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高木ひかり。大卒ルーキーが感じた、なでしこジャパンとの差とは?

2016.08.02 / 石津 暁

高木ひかり
 

大卒1年目、2部の舞台から掴んだなでしこ入り

 
2016年4月に発足した高倉麻子監督率いるなでしこジャパン。このチームに、なでしこリーグ2部から選出された大卒ルーキーの選手がいる。それは高木ひかりだ。
 
早稲田大学ア式蹴球部女子部を卒業した高木は2016年、なでしこリーグ2部に所属するノジマステラ神奈川相模原に入団。5月30日から6月7日まで行われたアメリカ遠征に臨むなでしこジャパンのメンバーに初選出を果たすと、7月16日から26日まで行われたスウェーデン遠征にも続けて選出された。そして、その海外遠征から帰国してわずか4日後。プレナスなでしこリーグカップ2部第8節の日体大FIELDS横浜戦のピッチに、高木は立っていた。
 
「寮がグラウンドの目の前なので、スウェーデンから帰ってきたその日にコンディション調整して、今週の試合には間に合った」と本人は今節の出場についてこう語るが、いうほど楽なものでなかったことは間違いないだろう。なお、チームは3対2で勝利を収めた。
 
対戦相手の日体大FIELDS横浜はFWの嶋田千秋をターゲットにして前線にボールを積極的に入れる戦術を取ったが、ここで高木は相手の攻撃の起点となる嶋田を封じる役割を負った。ただ、その中で高木は戸惑いを感じながらもプレーをしていたと言う。
 
ノジマステラ神奈川相模原
 
「スウェーデン遠征では海外の選手は足が速い事もあって、代表ではDFライン全体でボールを奪うためにラインコントロールやスライドをして、全員でボールを奪う形をとっていた。それをステラのサッカーでも出来ればいいなと思うのですが、なかなかうまく行かない部分も多くて…」
 
スウェーデン遠征時に日本代表が選択した戦術は全員で連動してボールを奪う守備であったが、今節で任された守備のタスクは、マンマークで相手に起点を作らせない事。だが、高木は「マンマークは得意ではない」と語る。時間の経過とともに嶋田を封じていったものの、前線に圧力をかける相手に何度か後手に回ってしまった事は否めない。
 
そして、本人が悔しさを露わにする理由として、チームが複数失点を喫したのは、今季の公式戦で初の出来事だからということもある。CBとして、相手の分厚い攻撃を跳ね返せなかった悔しさは計り知れないが、高木は冷静に今節の2失点目を振り返った。そのシーンは、相手のロングボールに味方が裏を取られ、高木がフォローに行くも、相手FWに決められてしまった場面である。
 
「2失点目の裏への対応は確実にボールを奪えたなと思う。だけど、自分だけではなく、もう1人のCBにも早めにバックと指示していれば防げたと思うし、1失点目もそうですけど、自分達のミスでボールを奪われて、そこからファーストディフェンスに行くのが遅くなってしまったことから奪われてしまった。そこでもっと速く対応出来たら良かったかなと思います」
 
試合終了後には、冷静に自分の守備対応を振り返り、正答を導く事が出来るのも、彼女が代表に選出される要因だろう。
 
高木ひかり
 

なでしこジャパンに定着するために

 
シーズン序盤から快速を続けるノジマステラ神奈川相模原のDFに安定感を生み出した高木だが、今回のスウェーデン遠征を通じて、他の日本代表メンバーと差を感じた部分があるという。それは、「ビルドアップの状況判断力」である。
 
「2部の選手より1部の選手の方が、相手をギリギリまで見て、ボールをどこに置くかというところやファーストタッチのコントロールの駆け引きが上手いし、1部の選手の中でもトップチームのベレーザの選手はそういったプレーが出来ている。そういう選手をよく見ると、1人で駆け引きをして、ボールを奪われない為にどこにボールを置くかを考えてプレーしていますし、そういった部分の向上が必要になってくるのかなと思う」
 
高木ひかり
 
最終ラインで試合を組み立てるCBは、ゲームコントロールを担い、攻守のスイッチ役になる存在である。だが、後方から攻撃を組み立てていく際、ボールをどこに置くか、そのファーストタッチの判断を見誤れば、すぐに相手のプレスの勢いを受けてしまい、良い攻撃を生み出す事は出来ない。ノジマステラ神奈川相模原ではCBとしてピッチに立っている高木だが、早稲田大学時代でのCBの経験はさほど多くないと言う。だからこそ、まだまだ不足している力だと認識している。
 
なでしこジャパンの守備陣を象徴する存在になるために。成長の為に新たな意識を植えつけた高木は、なでしこ2部の舞台から自分を高め続ける。
 
<了>