クラウドファンディングでアスリートを支える。アレ・ジャパンの活動の意味とは。

2015.12.21 森 大樹

関口

幼少期からテニスを始め、中学時代には競技をより追及するためにオーストラリアに留学した関口萌仁香氏。帰国後はテニスの強豪校・湘南工科大学附属高校に進学し、競技を続けた。卒業後、一度はテニスから離れたものの、再びプレーを再開し、そこで今の仕事に繋がるきっかけと出会った。

※クラウドファンディング:企画やプロジェクトの実施にあたって広く一般の人々に、その資金支援をよびかけるファンドレイジングの一手法。通常、インターネットを通じて行われる。アレ!ジャパンではスポーツ選手が遠征等に行く際にかかる資金についての支援を募集しており、支援者は金額に応じて選手からのメッセージやグッズなどのリターンを受けることができる。

 

 

資金難に直面するアスリートを支援したい。

-今はアスリートを支援する立場の関口さんですが、ご自身は今までどのようなスポーツをされてきたのでしょうか。

私は幼い頃からテニスが大好きで、小学校の頃はずっとテニススクールに通っており、中学に入ると軟式テニス部に入部しました。そこで部活動では定番の「厳しい上下関係」を学び、仲間と共に乗り越える、というまさに青春ドラマのような熱い日々を過ごしました(笑)

部活動と並行してそのままテニススクールにも通っていまして、14歳の時には親にお願いしてオーストラリアに1年間テニス留学にも行かせてもらいました。実力はともかく、アスリートとして私も一生懸命頑張っていたんですよ!今考えると選手としては夢のような貴重な経験ですね。

 

-競技のために留学するくらい本格的に取り組んでいたんですね。留学してから選手として何か変化したことはありましたか。

オーストラリアでの生活は見るもの全てが新しいものの連続で、ひたすら吸収する毎日でした。テニスにおいても、技術的な事はもちろんですが、練習の仕方や環境など様々な点が日本とは全く異なることに驚きを感じました。

結局私は自慢できるような実績を残せませんでしたが、心技体ともに成長することができ、納得のいく形で留学を締め括ることができました。私にとって今までで最も一生懸命テニスに打ち込んだ1年間でした。

 

関口2

留学時代の関口さん(一番左)

 

-留学から帰ってきてからはテニスを続けなかったのでしょうか。

帰国後はテニスの名門・湘南工科大学附属高校に進学してテニス部に入りました。しかし、思春期ということもあって、他に楽しい事が増えてしまい、大好きだったはずのテニスの優先順位はかなり落ちてしまいました。ふと振り返った時に競技を真剣にできていない後ろめたさや自分に対する疑問から葛藤が生まれ、結局どんどんテニスと向き合うのを避けていったような気がします。

一応、卒業まではテニス部員としてやっていましたが、選手としてはそれが最後になってしまいましたね。

 

-アレ!ジャパンとして働くことになった経緯を教えてください。

高校を卒業してからはもうテニスはしないだろうと思っていたのですが、大学で体育の授業を選択したら、たまたま担当の先生が全日本の大会にも出ているような有名なテニス選手でした。その方から「もう一回テニスしなよ」と誘われ、自身がコーチを務める社会人チームに呼んで頂いたんです。これも何かの縁かな…なんて思いながら初めは参加したのですが、気付いたら毎日通うほど楽しくテニスをするようになっていました(笑)

 

-やはり関口さんはテニスから離れられなかったということですね。

その社会人テニスチームで出会ったのが、今のアレ!ジャパン代表の田村です。アメリカ発祥の新しいファンドレイジングの手法であるクラウドファンディングを利用して、アスリートを支援するサービスを考えていて、その事業の広報をやってみないか、と誘ってもらいました。

実際に私の知り合いにも、資金難に直面するアスリートがいたので、アスリートを支援するということに共感しました。当時大学2年生だった私はあらゆる事に興味津々だったので、その場でやると即決したのを覚えています。

ただ、これは今だから言えることですが、当時まだ日本では認知度の低かった「クラウドファンディング」という言葉に対しては正直ピンと来ませんでしたし、「広報」って具体的に何をするの?という感じでしたね。こんなこと言ったら怒られちゃいますけど(笑)

そんな右も左も分からないところからのスタートで今まで3年間、日々手探りでやってきました。

 

-具体的にはどのような業務を行っているのでしょうか。

基本的には支援を募集しているアスリートについて、SNSを使って皆さんに情報発信をしています。

あとは直接アスリートやその支援をして下さる企業様に会いに行ったり、イベントに出て様々な方と情報交換したり、大会応援、ブースでのPRなどを行ったりと、外での仕事が半分くらいを占めています。それを持ち帰って、関連する事務作業をやるのがもう半分といった具合です。人数も少ないので、私にできることは全てやります!

