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元リクルートのラクロス起業家が語る「ラクロッサーが海外に出るべき理由」

2016.06.20 / AZrena編集部

小野寺ひより

リクルート時代の仕事はとても楽しく充実していたのですが、やはり以前から思いがあったラクロスを通じて仕事をしたい、ラクロスの人のために仕事をしたいという気持ちを捨てきれませんでした。そこでラクロスを仕事にしている会社がないのであれば、作るしか無いと思いました。

(FUSION AGENT 小野寺ひより)

 

「ラクロスに関わる全ての人の可能性や機会を広げたい」こういった思いを持って2016年の3月に設立されたFUSION AGENTという会社をご存知でしょうか? これは、女子ラクロスの強豪である明治大学卒の小野寺ひよりさんが立ち上げたものです。リクルートを退社し、全てのラクロッサーの価値を高め、ラクロスに関わる人たちに貢献したいという強い思いを持って行動に打ち出た小野寺さん。”スポーツ界で働く”中でも、会社に所属するのではなく、起業という選択肢をとった彼女の中には、どういう思いがあったのでしょうか。

 

捨てきれなかった“ラクロスの人のために仕事をしたい”という思い

私は中学・高校とソフトボールをやっていて、ラクロスは大学から始めました。高校時代はソフトボールで結果を出していたので、高校卒業後は地元福島の実業団に入ろうと思っていたのですが、そのチームの経営状況が良くなさそうだったので(笑)、考えを改め、大学に行くことにしました。大学ではソフトボールを続けようとは思っていたのですが、ソフトボール部がそこまで強くなさそうで…悩んでいたときに隣のグランドで練習をしていたラクロス部を見つけて、面白そうだなと思って始めました。

 

出身は明治大学です。今となっては2年連続で日本一になった強豪ですが、私が1年生のときは3部で、部員も40人くらいでした。4年生のときにはチームを1部に上げて、卒業をしました。そこは誇らしく思っています(笑)卒業後は知り合いがいたという経緯もあって社会人ラクロスチームのFUSIONに入部しました。現在は事業を始めたのですが、社名はFUSION AGENTといいます。その名前は所属しているFUSIONと言うチームから名前をとりました。

 

FUSION AGENTはオーストラリア専門の留学エージェントです。オーストラリアで英語を勉強したい、大学や大学院、専門学校へ行きたい、という方にその方にあったオーストラリアの教育機関を紹介しています。私のこの事業の特徴は、留学をご紹介するお客様を『ラクロスの人(現役、OG・OB,サポーター)』に限定している点です。

 

対象を絞ったのにも理由があります。大学時代からラクロスを通じて仕事をしたい、ラクロス業界に貢献したいという考えや気持ちがありました。ですが、日本でラクロス関係のことを仕事にしている会社が少なかったので、就職先はラクロスに全く関係のないリクルートという会社で働きました。リクルート時代の仕事はとても楽しく充実していたのですが、やはり以前から思いがあったラクロスを通じて仕事をしたい、ラクロスの人のために仕事をしたいという気持ちを捨てきれませんでした。そこでラクロスを仕事にしている会社がないのであれば、作るしか無いと思いました。

 

ラクロスの人を世界と繋ぎたい

私はずっとリクルートで法人営業をやってきたのですが、特別なスキルがなく、何をラクロッサーに還元できるか?と考え、悩みました。そんな中、頭の片隅にあった「ラクロスをやっている人はもっと世界に出れば良いのに」いう思いが再燃して、ラクロスの人を世界とつなぐ仕事をやりたいな、と思ったんです。

小野寺ひより

少し話は飛ぶのですが、オーストラリアのクイーンズランド州がギャップイヤーコンテストというものを日本、台湾、韓国、コロンビア、ブラジルの国民を対象に行ったことがありました。1ヶ国から3人ずつ選び、その人達が留学生大使となってクイーンズランド州に留学するというものです。そのコンテストで上位3人に選ばれたら、1位だと1年間、語学学校、生活費も無料で生活ができるんです。2位だと3ヶ月語学学校が無料プラス有償インターンシップ、3位も3ヶ月無料というのがあったのですが、面白そうだなと思って参加した結果、3位になって3ヶ月間無料で語学学校に通える権利を頂きました。

