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クリケットの競技人口は世界2位! 「メジャーなのにマイナー」な競技の実像に迫る

2017.06.15 / 森 大樹

クリケット。競技人口は1億人であり、全スポーツの中でも2位に位置する。日本では馴染みの薄い「メジャーなのにマイナーなスポーツ」について、実際に体験した。ルールから詳細に解説しているので、初心者の方からおすすめ。

クリケット
 
クリケット。日本ではマイナーだが、世界的な競技人口は1億を超える「メジャーなのにマイナー」なスポーツだ。
 
今回は、日本ではあまり馴染みのないクリケットがどんなスポーツなのか、実際にプレーしたのでご紹介したい。
 

 

クリケットのルールおさらい

 
クリケット
・1チーム11人、2チームで行なう。
・交互に守備と攻撃(打撃)を1回ずつ行なう。
・守備は投手 (ボーラー) と捕手 (ウィケット・キーパー) 以外の
 ポジションは自由に配置し、いつでも変更してよい。
 攻撃側は2人の打者 (バッツマン) がグラウンドに入る。
・10アウトまたは規程投球数で交代。
・各チーム120球ずつの形式 (T20形式)
 300球ずつの形式 (ワンデー形式)が主流。
・試合時間は、T20形式で約3時間、ワンデー形式で約7時間
・イニングが終了した時点で、得点が多いチームが勝利となる。
 

クリケットの進め方

  
クリケット
クリケットとは野球の原型とも言われる、イギリス発祥のスポーツである。投手(ボウラー)が投げるボールを打者(バッツマン)が打つという競技の基本的な進め方の部分はほぼ野球と同じだ。
 
攻撃は2人1組のバッツマンで行う。1人のバッツマンが打撃を行っている間、もう一人はボウラーの横に立ち打撃が行われるのを待っている。打撃を行わないバッツマンは、打撃を行ったバッツマンが打って走り出すと同時にそれぞれ反対側の陣地を目指して走る。
 
2人が陣地の境界を示す線(クリース)を超えると攻撃側に1点が加算される。その他バッツマンが打った球がバウンドしてからグラウンド外に出ると4点、ノーバウンドで出る(野球でいうホームラン)と6点などといった形で加点されていく。
 
守備側は打者が打ったボールをノーバウンドで捕球する、打者の後ろにあるウィケットと呼ばれる3本の棒に投球したボールを当てる、バッツマンがクリースを超える前にボールをウィケットまで返球して当てるなどの方法でアウトを狙う。
 
競技は1チーム11人で行い、攻守は1回ずつ行う。ボウラーとバッツマンが攻防するフィールドはグラウンドの中央部に位置している。バッツマンはフィールドから360度どの方向に打ってもよい。守備位置もボウラーと捕手(ウィケットキーパー)以外、守る場所は自由である。攻撃側はいかに守りが手薄なところに打つか、守備側は状況に応じて的確に陣形を変更できるかがポイントになる。
 
攻守交代についてのルールは試合によって様々だが、10アウトもしくは120球、300球といった規定の投球数に達するまで攻撃が行われる。ちなみに三振の概念はない。
 
クリケットで特徴的なのは試合時間が長い形式の場合、途中でティータイムと呼ばれる休憩時間が入ることだ。世界上位10カ国同士の対戦でのみ行われる「テストマッチ」と呼ばれる伝統的な試合形式では球数制限がなく、5日間に渡って試合が行われる。1日中ずっと試合をすることになるので、その合間の休憩時間としてティータイムが設けられているのだ。イギリス発祥で、元々上流階級を中心に広がりを見せていたスポーツであるクリケットならではの文化と言えるだろう。
  

野球に似ているところ、違うところ

 
クリケット 
この日、体験が行われたのはプラスチックのバットと柔らかいボールを用いた簡易的なクリケットだ。普段は小学生のクリケット初心者向けプログラム「クリケットブラスト」で使用されている道具である。本来の競技は木製(柳)のバットとコルクに皮を巻いた硬いボールで行う。
 