加えてアスリートとのコミュニケーション役もしています。日々選手がうざくない程度にコンタクトを取らせてもらっています(笑)

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ビーチフラッグス・野口勝成選手と

野口勝成選手インタビュー

 

日本のアスリートを取り巻く環境は厳しい

 

-関口さんイチオシのアスリートがいれば教えてください。

選ぶのは難しいですね…全てイチオシのアスリートばかりです!例えばアレ!ジャパンのアンバサダーをお願いしている戸取大樹選手は、まさにアスリートの鏡のような人ですね!インラインスケートのトップ選手で、積極的に海外に出て、世界最高峰の大会に挑戦し続けています。そういう姿勢が人々の心を掴んでいますよね。

また、彼は常に先頭を切って競技界を盛り上げる努力をしています。前に戸取選手に直接お話を伺った際も、彼がただ単に自身のスケートのことだけを考えて活動しているわけではなく、ヨーロッパのようにスポーツを文化にするということを目指しているとおっしゃっていました。そういう姿をしっかり見せる事に意味があると考え、実行し続けていることが素晴らしいと思いますし、私ももっと多くの人に知ってもらいたいです。

基本的にアレ!ジャパンにご登録頂いているアスリートは実力、プロ意識、人柄を兼ね備えた人達ばかりです。

他にもビーチバレーボールの畑辺純希選手、アグレッシブインラインスケートの後藤祐斗選手などもすごく真面目な方で、忙しい時に私が連絡してしまっても柔軟かつ早急に対応してくれます!

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インラインスケート・戸取大樹選手と

戸取大樹選手インタビュー

 

-イチオシの競技はありますか。

最近人気が上がってきているビーチテニスです!ノーバウンドで打ち合う、ビーチで楽しむラケットスポーツです。青い空の下、大きな海と、広い砂浜に囲まれてスポーツが出来るのは素敵ですよね。特に夏は本当に気持ちいいです。下が砂なので、ちゃんと競技としてやったら足腰への負担が大きくて大変ですが、大きな怪我もそんなに無いですし、お子様からお年寄りの方まで気軽に楽しめるスポーツとしてオススメしたいです。

ビーチテニスはみんなでワイワイしながら、誰とでも仲良くなれる、凄くオープンな感じがします。発祥の国・イタリアと同じ良い文化をそのまま日本でも崩さずに保っているところが私はとても好きです。

ちなみにビーチテニス界を引っ張っているのは男子プレーヤーでは山本直晃選手という方で、見て頂けたら分かると思いますが、まさに「ビーチテニスの王子様」です。実力、プロ意識、人柄に加えてビジュアルもバッチリ兼ね備えています。女性の皆様、いますぐビーチへ!(笑)

関口5

自身でもビーチテニスをプレーする

 

-一方で日本のスポーツ界にはまだ様々な問題点があると思います。関口さんはどのようなところに問題意識を感じていますか。

日本では学校体育の延長線上にあるスポーツを文化に変えていく必要がありますね。海外のスポーツというのはレクリエーションから来ています。そういった海外との根本的な違いがあることで日本ではスポーツが文化として浸透しづらいのだと思います。

あとは、競技によって人気スポーツとそうでないスポーツに偏りがあるのも感じます。これは、日本人が熱しやすく冷めやすいという点も関係していると思います。マイナースポーツでスター選手が出て、たくさんメディアに取り上げられ、一瞬脚光を浴びたとしても、しばらくすると忘れられてしまって人々にそのスポーツが定着しない、それ故に結局競技人口が増えていきません。

アルバイトと競技を掛け持ちでやっている選手も珍しくないです。生活するためにバイトの比重の方が大きくなってしまって、本来の競技を優先させるという目的から外れてしまう人もいます。五輪種目の競技で日本代表候補の選手でも、活動資金がないためにうちで調達を目指す人がいるくらいですから、アスリートを取り巻く環境は厳しいものがありますね。

 

-スポーツの魅力はどこにあると思いますか。

『人々の心を大きく動かす』というところにあると思います。

特に私はこの仕事を通して『誰もが、誰かのために』という、とても温かく、人間の素晴らしい一面を日々感じています。そしてそれは、日本だけでなく国境を越えて共通することであり、スポーツが世界を繋ぐことにもなっていくのではないでしょうか。だから、単にスポーツは技術とか勝ち負けとかそういうことではなく、もっと果てしない可能性を秘めたものだと思います。

 

-関口さんご自身はスポーツを通して何を学びましたか。

自分がスポーツをする側として学んだことは、『楽しむ』ということの重要性です。オーストラリアに留学するまではスポーツにおいて『辛いこと、苦しいことを乗り越える』とか『先輩と後輩の関係だから』というようなことをばかりを教えられ、守っていたような気がします。もちろんそれが全て悪い事ではありませんし、そういう経験も必要だと思います。ただ、留学をして客観的な視点から競技を見直した時に、海外では技術のレベル、年齢に関係なく皆が常に楽しんでいることを学びました。日本とは違う、新鮮な姿勢から、スポーツは技術や勝ち負けだけじゃないと、私の価値観が変わりました。

