スポーツ大会を、「おもてなし」の強化を通じて、印象深い大会にしたいという意見も。プロモーション会社に所属する参加者は、「嬉野の旅館を活用して、企業と移住者を繋げる機会を創出し、コミュニケーションを促進していきたい」と考えたそうです。

嬉野に移住した方々の発信を支援することで、より多くの人に「嬉野を訪れたい」と思ってもらえるのではないかという発表に、参加者の注目が集まりました。

今回参加したアスリートとゲストは、今回のセッションを以下のように振り返りました。

「アスリートは、PRなどで拡散する力があると感じています。僕たちが発信することで興味を持ってもらい、移住や嬉野を知ってもらう機会を増やせれば」(増田さん)

「今回のテーマは困り事の解決でしたが、私自身も経験者として助け合うことの大切さを実感しています。現役選手として結果を出し、地域を盛り上げていきたいです」(川端さん)

「アスリートの皆さんの意見を聞いて、人との繋がりを大事にすることが、移住者にとって最も大切なことなんだと再認識しました。このイベントを通して得たアイディアを活かし、私が地域の繋ぎ手となることで、貢献していければと思います」(久野さん)

今回のセッションは、嬉野市の未来を共に作るための一歩を踏み出す機会になり、参加者は自らの行動を考えるきっかけを得たことでしょう。

嬉野市が目指す「みんなで一緒に、ひとつのまち作り」に向けて、今後もこのような交流の場をきっかけに繋がりを強化し、より明るい未来に繋がっていくことを期待させる時間となりました。

第3回セッションには、バレーボールの大山加奈さんが嬉野に!

2024年2月19日(月)に、佐賀県嬉野市がスポーツフューチャーセンターうれしの 第3回セッション【宿泊型ケア事業、駄菓子屋、預かり事業など、民間ができる子どもたちの居場所づくりとは?】を開催します。
ゲストとして、元バレーボール日本代表、そして2児の母でもある大山加奈さんを迎えます。アスリートを交えて、嬉野市の方々と共に考え・話し合う機会を創出します。

詳細はこちら:https://www.beautynation.jp/event-ureshino3/