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スポーツチームを活性化。フルスピード流・SNSマーケティング術

2019.08.13 / AZrena編集部

スポーツビジネスで活躍するための最速講座として、2010年からスタートした「MARS CAMP」。2019年2月28日(木)の社会人コースでは「スポーツを再定義!スポーツ×事業戦略」をテーマに、約2時間の講義が行われた。

事業の始まりは、スポーツを通した地方創生によって、日本を元気にしていきたいという想いから。その手段として株式会社フルスピードは、スポーツ×新規事業としてスポーツエンゲージメントサービスを展開している。

競合他社はほとんどいない中で、スポーツマーケティンググループの古牧将氏は、主にスポーツ団体のSNSマーケティングを行っている。2018年11月にスポーツ産業に参入したばかりのフルスピードだが、どのように業界に変革をもたらすのか。

 

200〜300個のアカウント運用経験を活かす

フルスピードは、スポーツエンゲージメントサービスを通じて、日本にスポーツの文化を定着させることを目指している。

古牧氏はサッカーを例に「なでしこリーグは、なでしこジャパンがW杯で優勝した時には盛り上がったが、その人気が定着していない。Jリーグの中で人気の高い浦和レッズでさえも、夏場は観客数が落ち込む」とスポーツ業界の集客面での課題を挙げた。

「Jリーグは、1回来た人をどう定着させるかという課題を持っています。Bリーグはキャパシティが狭いので、ある程度は定着していますが、Jリーグほどコアファンは少ないという課題を持っています」

 

そんな課題感を踏まえ、同社が提供するサービスはサポーター・ファンとの関係性(ファンエンゲージメント)を高めるためにSNSを使用し、既存の「PDCA」ではなく「RPDC」を回していくことに重点を置いている。

そもそも、スポーツエンゲージメントサービスの「エンゲージメント」とは何なのか。古牧氏は「簡単に言えば、SNSでいいねとコメントをしてくれる人の割合のことで、チームとお客さんの関係値を示す」と説明した。

 

特にチームに対しては「ファンとの関係性を築くための仕掛けとして、RPDCを回しましょう」と提案するとのことだ。

「R」esearch:ソーシャルリスニング

「P」lan:ターゲット/施策選定

「D」o:SNS運用支援

「C」heck:レポーティング

この4点をスポーツ団体のパートナーとして行うことがフルスピードのミッションであり、主にFacebook、Twitter、InstagramといったSNS上でのファンとのコミュニケーションを生み出し、リーチ拡大と集客に繋げる施策を敢行している。

例えばRの部分では、Twitterでのファンのコメントをすべて集計して「初めて来たお客さんが、どんなところに不満を感じているのか」をチームに明示する。

 

これまでフルスピードは、200〜300個のアカウントの運用経験を持っており、その経験からFacebookとInstagramは月に12〜15投稿を推奨している。

「Facebookは1日に何投稿もすると、表示されにくくなるロジックが働いている。Twitterはそれがなく、日時順に表示される」と、SNSによって差異があることを古牧氏は説明した。

基本的にはチームのSNSを一括管理しているが、InstagramとFacebookはフルスピードが運用し、Twitterは投稿方針までをフルスピードが決めて、運用はチームが行うというケースもあるようだ。

 

SNSによってターゲット層が異なる

各SNSはそれぞれ特性が異なるため、その運用方法も変わってくる。

Twitterに関しては「即時性、拡散性が強く、拡散されるようなRTキャンペーン等を行うことが重要」だと古牧氏は言う。また、ファンの声を拾うために、ハッシュタグを活用してツイートを促すことも有効になる。

Facebookに関しては「コアファンが数多くいる。鹿島アントラーズや浦和レッズのFacebookを見ると、投稿に対してかなりの数のコメントが付いている」と古牧氏は語っており、その上で「炎上しないように、オフィシャルな情報を流すべき」と注意を歓喜している。

 

Instagramに関しては、選手のオフショットや、スタジアムの映える風景などを投稿する取り組みを例として挙げた。FC岐阜が行なう「岐阜ジェニック」というキャンペーンでは、Instagramのリポスト機能を活用して、ファンの投稿をチームのアカウントで掲載している。これに対して、掲載されたファンからは喜びの声が上がっているとのことだ。

古牧氏は、Instagramでは「ターゲットからコアファンを外していい。新規ファンがタッチポイントとなるような内容にしていったほうが効果的」と使い方に言及しており、SNSによってアプローチする層が異なることが分かる。

 

「攻め」の広報と「守り」の広報

チームによって異なるものの、古牧氏は「Bリーグは『攻め』の広報が多く、Jリーグは『守り』の広報が多い傾向にある」と感じている。

「SNSに関しては、選手の肖像権に制限をかける動きもあります。ただ、本当のところはファンが拡散してくれたほうが、チームにとって効果的なので、あまり抑え込まないほうがいいです。個人的には『攻め』の広報を拡大していきたいと思っています」

 

今後の営業方針について、古牧氏は「影響力のあるリーグのチームに訴求していきたい。プロになる手前で、VリーグやFリーグのチームに関与していきたい思いはある」と、プロ化を目指すスポーツへの関心も明かした。

スポーツ団体においては、まだまだ馴染みの薄いデジタルマーケティングの領域だが、データに基づいた戦略作りが行われなければ、ファンとのエンゲージメントは高まっていかない。

すでに他業界では試行錯誤がなされ、成功事例が生まれているからこそ、そのノウハウを持っているフルスピード社がスポーツ市場に参入することには価値があるだろう。

 

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