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【後編】プロとして、周囲の模範となる存在に。日本トップのディスクゴルファーが語る仕事の流儀

2015.01.09 / 森 大樹

菊地哲也

 

【前編】はこちら

 

プロとして模範となる存在に

 

-競技をする上で嬉しかったことを教えてください。

嬉しかったことはたくさんあります。試合で初めて優勝した時もそうですし、何より日本一になるために始めたので、それを達成した時は嬉しかったです。日本一になるまで9年かかりました。そのおかげでいろいろなことにもチャレンジをさせて頂いています。2005年に国体のデモ競技にディスクゴルフがなった時の試合の唯一の優勝者でもあります。テレビでも取り上げてもらえる機会が出てきて、TBSのサンデーモーニングや日本テレビの鉄腕ダッシュや24時間テレビに出させて頂いて、世界記録に挑戦して達成もしました。そういったことが認められて板橋区から区民文化奨励賞を頂きました。そうやって自分が頑張ってきたことを人が認めてくれて、応援してくれるということは本当にありがたいです。初めは自分が中心だったのですが、そうやっていろいろなことをやらせて頂くうちに自分じゃないんだと気づくことができるようになりました。ディスクゴルフの選手としての僕を菊地哲也が預かっていて、いろいろな人のおかげでブランディングしてもらって、支えて頂いてできているということを感じるようになったんです。だからこそ僕は選手としての立場を適当に扱ってはいけないと思うようになりました。メディアに私が出る時は競技を背負って出ているわけですから、しっかりやらないといけません。私がディスクを持っている時は模範であり、プロフェッショナルでなければならないと考えています。

 

-これまでで衝撃的だったエピソードを教えてください。

海外のトップ選手との距離感に驚きました。例えばなかなかプロ野球選手と触れ合う機会は多くはありません。でもディスクゴルフでは研究のために観ていたDVDや動画に出ていた海外のすごい選手に握手してもらえたり、サインをもらえたり、あわよくば一緒にラウンドできたりするんです。その距離感の近さが衝撃でした。あとは海外の街ではディスクゴルフの試合が来ることが一つのお祭りのようなものなんです。「おらが町に世界選手権が来た」という雰囲気ですごく盛り上がっています。世界選手権では予選ラウンドが終わるとどんどん成績でカットされていって最終的に残った4人だけが、最後に9ホール回ることになります。そのラウンドではゴルフと同じくらいのギャラリーが集まってきます。ディスクゴルフファンがたくさんいるんです。そうなるとフライングディスクや飲食のお店が出てきたり、アメリカなので人が集まるところには音楽をやる人が現れたりするんです。演出のうまさみたいなものは大きな魅力です。駐車場は車が止められないくらいになりますし、広場の端の方ではフライングディスクで遊ぶ子供達がいたりもします。日本もいつかこうなる時代が来るようにしたいと思いました。

 

-本当にお祭りですね。なかなか日本ではない光景だと思います。

 

まだ歴史が浅いディスコゴルフの世界

 

ここからは少し競技から離れて、プライベートについての質問をしていきたいと思います。

もしディスクゴルフをしていなかったら何をしていたと思いますか。

元々この競技を始めたのも日本一になりたいというのが動機だったので、他の競技でそれを目指していたと思います。始める上でいくつか候補として挙げたものはありました。その中で最もスタイリッシュ且つダイナミックだったディスクゴルフが自分の中で響いたわけですが、ボルダリングやクライミングも考えました。今もたまにボルダリングは趣味でやったりするので、可能性は高かったかもしれません。

 

-競技と並行してお仕事をされているのですか。

はい。学校で体育の教員をしています。

菊地哲也

 

-趣味を教えてください。

体を動かすことが好きです。他のスポーツもしますが、どうしても仕事と両立することを考えると空いた時間は競技に繋がることを優先して考えてしまいます。読書も体に関する本ばかり読んでしまいます。結婚もしているので、家族との時間も大切にしたいということを考えるとアスリートとしてできる時間はさらに限られてきます。あとはビールが好きで銘柄を調べたりもしますね。

 

-競技を続けるにはご家族の理解も必要になってきますよね。

日本チャンピオンになった時に結婚したので、その点は本当に理解してもらっていて、子供が生まれてからもずっと同じスタンスで応援してくれています。妻の支えなしでは続けてこられなかったと思うので、本当に感謝しています。

 

-ご自身の魅力を教えてください。

競技に対しては真面目とか努力家だと言われることが多いです(笑)自分はあまり才能があるタイプの選手ではないと思っています。野球選手も職人肌の選手が好きなのですが、身体的に恵まれていなくても自分の長所を活かした処世術を努力して身に付ける方法を知っている人が多いからです。自分もそのタイプだと思っていて、頭で考えてプロセスを踏めるというのが自分の長所だと思っています。あとは決めたらすぐに行動に移せるところです。その瞬発力が一流と二流を分ける部分だと思うので大切にしています。

 

-ディスクゴルフをやっていたからこそ起きたエピソードがあれば教えてください。

ジムでタオルを使って素振りをするのですが、見た目では何をしているのか分からないので、それで話しかけてもらえることです。それがきっかけで競技の宣伝ができるので、僕はいいことだと思っています。
あとはよくフライングディスクのことを皆さん「フリスビー」とよく呼ぶのですが、それは商品の商標で正式は「フライングディスク」です。なので、それを使ったゴルフなので、ディスクゴルフなわけです。

 

-たしかに「フリスビー」という呼び名の方に馴染みがあるかもしれません。

一時期1960〜1970年代に流行した時に主に使われていたのがフリスビーだったので、それが定着したと言われています。一方でディスクゴルフは1980年頃にアメリカから入ってきたので、まだ日本では30年程しか歴史がありません。

 

-最後に読者の方にメッセージをお願いします。

まずはぜひやってみてほしいです。そうして皆さんに魅力を伝えたいです。ただ、部活の受け皿がない競技なので、若い人がどうしても他の競技に流れていってしまうというのが問題です。でも特にゴルフをやったことがある方であれば楽しさはすぐに分かると思います。皆さんに魅力をお伝えするためにPodcastでラジオを配信したり、YouTubeで動画を配信しているので、そちらも観て頂いたりすることで普及に繋がればと思います。

 

【前編】はこちら