AZrena編集部

中村俊輔360°FK動画の仕掛け人。iemoから独立した熊谷祐二が語るスポーツ×VRの新たな時代

熊谷さん1

2016年の明治安田生命Jリーグが開幕する前に、ネット上で話題になった1つの動画がある。

世界有数の精度を高いキックを武器とする横浜F・マリノスの中村俊輔選手のFKを、360°の視点で見られるというものだ。Facebook上を始めとしたネットの様々な場所で話題となったこの動画は、SkyBall ㈱ が今春にローンチした動画メディアサービス“サカチャン”が出したコンテンツだ。

このサカチャン並びにSkyBallを立ち上げた熊谷祐二氏は、DeNAに買収された国内最大級の暮らしの情報を提供する情報プラットフォーム”iemo”の創立メンバーの1人。ITの世界で“成功”を収めた彼が次なるステージとしてスポーツ×ITの世界に進んだのはなぜなのだろうか?その経緯や熊谷氏が考える将来の展望などを、AZrenaを運営する㈱LinkSportsのCEO小泉真也が聞いた。

 

まずは事業について教えて下さい。

スポーツの動画事業で、サカチャンというメディアをやっています。そのサカチャンというメディアの中で、Jリーグのクラブチームとコンテンツを作っています。取材撮影という形で日々の練習におじゃまをさせて頂いて、主に試合以外のコンテンツを、スマートフォンにおける動画として作るというのと、VR時代の新しい映像コンテンツを作るということを、メディアとしてやっています。

 


インターネット上で話題になった横浜F・マリノス・中村俊輔の360°FK動画

 

世界一周をして気づいたサッカーの可能性

なぜこの事業をやろうと思ったのでしょうか。特に熊谷さんの場合は、iemoをやっていたり、色々な経緯があったと思いますが。

iemoでの仕事が終わり、去年世界一周をして、その間次は何をしようかと考えていました。

その中でアフリカや東南アジアに行った際、みんな欧州チャンピオンズリーグを見ていたんです。これって当たり前のようで実は素晴らしいことだなと。同じ時間に同じ対象物に対して、世界中の人達が熱狂できるということはすごいなと。

僕はITの世界に10年ほどいて、自分で会社経営もしていたのですが、IT、webというのは物理的に離れている人と人を繋げるというのが最大のメリットだと思っていました。そこに対してスポーツという触媒をかきあわせることによって新しいものが生まれるんじゃないかな、と思ったのがきっかけですね。グローバルに提供できるサービスを作りたかったというのもあります。

 

熊谷さん2

 

熊谷さんは新卒で、というわけではなく、起業を経てiemoへ行ったと。

学生の時から自分で事業を立ち上げていたのですが、その前にドリコムで学生アルバイトをしていました。iemoは2社目で、今に至ります。

私は高校まで野球をやっていたこともあって、スポーツを1つの事業領域として考えていた中で、世界一周から帰国して本格的に事業の内容を精査するようになりました。色々と調査をすると、北米ではジーターがメディアをやっていたり、レブロン・ジェームズの自撮り動画が流行っていたりすることが分かってきたんです。選手が直接ユーザー、視聴者に対して届ける、いわゆるマスコミを通さない形のメディアが出てきているのは面白いなと。

あとは、ネイマールのインタビューを見たのは大きかったですね。ネイマールはまだ24歳の若い選手ですが、彼は子供の頃にロビーニョを始めとしたヨーロッパで活躍する有名なブラジル人選手を動画で見て、ストリートでそれを真似して育ったと言うんです。それはITの力であり、すごいことだと感じたんですね。そういった土壌があるのであれば、動画も今、波として来ているし、新しいものが出来るんじゃないかなと思って、事業でやってみようと考えました。

 

ちなみに熊谷さんは高校球児じゃないですか、僕もなんですけど、何で野球にいかなかったんですか?(笑)

1つは、世界一周とも関連するんですけど、ワールドワイドなのは圧倒的にサッカーだということですね。野球をやってもアジアの一部と北米で終わってしまう。グローバルでやりたいということを鑑みたら、サッカーになるなと。

あとは市場に入りやすく、かつ僕らが市場を変えられる土壌があるということ。そういったところでサッカーは整っているし、これ以上小さいスポーツだと、土壌が整っていない。そういう意味ではJリーグが改革しやすい…と言うとおこがましいのですが、色々とやれそうだなと思ったんです。

野球と比べて触れられる機会の回数にもギャップを感じたんです。もちろんまだ野球のほうがビジネスとして上手くいっているんですけど、加えて野球は毎晩のスポーツニュースで取り上げられるじゃないですか。一方でサッカーは週1回しかやってなくて、全試合は取り上げられない。

でも、サッカーと野球の人口は同じくらいいる。同じくらい見たいと思っている人がいるはずなのに、マスメディアに取り上げられる野球と、全然取り上げられないサッカーのギャップをwebの力で埋められればと思いました。

 

熊谷さん3

 

マリノスの協力を得られたことが非常に大きかった

-このサービスをやるには、Jクラブと連携のための営業が必要だったと思います。

一緒にやっている人間でJリーグに人脈のある方もいらっしゃるので、そういう方から紹介をしてもらうという形で繋がりました。とはいえ僕みたいな新参者が「動画撮らせて下さい」と言っても難しい。紹介でもちょっと怪しまれるでしょうし、リスクがあると。だからこそ、しっかりと未来図を描いていって切り込んでいこうとは思いましたね。

 

ただ、企業の新しい取り組みにクラブも協力していくというような形がないと、スポーツの市場は開かれていかないのかなと。

それはそうだと思いますね。他の領域でメディアを立ち上げると、ユーザーベースを取るには広告出稿をして、自分たちで頑張らなければいけない。ただ、例えば鹿島だったらtwitterのフォロワーが約15万人いて、そこに一気にリーチできるのは強いですよね。

でも、そこに流すものを我々がただ普通に取材しただけだと取り上げてもらえないので、いかに彼らが良いと思っているコンテンツを新しい物を使い織り交ぜつつ作るかというのが重要ですし、僕らにしかできないことだと思っています。

 

【▷次ページ】何もできないことを覚悟していった宮崎で撮れた、中村俊輔の左足