あとはスポーツを通して「仲間」という大きな宝物を得ました。同じ時間を共有して、同じ目標に向かって、良い時も悪い時も一緒に過ごした仲間は私にとって貴重な存在です。作ろうと思って出来るものでもないですし、スポーツを通していつの間にかできた信頼関係ですが、これからも続いていくことでしょう。そんな大切な人達の成功と幸せを願えることもまた幸せですね。

 

-スポーツを通してどのような世界を作っていきたいですか。

スポーツは人を『笑顔』にしますから、そんな笑顔が絶えない社会ができていくといいな、と思います。そして至る所で気軽にスポーツができる環境にしていきたいです。今は何を始めるにもお金を払ってスクールに通わないといけなかったり、スポーツをする施設の予約をする必要があったり、中には遠くまで行かないとできない競技もたくさんあります。最近では公園でキャッチボールすらできないなんて話も聞きますね。子供から年配の方まで、外で楽しく一緒に遊んでいる姿が日常的に見られる社会が徐々にできていくことに、自分も少しでも協力できればと思います。

関口6

 

-アレ!ジャパンとしてはこれからどのようにアスリートを支援していく予定なのでしょうか?

今年でアレ!ジャパンの活動が始まってから3年が経ちました。今まではクラウドファンディングによる資金調達をメインに活動してきましたが、今後は資金面以外の支援もできるよう、いろいろな企業様にご協力を頂きながら多方面からのサポートに向けた取り組みに力を入れています。

具体的にはドーピング対策、セカンドキャリア支援、メンタルトレーニング、海外遠征の渡航手続き、物品提供など、全面的にサポートできる仕組みを整えているところです。

 

スポーツで人生をより豊かに。

-今後の目標を教えてください。

アレ!ジャパンとしては、個人や企業を巻き込んで、利害の対立無く、皆で一丸となってアスリートや競技を応援できるようにすることを目標にやっていきたいと思っています。それができてこそ、私が理想とする“真の華麗なる裏方”であると思っています!

個人としては私の役割である広報としてのスキルをもっと磨いて、将来的には言葉の力で社会を変えることを極めていきたいです。プライベートでは、いつか父親に下田の入田浜にお家を買ってあげることです!

 

-アレ!ジャパンで支援してもらいたいアスリートはどのようにしたらいいのでしょうか。

登録申請をして頂ければ、審査のうえアスリート登録ができます。皆様が安心してアスリートを支援できるサービスのクオリティを保つために、各競技に精通した人をアドバイザーとして迎え、選手の推薦・審査をしてもらっています。

アスリート登録に至る経緯としては基本的に3パターンあり、アスリートご本人からの申請、アドバイザー・登録アスリートからの推薦、もしくはアレ!ジャパンからお声かけさせて頂くということもあります。最近はありがたいことに、アスリート本人からの申請が増えてきています!

 

-競技や種目について制限はありますか。

特にありません。今までも本当に幅広いスポーツを支援してきました。競技として成り立っているスポーツであれば、どんなスポーツでもOKです!

 

-これからスポーツ業界で働きたい人に向けてメッセージをお願いします!

私が偉そうに言うのもおこがましいかもしれませんが…この仕事をして身を持って感じるのが、スポーツ業界は皆が同じ目標に向かって、協力し合っている事が分かりやすい世界だということです。スポーツ業界で働く人とお話する機会が増えてくると、一見全然関係のなさそうな仕事をしている人同士でも、同じところを問題視して解決のために頑張っていることが分かります。

そして皆が口を揃えて言うこと、それが「スポーツ界で働く仲間として、一緒に盛り上げていきましょう!」です。私もこれから一緒にスポーツ界を盛り上げていく仲間が増えてくれると嬉しいです。

あとは直接的に競技やアスリートに関わろうと思っている方へ。スポーツはある意味戦いの場でもあるので、人間の本質が見られます。いつもテレビで見ているように努力が実り、勝利を手にしたアスリートの喜びの姿などの印象的なシーンばかりではありません。幾度となく繰り返された努力と挫折等々、今までの全てが詰まったその選手個人をしっかりと自分の目で、心で、見てほしいです。シンプルな結果にも、その裏には壮大な出来事が詰まっているんだと私も感じるようになりました。今まで自分がほんの一片だけを見て感動していたことがなんだかちっぽけに思えます。心が揺さぶられる瞬間が増えることをぜひ楽しんでほしいです。

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ビーチフラッグス・和田賢一選手と

和田賢一選手インタビュー

 

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-最後に読者の方にメッセージをお願いします。

より多くの人にスポーツに接してもらいたいです!観るだけでも、少し体験するだけでもいいんです。とにかく楽しんで遊んでみてください。スポーツを通して大切な人と笑い合い、一生懸命何かに熱中して仲間という宝物を得ることができます!皆さんもスポーツで人生をより豊かにしていきましょう!