リノベるは、なぜ「フットサル」へのスポンサードを決めたのか?
Fリーグ1部に所属する立川・府中アスレティックFCのトップパートナー、株式会社リノベる。なぜリノベるがフットサルを支援することにしたのか、スポンサーシップの価値をどのように捉えているのか、代表取締役の山下智弘氏にお伺いしました。
2000年8月に創部され、現在日本フットサルリーグ(Fリーグ)ディビジョン1に所属する立川・府中アスレティックFC(以下、アスレ)。2015年にFリーグ・オーシャンカップで優勝を果たし、初のタイトルを獲得。2018-2019シーズンもディビジョン1で3位、全日本フットサル選手権大会準優勝と、結果を残し続けています。
アスレのトップパートナーのうちの1社が、中古物件探しとリノベーションのワンストップサービス「リノベる。」や、オフィス、店舗、ビル一棟のリノベーションを行なう都市創造事業を展開する、リノベる株式会社です。
なぜリノベるがフットサルを支援することにしたのか、スポンサーシップの価値をどのように捉えているのか、代表取締役の山下智弘氏にお伺いしました。
(聞き手:竹中玲央奈 写真:小嶋すみれ)
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事業とフットサルに感じた親和性
スポンサーを始めたのは、いろいろなご縁が重なった結果だと感じています。僕らはまだまだスタートアップなので、自分たちがやっていくだけで精一杯な部分がありました。でも、他のスタートアップ経営者の方々からスポンサーになった話を聞く中で、僕も「何か社会に還元できることをしよう」と思ったんです。
リノベるでは、「日本の暮らしを、世界で一番、かしこく素敵に。」というミッションを掲げています。スポーツは、まさに暮らしを彩る大切な要素。ならば、スポーツを通じて社会に貢献することが“リノベるらしさ”なのではないか、と。スポーツに注目したのは、周囲の経営者からの影響に加えて、僕自身のスポーツ経験が原点でもあります。
中学からラグビーを始め、30歳まで打ち込んでいました。ラグビーから離れて、そのまま40歳になった時、仕事も家族とのプライベートも充実していたのに、何か物足りないなと感じたんです。「今ないものは何か」と考えた時に、「スポーツしかない」と。
そこから新たにタッチラグビー(ラグビーのタックルをタッチに置き換えたフットボール競技)を始め、日本代表にも選ばれました。週に1回でもみんなと集まってスポーツをすることは、欠かせない生活の一部です。
暮らしとスポーツは、切っても切り離せない関係にあると思っています。リノベるがスポーツと親和性あると感じ、身の丈にあった「リノベるらしいスポンサーシップ」は何なのか、社内で話し合っていきました。
もともと僕が通っているジムにアスレの選手が通っていたこともあり、フットサルの話は聞いていました。スポンサーについて考えていく中で、フットサルとサッカーの関係と、タッチラグビーとラグビーの関係はどこか似ているなと。
フットサルもタッチラグビーも、少人数かつ小さいスペースでも、気軽に楽しめるスポーツです。より多くの人が取り組みやすいようになっていると思います。「すでにあるものも、変化させることで、また新たな価値が生まれる」といった僕らのリノベーション事業と、通じるものを感じました。
そこからは、もともとあった身近なご縁と、会社で話し合ったことが重なるように、点と点が繋がって、線になっていったという感じでしたね。タッチラグビーでは、選手の個人スポンサーを始めました。フットサルについても早速、皆本晃選手とお話しをさせていただきました。
彼は、フットサルチーム運営の難しさも話す一方で、しっかり「僕らならアジアでナンバーワンになれる」と見据えていて。その曇りのない人間性に惹かれて、アスレのスポンサーになることを決めました。
スポンサーの価値は、“作りにいく”もの
スポンサードの価値は、いわゆる知名度向上などといった、直接数字に関わる部分ではないと思っています。
少し厳しくなってしまいますが、スポンサードする競技として、フットサルはまだそんなに価値が高いとはいえません。むしろ、リノベるのビジョンでもある「課題を価値に。」という言葉の通り、その価値を作るためにやっていくものだと考えています。