このコンテストはクイーンズランド州が留学エージェントを通してやっていたのですが、たまたまそこの留学エージェントの社長さんとコンテスト中に話す機会がありました。そのときに「小野寺さんはいいところに勤めているし、こんなところに参加しなくても良いじゃない。何がしたいの?」と言われたんです。

 

そこで「私はラクロスの人達に対して何か貢献したいんです。その一つの手段として留学を提供するという事も魅力的だと思っています」と答えました。そう話したらその社長から「このコンテストの結果がどうにしろ、うちでちょっと働いて留学ビジネスを勉強みれば?」とお誘い頂いたので、お世話になることにしました。そしてコンテストの結果として頂いた3ヶ月の留学に会社を辞めて行った後、帰国後にビザをワーキングホリデービザに書き換えて、再度オーストラリアに行きました。配属先はアデレードというラクロスが有名な都市で、そこで半年間仕事をしながら現地でラクロスをやりました。所属したチームはプロラクロスプレーヤーの山田幸代さんと同じところです。その後の半年間はブリスベンに行って英語の勉強をしながら、ビジネスを立ち上げる準備をしました。ワーキングホリデービザが切れたタイミングの今、日本に帰ってきて、事業をスタートしたという形です。

 

今の事業はオーストラリアへの留学エージェントだけですが、これからやっていきたいこととしては、“ラクロスの人ってカッコいい”という世界観を作ることです。

日本のラクロスでは”LACROSSE MAKES FRIENDS”という言葉が共通ワードがあり、ラクロスを通じて何かをするという事が推奨されています。それに則って、もっとラクロスをする学生に選択肢を増やしてあげたいなと思っています。

 

留学一つにしても私が学生だったときには学生の間に1年間休学をして海外に出るというアイディアもなかったですし、周りでは誰もそんなことをしたことがなくて、実態がわからなかった。でも、学生時代に1年くらい休学をして外の世界を見てみるのもいいんじゃないか、と今は思っているんです。「むしろ全員やったら?」くらいに考えています。大学生のうちから英語が喋れてかつ国際感覚を持っていて、人はみんな違うということをわかっていて、だからこそ自分を大事にする。そういう姿を作りたいですね。

また、「現地に行って学校の中では英語が少しできるようにはなったけど、実践として現地の人と話す機会が欲しかったけどつくることができなかった」という声をけっこう聞きます。語学学校で友達はできたけど英語がネイディブの友達はできなかったとか、アルバイト先もジャパニーズレストランで日本人コミュニティが広がったけどそれ以外の交流はあまりなかった…というような。それはすごくもったいないなと思っているので、FUSION AGENTを経由して海外に行った人にはそういう風にはなってほしくないので、現地での過ごし方のヒントとなるようなアドバイスをしたい、と考えています。留学中はその先に繋がる何かを見つけて欲しいと思っていますね。

小野寺ひより

 

若い学生時代ほど、スポーツ以外にもできることをいくつか持っておくべき

 

将来的にはラクロッサー全体のムラみたいなもの、クラウド的なものでも良いのですけど、そういったラクロスに関わる全ての人がハッピーになるようなものを作りたいですね。留学事業だけでは終わりたくないと思っています。例えば海外のラクロスグッズを輸入してみたり、ファンのラクロスチームと個人をつないでみたり…ですね。すでに日本には2万3千人の競技登録人数がいて、サポーターやファンの人もたくさんいるのに、環境が整っていなくて人が離れていってしまうのはもったいないことだと思うので。ラクロスが一つのライフスタイルになればいいなと思っています。

 

最後にメッセージになるのですが、若い方でスポーツをやっている方は目の前の競技に熱中している事が多いと思うますし、それはそれでとてもいいことです。ただ、将来、より充実した人生となるようにスポーツ以外にもできることをいくつか持っておくべきだ、ということは強く伝えたいです。若い間に、学生の間に色々なことをやっておいてもらいたいなと。たくさんできることを増やす事は競技にもいい影響を与えると思っています。1つだけのことをすると視野が狭くなってしまいますし、そこを広げることは重要かなと感じています。特にラクロスをやっている方は競技だけではなくてそれ以外の所でも活躍したい、成長したいというメンタリティがあると思いますし、私はそういうところが大好きですし、これからも応援したいと思っています。

FUSION