クリケットにおいて投手の役割を果たすボウラーは野球と違って投球時に、肘を曲げてはいけない。
 
実際に投げさせてもらったが、野球出身の筆者にとってはこれが一番難しかった。
 
ボウラーは打者の少し手前でボールをワンバウンドさせて、バットに当てにくくすることを意識することが大切だ。しかし、筆者は肘を伸ばしたままボールを投げるということに慣れていないため、球を放す位置が安定せず、コントロールが乱れてしまうことが多かった。
 
一方のバッティングは打者が打撃可能とされる範囲が野球より広く、バウンドしたり、少し逸れたりするくらいで球を見逃してしまうと攻撃できる球数が減ってしまうため、多少の悪球も打つ必要があるところが難しかった。

地域を絞って普及活動を行う意義

 
クリケット 
 
日本におけるクリケットは、これまで少し変わった形で普及活動が行われてきた。日本クリケット協会は本部事務局を栃木県佐野市に設置し、その地域に密着して重点的に普及を進めてきたのだ。例えば市内にある26の小学校にクリケットの指導テキストを配布し、今ではほとんどの学校の体育の授業で競技が行われている。これまでの活動について、日本クリケット協会事務局長の宮地直樹氏は語る。
 
「クリケットは佐野という地域に絞り、幼稚園・小学校というところから普及活動をやり始めて、一番初めに教えた子が高校生になって今も1人続けています。これまでは中学生になって競技から抜けてしまう人も多かったのですが、今の中学2年生の世代は強くて期待が持てます。中には代表の強化選手に入っている子もいます。地元のメディアは結構取り上げてくれるので、佐野の街の人はみんなクリケットについて知ってくれていますよ。」
 
また、地元企業もクリケットによって、外から若い人材が入ってくることを望んでいるという。
 
「ハイヒールのかかとの部分のシェア日本一の企業、唯一の国産ボウリングボールメーカーの工場、ガリ(生姜)の日本シェアトップの会社などが佐野にはあります。将来的にはそのような日本に誇れる企業に代表選手が入り、早めに仕事を上がってクリケットをするという形がつくれるといいですよね。」
 
選手にはクリケットのために佐野へ移住し、地元企業に就職する。企業から競技への理解がある環境下で選手活動に集中することも可能だろう。
 
今までの地域を絞った競技の普及・発展活動、地方活性化の取り組みが国からも認められ、地方創生拠点整備交付金の事業対象にも選ばれた。
 
これにより約1億円をかけ、旧栃木県立田沼高校の跡地に国際基準のクリケットのグラウンドを整備する計画が動き出す。
 
「正直5年前までこんな形で話が発展していくなんて考えられなかったです。特に天然芝のピッチはハードルが高いので、整備まで20年はかかると思っていましたから。」
 
佐野を“クリケットの聖地”にするという夢は思ったよりも早いスピードで進んでいるようだ。 
 
現在は佐野に加え、昭島(東京)、山武(千葉)、横浜(神奈川)と4つまでプレーの拠点が増えている。
 
今後は4拠点を中心に、まずはトップレベルにおける競技の環境整備を行う。それがある程度形になってきたところで草の根に対し、簡易的なクリケットを体験する機会を増やしていく計画だという。

女性は“日本代表”になれるチャンス!

日本におけるクリケットが抱える問題は、女性の競技人口が少ないということだ。女子の社会人になると5つしかチームがない。反面、それは誰にでも日本代表になるチャンスがあることを意味する。
 
「女子については誰でも参加できる日本代表の選考会をやったりしています。これまでの実績でいくと日本代表の試合に出るまで最短で2ヶ月、アジア大会に日本代表として出場して得点王になるまでが2年という選手がいました。実際その選手にはオーストラリアに行ってもらい、プロにチャレンジしてもらおうと考えていましたが、そのタイミングで結婚して出産するということで最終的には競技から離れてしまいました。」
 
女性の競技人口を増やすべく、2017年5月からクリケットに触れる機会の提供と女子選手の発掘を目的とする体験会「ウィメンズクリケットブラスト」を本格的にスタートさせている。都内で開催されているので、女性はぜひ足を運んでみてほしい。体験した上でクリケットの魅力にハマった人は本格的に競技活動をスタートさせてみてはいかがだろうか。今から“日本代表”になることもクリケットなら夢ではないはずだ。