今は大きな市場になっていないスポーツでも、魅力を感じるのであれば、そのスポーツが抱える課題を価値に変えるお手伝いをしていくこと。変化を求めて行動すること自体に、意味があるのではないか、と。
具体的な課題はたくさんあります。アスレの施設はかなり充実していますが、全てのアリーナがアクセスが良いとは言えません。場所のハードルをどう乗り越えていくのかは、考えているところです。
また、フットサルはまだまだ「する」スポーツとして捉えられることが多いと感じています。でも、実は観るのもめちゃくちゃ面白いんです。サッカーよりもコンタクトが多く激しさがあって、ボールの動きも速い。あとはコートが狭いからこそ、全ての選手が一目で視界に入って、ボールを持っていない選手も追いかけることができます。
初めて生で観た時は、中継にはない臨場感が感じられて、すごく興奮しましたね。見るスポーツとしての魅力を、例えばメディアをもっと活用して広めていく必要があると思います。
僕もスポーツビジネスについては日々勉強しているところですが、スポンサーシップにおいて重要なのは、会社の活動とスポンサーの意義をどこまで整理して落とし込めるかだと感じています。
うちが、なぜフットサルで、なぜアスレなのか。結びつきを考えて、価値を見出していくことが大切です。スポンサーをしたことが正解かどうかはわかりませんが、正解にするために日々できることを模索しています。
また、こういったことを社内で議論して、整理していくことが、社内でのスポーツ支援に対する理解にも繋がっています。私たちは、「disagree & commit」することを大事にしています。議論の場では、どんどん反対して、真剣に議論します。その上で決定したことには、しっかりコミットするということを徹底しています。スポンサーへの社内理解は、議論と整理を繰り返して積み上げてきましたね。
スポンサーをすることで、僕自身も新たな発見がありました。社内でスポンサーになったことを公表した時、フットサルをやっている人がかなりいたんです。聞いたら、「社内フットサルには20、30人くらい集まる」と。普段の業務でスポーツの話にはこれまでならなかったので、新たな共通の話題ができて、かつみんなでひとつのことを応援できているのはすごく良いと感じています。
スポンサー、ファン、選手。一丸となって苦しい今を次に繋げる
コロナ禍になって僕自身、日常の中でのスポーツの重要性について再認識することが多かったです。所属しているタッチラグビーチームもしばらく活動を休止していましたが、休めば休むほど、やりたくなっていって。パーソナルジムだけでは発散できない、スポーツの良さを改めて感じました。
僕だけに限らず、多くの人の“スポーツ欲”が向上した期間だったと思います。暮らしと向き合う時間が増えたからこそ、必須ではないスポーツや文化が、暮らしを彩る要素として不可欠だと気づかされましたよね。
今まで当たり前だったものが急に取り上げられると、誰しもその欲は高まるんだなと。実際、僕のチームでも休止前と後では、休止後の方が練習に参加するメンバーや、体験に来る方々が増えました。
「またなくなるかもしれない」という危機感と常に向き合っている今この瞬間を、どう乗り切って次へつなげていくのかが問われています。それはスポーツチームだけでなく、企業も同じだと思います。
スポンサーという立場でスポーツをサポートすることについて、今すぐに価値があるわけではないと言いました。それは今、ファンや選手も同じだと思うんです。ファンなら思うように直接応援できていなかったり、選手なら思うような環境でプレーできていなかったり。でも、目先の苦しみを諦めずに乗り越えていくことが、価値に繋がっていくのだと信じています。
同じような状況は、もう二度と来ないと思います。だからこそ、スポンサーも、ファンも、選手も、今の状況をできるだけ感じて、次に活かしていくことが求められているのではないかと。苦しい現状ではありますが、そうやって少し俯瞰して捉えて、ファンや選手とともに前に進んでいきたいですね。